仮面ランナー ~元・Fランク冒険者の非モテアラサー高校教師の俺。裏ではお荷物どもの下校指導を爆速でしています~
40年前、この世界は「プラスチックとデジタルの時代」が唐突に終わった。
世界各地に「ダンジョン」なる「異界」が生じたからだ。
それまでの技術や世界に「魔法」なんていかがわしい「ファンタジー」が溶け込み始めた。
新たな経済、新たな知識―――――そして、新たな脅威。
新たな資源獲得をめぐって、「冒険者」なる「山師」が必要になった。
既存の「組織」では対応しきれなかったんだろう。
民間も参入して、一大産業にもなった。
そんなこんながあった結果、教育活動にまでその「ファンタジー」が取り込まれた。
「高等教育課程」に「冒険者専門課程」なんてふざけた「学科」をお偉いさんがブッ込んだんだ。
これが実施された当初はみんな及び腰。
けれど、環境やカリキュラムといった様々なものが整備されたら「人気の科目」となった。
もちろん、「一部の層」にだけ。
まっとうな奴は、ちゃんとお勉強して、いい勤め先に入る。
けれど、「まっとう」じゃない奴だっているのがこの世の常。
「夢見るファンタジー脳」、「どこで勘違いしたか自尊心の塊のヤツ」、「一山当てなければ、先がない奴」……
そして、「箸にも棒にもかからぬアホ」。
俺は、どっちかっていうと「箸にも棒にもかからぬアホ」だった。
大学まで行かせてもらったけれど、結局残ったのは「大卒」というステータスと「潰しの利かない資格」。
そして、「奨学金」という借金。
就職活動も上手くいかなくて、俺は結局「冒険者」になった。
大した才能もない俺だから、結局「Fランク」どまりの底辺冒険者。
いちおう「奨学金」だけは返すことはできた。
まあ、それだけ「危険な仕事」だったからな。
で、20代後半で考えた。
「このまま続けていても、結局早死にしちまうだろうな」って。
俺だって少しは人生を謳歌したい。
「年齢=彼女いない歴」というのも嫌だ。(実は、トータルすると、-2年分は稼いでいる)
そして、俺は今――――――
◇
ザワザワザワ―――――
喧騒が室内に満ちている。
寝ている者もいる。
カツカツカツカツ……
俺はボードにペンで「板書」をする。
ちゃんと前日までに「教材研究」をして、要点をまとめたものだ。
重要な「補足説明」と「試験出題範囲」だってペンの色を変える親切仕様。
後で「赤フィルム」とかでテスト勉強しやすいようにとの工夫だ。
文字でイメージできないものは「イラスト」だって下手なりに書いている。
「―――――はい。これが、低階層で想定される【トラップ】の種類です」
そう言いつつ、板書を終えた俺は生徒たちに向き直った。
そう、今、俺は「高校教師」をしている。
一応、大学で教職課程をとっていたので「教員免許」を持っていた。
「せんせぇ、文字多くてわかりづらいっス」
「目ぇ痛い」
「何言ってんのかわかんねぇ」
ふんぞり返った生徒たちは口々に文句を言う。
「てか、アンタの授業、マジわかんねぇし」
生徒の一人が言うと、周囲の生徒たちが声を上げて笑う。
――――ムリッ
苛立ちで俺の顔が引きつった。
「ダメだよぉ先生苛めたらぁ。ほらぁ泣きそうな顔してるでしょ~」
――――おうおう、これが「泣きそうな顔」に見えるのか。
おまえの視力はどうなっているんだ?
それとも認知が歪んでいるのか?
「だいたい、低階層の【トラップ】ってかかるバカいないっしょ?」
ふんぞり返って言うひとり、背の高い「見た目だけはイイ」雄ガキがのたまう。
「オレ、【剣聖】のクラスが鑑定で出たんだよね。将来を嘱望されるって『神クラス』なワケ。当然、そんなクズトラップ、ソッコーで物っ破でしょ?」
「あははは、言えてる!その赤字の解除法とかいらないってマジで。漢字も読めないし」
雄ガキに追従する形で、無駄に発育のいい、女子生徒が言う。
――――おい、全て「ひらがな」で書けというのか?
