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恋の歌  作者: ちびひめ
4/34

04

「小宮山先輩……?」

名前くらいは聞いたことがある。確かすごく美人で、でも超ヤンキーな先輩だったと記憶している。


やっぱり私はからかわれてるんだ――


それからというもの、なんとなくユウを避けるようになってしまった。

メールの返事はしているが、無難に終わらせていた。

やっぱり住む世界が違うんだ。私はそう自分に言い聞かせた。

だいたい、知り合ったばかりなのに期待してること自体がおかしいんだよね。


――わたしは一人でも平気――


そう思っていた。


ユウからのメールで、

『最近は早い時間の電車で行ってんの?』

とメールがきた。ユウを避けてあえて早めの電車に乗っていたのだが、まだ毎朝迎えに来てくれていたんだ。

少し胸がズキンと痛んだ。

『朝から課外があるから、早めに行ってるの』


私は自分の醜いこの気持ちを、嫉妬をユウに見せたくなかった。


『んじゃ俺も早く一緒に行くわ。何時?』

『もう一緒に行かない。小宮山先輩にバレたらどうするの?』

するとユウからのメールが途絶えた。


寂しくなんてない。だって元々一人だったんだし、毎日メールするほどこれからは暇じゃないし。


第一、彼女持ちにからかわれて、私、一人うかれてバカみたい。


危うくだまされるところだったよ。


私は深呼吸を一回すると、勉強を始めた。最近はユウがノート見せてとせがんできたことがあったので、ノートも綺麗に書くようにしていた。

「バッカみたい」

それだけ言うと、はらりはらり、と涙が出てきた。自宅にいてよかった。こんなみっともない姿、誰にも見せられない。


夜寝ようとして、いつものメールがないことに気づく。

そういえば、さっき小宮山先輩の話を出したところからメールがないんだった、と改めて気づいた。


寝るまでの一時間くらいは、毎日電話やメールをして過ごしていたので、なんだか胸にぽっかりと大きな穴が開いたような気がした。


五月も終わりかけのこの日、結局一日ユウからのメールはなかった。


私はユウのことなんて早く忘れたくて早々にメアドを消した。



翌々日、月曜になり、朝から早めの電車に乗ろうと家を出た。


そこで驚いたのは、ユウの姿があったから。

ユウは眠そうに目を擦りながらこちらを向いた。

「おはよ、チカ」

何にもなかったかのようにユウは迎えに来た。


――どうして?なんでユウがここにいるの?

小宮山先輩とのことはどうなったの――


聞くことが出来なかった。

いつものように自転車に揺られて登校した。

何も言えずに――


教室につくと、洋子がやって来て言った。

「小宮山先輩が、話があるから屋上へ来てって……」

「うん、わかった」

「わかったって、チカちゃん一人で行く気?」

「もちろんよ」

「危ないよ、私もついていく」

「洋子は課外があるでしょ」

「だけど……」

私も怖かった。何を言われるか、何をされるかわからないけれど、一人で行くと決めた。

洋子を危ない目に遭わせたくなかったし、これは私個人の問題だから。



私は一つずつ階段を踏みしめるようにして登っていった。

屋上のドアを開ける。

きぃぃ、と古い音をたててドアは開いた。


小宮山先輩は一人で座っていた。

時折吹く風が先輩のウェーブで軽い髪をそっと撫でていた。

先輩はこちらを向くと

「あなたが……チカさん?」

と聞いてきた。

イメージと全然違う。

茶髪でメイクしてはいるが、ヤンキーっぽさは全然ない。むしろか弱くて守ってあげなきゃいけないようなタイプに見える。

先輩は、私に向かって言った。

「ユウのことなんだけど……」

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