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魔女転生〜A spiral of sin〜  作者: nashlica
序章 魔女転生〜return of the witch〜
8/10

キサラギ・アルトア

ようやく、主人公の名前がわかりましたね。

 数時間前――――


 遠のいていた意識が目覚め、誰かの呼び声によって目を覚ます。ラスティアは、何者かの手によって、どこかの駐車場に連れ込まれたようだ。

 それも、婚約者であるロイと共に。


「ティア! 無事か!?」

「ロイ!? ここは、どこなの?」

「わからない。どうやら、誘拐されたみたいだ」

「誘拐!? でも、私たち、レストランから帰ってた最中だったよね?」

「あぁ、その時に、さらわれたみたいだ。くそ! 俺にもっと力があれば、こんなことには」


 ロイは、ラスティア共々何者かにさらわれたことに、自身を卑下にする。父親に助けを呼ぼうにも、手が拘束されており、連絡することすらできない状態だ。そうしていると、遠くから誰かが現れる。


「よう。起きたか?」

「お、お前は、ルーカス!?」

「おいおい、学院のよしみだろう? そう警戒すんなよ」

「だ、誰がお前なんかと!!」


 不良の学院生、ルーカスが駐車場の奥から現れた。どうやら、彼がラスティア達を誘拐したらしい。ロイは、彼を見て臨戦体制を取る。


「一体、何でこんなことを!?」

「そりゃ、決まってんだろ? お前がただ単に気にいらねぇんだよ? お前が如月のお嬢さんとつるんでいることがな!?」


 ルーカスは、勢い良くロイの腹を蹴る。すると、腹に一撃が入り、ロイの口から、多量の唾液が吐き出される。


「ガハッ!!」

「ロイ!! やめて!! 彼はまだ何もしてないの!?」

「そう言うなよ。こいつがくたばったら、遊んでやるかなよ」


 ルーカスは仲間達と共に、ロイをリンチする。激しい暴行により、ロイの体は打撲などの殴られた跡が浮かび上がったくる。


「ひ、卑怯だぞ!! 魔術師なら、魔術を使え!!」

「ほう? まだ余裕そうだな。なら、望み通り魔術を使ってやるよ!」


 重傷を負い、それでも立ち上がるロイ。しかし、ルーカスの放つ魔術によって、さらに体に負荷を負う。


「うあああああああああ!!」

「ロイ!! もうやめて!! これ以上やったら、ロイが死んでしまう!!」

「はぁ! お望み通り、魔術を使ってやったぜ? どうだ? 自分が使ってきた魔術で、苦しむ感じは?」

「ふぜけるな……! この程度で、倒れるわけには……」


 あれだけの攻撃を受けても尚、ロイは倒れようとはしない。大事にしているラスティアの前で、倒れるわけにはいかないのだ。自分が倒れたら、ラスティアがルーカス達に陵辱される。そうさせないためにも、ロイは気力を保ちながら、立ち続けている。

 だが、あれだけの攻撃を受けては、ロイの体は瀕死に近い状態だ。次に魔術を受ければ、今度こそ体が持たない。しかし、それを見逃すほど、ルーカスは優しくないのだ。


「あぁもううざって!! 今度こそ死にやがれ!!」


 ルーカスの渾身の魔術によって、ロイは甚大なダメージを負う。そして、ロイは意識が朦朧としている状態となった。


「は、大口叩いてた割りには、中々タフだったな」

「そ、そんな……。ロイ! ロイ!!」

「さぁ、次はお前だ。どれどれ、中々いい体じゃねぇか」

「やめて! 触らないで!!」


 ルーカスは、乱暴にラスティアの体を触る。そして、彼女が着ていた上着を乱暴に脱がす。


「安心しろ。お前を傷つけるわけじゃない。あいつの目の前で、お前の純潔を奪うだけだ」

「やめて! 来ないで!!」


 ルーカスは、ラスティアの胸を乱暴に触る。彼女の瞳には、自然と涙が溢れていた。


(助けて……。お父様、お母様……。義姉さん……)


