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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

仮面ランナー

 仮面ランナー ~元・Fランク冒険者の非モテアラサー高校教師の俺。裏ではお荷物どもの下校指導を爆速でしています~

作者: ワクさん
掲載日:2026/09/02



40年前、この世界は「プラスチックとデジタルの時代」が唐突に終わった。


世界各地に「ダンジョン」なる「異界」が生じたからだ。

それまでの技術や世界に「魔法」なんていかがわしい「ファンタジー」が溶け込み始めた。


新たな経済、新たな知識―――――そして、新たな脅威。


新たな資源獲得をめぐって、「冒険者」なる「山師」が必要になった。


既存の「組織」では対応しきれなかったんだろう。

民間も参入して、一大産業にもなった。


そんなこんながあった結果、教育活動にまでその「ファンタジー」が取り込まれた。


「高等教育課程」に「冒険者専門課程」なんてふざけた「学科」をお偉いさんがブッ込んだんだ。


これが実施された当初はみんな及び腰。

けれど、環境やカリキュラムといった様々なものが整備されたら「人気の科目」となった。


もちろん、「一部の層」にだけ。


まっとうな奴は、ちゃんとお勉強して、いい勤め先に入る。

けれど、「まっとう」じゃない奴だっているのがこの世の常。


「夢見るファンタジー脳」、「どこで勘違いしたか自尊心の塊のヤツ」、「一山当てなければ、先がない奴」……


そして、「箸にも棒にもかからぬアホ」。


俺は、どっちかっていうと「箸にも棒にもかからぬアホ」だった。


大学まで行かせてもらったけれど、結局残ったのは「大卒」というステータスと「潰しの利かない資格」。

そして、「奨学金」という借金。


就職活動も上手くいかなくて、俺は結局「冒険者」になった。

大した才能もない俺だから、結局「Fランク」どまりの底辺冒険者。


いちおう「奨学金」だけは返すことはできた。

まあ、それだけ「危険な仕事」だったからな。


で、20代後半で考えた。


「このまま続けていても、結局早死にしちまうだろうな」って。


俺だって少しは人生を謳歌したい。


「年齢=彼女いない歴」というのも嫌だ。(実は、トータルすると、-2年分は稼いでいる)


そして、俺は今――――――



◇


ザワザワザワ―――――


喧騒が室内に満ちている。


寝ている者もいる。


カツカツカツカツ……


俺はボードにペンで「板書」をする。


ちゃんと前日までに「教材研究」をして、要点をまとめたものだ。

重要な「補足説明」と「試験出題範囲」だってペンの色を変える親切仕様。

後で「赤フィルム」とかでテスト勉強しやすいようにとの工夫だ。

文字でイメージできないものは「イラスト」だって下手なりに書いている。


「―――――はい。これが、低階層で想定される【トラップ】の種類です」


そう言いつつ、板書を終えた俺は生徒たちに向き直った。


そう、今、俺は「高校教師」をしている。

一応、大学で教職課程をとっていたので「教員免許」を持っていた。


「せんせぇ、文字多くてわかりづらいっス」

「目ぇ痛い」

「何言ってんのかわかんねぇ」


ふんぞり返った生徒たちは口々に文句を言う。


「てか、アンタの授業、マジわかんねぇし」


生徒の一人が言うと、周囲の生徒たちが声を上げて笑う。


――――ムリッ


苛立ちで俺の顔が引きつった。


「ダメだよぉ先生苛めたらぁ。ほらぁ泣きそうな顔してるでしょ~」


――――おうおう、これが「泣きそうな顔」に見えるのか。

おまえの視力はどうなっているんだ?

それとも認知が歪んでいるのか?


「だいたい、低階層の【トラップ】ってかかるバカいないっしょ?」


ふんぞり返って言うひとり、背の高い「見た目だけはイイ」雄ガキがのたまう。


「オレ、【剣聖】のクラスが鑑定で出たんだよね。将来を嘱望されるって『神クラス』なワケ。当然、そんなクズトラップ、ソッコーで物っ破でしょ?」


「あははは、言えてる!その赤字の解除法とかいらないってマジで。漢字も読めないし」

雄ガキに追従する形で、無駄に発育のいい、女子生徒が言う。


――――おい、全て「ひらがな」で書けというのか?

