表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女転生〜A spiral of sin〜  作者: nashlica
序章 魔女転生〜return of the witch〜
9/10

そんな寂しい生き方をしないで

 魔術院の調査隊が到着し、私は『仮面の魔女(ジャンヌ)』と共に、廃れた駐車場から去っていった。無論、ラスティアから距離を置くためである。

 彼女にとって、今の私は今後のためにも距離を置くべきと、私自身がそう判断したからだ。

 内心、私はこれでいいとも思っている。それが彼女の、今ある幸せに支障がないのなら、義理の姉としてこうするべきだと。


「これでよかったの?」

「あぁ、今の私に、彼女の側にいる権利はない。彼女が今ある幸せを守れれば、私は側にいるべきではないんだ」

「そう。では、私の工房へ行きましょうか。あの方から継承するものはまだあるわ」

「そうだな。『仮面の魔女(ジャンヌ)』、案内を頼む」


仮面の魔女(ジャンヌ)』は亜空間を展開し、私をあの駐車場まで来た時と同様、案内をする。亜空間に入ろうとした時、後ろから誰かが来るのを感じる。

 その人影はなんと、ラスティアだった。どうやら、私のことを探していたみたいだ。


「待って! 義姉さん、どこへ行くの?」

「どこって? 君には関係ない。私はもう、君とも会うこともないだろう」

「なんで? 義姉さんはなんで、そんなことを考えるの?」


 彼女の問いに、私はしばし沈黙する。もう私は、ただの人間じゃないことを伝えるべきかどうかを言うべきか、自問自答をする。


「なんでって? もう私は人じゃないからだ。ここにいるのは、君の義理の姉の皮を被った、ただの化け物だ。君の知る義姉さんはもう、この世にはいないんだ。だから君とは距離を置かせてもらう。だたそれだけだ」

「どうして? どうして、義姉さんはそう考えるの? 私は義姉さんとまだ一緒にいたいのに?」

「君がどう言おうと、私の考えは変わらない。もう済んだ? なら、私はお暇させてもらうよ」


 私は彼女との別れを言い、その場を離れる。すると、彼女が私の後ろに抱きつきて来た。それと同時に彼女が泣いているのか、涙のような水滴を感じる。


「どうして……? どうして、そんなことを言うの? どんな事実であっても、義姉さんは義姉さんだよ?」

「……今更なにを言っても、もう私は人じゃない。君の幸せに、私は不要なんだ」

「違う!? なにがどうあろうと、()さんは()さんだよ!! だから、そんな寂しい生き方をしないで!! 私が姉さんを支えるから!! たとえ姉さんが『魔女』になっても、私が側にいるから!! それが私にとっての幸せだから……!」


 号泣しながら話す彼女の言葉に、私は黙り込む。私が想像していた以上に、ラスティアは私のことを見ていたのだ。婚約者であるロイ以上に、私が彼女にとっての大切なのだ。

 私は抱きついている彼女の手をどき、彼女の頬を撫でる。多量の涙を流しながら、ラスティアは私と目を合わせる。


「ごめん。君をこんなに泣かせるとは。私は、どうしようもない姉だな」

「姉さん?」

「帰ろう。私たちの家に」

「え?」

「帰るんだよ。私たちの家に。それと、髪を切ってほしい。この長さでは、鬱陶しいしね」


 ラスティアは、私の言葉で笑顔になる。


「うん! 帰ろう。私たちの家に!」


 ラスティアに導かれるように、私は帰路につく。すると、後ろから『仮面の魔女(ジャンヌ)』が現れる。


「なんだ、まだ人間らしさは残っていたのね」

「そうみたいだ。どうも、彼女を見捨てられなかったらしい」

「そう。なら、私は失礼するわ。アル、その思いが、あなたをまだ『人』として保てていることを覚えておきなさい。私にはもうない感情だけど、まだあなたなら、その感情はあるはずよ。あなたにとっての家族がいるなら、ね」

「あぁ、大切にさせてもらうよ」


 そう言い、『仮面の魔女(ジャンヌ)』はその場から去る。私は、ラスティアの声が聞こえた方に向かうのだった。


 ――――――――――――――――

 

