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適合者はこの俺!!!!  作者: こしあん大福
第1章 真紅の雨
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第85話 稔たちは...

仕事が土曜までありましてねぇ、忙しくてそれどころじゃなかったんですよねぇ......ごめんなさい.........。

そして昨日は寝てまして.........。



とりあえず稔編どうぞ。

稔はただひたすらに、幼児の頭を撫でながら呟く。


「大丈夫、大丈夫。」


幼児は頭を上げ、泣き腫らした目で稔を見つめる。


「...大丈夫なもんか。大丈夫じゃないよ!!全然、大丈夫じゃ......ぐすん、ぐすっ。」


幼児は呟くと同時に、泣き出してしまった。


困ったように見つめながら稔はふと隣の母親を見つめる。


その母親は稔を見て、アイコンタクトした。


それは、まるで。


(自分を置いて、逃げろ)


と、そう言っているようで。


思わず、稔自身も声が出る。


「...そんな事、出来る訳無いだろ。俺は、俺は...。俺は、もしあの時に戻れたなら......。」


もし、あの時に戻れたなら。


妹にきっとあんなひどい事は言わないだろう。


母親を心配させないよう一緒に居るだろう。


何より、俺が、【俺】では無いだろう。


後悔だらけだ。


だが、少なくともこの人はあの時の稔の母と違い明確にまだ死が確定してはいない。


ただここでいつまでものんびりしているとあのバケモノに追いつかれる危険性があると言うだけだ。


ならばここで稔がとれる選択肢は一つだった。


迷わず、発言する。


「よし、おいガキ。俺がお前の母親を運ぶから、お前は周りを警戒しろ。もしあのバケモンが来たら間違いなく次は無い。いいな。」


すると幼児は驚いた顔をしたが、すぐに答えに詰まった。


「無理だよ、ボク、怖いもん。もう嫌。お母さんも、お父さんも、誰も話せない。怖いよ、お兄ちゃんが助けてよ。」


それを聞いた稔は、今までかつて無い程顔が歪むのを感じた。


「無理じゃない!!それで母親が死んでもいいのかよ!!!お前の母親ならまだ助かるんだ!!死んでからじゃ遅いんだぞ!!いくらお前が度胸の無いガキだとしても、今はただ一つの答えの為に動け!!!今の恐怖よりも、誰かを失った未来の恐怖の方がきっと遥かに上だぞ!!それでもいいのか!!!???」


まるで幼児に怒るとは思えない声量で稔は幼児に対し叫んだ。


それは、幼児に言っているようで、昔の自分に言っているようでもあった。


幼児は、怯えたかのように彼を見ると黙って立ち上がった。


「......怖いよ、お兄ちゃんが助けてよ。」


「...助けるのはお前だ。お前が自らやらなきゃ意味が無い。俺と同じ未来を辿って欲しくないんだ。だから今は、恐怖だろうがなんだろうがかなぐり捨てて立ち向かえ!!!」


稔の熱い激励が伝わったのか、或いは単に一回りも二回りも大きい少年にキレられて本気で怖かったのか、幼児は仕方ないと言わんばかりに動き出した。


「よし、行こう。」


稔はもう目が虚ろな母親の身体を抱えて動き出す。


と言っても、彼とて小学五年生。


女性とはいえ成人した女性を運ぶには筋力が若干足りなかった。


このままでは引き摺ることになると予測した稔は、魅羽に声を掛けた。


否、掛けてしまった。


魅羽は、少し離れた所で待っていたが稔が呼んだことで渋々来たようだ。


「何?...早く急がないと、施設に入れなくなるよ。」


魅羽は若干だがイライラしていた。


待たされた事がそんなに不満かと稔ははっきりと口にした。


「そんなカリカリすんなよ。それよりこの人を運ぶのを手伝って.........。




















「いい加減にしてよ!!!何でそんな、関係ない人を!!!!」




















熱い感覚が、稔の頬を焼いた。


気が付けば、前の魅羽は涙を流していた。


そして稔の頬は焼けるように熱く、思わず頬を押さえる。


魅羽は涙を流していた。


「言ったでしょ?!ここの人たちはどうでもいいって!!何でそんな、死にかけの人なんか助けるの!?...私たちだって余裕が有る訳じゃないでしょ!!どうして......」


魅羽の怒りの原因が分からず、目を白黒させながら黙って話を聞く稔。


「酷いよ!!私は、私は何も知らない!!!毎回毎回勝手に決めて!!!私の意見なんか聞かないふりをして。お母さんだって、そもそもアンタが勝手な行動しなければ死ななかったんでしょ!!??何で、どうしてそんな事するの?!」