「AはBで解除できます。Cは危険です」という文の「解除」や「危険」が読めないのかっ!


「だいたいさぁ、『半径2メートル』ってどのくらい?実地で測れっての?というか、『半径』って何?」


「言えてるぅ~」


周りの生徒たちも笑い始めた。


そんくらい、テメェの身長や歩幅、得物で目測ぐらいつけろやっっ!

厳密に測量する暇あるワケねぇだろ!

「だいたい」でいいんだよ。それぐらい察しろよ。

効果範囲を多めに見積もって避けるのが「無難」なんだよっ!


(揚げ足取って喜ぶクソガキどもが……)


俺はイライラしながらも我慢して、笑顔をつくる。


「え~、念には念をと言いますし、将来有望な君たちが危険に晒されないための予備知識ですから」


「はぁ!?」


生徒たちは声を上げる。


「それって『問題発言』じゃないですかっ!」


は?どこが?


「要は俺たちがアンタの話聞かないと『死ぬかも』って脅しでしょ?」


オイ、何言ってんだ。

飛躍させんな。


「最低ッ!自分の指導力の無さを棚に上げて、恫喝で私たちを抑え込もうなんて」


いや、オマエ、さっき「漢字わかんねぇ」言ってなかった?

「棚に上げる」「恫喝」ってよく知ってるな。


途端に「パワハラ教師」「モラハラ教師」のコール。


「理事長……いや、教育委員会に言って居場所無くしてやるっ!」


奴らは騒ぎ立てた。


なんだ、この被害妄想。

因縁つけて騒ぎ立てるだけのバカ。


ああ、こうやって「俺の方が強い」アピール?

クソくらえだ。


歪んだ自己顕示欲の塊どもなんてな。


ねぇ、コイツらもう、「実習」でダンジョン地下に放り込んでイイっすか?



◇



今日もえらい目に遭った。


というか、俺の持ち時間(授業担当時間)さ、一日4時間(コマ)あって、週に20時間だよね……


基本「ダンジョン地理学」と「モンスター生物学」だからあの「問題児クラス」と毎日顔を合わせるのかぁ―――――胃が痛い。


放課後の廊下を俺は歩く。


今は、「クラブ活動」の時間。


俺は「ある理由」からクラブの顧問を任されていない。


―――――ん?


渡り廊下の隅、茂みのところに「女性」の姿が見える。


あ~、新任の先生だ。

確か、「宇佐美」先生だっけ?


俺は、それとなく中庭に足を向けた。



◇


「あれ?宇佐美先生?」


俺はわざとらしく声をかけた。


驚いた様子で宇佐美先生は俺の顔を見た。


「あ……『ヅラ先生』?」


オイッ!俺は「ヅラ」じゃねぇ!「葛城(かつらぎ)」だ!

クソガキどもっ!新人にまで浸透させてるじゃないかっ!