 ルーカスがラスティアを陵辱し始める。その時だった。爆発音と共に、部下が、吹き飛んできた。


「な、なんだ!?」


 爆風の中には、銀色の髪を間引かせた、一人の魔術師が現れた。そして、髪の奥から輝き出す真紅の目で、ルーカスを睨むと、ロイの元に駆け寄る。


「よくやったよ。こうなるまでに、よく耐えた。後は私に任せてくれ」

「あ、あなたは……。なぜ、ここに……?」

「話は後だ。まずは」


 彼女は、ラスティアの元に寄る。そして、倒れているラスティアに抱きついた。


「ごめんよ、遅れてしまった。だからもう、大丈夫だ」

「義姉さん、どうしてここに?」

「話は後だ。悪いが少し、眠ってくれ」


 彼女は、ラスティアのうなじに噛み付く。すると、ラスティアは、自分の血が吸われている感覚を感じる。


「義姉さん……なに……を?」

「許してくれとは言わない。でも、少しの間、眠ってくれ」


 ラスティアは、血を吸われた衝動により、意識が朦朧としていく。そして、うっすらと義姉の髪が伸びるのを見ながら、ラスティアは眠るのだった。


 ――――――――――――――――――


  アルトア視点――――――


「着いたわ。ここに、あなたの義妹が囚われているわ」


『仮面の魔女』の案内で、亜空間からラスティアが囚われている廃れた駐車場に着く。ロンドンでの公共で使う駐車場として利用されてきたが、知らず知らずと使われなくなり、今じゃもう誰も使っていないみたいだ。どうやら、犯人はラスティアと婚約者のロイを誘拐し、ここで身柄を拘束しているらしい。それに、私にはラスティアが必要なので、助ける他にないのだ。


