日めくりカレンダー?
『スカイツリーって、本当に634メートルあったっけ?』
日めくりカレンダーをめくって書かれていた言葉だ。
誕生日に友人がくれたお手製のカレンダーを毎日律儀に見ているのだが、実にどうでもいいことばかり書き連ねてあって、逆に見るのが楽しみになっていた。今日が29日で残りの2日何が書かれているか見ていないから正直気になっている。まだこれくらい適当でよかったと内心安堵していた。友人から心に染みそうな言葉を貰っても、惹かれない気がしてならななかった。
これくらいの方が気楽に仕事に向かえるからいい。
『今日は30日。まあ、そんなことより牛タン食いたくね?』
正確には31日なのだけれど、もう後半面倒くさくなって半分適当になっているのがうかがえる。いや、そうツッコませるための仕込みだとすると、まんまと乗せられた事になってしまって少ししゃくだな……。でもさすがにそこまで手の込んだことはしないだろう。それにしても、30日がこれだと本当にネタ切れのようだ。これだとあまり明日には期待できそうにないな、と少ししょぼくれながら僕はスーツのネクタイを締めた。
『ラッコってさ、何で貝殻持ってると思う?』
知らんわ。
ていうか何で全部疑問形なんだよ。ちゃんと調べてから書けよ。
全部そうなのか?
俺は1日目から順番に見ていくと、全て『~だっけ?』みたいな疑問形だった。正直、大体の疑問が半信半疑で、正解はよく知らなかった。けれど、ネットで調べて伝えるという手間のかかることをいちいちするのも面倒だ。
僕はスマホの連絡先画面を開き、名前を押すと友人はワンコールで出た。
「これどういう意味?」
この日めくりカレンダーを作成した意図を尋ねる。
『そのままだよ。俺もしらん』
「だったら調べて正解を書けよ。最初は面白かったけど今はよくわからん」
『よくわからんなら好都合だな』
「どういうことだよ」
『一緒に少しずつこの謎を解明していくぞ』
「……これ全部か?」
『スマホで調べるなんてつまらんだろ。仕事あるから切るぞ』
ぷつりと切れる。
なるほどな……、毎日カレンダーめくって答えを見つけるなって意味か。面白いじゃないか。
朝から俄然やる気が湧いてきた、のはいいが、本当にくだらんなこれ。
結局、めくるの忘れるか向こうが忘れる気しかしない。
まあ、とりあえずは続けてみるか。
どれだけかかるかわからないが、少しだけ今後の楽しみが増えた朝だった。