「えっと、葛城ですが……」


「あ、すいません」そういって目元を拭う。

泣いてたのかぁ……


「ところで、どうしてこんなところに?確か宇佐美先生は『剣術』の―――」


俺が言いかけたところ、「うっ」と宇佐美先生は顔をしかめた。

参ったなぁ……


「こ、ここじゃあ、何ですからっ!『保健室』行きましょっ!」


俺は「保健室」へと誘った。



◇


「……で、なんでここで『職員会議』やってるんだ?」


保健室のデスクに座っている女性がこちらに背を向けつつ言う。


「こちとら、『保健日誌』書くので忙しいんだ」


白衣の女性。

後ろ姿だけでもわかる「ボンッ・キュッ・ボンッ」のセクシーな体つき。

タイトスカートを履き、「男子生徒」を惑わせる肢体。


「いやぁ、放課後のこの時間は、ここしか『話せる』場所ないじゃないですか」


俺はそう愛想笑いを浮かべる。


ケッ、貧乏くじ引いた。

興味もない「新人教師」の相談のるとかさ。


校内での「異性とふたりきり」というのは、原則禁じられている。

「努力義務」でも、俺はそれを守る。

要らぬ誤解を生まないためだ。


そう、俺の「危険回避」と「セキュリティ」は冒険者時代から定評はあったんだ。


「じつは――――」


宇佐美先生は、俺が買ってやった自販機の「ミルクティ」を手で玩びながら話し始めた。


簡単に言えばこうだ。


最近、鑑定で【剣聖】と【ソードダンサー】のクラスが出た生徒が言うことを聞いてくれないらしい。

彼女の顧問する「剣術」クラブ……実質、「冒険者の剣技」を基礎から叩き込む訓練をサボる。それどころか、他の生徒を自分たちの取り巻きにして実権を握っているらしい。


『悔しかったら俺らと勝負してくださいよ。勝ったら言うことを聞きますから』


そう衆前で啖呵を切ったらしい。


しかし、これはコイツらの「罠」だ。


教師陣営は「自衛」は許されても「体罰」はできない。

たとえ、「指導」や「試合」でも、「生徒を傷つけてはならない」。


極度な「体罰禁止」の弊害だ。


それを知っている「クソガキ」はそれを利用する。

「言いたい放題」「やりたい放題」だ。


自分たちのしたことに「適切な指導」を加えても逆恨みする。

同調圧力で他の生徒を巻き込み、口裏を合わせて「不適切な指導」と騒ぎ立てる。


必然的に、宇佐美先生は彼らに対して過度な攻撃はできないし、捌くだけで反撃は最小限。

もちろん、本来実戦で培った「急所攻撃」も「一撃必殺スキル」もできない「縛りプレイ」。


相手は好き放題できるけれど、こっちは枷を嵌められ状況。


確か、宇佐美先生は「元・Bランク冒険者」。

そして【剣豪】のクラス。


正直、なんの努力もしていない「クソガキ」相手だと、「竹刀」どころか「定規」で引っ叩いたら、加減していても大ケガだ。


「だから、私、断ったんです。『お互いにメリットないでしょ』って」


ぽろぽろと宇佐美先生は涙を流す。


そりゃ、悔しいだろう。

これまでどれだけの研鑽を積んできたんだ?

これまでどれだけの実績を積んできたんだ?


人には言えないことだってあったろうよ。


それを、「知ったふうな頭でっかち」のクソどもがイキリ散らかしてるんだから。


「そうした……らっ、『逃げた』って。弱いからっ、敵わないから逃げたって――――」


嗚咽しながら宇佐美先生は呟く。


「私、悔しい。言い返せない。口論自体相手の手の内だから。『できない』から。証明しろって言われても、実力行使は、『即罰せられる』ってわかっているからっ」


保健室の「マチ子」先生は席を立った。


「そうかい。辛かったねぇ」


そういって優しく宇佐美先生の背をさすった。


言っておく。

「マチ子先生」はナイスバディ。

声すらもセクシー。

けれど、彼女の顔は「パグ」にそっくりだ。


内面も「イイ女」感を出しているけれどもな!


だから、俺ら「教師陣」では、ここ保健室は「セーフティーゾーン」と呼ばれている。


どうやっても、「恋愛感情」とか「変な気」は起きない!絶対にだ!



◇


そんなこんながあった翌日。


「宇佐美先生」は気丈に今日も出勤した。

ほんと、「元・冒険者」だけあってタフなんだよな。

とはいえ、その気持ちがいつまで続くか。


「ダンジョン」にいるのとそう変わらんストレスまみれの「現場」。


俺も、時々「転職」を考える。


そして、ようやく今日も午後の授業が終わった……


ようやく今日も終わる――――――――



――――ピン、ポン、パン、ポン。


この呼び出し音は全国共通だろうか?