「意外と大きいな」

「多目的に使われることを想定して作られたんでしょうね。でも、今じゃ誰も使われていないそうよ?」

「無駄な金だったってわけか。では、行くとしようか。『仮面の魔女』。バックアップを頼んだ」


 私の声に、『仮面の魔女』は立ち止まる。


「『ジャンヌ』って呼んでいいわ。あなただったら、呼んで構わないわ」

「わかった。『仮面の魔女(ジャンヌ)』、バックアップを頼む」

「ごめんなさい。あなたと並んでは戦えないわ。その代わり、ここから念話(テレパシー)で状況を伝えるわ」

「あぁ、では、始めるとしよう」

「えぇ、初陣、しかと見届けてあげる。存分に暴れなさい。アル」


 私は、駐車場に入っていく。駐車場に入ると、不良の学院生が、私の前に立ちはだかる。


「あぁ? なんのようだ?」


 睨みつけてきた不良に、私は魔術を使う。すると、握っていたガラス瓶が、コルクに火がついたことで、爆発をする。


「ゲホ、ゲホ。テメェ! なにしやがる!!」

「いいのか? 私に喧嘩を売ると言うことは、お前、死ぬことになるぞ?」

「はぁ? そんな口を叩くなんざ、生意気なんだよ!!」


 不良の学院生が、魔術を唱える。だが、私は無詠唱で、火球を学院生に向けて飛ばす。


「ゴフッ!! な、なんだよそれ!? 詠唱を唱えずに、このスピードかよ!?」

「教えろ。お前達の親玉はどこだ? 死にたくなければ、さっさと教えることだな?」

「ル、ルーカスさんは、この駐車場の上にいる。た、頼むから、命だけは取らないでくれ」

「なるほどな。では、お前達は用済みということだ」


 私の言葉に、彼らは死を覚悟する。だが、私はあえてそうせず、先に進む。

 駐車場を登って行き、とうとう目的の屋上に辿り着く。すると、誰かが私の脳裏に話しかけてきた。


『アル。聞こえる?』

「『仮面の魔女(ジャンヌ)』か? 外はどうだ?」

義妹(いもうと)君を探していた連中が、こっちに来たわ。やるなら、即急に片をつけた方が良さそうね』

「なるほど。なら、早めにしたほうがいいな」

『えぇ。気をつけて、情報によれば、不良グループのリーダー格は、親が『元老院』と関係があるそうよ。後から気をつけた方が良さそうね』

「用心するさ。では、行こうか」


 左腕に、魔力を集中させる。すると、火球が徐々に大きくなり、そしてそれを放つ。爆風と共に、門が粉々になると、そこにはラスティアが、哀れもない姿でその場にいた。


「よくやったよ。こうなるまでに、よく耐えた。後は私に任せてくれ」

「あ、あなたは……。なぜ、ここに……?」

「話は後だ。まずは」


 ボロボロになったロイが、私に問いかける。だが、私は彼に目もくれず、ラスティアの方に駆け寄った。


「ごめんよ、遅れてしまった。だからもう、大丈夫だ」

「義姉さん、どうしてここに?」

「話は後だ。悪いが少し、眠ってくれ」


 私は、ラスティアのうなじを噛み、彼女の血を吸う。そして、血を吸われた感覚により、ラスティアは眠りについた。

 ラスティアの血を吸ったその時、私の体に奇妙な感覚が流れる。今まで封じ込まれていた魔力が、解放される感覚と、奴から受け継いだ記憶がフラッシュバックされてきている。

 それと同時に、私の髪が一気に伸び、魔力も飛躍的に上昇してくる。


「なんだ、この感じは? あぁ、もうこれでは人間じゃないな」

「な、なんだこの感じは、魔力が、この女に来ているのか?」

「そうだったな。()が世話になったのだったな。なら、存分に礼をしないとな」


 右手に魔力を込める。すると、黒い小杖(タクト)のようなものが、右手に召喚された。


「テメェも、あいつみたいにしてやるよ!!」


 不良グループのリーダーは、私に向かって殴りかかる。だが、単純な身体強化の魔術だけでは、私に当たりはしない。


「なんだ? その動きは? 単純な身体強化の魔術では、私に一発も当たらんぞ?」

「くそ!! なら、こいつはどうだ!?」


 彼は再び、魔術を唱える。すると、憔悴しきっていたロイが、私に忠告する。


「気をつけろ! ルーカスの魔術は、強力だ! 無闇に当たると、一溜まりもない!!」

「一溜まりもないっか。さて、どんなものか楽しみだ」


 ルーカスの魔術は詠唱を終え、その魔術を私に向けて放つ。彼の渾身の魔術は私に直撃し、周りからは私が死んだと推測された。


「み、みやがら!! 俺に逆らおうとしたのが、お前の運の尽きだ!! さて、次はお前を殺して――――――」

「なんだ、その程度か?」

「な、何故だ!! 俺が誇る、渾身の魔術だぞ!? なのに、何故!?」

「その程度では、私の魔術の前では意味を持たさない。お前の魔術は、『変換』させてもらったからな」

「へ、変換? なんだよそれは、はったりか?」


 ルーカスは同様もしつつ、私の魔術を見る。左腕の刻印を見て、ルーカスは唖然とした。


「本来、『無色(ロストカラー)』は『白』と『黒』でその性質を対比される。『白』は『原色(フロントカラー)』の効力を打ち消し、『黒』は『原色(フロントカラー)』を蝕む。それもあってか、元来、『無色(ロストカラー)』を扱う魔術師は、それによって迫害されてきた。だが、私の持つ『無色(ロストカラー)』は違う。それは『変換』と『捕食』だ。『白』は魔術を書き換え、『黒』は魔力ごと喰らう。要は、お前程度の魔術師じゃ、私は倒せないというわけだ。自分の魔術は全て、書き換えられるか食われるか。どうだ? 今の自分が、なにもできない状態は?」

「く、くそ!! そんなのハッタリだ!! 俺はお爺様達に許されたエリートなんだ!! お前のような、魔術も使えないやつに、言われる筋合いはねぇ!!」

「そうだな。私は魔術を使え()()()()。それも昔の話だ。今の私は、魔術を使()()()。このようにな」


 私は、ルーカスが使っていた魔術をそのまま行使すると。すると、彼の魔術はそっくりそのまま自分に向けて放たれる。


「返すぞ」っと、一言と共に、魔術を放つ。ルーカスが渾身に唱えた魔術は、私の火球として、自分に返ってきた。


「あ、あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」


 爆発と共に、ルーカスの体は焼け焦げる。だが、多少は加減をしたため、命に別状はなかった。


「それと、その人物はもういない。私の名は、『キサラギ・アルトナ』だ」

「な、なんて魔力だ。ルーカスは生きているのか?」

「命に別状はないが、もう普通の生活は送れないだろう。生きているだけマシだろう。だが、死んで楽になるとしか思えない人生しか歩めないだろうさ」

「そ、そうか。でも、それでいいのか? 彼は俺たちにここまでしたが、そこまでやる必要は?」

「綺麗事なんて、御託を並べても意味がない。奴は、私との殺し合いに負けた。ただそれだけだ。魔術師同士に殺し合いは、どちらかの死によって勝敗は決まる。誰がどう言おうと、それは変わらんさ」


 ロイと私が会話していると、ラスティアが目覚める。だが、彼女はその惨状に絶句をしていた。それを見た私は、ロイの後のことを託す。


「後は頼んだよ」

「待ってくれ! あなたはどこへ行く気だ!?」

「さぁね。君らには関係のないことだ。では、生きていたらまた会おう」


 そう言い、私はその場から立ち去る。最下層まで降りると、『仮面の魔女(ジャンヌ)』が出迎えてくれた。


「よかったの?」

「あぁ、彼女の人生に、私は不要だ。行こう」


 私の後を、渋々と彼女は着いていく。私が去ろうとした時、その後ろには、ラスティアが立っていたのだった。

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