 数時間後――――――――


 灯りがついていながらも、静寂な部屋にハサミで何かを切るような音が響く。それと同時に、何かが落ちる感覚も感じる。


「どう? まだ切ったほうがいい?」

「もう少し短くして。後ろ髪はちょうどいいから、前髪をもう少し」


 私がラスティアにそういうと、ラスティアは私の前髪は調整しながら切る。そして、前髪を切り終えると、手鏡を後ろに出しながら、私の髪を見せる。


「どうかな?」

「うん。悪くない。さっきよりは、髪を鬱陶しく感じなくなったよ」

「本当? よかった」


 魔力の活性化の影響により、非常に伸びた髪をラスティアによって、散髪してもらった。先ほどよりも、短くなったが、それでも平均的な長髪となった。


「でも、切った時の感じは凄かったよ。上質な絹を切っていたみたいな感じだった」

「そこまで私の髪質はよかったのか?」

「うん。こんなに綺麗な銀色の髪なんて、滅多に見ないもの」


 自分の髪と顔を見て、初めて実感する。まるで、自分でも驚くほどに人形みたいな容姿だったことに、自分で驚く。その姿は、自分でも納得いくような姿だった。

 ラスティアは床に落ちた髪をまとめ、袋に入れる。そして、私のベッドに倒れる。


「もう姉さんは、私の知る姉さんではないんだね?」

「あぁ。君が知っている姉さんはもういない。それでも、君は私を姉さんと呼ぶのか?」

「当然だよ。誰が何言おうと、姉さんは姉さんだよ。たとえ、『魔女』になったって、姉さんなのは変わらないんだから」


 彼女の言葉に、私は驚く。ラスティアは、自分がどの立場に居ようと、私についていく気でいるみたいだ。


「変わらないっか。でも、君には婚約者がいるだろう? 彼はどうするんだ?」

「ロイはいいの。お母様が、『元老院』と勝手に交わされた約束なの。如月家と『元老院』との密約で、結ばれた私たちは本当に愛し合えない。ロイが本気でも、私はそうじゃないの。それなら私は、姉さんの従者でいたい。その『魔女』と言うものがどんなものでも、私は姉さんの側にいたいの」

「そうか。でもいいのかい? 私が行こうとしている道は、『元老院』と対立してもおかしくない道だ。君の母親がどうなっても、生きられている保証はない。私が進もうとしている道は、そう言う道なんだ」


 私の重い言葉に、彼女は動揺をしていない。どうやら、ラスティアはとっくに答えを決めているみたいだ。


「それでもいい。姉さんが孤独(ひとり)になるくらいなら、私は姉さんについていく。さっきも言ったよね? そんな寂しい生き方をしないでって。私が姉さんの側で、姉さんの居場所を作る。そのためだったら、私は勝手に結ばれた婚約だって無かったことにする」


 彼女の目は、迷いの無い目をしていた。私がもう人間では無いことを受け入れ、ついていくと決めていたのだ。私はそれに根負けし、彼女がついていくことを承諾する。


「好きにするといい。ただし、君自身が力をつけことが前提条件だ。私はそこまで、面倒を見られないからね」

「いいの?」

「あぁ、もう何言っても意味がないからね。それに、君が側にいるならなんだか安心する」

「姉さん……」


 ラスティアは、安心したような表情を浮かべる。すると、安心したのか、疲労から寝てしまったようだ。

 私は、彼女に毛布をかけ、ベランダに出る。椅子に座ると、亜空間から誰かが現れた。


「終わったの?」

「あぁ、彼女ならもう寝ているよ」


 亜空間から、『仮面の魔女(ジャンヌ)』が現れる。彼女は私とラスティアが話し終わるのを待っていたようだ。

 

「そう。なら、話ができるわね。彼女がいると、今後の話ができないですもの」

「話って、なんだ?」

「三日だけ時間を頂戴。それで、あなたの力を今の限りで解き放つわ。その後は、『真のグリモワル真書』を集め、地道に覚醒するしかないわ」

「わかった。なら明日にでも頼む。どうも、しばらくはここも慌ただしくなりそうだ」


 私がそう言うと、『仮面の魔女(ジャンヌ)』は亜空間に入り去っていく。それを見届けた私は、ベランダから月を見る。

 そして、私は眠れない睡魔の影響か、月が暮れるまでベランダに居るのであった。

次回は早ければ1週間後位になります。


もしよければ、ブックマークやいいね、評価の程よろしくお願いします!

レビューや感想も是非!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