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恋の歌  作者: ちびひめ
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09

一ヶ月休学したあと、私はなんとか学校に復帰した。


怪我で入院していたことになっていた私は、一部を除いて

「退院おめでとう」

「もうよくなったの?」

と声をかけてもらった。


除かれた一部というのは、ユウのとりまきだった子たちだ。

ユウが毎日お見舞いに行っているという噂が出回っていたため嫉妬したようだった。


学校生活は、洋子がうまくカバーしてくれて意外とすんなりいった。

男子と話さなくていいように、ほとんどのやり取りを洋子がしてくれた。


私は幸せ者だな、と思った。

こんなに良くしてくれる友達に恵まれて、優しい彼氏もいて。


それを感じ始めた頃から、ずいぶん男子への恐怖心は薄れていった。

まだ怖いから遠巻きにしか話せないけれど……


病院へは週に一回通院した。

最近はカウンセリングも受けていて、重かった心が、徐々にではあるが軽くなっていくのを感じていた。


まだ過呼吸の発作などが出やすいことから、頓服を持ち歩いていたけれど、ほとんど使うことなく過ごすことができた。


これは毎日送り迎えしてくれているユウと、懸命に庇ってくれる洋子のおかげだなと、ありがたく感じていた。



やがて警察の調べにより、レイプ犯が見つかった。


そしてわかったことが一つ。

レイプ犯をしかけたのが歩美だということ。


歩美は、毎回のようにユウが会いにくることがとてもうらやましかったらしい。


だからといってこんなやり方間違ってる!!

私は怒りを通り越して悲しくなった。

せっかくバイトで仲良くなったのに……その笑顔まで嘘だったの?


歩美は一ヶ月の停学処置を下されて、学校をやめるかやめないかという話にまで及んでいると知った。


私はなにも言わなかった。歩美には適切な処置がくだるだろう。

庇いたい気持ちもあったが、裏切られたことのショックのほうが大きかった。


歩美は一月後、退学処分となった。


私はバイトは二ヶ月ほどお休みをいただいていた。

まだ男子への恐怖心が拭えなかったせいもある。

二ヶ月もバイトを休むのにマネージャーは籍を置いたままにしてくれた。

これも人に恵まれているせいかな?と思った。





秋も深まり、学校は文化祭一色に染まった。


私のクラスは劇を()ることになった。

演目は、ロミオとジュリエット。

女役を男子が、男役を女子が演じることになった。


私は洋子と小道具の係をすることになった。

小道具の係は思っていた以上に忙しかった。予算の中から小物を探すのは至難の技だった。


しかし、これがきっかけで、男子との距離が縮まった。


レイプ犯はもっと年上でひげとか生やしてるチャラ男だったので、高校生は平気になったのかもしれない。



文化祭当日、私は洋子とユウのクラスへ行った。

「おかえりなさいませ、お嬢様」

すごく真面目な顔でユウが言う。

私と洋子は吹き出して指差して笑ってしまった。

「しかたねーだろ!?そういうコンテンツで売りなんだからさ」

不満そうにメニューを取りに来るユウ。

洋子と一つずつ注文をして、ユウが運んできた。


「俺、一時で交代だからさ、一緒に回らねえ?」

「うん!一緒に回る!」

「じゃあお邪魔虫は一時に退散しまーす」

洋子の言葉に、私たちは笑った。


一時になり、交代の時間がやって来た。

「三時までに回るぞ!」

というのも、三時半にユウのバンドの演奏が始まるからだった。

二時間、思い切りはしゃいだ。

お化け屋敷にも行ったし、メイド喫茶、外で行われている屋台。

去年も同じラインナップだったはずなのに、今年は輝いて見えた。


なにもかもが輝いて見えたよ。

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