「AはBで解除できます。Cは危険です」という文の「解除」や「危険」が読めないのかっ!
「だいたいさぁ、『半径2メートル』ってどのくらい?実地で測れっての?というか、『半径』って何?」
「言えてるぅ~」
周りの生徒たちも笑い始めた。
そんくらい、テメェの身長や歩幅、得物で目測ぐらいつけろやっっ!
厳密に測量する暇あるワケねぇだろ!
「だいたい」でいいんだよ。それぐらい察しろよ。
効果範囲を多めに見積もって避けるのが「無難」なんだよっ!
(揚げ足取って喜ぶクソガキどもが……)
俺はイライラしながらも我慢して、笑顔をつくる。
「え~、念には念をと言いますし、将来有望な君たちが危険に晒されないための予備知識ですから」
「はぁ!?」
生徒たちは声を上げる。
「それって『問題発言』じゃないですかっ!」
は?どこが?
「要は俺たちがアンタの話聞かないと『死ぬかも』って脅しでしょ?」
オイ、何言ってんだ。
飛躍させんな。
「最低ッ!自分の指導力の無さを棚に上げて、恫喝で私たちを抑え込もうなんて」
いや、オマエ、さっき「漢字わかんねぇ」言ってなかった?
「棚に上げる」「恫喝」ってよく知ってるな。
途端に「パワハラ教師」「モラハラ教師」のコール。
「理事長……いや、教育委員会に言って居場所無くしてやるっ!」
奴らは騒ぎ立てた。
なんだ、この被害妄想。
因縁つけて騒ぎ立てるだけのバカ。
ああ、こうやって「俺の方が強い」アピール?
クソくらえだ。
歪んだ自己顕示欲の塊どもなんてな。
ねぇ、コイツらもう、「実習」でダンジョン地下に放り込んでイイっすか?
◇
今日もえらい目に遭った。
というか、俺の持ち時間(授業担当時間)さ、一日4時間あって、週に20時間だよね……
基本「ダンジョン地理学」と「モンスター生物学」だからあの「問題児クラス」と毎日顔を合わせるのかぁ―――――胃が痛い。
放課後の廊下を俺は歩く。
今は、「クラブ活動」の時間。
俺は「ある理由」からクラブの顧問を任されていない。
―――――ん?
渡り廊下の隅、茂みのところに「女性」の姿が見える。
あ~、新任の先生だ。
確か、「宇佐美」先生だっけ?
俺は、それとなく中庭に足を向けた。
◇
「あれ?宇佐美先生?」
俺はわざとらしく声をかけた。
驚いた様子で宇佐美先生は俺の顔を見た。
「あ……『ヅラ先生』?」
オイッ!俺は「ヅラ」じゃねぇ!「葛城」だ!
クソガキどもっ!新人にまで浸透させてるじゃないかっ!
