結末が見える少女 〜連続爆破事件〜
私の名前は空谷晴子。
地方のカトリック系の女子高校に通う平凡な学生だ。今は高校三年生で大学受験も控えている。見た目はおかっぱ、丸メガネ、制服も校則通りの着方、目立つことはしない。静かに暮らしたい。
少し前に不可解な事件に巻き込まれるまでは静かに暮らしたいと本当に願っていた。
だが、それは今後叶うことはなさそうだ
「なんですか? こんなところに呼び出して。私、一応受験生なので勉強が忙しいのですけど……」
この前の事件で知り合ったキリコという刑事にあるマンションの一室に呼ばれた。ここは住んでるわけではないが、秘密捜査のための拠点にしている場所と説明を受けている。それと、刑事といっても文字通りの普通の刑事ではないため形式上そう呼んでいる。
黒上のストレートロングな髪、キリッとした目つきに整ったスタイル。仕事ができる女性はこんな見た目なのだろう、というのを体現している。
「まぁ、そう怒らないでくれ。君の成績なら学校繋がりで推薦も取れるだろう。大学卒業後にうちに就職してるならうちの力で望む大学に推薦してあげよう。あ、でも最高学府とかは無理だから、ある程度、晴子くんの実力に見合った大学という条件は付くけどね」
「誰もそんな凄い大学に行きたいなんて思ってません! それで今日は何ですか? 最近の爆発事件ですか?」
「察しがよくて助かるよ。その通り、その事件の犯人を探したい。だが、この前の事件のように狭い範囲で起きた事件ではないから能力者の反応があっても、それが即犯人とは限らないのが厄介でね。被害者に晴子くんにも会ってもらいたいのだよ」
私の住んでる地方都市で三件の爆発事件が起きた。被害者は三人とも重症だが一命は取り留めている。ここまではニュースでも報道されていたから知っていた。気を付けてください、と報道で言っていたが無差別爆弾事件を気を付けるのは不可能だろうと思いながらニュースを見ていたのは覚えている。
一人は両手首を失い、一人は右手首と左目を失い顔にも酷い傷を負った。もう一人は顎から下を失った。
「聞くだけで痛々しいですね……でも、三人とも共通の知り合いとかじゃないんですよね? それに私も力って今生きている人には効果が薄いと思うんですよ。最後に見た景色、正確には最後に見た強烈な意識が見えるだけなので、生きてる人の景色を見ても今回だと爆発した場面とか、もしかすると今の病室の風景とかが見えて意味ないんじゃないかなぁ……ということで帰ってもいいですか?」
「そうだな、それなら仕方ない……おっと、ちょっと待ってくれ、電話だ」
キリコにかかってきた電話。キリコが応答している。嫌な予感しかない。
「ちょうど四件目の爆発事件が起きた。被害者はその場で死亡。一緒に現場に来てくれ」
「私、か弱い女子高生なので爆発死体とか見たら耐えられなくて吐いちゃいますよ」
と言ったが、多分吐くことはない。一応、ポーズだけ取っておく。
「晴子くんはそんなことはないだろう。着いてきたまえ」
「そういえばキリコさんの相棒のチャコさんって方はどこに行ったのですか? サボり?」
私がそう聞くとキリコは自身の影を指した。チャコは影に隠れる力がある。キリコの影の中に隠れていたのだ。
「あぁ、そういうこと」
「多分、サボりは当たっている。影の中で寝てると思う」
私が納得しかけたところにキリコはそんなことを言った。キリコはともかくチャコはよく分からないところがある。
現場に到着するとキリコが人払いをして私を中に通した。
そこにあったのは上半身が吹き飛んだ男の死体だった。
「よろしく頼む、晴子くん」
キリコはそう言うが前回と違って見ず知らずの男の死体、ましてや身体が吹き飛んだ死体を触るのは抵抗がある。
「バイト代、弾むから」
キリコにそう言われたが本来はバイト代云々の話ではない。でも、そんなこと言っても帰れるわけでもなさそうなので諦めた。
「ええい、ままよ」
私はそう言って死体に触れた。
「キリコさん、見えました」
「何が見えた?」
「服を着るところ。でも、その服が万引きしたものだったみたい……場所は……」
私はそう言って市内の大型ショッピングモールを伝えた。
「万引きした商品が爆発した、その可能性もあるな。先の被害者三人にも事情を聞くようにしよう」
キリコはそう言ってスマホを取り出して指示を出した。
