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恋の歌  作者: ちびひめ
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抱き締められた最初は思わずビクッとしてしまったが、あとは抱き締められている温もりが気持ちよくて、抱き締められてる間、私はボーッとしていた。

「俺は、チカを大事にしていきたいと思ってる。だから焦る必要なんてないんだよ」

その言葉に、涙が二、三個転がっていった。


その日の帰りから、再びユウと帰り始めた。

「エッチしないのは女として魅力ないからじゃない?」

と言っていた子をよそに、私たちはまたラブラブで帰り始めた。


やっぱりユウといる時間が一番好き。

今日あったこととかを一生懸命しゃべる。ユウが笑顔で頷く。

そうか、幸せってこんなに近くにあるんだね。





季節は移り変わって四月。

暖かな日差しに囲まれて、私たちは三年生になった。

桜は散ってしまい、その代わりに菜の花が満開を迎えていた。

蝶が飛び交う花の中、みんなで記念写真を撮った。

クラス替えがあり、私とユウは念願の同じクラスになった。


この頃にはもう、ユウのファンからの嫌がらせもなくなっていて、ホントに平凡な日々を送っていた。


「もうすぐ、記念日だね!」

というと

「一年間、早かったな」

とユウは言った。

私は覚えてくれたことが嬉しくて、手をぎゅっと握った。ユウは痛くない程度に握り返してくれた。


「あの頃は、こんな風になるなんて、思いもしなかったなぁ」

「俺もチカがあそこまでガード固いとは思わなかった」

ふふ、とユウが笑う。

そしておもむろに伸びをした。

ユウの目には涙が溜まっていた。

伸びのせいにしようなんて、見え見えなんだよ、ユウ。


すぐ泣くユウは、私の前以外で泣かなかった。

私は心の拠り所になっているのかなとちょっと嬉しかった。



「なぁ……俺ん家寄ってかないか?」

付き合って数回お邪魔したことがあるユウの家。でも、それは土日のことだった。

今日はこのまま制服でお邪魔する。

手土産を買っていったほうがいいかと聞くと、チカが食べたいなら、と言ったので、ケーキ屋に寄った。ここのケーキはホントに美味しくて、前にお邪魔した時も買っていったくらいだ。


手土産も用意して、いざユウの家へ。


「お邪魔しますー」

といって上がり込むが、返事がない。

「あれ?お母さんは?」

「今日は町内会の慰安旅行でいない」

お父さんの帰りは夜……


つまりは二人きり。


緊張して生唾を飲み込む私。

「ユウはどのケーキがいい?」

焦って聞く私。

「コーヒー淹れてくるわ」

と、ユウがいなくなってしまった。

その隙に下着を確認する。

今日は上下ばらばらだし、可愛い下着じゃない!あぁ、一度帰らせてもらえば……


ユウが部屋に戻ってきた。

「私、一度帰ってからまたきていい?」


コーヒーを口にしていたユウは思い切りむせた。

「なんで?」

「いや、制服なのもなんだし……」

「誰も見てねーから問題ないだろ?」

それもそうだな。


ここは正直に!

「今日は勝負下着じゃないから……」

ユウはブフッと盛大に吹き出した。

「お前、そんなこと考えてたのかよ?」

「だってこのシチュエーションなら考えるでしょ?」

「それもそうだな」

そう言いながらも、ケーキを取り分けるユウ。

「まあ、まずはケーキだよ!傷むから一人二つな」


緊迫感がまるでなかった。

私はちょっとホッとしてケーキを食べた。

そのままゲームをしていると、不意にキスされた。

いつもと違うキス。舌を絡めとられ、強引だった。

口を離すと吐息がもれた。

ユウはそのまま覆い被さってきた。少し怖くて目をつぶる私。

「ちゃんと見て……今触ってるのは俺だよ……嫌なことはしないから」


――そして二人は新たな絆で結ばれた。

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