「葛城先生、葛城先生っ、校長室へとお越しください」


ああ―――――来てしまったか。

そういや、「問題児クラス」今日は実習だったものな。


このアナウンスを聞いて、周囲の生徒たちが笑い始める。


「ズラ先っ、キモぉ!」

「校長に呼ばれんのっ」

「今度こそクビでしょキャハハハ!」

「ざまぁ……」


ホントぉ、マジでウルセェなぁ。

ジャリどもが―――――――



◇



「葛城先生」


校長室に入ったら、即行で席を立った校長が出迎える。

禿散らかしているのに、横にだけ毛を伸ばしている。

プードルかどっか聖人……「フランシスコ」さんとかか?


「特任教員、葛城先生。『下校指導』をお願いします」


そう、校長は言った。


「今日の『実習』で『帰還困難生徒』が出ました」


そして、そっと「要救助者」の資料を俺に差し向ける。



◇



「わあああああああああ」


無駄に背が高く見た目の良い学生が悲鳴を上げる。


「ちょっ――――待って」


置き去りにされた生徒が声をかけるも、男子生徒は振り返りもせずに走る。


「え?――――いや、あり得ないっ!待ちなさいよっ」


女子生徒が言うが、それすらも「男子生徒」には届かなかった。


ズシン、ズシン、ズシン


重い足音を響かせて迫る「巨体」


フュシュァァァァァァア―――――


涎にまみれた、生臭い吐息。


「豚頭将軍(オークジェネラル)」だ。


ダンジョン低層に現れる「中ボス」。


普通の冒険者ならば、苦も無く倒せる相手だが、「ろくに鍛錬もしないルーキー」が敵う相手ではない。


「まっ待って、お願い――――」


女子生徒が声を出そうとするも、「オークジェネラル」は眼前に迫っていた。


「ヒィッ!?」


悲鳴を上げる。


オークジェネラルが棍棒を振るった。

避けることもできずに女子生徒は殴り倒された。


倒れ、動けな彼女へとオークジェネラルは歩み寄った。


「は、放してっ!」

暴れるが、太い腕に捕まれ逃れられない。


装備品をはぎ取られる。

そして、衣服も一緒に――――――



◇



「いやぁぁぁぁぁぁぁ!」


声がダンジョン内に木霊する。

しかし、だれも来ることはない。


オークジェネラルは目の前の「雌」を押さえつけ、邪魔な装備品を剥ぎとっていく。


女子生徒は好色な目を向けられ、怖れのあまり失禁した。

それすらも、オークたちを喜ばせた。



――――シュタン


――――シュタタン



軽快な音が聞こえる。



「どぉぉぉぉぉせぇぇぇぇい!」


気合と共に放たれた「人間砲弾」。


それを受けて、女子生徒を組み敷いていたオークジェネラルが吹っ飛ぶ。


「と、とりあえず!『速度は質量のナントカ』と言ってるのは嘘じゃなかった!」


ゼェゼェゼェと息をつく人物。


「さぁ、諦めろ!というかっ!とっとと諦めてくださいっ!」


男はくぐもった声で言う。


「ナ、ナンダ……オマエ」

オークジェネラルが言う。


オークジェネラルの巨体を「跳び蹴り」で吹っ飛ばした男。

女子生徒とモンスターの間に立ちはだかった「ソレ」。


「シュコーー、シュコーー」


ヘルメットにゴーグル。

酸素マスクを装備している。


格好はまさに「山岳救助隊」。



「俺か?あ……あ~、ヤベェ」


男は考え込む。


シュコー、シュコーと酸素マスクが音を立てる。


男は手を打った。


「ダ―……じゃなくてっ『仮面ランナー』!だっっっ!」


シャキーーーーーン


よくわからずに男が手を差し向けたが、それこそが「キメポーズ」となってしまった。



◇


「なんなんだよぉ!オメェはっ!」


さっきまで半泣きだった……あ、ちょっとチビってる【ソードダンサー】が叫ぶ。


「この変態野郎!さっさとアタシを助けろ――――――」


ウルセエなぁ。

どんだけ自意識過剰なんだよ。

こっちは「仕事」で来てるんだ。

オマエがどうなろうと知ったこっちゃない。

正直、ボコられればいい気味だ。


だから、いらなく「騒がれる」のだけは面倒くさい。


――――――バチバチバチバチ!


