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披露宴は盛り上がっていき、各テーブルをまわって写真を撮った。
担任の先生のところへ行ったとき、さっきの明るいニュースを聞いた。
それは、二人とも学校に在籍していいというものだった。高校は大人になってからも行ける学校、だから、結婚しても出産しても在籍していいということだった。
出産が近間ってからは学校には行けないので、その分家で勉強して、テストだけは受けにくるといい、というものだった。
私は喜んでユウに抱きついた。
ユウはただ微笑んでいるだけだった。
やがて新婦から両親への手紙の番がきた。
私はこれまでになく真剣に書いた手紙を取りだし、読み始めた。
「お父さん、お母さん、今までありがとうございました。いつも優しいお父さん、今回は心配をかけるようなことになってごめんなさい……」
読んでいて涙が出てきた。
「お父さんにいつも甘えて支えてもらったこと、忘れません。お母さん、いつも明るいお母さん。お母さんがいたから、私はここまでくることが出来ました。これからは、子供を産んで私もお母さんになります。お母さんに負けないようなお母さんになります……」
最後の方は涙と鼻水でほとんど読めていなかった。式場の人がハンカチをくれた。
私はそれで涙を拭いながら手紙を読み続けた。
「今後は二人に負けないようにいい夫婦になります。ありがとう、お父さん、お母さん。チカより」
横を見ると、ユウが車椅子に突っ伏して泣いていた。そんなユウに、私はハンカチを差し出した。
ユウは泣き止みそうになかったが、高砂に上がった。
ユウのお父さんがお礼の挨拶をする。
ユウは泣いたままだ。
続いてユウの番が来た。
ちゃんと言えるかな?と心配していたが、涙ながらに挨拶をしてのけた。さすが、ユウだった。決めるとこは決める。そんなユウの姿にまた涙が出てきた。
退場すると、ゲストの送り出しに立った。
しかしそこにユウの姿はなかった。
結婚式からの三時間はやはり疲れたようで、ユウのお母さんがユウについて控え室へ行っていた。
私はユウの分も、頑張って送り出しの飴を渡し続けた。
送り出しも終わって控え室に行くと、ぐったりしたユウの姿があった。
「ユウ……大丈夫?」
「このくらい、少し休めば復活するよ」
ユウの言葉を信じて私は着替えをした。
ホントは二次会も誘われていたけど、この状態のユウをほおっておけないので、電話で断った。
ユウの家に行くと、親戚が集まっていて、いよいよ二次会というところだった。
私は軽く挨拶をすると、ユウについて寝室へ行った。
元々ユウの部屋は二階にあったのだが、車椅子生活になって以来、お母さんが一階の部屋をユウのために準備してくれていた。
おかげで苦労せず部屋に入ることが出来た。
部屋に入ると、ユウは寝てしまい、私は二次会に行った面子とラインで話していた。
二時間くらい経ち、親戚のどんちゃん騒ぎも落ち着いてきた頃、ユウは目を覚ました。
「ユウ、大丈夫?きつくない?」
と聞くとユウは
「寝たらだいぶ良くなった」
と言い、親戚のところへ顔を見せにいくと言った。
私は車椅子を押すと、親戚の集まる部屋へ移動した。
酔っぱらっていた親戚はもう、言いたい放題だった。
「末期ガンなのに、よく嫁をもらえたな」
「まだ高校生なのに、よくやるな」
ユウは拳を握りしめ、耐えていた。
お母さんがフォローに回る。
ユウの拳から力が抜けた。
お母さんは、
「今日は泊まっていくでしょう?」
と聞いてくれた。
「はい!」
「じゃあ、後で客間の布団を持っていくから……」
「すみません、お世話になります」
「いいのよ、もう家族なんだから」
このセリフを聞いて、私は結婚したんだな、と初めて実感した。
――ユウ、ユウの家族になれたよ……
私は幸せ一杯だった。




