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恋の歌  作者: ちびひめ
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財布騒ぎから一週間。

私は普通に登校していた。

だが、気になるのは財布を盗んだ彼女だ。

彼女は財布を盗んだ上、私に罪をなすりつけようと私のカバンに財布を差し込んだのだ。

もちろんクラスメイトの怒りはすべて彼女に向けられた。


でも、私はかわいそうだな、と思った。

同情とか、そんなんじゃなくて、みんなからシカトされるのはあまりに辛いだろうと感じたのだ。


「土井田さん、みんなに謝ろうよ?」

私は彼女にそう話しかけた。

「今さら謝ったって遅いから、いい」

変なところで意地を張る。

「そもそも、私が謝る相手ってあんただし」

それもそうか。

だが、今のままじゃいじめに発展する。

いじめにあったことがあるからわかるのだが、いじめられることは半端なく辛いことだ。

私はそれを彼女に言って、彼女はしぶしぶ納得した。

休み時間に一グループずつ回って謝っていく。

私も一緒に謝った。

「なんでチカが謝るのよ?」

と、どのグループでも言われた。

「私に隙があったからいけなかったんだよ」

と私は説明して歩いた。

みんなはいまいち納得してくれなかったが、

「本人が言うなら、まぁ、仕方ないか」

と言ってくれた。


この件で彼女に友達はいなくなった。

もともと一人で行動派だったようだが、それとは状況が違う。


私は勇気を出して、

「お弁当、一緒に食べない?」

と誘いをかけた。

最初は断られていたが、二週間もたつ頃には彼女が降参して、一緒にご飯を食べることになった。


「あんたって変わってるわね」

土井田ミキはそう言った。

「変わってる?」

「普通あんな目に遭わされたら友達になんて絶対なれない」

「だって、私は洋子ちゃん以外に友達はいないから、チャンスかな、と思って」

「チャンス……ね。確かに変わってるわ」

ふふ、とミキは笑った。





来ない。



アレが来ない。



まさか……



私は薬局で妊娠検査薬を購入した。

そして、そのままトイレで、検査をした。



陽性だった。



検査薬の窓にはしっかりとラインが浮かび上がっていた。これが妊娠のサイン。

三回目の生理がこなくて初めて気づいたのだ。


私は落ち込んだ。

ユウにも言えなかった。今は6月だから、1月くらいが出産となる。

でも、私は高校生だ。産むわけにはいかない。

頭ではそれはわかっていたことだったが、身体の中から、「ママ」と呼ばれている感じがして、そうしたくないとも思った。


とりあえず誰かに相談しなきゃ……

焦る一方で、それでも言い出せない自分がいた。


まずは洋子に相談した。

「――それは、手術しかないね」

「やっぱり?」

「産んでも、どうやって育てるん?そっちのほうが無責任やわ」洋子は冷静に話を聞いてくれた。

私もそれが一番かな、と思った。


……ユウに言わないといけない。これは私だけの問題じゃないんだから。


でも、私はユウには言えなかった……


妊娠初期。手術するなら今のタイミングしかない。


それでもまだ、私はユウに言えてなかった。

毎日一緒に登下校しているのに、隠すのが精一杯で、ユウの話は半分しか聞けていなかった。


そのうち、つわりがはじまって、私はハーゲンダッツのバニラしか食べれない身体になった。

食べ物の匂いを嗅ぐと吐き気がした。


自分の身体が自分じゃなくなっている気がしていた。

家ではアイスしか食べない理由をダイエットということにした。


母が心配してくれたが、ごまかすしかなかった。


ものが食べれない。このことはミキも気づいた。

「チカ、最近アイスしか食べてないの、どうかあるん?」

「エヘヘ、ちょっとダイエット」


こうしている間にも子供はすくすくと育っていたのだった。

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