「そんな事、って言われてもな。俺は、ただ、自分と同じ境遇かもしれない子供を放ってはおけなかった、ていうか。」


「はあ!!!!!!?????」


稔は、自分たちと同じ思いをしそうな子供を放っておくなんてできなかった。


だが、魅羽は違った。


自分たちの母親だけが助からなかったと本気で信じていた。


そして、そんな崖っぷちな、多くを奪われてきた私たちが何故自分達と同じ境遇レベルの人たちを助けなくてはいけないのか。


誰も与えてはくれないのに、奪っては來る世界で。


母親が亡くなってからひたすら後悔と憤怒と絶望だけで生きていた魅羽にとっては立ち直れる問題では無かった。


ある意味、自分がしっかりしなければと心に刻んだ稔と違い魅羽は怒りの拠り所を探していた。


今までは楼汰がその役割を果たしていたが、今この場に居ない人間は対象にはならず。


今までと違い、しかも過去の発言を否定するかのように正しい行動をしだす稔を見た魅羽は、もう何も信じられなくなっていた。


魅羽にしてみれば、自分だけが置いて行かれている感覚に近い。


自分の復讐の感情すら他人に植え付けられたもので、それを半分気づいているからこそ許せる話では無かった。


そんな風に自身の感情と想いを迷子にしながら必死で喚く魅羽を見た稔は、またも悔いていた。


それもその筈である。


魅羽がここまで追い詰められたのも、また自分のせいだと再確認したからだ。


魅羽が壊れてしまったのは、自分が嘘を吐いたからで。


あの時魅羽が理解できなかったのは一時的なショックによるものだった。


ならば、少し経てば理解してくれたかもしれない。


それを怠り、あろうことか罪なき救世主に擦り付けた。


まごう事無き悪の片鱗が出ていたと感じる。


自分の、妹も母も父も自分自身もどうする事も出来ない怒りが、彼女を傷つけていたのだ。


そしてそれと同時に、母の愛情を感じた。


母はこれも見越していたのではなかろうか。


そもそも、昔から魅羽と稔は喧嘩が多かった。


だが仲直りもまた早かったのだ。


つまり普段であれば母はそんな事を気にする必要は無かった。


だが、母は自分に、母を実質殺し妹の心を傷つけた自分に。


魅羽をよろしくと、わざわざ残り少ない時間に伝えてきたのだ。


それは、今回の事態が長引きそうだと最初から分かっていたのかもしれないとすら思う。


母の、あの宜しくと言うのは、ただ面倒を最後まで見るって事じゃないと稔は思った。


母の宜しくは、魅羽がもし間違った道を選んだらそれを修正。


魅羽にもしいい事があったら自分の事のように喜んでみる。


そうやって、魅羽と共に成長し、共に歩んでいく事が大事だと気づいたのだ。


母からの最期の激励だと、ようやくわかったのだ。


そんな魅羽が傷つき、今にも倒れそうになりながら必死で心を保っている状態にいつまでも気づかなかった。


その事実に気づいた稔は、魅羽に。


魅羽の肩を両手で優しく叩いた。


魅羽は、そんな不意を突いた行動に少し驚きながらも流石に踏みとどまらず噛みついた。


「何するの!?急に意味わかんない事しないでよ!!!......無関係の子に優しくするくせに、私にはずっと、酷い顔で!!!」


完全に涙を流しながら怒り続ける魅羽の意見はごもっともで、稔は反論の余地も無かった。


それを全て黙って受け止め、ひたすら聞いていた。


「......反論も何も無いの!?こんだけ言われて悔しくないの!?そこまで私が嫌いになったの!?!?」


信じられないと言わんばかりの表情で魅羽は問う。


その顔には、今までの怒りとは違い、少しの悲しみの表情が混じっていた。


稔はもはや、妹どころか家族として自分を見ていないんじゃないか。


そこの幼児よりも、もっと無関係だと思われてしまったんじゃないか。


魅羽は不安が爆発し、涙は止まらなかった。


稔はその全てを聞いた上で、そっとポケットからハンカチを取り出し魅羽の涙を拭いた。


「ごめん、ごめんな、魅羽。辛かったよな。俺が、しっかりしていなかったから。俺が、俺だけが救われる為に身勝手にお前に嘘を吹きこんだりしたから。お前はずっと苦しんで、助けてほしかったんだよな。......ごめんなさい。俺は、お前を頼むと言われた母さんの言葉を額面通りに受け取って、一番大事なお前の意志を無視してたみたいだ。本当にすまない。」


拭きながら呟くように懺悔する稔に、なんとも言えない表情で見つめる魅羽。


「俺は、ずっと怖かったんだ。母さんが死んだのはお前のせいだって、面と向かって誰かに言われるのが。分かっていたつもりでも、大事な家族を自分の手でって...。だから、お前に対して気を遣えなかった。今思えば、一番大事なのは、唯一生きていたお前だったのにな。今言っても、もうダメだよな。俺にとってお前は、今でも大事な家族で間違いない。だからこそ、すまなかった。許してくれなくてもいい。だから、今だけは一緒に行ってくれ。今後、俺はお前の為にがんば......。」


「もう、いいよ。私だって、お兄ちゃんの事は大事だと思ってるよ。怖かったんだよね。しょうがないよ。私だって、怖かったもん。あの時に言ってくれたらもっと良かったけど、もうどうしようもないしね。私も、大人にならなくちゃ。」