私たちは現場を後にして四人目の被害者が万引きした大型ショッピングモールへ向かった。
移動中の車にキリコへ被害者たちの調査結果が届く。
三人ともショッピングモール内で万引きをしていたことが分かった。
両手を失った被害者は漫画。
右手と左目を失った被害者は化粧品。
顎を失った被害者はお菓子。
万引き犯に罰が当たった形だ。
それにしては重過ぎる。
「万引きした品を爆弾に変えたってことですか?」
「恐らくそうなのだろうが、ショッピングモールの品を全て変えていたら厄介な相手だな」
ショッピングモールに到着したキリコはすぐに能力者の反応を見つけたようだ。私にはできないが彼女は能力者を探知できるらしい。
犯人は食料品売り場の責任者のようだ。
キリコは早速警察手帳を見せて、その人を事務所へ呼んでもらった。
「警察の方が僕に何の用です? 忙しいので手短にお願いしますよ」
「万引きの件だ。心当たりがあるだろう?」
「万引きなんてしょっちゅうですからね。警察の方でももっと万引き犯に厳しく当たってくださいよ。それとも僕が何か万引きしたとでも? 僕は万引き犯が憎いので万引きなんて絶対やりませんけど」
「そこだ、万引き犯を憎む気持ちが強過ぎるのだ、お前は。悪いことをした人間に私刑をすることは許されない」
「はぁ……まぁ、それはとぼけても無駄ってことですね。警察どころか国が万引き犯に甘いからこうでもするしかなかったんですよ」
「お前の能力は危な過ぎる。警察でも特殊なところで取調べを行う。おとなしく従え」
「こんな中年親父に抵抗する力があると思いますか? 従いますよ。その前に荷物を取ってきてもいいですか?」
「ダメだ。あとで他の者に取りにこさせる」
「はぁ……じゃあ、せめて水を一杯だけでも飲ませてください」
犯人の男は部屋に入る時に持ってきた未開封のペットボトルを手に取った。
「本当は僕の能力、分かってなかったんじゃないですか? 僕はこの世界に未練とかないんでここまでです。爆破の起動や解除の条件分からないですよね?」
男はペットボトルの蓋を開ける。
「永遠に怯えていてください」
男が水を飲む。
「危ない!」
その瞬間、チャコがキリコの影から飛び出して私とキリコを庇ってくれた。
男は爆発した。肉片が飛び散る。チャコは男の血と肉でぐちゃぐちゃだ。
「私は影に隠れて着替えとかできるけど、二人はそうもいかないですからね」
金髪ツインテールのチャコはそんなことを言いながら笑ってキリコの影に帰っていった。
「恐らくこのショッピングモールの商品全体に呪いを掛けたのだろう。会計をしていないものを使う、食べる、飲むなどをした場合、それは爆発する。この男が飲んだペットボトルも会計をしていないものをバックヤードからでも持ってきて自殺の手段にしたのだ」
とんでもないサイコ野郎だ。どれだけ万引きに憎しみを持っていたのだろう。
「それにしても今回は私は役に立たなかったな」
キリコはそう言う。
「でも、キリコさんの能力を奪う能力で何とかならないのですか?」
「人以外には私の力は効かない。呪いを解除する専門家にでも頼めばいけるかもしれないが対象が広過ぎる。どうしようもない」
「犯人は私の部署で何とか対処するが、爆弾の危険が去った報道はしないようにする。せいぜいこの男が言ったように万引きに対する啓発活動に力を入れてこのショッピングモールで万引きする人間を減らす努力をするよ」
キリコはそんなことを言っていた。
諦めにも見えるが、万引きをする人間が悪いと咎めているようにも見える。
「そうですね。私にもできることは無さそうですし、それに私は万引きなんてしませんから」
「高校生には相応しくないくらいのバイト代を出しているからな。悪い道には進まないようにしてくれたまえ」
「貰いすぎて銀行にも入れれませんし、どうしたらいいか分からなくて前回のものも家の机の引き出しに隠してありますよ。どうしたらいいんですか、あれ!?」
「今回の分も含めて自分で管理できる口座ができるまで大切に取っておきたまえ。また仕事を依頼するから、それも追加だな」
キリコはそんなことを言ったが、もう二度と関わりたくない。無理だろうけど。
それと最後に善良な市民には関係ない話だが、残念ながらこの街の連続爆発事件はしばらくの間、続くことになった。




