表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/19

呼び方

<呼び方>


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ちょっとだけ洗濯して帰ろかな。」


仕事を終え、事務所を目指して歩いていたが、私はその手前で方向を変える。


「寒い~・・。」


身をすくめながら、私は仕事で使う小物類を洗濯槽に入れ込む。


「スイッチオン。」


誰もいない洗濯場に、自分の声だけが少し響いた。


「ふぅ・・。」


ゴウンゴウンと音をたてだした洗濯機。


「・・・・。」


薄暗くなってきた空を見上げ、ボーっとなる。


「んなワケないやろ~?」

「いーや、お前ならありえるわ。」

「何でやねん~。」

「・・・ん?」


どこからか、関西弁の会話が耳に入ってきた。


(鈴井さん・・?)


そう思いながら、辺りを見回す。


「あ。」


洗濯場からは少し離れているが、フロート倉庫のシャッターの前に、鈴井と和斗の二人の

姿が確認できた。


「更織にチクったろ~。」

「ご勝手に。」


二人は何やら言い合いをしながらじゃれあっている。


(可愛い~)


そんな二人の姿を見ながら、私は笑顔がこぼれる。


「なぁ、京。」

「ん?」


(え?京・・?)


和斗が、鈴井をそう呼んだ。


「今度な、釣り行こうや~。」

「おー、ええね。」

「最近、全然行けてへんかったやん~?」

「そうやな。」

「あ。」

「え?」

「京は、桃日ちゃんのがええか~。」


(え・・っ!?)


和斗の言葉に、私は体が固まる。


「アホか。」

「ええよな~、あんな可愛い彼女掴まえて。」

「オレは、日頃の行いがええからな。」

「お前、めっちゃ極悪なやいか。」

「うっさいわ。」

「オレの方がめっちゃ行いええのに、何で可愛い彼女でけへんのかなぁ。」

「言わへんからやろ。」

「え?」

「早よ言えや?」

「・・・・うーん・・。」

「あいつの鈍感さは、世界一やからな。言わな絶対気づけへん。」

「そうやけど・・。」

「とろとろしてるから、8年も彼女でけへんねん。」

「彼女くらい、いてたわ・・。」

「それはパチもんやろ?よう8年も、片想いなんかしてられんなぁ。」

「・・オレは京典と違うて、ナイーブやねん。」

「とろいだけやんけ。」

「うっさい。」


和斗は一言言うと、そのまま立ち上がり、倉庫内へと入る。


「早よせな、日が暮れんで?」

「わーってるわ。」


和斗に言われ、鈴井も立ち上がった。


(・・・京って呼び方するんだ・・)


鈴井の事を、和斗がそう呼んでいた事を、思い出す。


(ふ~ん・・・)


そういう呼び方もあったんだと思いながら、私は終わった洗濯物を取り出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