断罪イベント365ー第29回 観衆が全員、元・婚・約・者
断罪イベントで365編の短編が書けるか、実験中。
婚約破棄・ざまぁの王道テンプレから始まり、
断罪の先にどこまで広げられるか挑戦しています。
― 王子、断罪より過去と向き合わされる ―
その日、王都広場の断罪イベントは、
いつも通り華々しく準備されていた。
壇上には王子。
その手には断罪帳、
そして例の魔道具プロジェクター(再調整済)。
そして今日の対象は、侯爵家の令嬢レティシア。
断罪すべき罪状も、証人も、完璧に揃っている――はずだった。
だが、王子が観衆に目をやった瞬間、何かがおかしいと気づいた。
「……え?」
◆違和感1:服装が似ている
観衆の女性たちの服装が、どれもどこかで見たようなドレス。
**そうだ。かつて、自分が選んだ婚約者たちが着ていた色だ。**
全員揃うと、グラデーションが効いていて壮観だな。
◆違和感2:視線が痛い
誰も応援していない。
旗も、拍手も、断罪コールも、ない。
代わりに、妙に統一された、\*\*“あきれ顔”\*\*がずらり。
「……待って……あれ……全部、俺の……」
◆執事の囁き
「本日の観衆、すべて“殿下の過去の婚約者
または破談対象者”でございます」
「えっ……」
「先日、当王子殿下が『令嬢は星の数ほどいる』
と発言された記録が拡散しまして、
皆さまが“その星になりに”お越しくださいました」
「やばい!やばいやばい!!やばみしかない!!!」
◆観衆の中の声(コソコソ会話)
「私は、“冷たい態度”で破棄されましたわ」
「私は“姉の方が合う気がして”って……意味不明ですよね」
「私なんて、婚約書に名前書き間違えられたんですのよ?」
「えっ、それ完全に別人……」
「今日の断罪、誰がされるか知らないけど、
**王子が一番裁かれる気がする**わね」
「黙って見届けましょう。断罪“劇”じゃないわ、“回想”よ」
◆王子の動揺
「く、くそ……なんだこの空気は……っ」
「だ、断罪イベントを始める……!」
プロジェクターを起動しようとする王子の手が震える。
映る映像が、間違っていないか、恐ろしくて見れない。
◆令嬢(今回の断罪対象)がひとこと
「……王子さま、よろしければ先に
そちらをお片付けになってからでも」
「え?」
「ご自分の過去から、ですわ」
◆最終的に…
この日の断罪イベントは、
王子の「過去の人々からの無言の圧」を一身に受け、
**断罪“される側”の空気**のまま終了した。
観衆は何も言わず、ただ、目で裁いた。
王子は壇上でしばらく立ち尽くし――
「俺、なにしてきたんだろうな……」
呟いたその声だけが、記録に残ったという。
今回は、「空間そのものがざまぁ」
という回。
読んで頂き、ありがとうございますm(_ _)m




