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恋の歌  作者: ちびひめ
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こんな風に日常はただ通りすぎていった。


私たちはキス以上に発展していなかった。

私がパニックを起こすかもしれないという理由だった。


でも、洋子以外の友達と話していて気がついた。

「男ってやりたいもんじゃないの?」

「もう付き合いだして半年以上になるのになにもないってのはねー?」

「ユウのことだから、セフレとかいるのかも?」

「そんなこと、ないっ!!」

私は叫んだ。

「じゃあ、チカに『女』を感じないとか?」

やだ、やだ、やだ。

そんなこと、嫌だ。

ユウが誰かとエッチするなんて。

私を女の子として見てくれてないなんて、そんなはずはない、と言いたかった。

でも、言葉に出来ないまま、私は駆け出してしまった。ユウの元へ。


「ユウ!!ユウ!」

「どうしたんだよ、そんなに焦って。何かあったんか?」

「ユウ、私のこと、好き?」

「なんだよ、そんなことかよ」

そんなことかよ、の台詞に苛立ちながらも、もう一度聞いた。

「私のこと、好き?女の子として、好き?」

ユウは私の髪をくしゃくしゃと撫でながら

「好きだよ。当たり前だろ」とささやいた。

「じゃあ、どうしてエッチしないの?!」

ユウは目をそらした。

「お前が怖がるんじゃないかと思って、さ」

私は頭に血がのぼった。

「そんなこと言って、ホントは嫌なんじゃないの?汚れた女なんて」

「なに言ってんだよ!そんな風に思ったことなんて一度もねぇよ!!」

「そうだよね!私汚れてるんだ。


ユウの傍にいる権利なんてないよね」

この時、私は心の底からそう思った。


私は、汚れてる。捕まったとはいえ、どこの馬の骨ともわからない人たちにあんなことされたんだもん、普通重荷に感じるよね。

ユウも重荷に感じてたんだ、きっと。


この時の私はそれしか考え付かなくて、悲劇のヒロインかなにかにでもなった気分でいた。



ユウとは一週間口をきかなかった。電車はわざとばらばらな時間に行った。少しでも会う時間を減らしたかったのだ。


ユウは、それでも毎日迎えに来てくれていたらしい。私はほんのちょっと嬉しかったりはしたのだが、これ以上ユウに嫌われるのは怖かった。


クラスにも出来るだけいないようにした。ユウが来るからだ。

屋上などで一人ボーッとすることが増えた。


外はさすがに寒かった。でも私はコートも着ないで外にいた。

それが汚れた女にはよく似合うと思ったからだ。

私は汚れている……そう思うだけで身震いした。


キスだけは守りぬいたけど、その他がぐちゃぐちゃだったんだから意味がない。そう私は思っていた。

ユウはやがて屋上を探し当ててやって来た。


「お前何を怒ってるんだよ?」

「怒ってない!」

「怒ってるだろ?!」

「これは……違う」

私はそう言うと泣き始めた。真珠のような涙が一滴、また一滴とこぼれてきた。

「ユウは私のこと重荷なんだよね?だからエッチとかしたりしないんだよね?」

「なに言ってんだよ?!そんなことあるわけないだろ?」

「だって。みんながそう言うんだもん。セフレがいたりするの?」

「バカ、お前のためにどれだけ時間割いてるかわかってるのかよ?」

「ほら、やっぱり重荷なんじゃない!」

真珠の涙が割れる。一つ、また一つ。

「俺はそんなこと思ってないし、急いでする必要なんてない。もっと二人の時間を楽しく過ごすのがいいと思って……俺だって我慢してるんだ、わかってくれないか」


我慢。


その言葉がでたとたんに涙は止まった。

我慢してくれてるの?


「お前が怖くなくなるまで待とうと思って」


「怖くなくなるまで?」


「そう、怖くなくなるまで待ってる」

私は決意した。

「もう、怖くないよ」

「嘘つきは針千本のーます」

「嘘じゃないもん」

「証拠は?」

「抱き締めてみてよ」

ユウは私の背に手を回した。

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