表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ゆず色短編集

春冬

作者: 寺小柚琉


君、なんて名前なの?

君こそ、なんて名前なの?

なぜ一人でいるの?

君こそ、なぜ一人でいるの?


───今ならわかる。なぜかって?





1

冷たい風が、頬を叩く。

首に巻いたマフラーと、手を覆う、ピンクの手袋。

「はッ、くしゅん!」

春なのに、風邪を引くほど、今日は寒い。

「あー、もー・・・」

吐き出すため息は、白く染められて───


「ウチも、恋がしたい!!!」


「手を繫いで、そのままポッケに入れて欲しい。後ろから抱きしめられて温められたい。甘い言葉を耳元で囁かれたい。心の中から温められたいいいいいい!!!」

ウチの一番近くにいてくれるのは君だけだよ、鉄次郎・・・(自転車)

心の中でそう思いつつ、ウチは自転車のハンドルを撫でる。

虚しい。

実に虚しい。

いや、悲しいが正解か?

まぁこの際どっちでもいい。

今は、学校に向かって一生懸命自転車を漕ぐだけ。

下り坂。

足を離しても、自転車は進む。

その姿は、ジェットコースターを思い出させるような・・・

「ジェットコースターみたいな恋がしたいな・・・勢いがあって、楽しくて・・・それでそれで、」

「知ってるか?」

「はィ!」

しまった。声が裏返った。

・・・・・・・・・・うん?

「誰!?」

背中の方から、男の子の声が聞こえたような、聞こえなかったような・・・。

ウチは自転車を止め、恐る恐る振り返る。

そこにいたのは───


「ジェットコースターって、元の高さには戻れないんだぜ?」


───ウチに微笑む(失笑をもらす、とも言う)、一人の見知らぬ少年。

「面白い子だね」



死んだ。






2

やはり、建物の中は暖かい。

氷河期が過ぎた世界のように、暖かい。

暖かくて、幸せで。

でも───

「あっはっはっは!!何だそれ!はっはっはっは!!!」

「ええいうるさいうるさい!」

「だって、鉄次郎って、鉄次郎って!」

「しかもウケてたのそこなの!?」

───でも、奴の心のは、寒冷前線そのものだ。

ウチの名前は、(のぞみ)

昔はよく、「望遠鏡」って呼ばれてた。

ただいま絶賛机突っ伏し中。

まぁ、そんなことはどうでもいいのだ。

問題は、この、ウチの目の前でバカ笑いする、茶髪の生徒。

その名も、輝久(てるひさ)

普段はすごくいい奴なのに、恋愛絡みだと、途端にいじわるになる。

「で、その後どうしたって?」

輝久は、目に溜まった涙を拭い、再びウチに問いかけてくる。

ウチはいやいや、

「・・・・全力で逃げた」

と答える。

と、

「だっせえええ!超だっせえええ!」

「笑わないでよもう!」

ガタンと椅子から立ち上がり、輝久に抗議。

ええい、好き勝手言いやがって。

しばいてやる、覚悟───

「おはよー」

「お、よかった、助かった。おはよー海」

と、輝久はウチの机から離れ、トコトコと教室に入ってきた女の子、海の元に逃げていった。

そして、あろうことか、あろうことか・・・!


楽しく話しだした。


・・・・・・・・・・。

リア充なんて、爆発してしまえ。

あのバカップル(輝久&海)を含めた、全リア充どもなんか。






3

「はーい、全員席につけー」

ガラッと、教室の前の扉が開く。

この適当な口調、担任の先生だ。

ふと前を見やると、輝久と海が慌てて席についているのが見える。

ふん、イチャイチャしてるから咄嗟に動けないんだぞ。

と、ウチは心の中で負け犬の遠吠え。

「えーとねぇ。今日は、嬉しいことがありますねー」

と、担任が切り出す。

嬉しいこと?

「はい、じゃあ吉井君、入ってー」

・・・・へ?

「どうも!吉井寛生(よしいひろき)です!」

・・・・・・・・・・。

うっそぉ。

「うんとぉ、彼は隣の学校から───」

アリエナイ。

アリエナイアリエナイアリエナイ。

あいつは、

「じゃー席は・・・・松本の隣だな」

「わかりましたー」

あいつは確か───

彼は、すたすたと歩いてきて、ウチの、隣の席に・・・

「よろしくね、面白い人」



死んだ。






4

ところは変わって。

ここは道のど真ん中。

海と一緒に下校中。

輝久は茶髪を指導されている最中だ。

「災難だねー」

「もー、ホント。よりによって隣の席だよ?」

「まぁ、これも何かの縁だよ。仲良くしちゃえば?」

「絶対ムリ。死んでもムリ。世界が終わろうったって仲良くならない。てか、なりたくない」

「うわ、逆にあの人がかわいそー」

知ったことか。

絶対仲良くなるもんか。

いきなりでてきて、何が「面白い子だね」だ!