俺は、うるさい【ソードダンサー】のメスガキに「スタンガン」を押し当てた。


「ギャッ!」

奴は泡を吹いて白目を剥く。


うん、これで良し!

「要求救助者」に要らなく暴れられると救助困難だからな!



「さて、俺はコイツを連れて帰りたいんだが」


言いかけたところ、「オークジェネラル(豚頭将軍)」は棍棒を俺に向かって振り抜いた。


俺はそれを視界の端で捉えていた。

こんな遅いの、当たる方がどうかしてる。


俺はそれを軽々とかわした。


「うりゃ!」


俺の得物「十手」でオークの肘の部分を殴る。


「ギャっ!?」


オークは悲鳴を上げる。

とはいっても、決定打にはならない。


オークの目がみるみるうちに充血し、怒り心頭といった態になった。


(いいね、ちゃんと「ヘイト」集められて)


オークは咆哮を上げて「俺」へと向かってきた。

もう「女子生徒」のことなんか忘れている。


「ヘイヘイ、そんなんで捕まえられると思ってんの?」


俺はヒラヒラかわしながら、「弱連打」をビシビシ入れていく。


スキル【貫徹】のおかげで、奴の骨身にダメージが通っていく。

致命傷にならなくても「痛い」ものは「痛い」。


だから、このモンスターはウザったい俺を排除したがる。


俺は移動を始めた。


しめしめ、ちゃんとついて来てくれてるな。

こういう素直なところ、クソガキどもよりマシなんだよね。


俺はオークジェネラルの攻撃を避けながら「あるもの」を探した。


(お~、ありました。ありました)


視界の先、不自然なまでに「キレイ」な地面。

石とかあってもちゃんと見れば「何かある」ことぐらいはわかる。


俺は、壁面を利用してその上を飛び越す。


(あと、1メートル……30センチ……)


「キレイな地面」のだいたい「2メートル」付近をオークジェネラルが踏んだ。


地面から光が放たれる。


「はい。お帰りはこちらでございます」


俺は「オークジェネラル(豚頭将軍)」へ手を振った。


オークは光と共にどこかへ消え去った。


(うん。低階層あるある【転移トラップ】ですね)



俺は、モンスターを撃退(?)し、伸びているメスガキ【ソードダンサー】を担ぎ上げた。



◇



ああ、ダルい。


「要救助者」って、このジャリどもでいいんだよな。


俺はため息を吐く。


たかだか「オークジェネラル」ごときにビビッて逃げたクソザコ【剣聖】くん。

といか、パーティ組んだ女の子囮にして逃げるとか俺でも引くわ。


その【剣聖】くんを、俺は片足を掴んで引きずっている。


んで、もう一人が。


この、ガキのくせに発育のいい【ソードダンサー】。

つうか、破れてっけど元の「装備」自体、布面積少なめだっただろ。

だから、「豚」に乱暴されそうになるんだよ。


「校長」からの説明じゃ、周りの制止を聞かずに「推奨階層」より奥に進んだらしい。

途中、【転移トラップ】が発動した痕跡があった(持ち物が罠の前に落ちていた)から、あっさり罠に嵌ったわけだ。


だから、罠解除とか索敵とか教えてんだろうがっ!

脳みそトロけ過ぎなんだよ。


肩に担いだクソメスガキを忌々し気に見る。


今回は二人だし、雑魚もいいところの「ジェネラル」だから良かったけれどよ。


俺は、残りのステータスを確認する。


※※※※※※※※※※


個人名:葛城悟朗(カツラギ ゴロウ) 

年齢:32歳

レベル:62

クラス:■■■■


H P(体 力):11.020 / 12,000(A+)

H P(魔 力): 300 / 300(D) 

――――――――――――――――――――

STR(筋 力):50  (D) 

VIT(耐久力):9,999(S++)

AGI(俊 敏):6,999(A+)

DEX(器 用):95  (D)

INT(知 力):170 (C) 

――――――――――――――――――――

《スキル》


【貫徹】(パッシブ) 

敵の防御(物理・魔法)を25%無視してダメージを通す。発動100%

「ヘイト(敵意)」を自分に100%固定。


【パッキング】(パッシブ)