「えっと、葛城ですが……」
「あ、すいません」そういって目元を拭う。
泣いてたのかぁ……
「ところで、どうしてこんなところに?確か宇佐美先生は『剣術』の―――」
俺が言いかけたところ、「うっ」と宇佐美先生は顔をしかめた。
参ったなぁ……
「こ、ここじゃあ、何ですからっ!『保健室』行きましょっ!」
俺は「保健室」へと誘った。
◇
「……で、なんでここで『職員会議』やってるんだ?」
保健室のデスクに座っている女性がこちらに背を向けつつ言う。
「こちとら、『保健日誌』書くので忙しいんだ」
白衣の女性。
後ろ姿だけでもわかる「ボンッ・キュッ・ボンッ」のセクシーな体つき。
タイトスカートを履き、「男子生徒」を惑わせる肢体。
「いやぁ、放課後のこの時間は、ここしか『話せる』場所ないじゃないですか」
俺はそう愛想笑いを浮かべる。
ケッ、貧乏くじ引いた。
興味もない「新人教師」の相談のるとかさ。
校内での「異性とふたりきり」というのは、原則禁じられている。
「努力義務」でも、俺はそれを守る。
要らぬ誤解を生まないためだ。
そう、俺の「危険回避」と「セキュリティ」は冒険者時代から定評はあったんだ。
「じつは――――」
宇佐美先生は、俺が買ってやった自販機の「ミルクティ」を手で玩びながら話し始めた。
簡単に言えばこうだ。
最近、鑑定で【剣聖】と【ソードダンサー】のクラスが出た生徒が言うことを聞いてくれないらしい。
彼女の顧問する「剣術」クラブ……実質、「冒険者の剣技」を基礎から叩き込む訓練をサボる。それどころか、他の生徒を自分たちの取り巻きにして実権を握っているらしい。
『悔しかったら俺らと勝負してくださいよ。勝ったら言うことを聞きますから』
そう衆前で啖呵を切ったらしい。
しかし、これはコイツらの「罠」だ。
教師陣営は「自衛」は許されても「体罰」はできない。
たとえ、「指導」や「試合」でも、「生徒を傷つけてはならない」。
極度な「体罰禁止」の弊害だ。
それを知っている「クソガキ」はそれを利用する。
「言いたい放題」「やりたい放題」だ。
自分たちのしたことに「適切な指導」を加えても逆恨みする。
同調圧力で他の生徒を巻き込み、口裏を合わせて「不適切な指導」と騒ぎ立てる。
必然的に、宇佐美先生は彼らに対して過度な攻撃はできないし、捌くだけで反撃は最小限。
もちろん、本来実戦で培った「急所攻撃」も「一撃必殺スキル」もできない「縛りプレイ」。
相手は好き放題できるけれど、こっちは枷を嵌められ状況。
確か、宇佐美先生は「元・Bランク冒険者」。
そして【剣豪】のクラス。
正直、なんの努力もしていない「クソガキ」相手だと、「竹刀」どころか「定規」で引っ叩いたら、加減していても大ケガだ。
「だから、私、断ったんです。『お互いにメリットないでしょ』って」
ぽろぽろと宇佐美先生は涙を流す。
そりゃ、悔しいだろう。
これまでどれだけの研鑽を積んできたんだ?
これまでどれだけの実績を積んできたんだ?
人には言えないことだってあったろうよ。
それを、「知ったふうな頭でっかち」のクソどもがイキリ散らかしてるんだから。
「そうした……らっ、『逃げた』って。弱いからっ、敵わないから逃げたって――――」
嗚咽しながら宇佐美先生は呟く。
「私、悔しい。言い返せない。口論自体相手の手の内だから。『できない』から。証明しろって言われても、実力行使は、『即罰せられる』ってわかっているからっ」
保健室の「マチ子」先生は席を立った。
「そうかい。辛かったねぇ」
そういって優しく宇佐美先生の背をさすった。
言っておく。
「マチ子先生」はナイスバディ。
声すらもセクシー。
けれど、彼女の顔は「パグ」にそっくりだ。
内面も「イイ女」感を出しているけれどもな!
だから、俺ら「教師陣」では、ここ保健室は「セーフティーゾーン」と呼ばれている。
どうやっても、「恋愛感情」とか「変な気」は起きない!絶対にだ!
◇
そんなこんながあった翌日。
「宇佐美先生」は気丈に今日も出勤した。
ほんと、「元・冒険者」だけあってタフなんだよな。
とはいえ、その気持ちがいつまで続くか。
「ダンジョン」にいるのとそう変わらんストレスまみれの「現場」。
俺も、時々「転職」を考える。
そして、ようやく今日も午後の授業が終わった……
ようやく今日も終わる――――――――
――――ピン、ポン、パン、ポン。
この呼び出し音は全国共通だろうか?