次に会ったらボコボコに───

「ねえ望ちゃん」

「ん?なぁに?」

「全部聞こえてるし。それに後ろ、ホラ」

「え!」

まさか!

「痛いのは、ちょっと嫌いかもね」

うわぁお・・・。



何でいつも後ろにいるんだ?この男は。






5

それからというものの寛生は。

「望ー、教科書見せてー」

「のーぞみちゃん。何の本読んでるのー?」

「望子君。明日は暇かね?」

はっきり言うと、うざい。

何かしらあると、必ずウチに話しかけてくる。

まぁ、イケメンだから悪い気はしないけど・・・

いや!

断じて違う!

奴はイケメンなどではない!

悪魔を宿した変な───

「望ー」

「なにー?」

しまった。つい笑顔。

パシャ!

「ねぇ、痛いか、苦しいか、痛苦しいか、選びなさい?」

「ずびばぜん」

盗撮とはいい度胸だ。

絞め殺してやる。

「おーおー、仲良くやってるねぇ」

あっ、輝久だ。

・・・・・・・・・・。

よく見ると、ウチの目の前には、寛生の顔が。

「きゃあ!」

思わず、とびすさる。

キ、キスするところだった・・・!

(てる)、今の悲鳴、録音したか?」

「もちろん。聞くか?」

「さすが我が同志よ」



とにかく奴ら、死ねばいい。






6.5

この歌、知ってる?

なにこれ・・・難しい漢字・・・

「なないろのせんそう」って読むんだよ。

よく知ってるね。


───あの日のウチはまるで・・・






7

今日は、いつもより自由だ。

なぜって?

なぜなら───

「隣が休みだからさ!」

「望ちゃんうるさい」

しまった。海に叱られた。

そう。今日、どうやら寛生は休みらしいのだ。

どうせ、冬なのに、アイスばっかり食べててお腹を壊したのだろう。

ふっ、同情の余地も無い。

「寛生どうしたんだろーねー」

輝久がつまらなそうにぼやく。

「知らない、あんな奴」

と、ウチが言うと。

「えっ?」

輝久の目が丸くなった。

なに、なんかまずいことでも言った!?

「あ・・・そっか。やっぱり・・・」

今度は意味ありげに呟く。

「どうしたの?」

と、海が首を傾げる。

「ちょっと耳かしてみ?」

「うん」

・・・イチャついているようにしか見えない。

しかし、しばらくすると、

「えっ?」

と、これまた海も驚いた。

なんだろう。とっても気になる。

「ねぇ、なんの話してたの?」

「内緒」

「・・・」

悲しい。

「あ、そーだ、望」

「なぁに?」

「これ」

と言って輝久が取り出したのは、一枚の紙。

「これ、寛生の住所と、メルアド」

「はぁ?なんでそんな───」

「いいから」

輝久は、ウチに押し付けるかのように、その紙を渡してくる。

「必要ないし!」

そう言って、紙を丸め、投げようと・・・。


・・・できない。


(なんで?こんなの必要ないじゃん!)

自分の考えと、行動がばらばらに動く。

なんでなのかすら、理解できない。

「・・・行けば、思い出すんじゃね?」

再び、輝久の呟き。

行く?どこに?


寛生の、家にだ。





8

「やぁ、よくきてくれたね」

「う、うん」

来てしまった。

別に、言い訳するつもりもない。

ただ、来たのだ。

「まあ上がってよ」

「じ、じゃあお言葉に甘えて」

学校から直接来たので、ウチは制服のままだ。

ローファーを脱ぎ、足元で揃える。

「・・・・・変わってないなぁ」

「ん?何か言った?」

「いや、何も?」

寛生は、誤魔化すように、階段を上がって行く。

ウチは、どこに行けばいいかもわからず、とりあえず寛生についていく。

階段を登り切った先を、左折。

少し歩いて、辿り着いた扉の前。

「入って」

寛生が、その扉を開く。

「うわぁ!」

ウチの口からこぼれたのは、歓声。

大きなコンポ。

様々な楽器。

壁を埋め尽くす、数多のポスター。

そして、一番目についたのが───

「セカハジ?」

そう、大量のCD。

「世界の始まり」というグループのものだ。

「すごいでしょ」

寛生が自慢げに言う。

「ちっちゃい頃にハマってね。それ以来ずっとこうなんだ」

「へー・・・ウチも好きなんだ。セカハジ」

「・・・そりゃそうだ」

寛生は、苦笑する。

「そーいえば、望はなんで家に来たの?」

「あっ!そうだった!」

輝久から言われて仕方なく・・・

・・・違う。

違う。

なんだっけ。

「輝久から、行けって言われたでしょ」

「そうだけど・・・」

「俺、今日、サボり」

え?

