Prologue
やりたくなったからデスゲームモノ、始めました。
「グギャアァァァァアア!!!」
巨大な鬼はその表情を怒りに染めながらこちらに向かってくる。手からは汗が滲み出て握っている札が湿っていく。集中力をさらに研ぎ澄ます。
周囲は岩壁に囲まれ、逃げ場などない。そんな岩場の中央で俺はモンスターの攻撃を避けていた。
灰色の体にその二倍の大きさはあるであろう真っ赤な両腕をグッと握ってその傲慢ながらも全速力で駆けて来る醜悪な鬼、ブラッディオーガは振りかぶった腕を全力で俺にぶつけてくる。
俺はその腕を最小の動作で避けるように、ほんの少し右にずれると腰に掛けてあった刀、霊獄刀「黄泉桜」の柄に手を掛け《剣術》スキルの派類である《刀術》スキルの内の抜刀技、「閃」を使用する。
左を掠めたその腕の手首を切り伏せるべく横に一振り、刀を振るう。それだけでオーガの手首はその剛腕と離れてしまった。
実に脆い。
もがれた腕を後ろに回し、上に持ち上げた逆の腕を俺に叩きつけんと一気に振り下ろす。
だが、遅い。
「疾ッ」
俺はその手のうちに納まっていた札をすべて、その顔に叩きこむ。
俺に向かって振り下ろされる腕とオーガの顔に向かって猛スピードで飛来していく俺の札。その結果は俺の札が相手の腕よりゼロコンマの違いで勝った。
顔面にヒットした数枚の札は当たると同時にそれぞれの効果を発揮、ひとつは燃え盛る炎を吐き、ひとつは濃密な水の塊をうみだす。ひとつは鋭い風の刃を刻み込み、ひとつは大きな岩を創りだす。そして最後の一つは止めとばかりに光の束となった雷を叩きこんだ。
《符術》スキルの技能、「五行飛来」は五つの効果を生みだしたのち、その役目を終え札ごと消滅した。
結果としてオーガの身体は後ろによろめくとそのまま倒れていき、地面に着く前に光の粒子となって消えていった。そこに残されたものは何もなく、ただ目の前に道が開けてただけだった。
そして、頭の中に小気味良い電子音がポーンとなると機械質な女性のアナウンスが頭に響く。
≪第八層のフロアボスが倒されました。第九層への道が解放されました≫
特になにも思わず、俺は脚を進める。歩いて行った先には熱を帯びた火山地帯が広がる。そんな中に進んでいく。
疲れたが、次のセーフティタウンまで進もう。
この世界に俺達が閉じ込められてから数ヶ月。
VRMMORPG《Over Died Online》がデスゲームと化してから俺たちは、この仮想世界の外を目指し始めた。