「葛城先生、葛城先生っ、校長室へとお越しください」
ああ―――――来てしまったか。
そういや、「問題児クラス」今日は実習だったものな。
このアナウンスを聞いて、周囲の生徒たちが笑い始める。
「ズラ先っ、キモぉ!」
「校長に呼ばれんのっ」
「今度こそクビでしょキャハハハ!」
「ざまぁ……」
ホントぉ、マジでウルセェなぁ。
ジャリどもが―――――――
◇
「葛城先生」
校長室に入ったら、即行で席を立った校長が出迎える。
禿散らかしているのに、横にだけ毛を伸ばしている。
プードルかどっか聖人……「フランシスコ」さんとかか?
「特任教員、葛城先生。『下校指導』をお願いします」
そう、校長は言った。
「今日の『実習』で『帰還困難生徒』が出ました」
そして、そっと「要救助者」の資料を俺に差し向ける。
◇
「わあああああああああ」
無駄に背が高く見た目の良い学生が悲鳴を上げる。
「ちょっ――――待って」
置き去りにされた生徒が声をかけるも、男子生徒は振り返りもせずに走る。
「え?――――いや、あり得ないっ!待ちなさいよっ」
女子生徒が言うが、それすらも「男子生徒」には届かなかった。
ズシン、ズシン、ズシン
重い足音を響かせて迫る「巨体」
フュシュァァァァァァア―――――
涎にまみれた、生臭い吐息。
「豚頭将軍」だ。
ダンジョン低層に現れる「中ボス」。
普通の冒険者ならば、苦も無く倒せる相手だが、「ろくに鍛錬もしないルーキー」が敵う相手ではない。
「まっ待って、お願い――――」
女子生徒が声を出そうとするも、「オークジェネラル」は眼前に迫っていた。
「ヒィッ!?」
悲鳴を上げる。
オークジェネラルが棍棒を振るった。
避けることもできずに女子生徒は殴り倒された。
倒れ、動けな彼女へとオークジェネラルは歩み寄った。
「は、放してっ!」
暴れるが、太い腕に捕まれ逃れられない。
装備品をはぎ取られる。
そして、衣服も一緒に――――――
◇
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!」
声がダンジョン内に木霊する。
しかし、だれも来ることはない。
オークジェネラルは目の前の「雌」を押さえつけ、邪魔な装備品を剥ぎとっていく。
女子生徒は好色な目を向けられ、怖れのあまり失禁した。
それすらも、オークたちを喜ばせた。
――――シュタン
――――シュタタン
軽快な音が聞こえる。
「どぉぉぉぉぉせぇぇぇぇい!」
気合と共に放たれた「人間砲弾」。
それを受けて、女子生徒を組み敷いていたオークジェネラルが吹っ飛ぶ。
「と、とりあえず!『速度は質量のナントカ』と言ってるのは嘘じゃなかった!」
ゼェゼェゼェと息をつく人物。
「さぁ、諦めろ!というかっ!とっとと諦めてくださいっ!」
男はくぐもった声で言う。
「ナ、ナンダ……オマエ」
オークジェネラルが言う。
オークジェネラルの巨体を「跳び蹴り」で吹っ飛ばした男。
女子生徒とモンスターの間に立ちはだかった「ソレ」。
「シュコーー、シュコーー」
ヘルメットにゴーグル。
酸素マスクを装備している。
格好はまさに「山岳救助隊」。
「俺か?あ……あ~、ヤベェ」
男は考え込む。
シュコー、シュコーと酸素マスクが音を立てる。
男は手を打った。
「ダ―……じゃなくてっ『仮面ランナー』!だっっっ!」
シャキーーーーーン
よくわからずに男が手を差し向けたが、それこそが「キメポーズ」となってしまった。
◇
「なんなんだよぉ!オメェはっ!」
さっきまで半泣きだった……あ、ちょっとチビってる【ソードダンサー】が叫ぶ。
「この変態野郎!さっさとアタシを助けろ――――――」
ウルセエなぁ。
どんだけ自意識過剰なんだよ。
こっちは「仕事」で来てるんだ。
オマエがどうなろうと知ったこっちゃない。
正直、ボコられればいい気味だ。
だから、いらなく「騒がれる」のだけは面倒くさい。
――――――バチバチバチバチ!