「無断欠席!?」

「大正解」

寛生はどこか、楽しそうに笑う。

そして、一言。

「だって、望に来てもらいたかったから」

「ッ・・・!」

どうして。

どうしてこいつは、そんなことを平気で言えるのだろうか。

どうして・・・

「これ、見てよ」

そう言って、寛生は一枚の写真を取り出した。

写っているのは、幼い二人の子供。

男の子は、車椅子に乗り、女の子はその後ろに立っている。

二人とも、笑顔だ。

裏には、文字が書いてある。


『のんちゃんと、ひろくん nびょーいんで』


のんちゃん。

ウチの、ことだろうか。

「覚えてない?十年前の、あの事故」

「覚えて・・・る」

それは、ある晴れた日のことだった。



一人称が、まだ「あたし」だった頃だ。

ウチは、小学校に入りたてで、まだ友達もいなかった。

唯一と言っていい友達は、野球のボールとグローブ。

公園にあった、不思議な白い壁に向かって、毎日投げてた。

6歳なのに、自信が付いていた。

そして、ある日。

その事故は起きた。

ウチが投げたボールは、壁の角に当たって、運悪くも、道路へと転がって行った。

必死に追いかけて、道路に飛び出して・・・

そしたら、劈くような、ブレーキ音。

右から、車が来ていた。

もうダメだ。ここであたしは死ぬんだ。

不思議と、走馬灯は無かった。

次の瞬間。

見えたのは、ぐったりと倒れた、男の子。

背中に、鈍痛。

手に付着した、粘つく液体。

地面は、真っ赤だった。

そして、知った。


彼は、あたしを守ってくれたんだ───



「嬉しかったよ。毎日君がお見舞いに来てくれた。貸してくれたCD、暇さえあれば聴いてた」

「あの時の・・・ひろ君?」

「そうだよ」

ウチは、寛生の笑顔を、見ていられなくなった。

こんなにも一途に想っていてくれた人を、自分はなぜ忘れてしまったのだろう。

「ごめん・・・」

口をついて出たのは、謝罪。

でも、もうひとつ。


「ありがとう、ひろ君」


続く言葉は、必要無いだろう。

ウチの目から流れ出す透明な雫。

拭ってくれたのは───


「好きだよ、のんちゃん」


寛生の、優しい手だった。






9

ぬるい風が、頬を撫でる。

首に巻いた長いマフラーと、手を覆う、優しい温もり。

「はッ、くしゅん!」

3月も終わり、今日は4月1日。

俗に言う、エイプリルフール。

だが、いまだ花粉達の勢力は、拡大していく。

エイプリルフールすら関係なく。

「あー、もー・・・」

吐き出す言葉は、暴言へと───


「いい加減手をはなせ!!」


「えー、なんでー」

「恥ずかしいからに決まってんでしょ!?」

「俺ぜーんぜん恥ずかしくないしww」

「死に腐れ、変人」

楽しいのか、嬉しいのか、はたまた幸せなのか。

ウチの願いは、隣の変人によって叶えられ、

ただいま絶賛恋愛中。

「ちぇっ、仕方ね」

「それでいい」

「かわりに・・・」

「ええい!後ろから抱きつくな!」


素敵な恋じゃなくていい。

最高の愛じゃなくていい。

ただ、今はまだ、幸せな二人でいたい。

優しい温もりの中で、笑顔でいたい。


「のんちゃんのんちゃん」

「なに?」

「あのさ」

「うん?」

「大好き」

「/////////」

「かわいい」

「シネ///」

「エイプリルフールですね」


綺麗に咲いた、桜並木。

美しい桜吹雪の中。


───この温もり。絶対忘れないから・・・






ex.

「鵜沢」

「はい」

「鵜沢輝久」

「はい」

「一つ聞こうか」

「なんすか、せんせー」


「なぜお前の髪は、赤いんだ?」


「地毛っすね」


チャイムが鳴る。

「待て鵜沢あああ!!」

「誰が待つかああ!!」

「その地毛とやら、全部抜いてやる!!!」

「くっそ!氏ね!バカ教師!」


今日も、平和だ。



fin.

いかがだったでしょうか!



今回も頑張りました。

どうも、柚琉です!

やはり恋愛系はむつかしいですね!

書いてる途中痒くて痒くて・・・

自分が崩れる音がしました、ハイ。


久しぶりの短編なのに、しょっぱなからぶっ飛んでます。





これからも、柚琉の小説を、よろしくお願いします\(^o^)/

柚琉でした!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