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恋の歌  作者: ちびひめ
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とは言ったものの、何をどう考えればいいのかわからなかった。


ユウに相談したいけど、ユウは今はそれどころじゃないよね……


私は洋子に相談することにした。


「重たい相談でごめんね……」

近所のカフェでお茶をした。

もう八月。蝉の声がかん高く夏を謳歌している。


「実は、私、卒業できたら働こうと思ってるの。だけど、子どもと二人で食べていける職業ってなにがあるだろうと思って……」

「そうだねえ……二人で暮らすなら家賃と光熱費と食費は不可欠だよね」

「うん、そうすると二十万円くらいはお給料とらないといけなくて」

「夜の仕事もあるけど、保育園代金が高くて本末転倒かなぁ……」

やっぱり洋子はすごい。こんな私のためにいろいろアイデアを出してくれる。


「その前に、卒業、させてもらえるの?」


洋子は痛いところをついてきた。そうなのだ。まだ学校から明確な返事をもらっていない。


「まずは担任と話からだね」

そう言って二人は別れた。


洋子のいう通り、今どんな状況か知らなければならない。

私は学校に電話を入れた。


担任は言った。

「今のまま、お腹が大きくなっていくあなたを、みんなと同じに扱うことはできないの。とりあえずコースはどのみち就職クラスになるから、そこだけは決まってるから」

「私、学校やめなきゃいけないんでしょうか……」

不安な本音が出た。

やや間があって、担任は言った。

「今そうならないでいいように頑張って話をしているから、あと少し待ってね」


やはり学校も無理か……

私は絶望のどん底にいた。

頼れる人は他にはいない。自分で乗り切らなくてはならないのだ。


街は台風で大荒れだった。私の気持ちのように。





ユウは外を眺めていた。

私が病室に入ったとき、ユウは窓の前に立っていた。

「台風すごいな。チカ、こんな日にまで来なくて大丈夫だったのに……」

「あら。来ちゃいけなかったかしら?」

「そんなわけねーだろ。退屈してたし。って、なに作ってんの?」

「オムツ……」

「へぇ、そうやって作るんだ?」

「だいぶ我流だけどね。縫い目が肌にあたらないようにするんだよ」

するとユウはくしゃくしゃな笑顔で、

「母親らしくなりやがって」

と言った。

「だって母親だもん」

私はピースサインで返した。


「俺さ、もしも、万が一治ったときには三人で散歩に行きたいな」

「行けるわよ。春になったら満開の桜の下で、バンド仲間と一緒にお花見するの」


そして沈黙。


二人にはわかっていたのだ。ユウは次の春を迎えられない。

それでも春を持ち出したのは、希望かもしれない。藁にもすがりつく想いかもしれない。


沈黙を破ったのはユウのほうだった。

「安心して、元気な子どもを産めよ」

「うん、大丈夫」


本当は大丈夫じゃなかったのかもしれない。だけど、この時はそういうより他になかった。


台風の嵐がやみそうにないので、私は母に迎えにきてもらうことにした。

「お父さん、まだ怒ってるのか?」

「うん、まだ……でもいつかは認めて見せるから」

「そっか。チカが頑張ってくれるから、今の俺も、子どももいるんだ。身体だけはしっかり気を付けるんだぞ」

「うんうん、わかってます!」

私は二度返事をしてユウから怒られた。


帰りの車の中で、私は母に何気なく質問をした。

「お母さんが私を産んだときって、どうだった?」

「ん?そうねぇ、周りがみんな喜んで、ヘトヘトなのにお見舞いに応えるのが大変だったかな。チカは逆子の上にへその緒が絡んでて、十に時間かかって産んだのよ」

母が語り始めた。

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