俺は、うるさい【ソードダンサー】のメスガキに「スタンガン」を押し当てた。
「ギャッ!」
奴は泡を吹いて白目を剥く。
うん、これで良し!
「要求救助者」に要らなく暴れられると救助困難だからな!
「さて、俺はコイツを連れて帰りたいんだが」
言いかけたところ、「オークジェネラル(豚頭将軍)」は棍棒を俺に向かって振り抜いた。
俺はそれを視界の端で捉えていた。
こんな遅いの、当たる方がどうかしてる。
俺はそれを軽々とかわした。
「うりゃ!」
俺の得物「十手」でオークの肘の部分を殴る。
「ギャっ!?」
オークは悲鳴を上げる。
とはいっても、決定打にはならない。
オークの目がみるみるうちに充血し、怒り心頭といった態になった。
(いいね、ちゃんと「ヘイト」集められて)
オークは咆哮を上げて「俺」へと向かってきた。
もう「女子生徒」のことなんか忘れている。
「ヘイヘイ、そんなんで捕まえられると思ってんの?」
俺はヒラヒラかわしながら、「弱連打」をビシビシ入れていく。
スキル【貫徹】のおかげで、奴の骨身にダメージが通っていく。
致命傷にならなくても「痛い」ものは「痛い」。
だから、このモンスターはウザったい俺を排除したがる。
俺は移動を始めた。
しめしめ、ちゃんとついて来てくれてるな。
こういう素直なところ、クソガキどもよりマシなんだよね。
俺はオークジェネラルの攻撃を避けながら「あるもの」を探した。
(お~、ありました。ありました)
視界の先、不自然なまでに「キレイ」な地面。
石とかあってもちゃんと見れば「何かある」ことぐらいはわかる。
俺は、壁面を利用してその上を飛び越す。
(あと、1メートル……30センチ……)
「キレイな地面」のだいたい「2メートル」付近をオークジェネラルが踏んだ。
地面から光が放たれる。
「はい。お帰りはこちらでございます」
俺は「オークジェネラル(豚頭将軍)」へ手を振った。
オークは光と共にどこかへ消え去った。
(うん。低階層あるある【転移トラップ】ですね)
俺は、モンスターを撃退(?)し、伸びているメスガキ【ソードダンサー】を担ぎ上げた。
◇
ああ、ダルい。
「要救助者」って、このジャリどもでいいんだよな。
俺はため息を吐く。
たかだか「オークジェネラル」ごときにビビッて逃げたクソザコ【剣聖】くん。
といか、パーティ組んだ女の子囮にして逃げるとか俺でも引くわ。
その【剣聖】くんを、俺は片足を掴んで引きずっている。
んで、もう一人が。
この、ガキのくせに発育のいい【ソードダンサー】。
つうか、破れてっけど元の「装備」自体、布面積少なめだっただろ。
だから、「豚」に乱暴されそうになるんだよ。
「校長」からの説明じゃ、周りの制止を聞かずに「推奨階層」より奥に進んだらしい。
途中、【転移トラップ】が発動した痕跡があった(持ち物が罠の前に落ちていた)から、あっさり罠に嵌ったわけだ。
だから、罠解除とか索敵とか教えてんだろうがっ!
脳みそトロけ過ぎなんだよ。
肩に担いだクソメスガキを忌々し気に見る。
今回は二人だし、雑魚もいいところの「ジェネラル」だから良かったけれどよ。
俺は、残りのステータスを確認する。
※※※※※※※※※※
個人名:葛城悟朗
年齢:32歳
レベル:62
クラス:■■■■
H P(体 力):11.020 / 12,000(A+)
H P(魔 力): 300 / 300(D)
――――――――――――――――――――
STR(筋 力):50 (D)
VIT(耐久力):9,999(S++)
AGI(俊 敏):6,999(A+)
DEX(器 用):95 (D)
INT(知 力):170 (C)
――――――――――――――――――――
《スキル》
【貫徹】(パッシブ)
敵の防御(物理・魔法)を25%無視してダメージを通す。発動100%
「ヘイト(敵意)」を自分に100%固定。
【パッキング】(パッシブ)
重量や質量を完全無視して「一人分(45㎏)」の「荷物」として格納。
効果範囲は100メートル。ただし、生物のみ対応可能。
※※※※※※※※※※
まあ、ここまで「走った」からな。
体力ちょっと使ったけれど。
ぜんっぜん「ヨユー」ですわ。
俺は肩に「米俵担ぎ」しているメスガキを見た。
うざってぇからとりあえず「黙らせた」。
次に、引きずっている雄ガキを一瞥する。
戻る途中で見つけた。
なんか、「オマエは誰だっ!」とかウルセェから「スタンガン」で黙らせた。
「誰だ!」とかよく聞けるよね。
というか、こっちこそ「なんだオマエ」って言いたい。
こっちは「仕事」!これで給料もらってんのっ!