重量や質量を完全無視して「一人分(45㎏)」の「荷物」として格納。

効果範囲は100メートル。ただし、生物のみ対応可能。


※※※※※※※※※※



まあ、ここまで「走った」からな。

体力ちょっと使ったけれど。

ぜんっぜん「ヨユー」ですわ。


俺は肩に「米俵担ぎ」しているメスガキを見た。

うざってぇからとりあえず「黙らせた」。


次に、引きずっている雄ガキを一瞥する。

戻る途中で見つけた。

なんか、「オマエは誰だっ!」とかウルセェから「スタンガン」で黙らせた。


「誰だ!」とかよく聞けるよね。

というか、こっちこそ「なんだオマエ」って言いたい。


こっちは「仕事」!これで給料もらってんのっ!

特別な「感情」湧かないからっ!


まぁ、絶対言わないだろうけれど、「助けてください」とか言われれば少しは親切にしてやってもよかった。

けれど、コイツら可愛げなんか欠片もないからねぇ。


ああ、どんなに「エロい」発育していても、それは変わらないよ。

体つきなんてただの「特徴(識別要素)」ですわ。


そうはいっても「俺も人間」。

このクソザコガキにはムカついていた。


だから―――――


ゴリゴリゴリゴリゴリ……


「オスガキ剣聖」さまだけは片足だけ掴んで引っ張っていた。



ああ、諸君。

忘れてはいけない。

「ダンジョン内は自己責任」なんだよ。


たとえ、学校の「実習地」であろうが誓約書はかわされているんだ。


俺が頼まれて「助けた」のは、あくまでも生徒募集のための「体裁」を保つためだけ。

そうでもなければ、なんでこんな「お荷物」を。

情なんて湧くわきゃないだろ。


オマエらなに「勘違い」してるんだ?


自分が特別?ああ、そうっすか。

才能を育てる?ご自由にどうぞ。

守られる権利?お前が踏みにじっておいて?


都合のいい「夢見がちなメルヘン」たちだなぁ……


はやく「保健室」に投棄しよ。


◇



「サーセン、お願いします」


俺は、「保健室」にふたりを引きずり込んだ。


「あら?D組の【剣聖】と【ソードダンサー】?」


さして驚きもせず「パグ顔セクシー」、マチ子先生は言う。


「とりあえず、息はしてます。後は知らねぇっス」


俺はそう言ってふたりの「お荷物」をほっぽった。


俺が放り投げたふたりを「診て」マチ子先生は笑う。


「はいはい。じゃあ、お疲れさま」


そう言って手をひらひら振る。


――――ホント、顔以外は「イイ女」なんだけれど。



◇



一週間後。


俺はいつもの通り、「D組」の授業をする。


「あ~、とうことで……」


自分でも、授業をしていてこれで良いのかはわからない。

それでも、「知らないと死んでしまう」と思う知識は伝えようと努力する。


仲間を見捨てた【剣聖】は不登校になった。

あれだけ人をけなしておきながら、メンタル弱かったんだね。

ああ、「弱いナントカほど、良く吠えるって」ヤツか。


【ソードダンサー】はオークジェネラルに捕まったとき時、腕を骨折していた。

ちゃんと固定しておいたから、悪化はしてないだろうけれど。


とはいえ、自分の醜態が噂になっているから「不機嫌」だ。


慣れない左手で消しゴムを取ろうとして落してしまう。


俺は、黙ってそれを拾い、机に置いてやる。


「げ~、キモォい」

「捨てなよぉ」

「もう使えないとか泣いてもいいんだよ?」


周りのクソガキどもが囁く。


ウルセェなぁ、いちいちよ。

まあ、捨てたきゃ捨てろ。

オマエの私物がどうなろうと知ったこっちゃねぇ。


――――ふわっ



風が吹く。


そして、【ソードダンサー】は目を見開いた。


(え?この柔軟剤の匂いって……)


なぜか、【ソードダンサー】は俺のことをガン見していた。


オイオイオイ、マジで泣くんじゃねぇだろうな?




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