特別な「感情」湧かないからっ!
まぁ、絶対言わないだろうけれど、「助けてください」とか言われれば少しは親切にしてやってもよかった。
けれど、コイツら可愛げなんか欠片もないからねぇ。
ああ、どんなに「エロい」発育していても、それは変わらないよ。
体つきなんてただの「特徴(識別要素)」ですわ。
そうはいっても「俺も人間」。
このクソザコガキにはムカついていた。
だから―――――
ゴリゴリゴリゴリゴリ……
「オスガキ剣聖」さまだけは片足だけ掴んで引っ張っていた。
ああ、諸君。
忘れてはいけない。
「ダンジョン内は自己責任」なんだよ。
たとえ、学校の「実習地」であろうが誓約書はかわされているんだ。
俺が頼まれて「助けた」のは、あくまでも生徒募集のための「体裁」を保つためだけ。
そうでもなければ、なんでこんな「お荷物」を。
情なんて湧くわきゃないだろ。
オマエらなに「勘違い」してるんだ?
自分が特別?ああ、そうっすか。
才能を育てる?ご自由にどうぞ。
守られる権利?お前が踏みにじっておいて?
都合のいい「夢見がちなメルヘン」たちだなぁ……
はやく「保健室」に投棄しよ。
◇
「サーセン、お願いします」
俺は、「保健室」にふたりを引きずり込んだ。
「あら?D組の【剣聖】と【ソードダンサー】?」
さして驚きもせず「パグ顔セクシー」、マチ子先生は言う。
「とりあえず、息はしてます。後は知らねぇっス」
俺はそう言ってふたりの「お荷物」をほっぽった。
俺が放り投げたふたりを「診て」マチ子先生は笑う。
「はいはい。じゃあ、お疲れさま」
そう言って手をひらひら振る。
――――ホント、顔以外は「イイ女」なんだけれど。
◇
一週間後。
俺はいつもの通り、「D組」の授業をする。
「あ~、とうことで……」
自分でも、授業をしていてこれで良いのかはわからない。
それでも、「知らないと死んでしまう」と思う知識は伝えようと努力する。
仲間を見捨てた【剣聖】は不登校になった。
あれだけ人をけなしておきながら、メンタル弱かったんだね。
ああ、「弱いナントカほど、良く吠えるって」ヤツか。
【ソードダンサー】はオークジェネラルに捕まったとき時、腕を骨折していた。
ちゃんと固定しておいたから、悪化はしてないだろうけれど。
とはいえ、自分の醜態が噂になっているから「不機嫌」だ。
慣れない左手で消しゴムを取ろうとして落してしまう。
俺は、黙ってそれを拾い、机に置いてやる。
「げ~、キモォい」
「捨てなよぉ」
「もう使えないとか泣いてもいいんだよ?」
周りのクソガキどもが囁く。
ウルセェなぁ、いちいちよ。
まあ、捨てたきゃ捨てろ。
オマエの私物がどうなろうと知ったこっちゃねぇ。
――――ふわっ
風が吹く。
そして、【ソードダンサー】は目を見開いた。
(え?この柔軟剤の匂いって……)
なぜか、【ソードダンサー】は俺のことをガン見していた。
オイオイオイ、マジで泣くんじゃねぇだろうな?