そう言う魅羽の顔には諦めの笑顔が浮かんでいた。


魅羽はもう既に人が信じられなくなってはいたが、まだ兄の返答によっては引き戻せる所に居た。


だが、稔の言葉には言い訳の様なものと、いまさら言われたところでどうしようも無い言葉で埋まっていた。


もう、これではやり直せないと魅羽は感じてしまった。


魅羽は心に涙を隠し、稔の言葉に同意した。


一方、稔は安堵した。


魅羽は分かってくれたと、真剣に思ってしまった。


自身のあまりの不甲斐なさと、魅羽の優しさを受け入れ、本当に感謝した。


そして誓った。


これからは、本当に魅羽の為に尽くそうと。


自分の事など優先度を下げて、全て魅羽がやりたいことをやらせようと。


そう本気で思った。


たった一人の肉親である魅羽を守りたいと、そう感じた。


稔はこれからを想像し、魅羽はこれまでを想像した。


互いは許しあったようで、どんどん距離が離れてしまっていた。


この距離が、いつか悲劇を引き起こすとは知らずに。










稔と魅羽は協力し、なんとか母親を避難場所まで運ぶ事に成功した。


ユウは既に着いていて、互いに盛り上がっていたが今は関わる気にはなれなかった。


稔はご飯を取りに行ってくると言い魅羽と別れた。


魅羽はそれを了承し、その場を離れた。
























稔が戻ってくると、何やら大人たちが揉めていた。


こういう、自分たちが良ければどうでもいいと思っている大人って多いよなと思いながら通り過ぎようとする稔。


「●●!!!!............だから、いい加減分かれって言ってんだよ!!!!あのマシンの人間が戻ってくるまで、必死に待ち続けるしか無いじゃないか!!!」


「〇〇!!!!!......アンタ、それ正気で言ってんの?そいつ、子供を虐待するような奴だぜ?そんな奴が救ってくれる訳ねえだろ!」


2人の男が言い合っていた。


片方は若い男で、20代後半くらいの金髪の青年だった。


片方の男は40は確実に超えていそうな中年で、楼汰を批判していた。


思わず稔は立ち止まる。


「お前さ、大体よく考えてみろや。子供虐待以前に、さっさと名乗って戦えばもっと早く救われてた奴も居たかもしれないのに名乗らずずっと潜伏してたわけだろ?スパイかなんかじゃないのか?それか、自己中。或いはその力を本来悪用しようとしていたかもしれないなぁ。」


「はぁ!?お前あまり下手な事言わない方がいいって!!子供の虐待動画はコラ臭いって散々言われてるじゃねえか!!それに名乗らないのはお前みたいな頭のおかしい奴から身を守る為だろ!?お前みたいなのに攻撃されたら世界そのものを守れないからな!!!」


「じゃあすぐ火消でもなんでもすれば良かっただろう?正体の流出の時も虐待の動画の時もどちらもだんまりで、特に声明すら出さなかっただろう!!!あれが答えだ!!!図星だから回答できなかったんだ!!!!それに奴は怪物こそ倒しているが、奴に似たロボットもここに来ている!!!!奴はそのロボットたちの仲間なんじゃなんて説もあるくらいだぞ!!!!それはどう説明するんだ言ってみろ!!!!」


「んなもんすぐ分かんだろ!!!火消なんて下手にしようもんなら逆に嵌められる事態になるだろうし、声明なんて以ての外だ!!!大体図星であの人が悪だったとしたら今頃俺らは死んでるわ!!!馬鹿かよもう少し頭使えやジジイ!!!!あの似てるロボットだってずっと戦ってただろ!?一度負けても必死で戦って。あれが仲間な訳ないだろ!!!」


どちらも譲らない討論は白熱し、いつしか周りの野次馬が取り囲み大盛況になっていた。


稔もその中に顔をねじ込み確認する。


2人とも避難場所の部屋の中心でやっているため、関係のない人間は迷惑そうにしていた。


そんな状況の中、認めずいつまでも反論してくる若者にいい加減鬱憤が溜まったのかついに中年の男が仕掛けた。


「大体、もし本当に奴がこちらの味方だと言うなら何で今ここに居ないんだよ!!!何で戦ってねえんだ!!!!!ふざけんなよ!!!!!本当に言い訳を聞きてえよ!!!!!!奴が今頃戦ってたなら、こんな事にはなってないんじゃねえのかよ!!!!!」


その叫びは、核心を突いていた。


実際、皆思ってはいたのだ。


何故あのマシンが出てこないのか。


ユウが流した映像にはこの怪物が出る前にこの国を去るリーパーが映っていた。


それはあまりにも分かりやすい逃亡であった。


少なくとも無関係な国民たちの目にはそう映った。


「............それは、その......。なんというか、それは......。いや、そんなはずないんだ!!!あのマシンの人が逃げるわけ......無いんだ......きっと...............。」


そのあまりに自信の無い、尻すぼみの発言は中年男の発言の信憑性を高めるのに充分であった。


「...ほ~う、じゃあ言ってみろよ。逃げるわけのない理由を!!まさか無いとは言わんよなあ?」


勝ったとばかりにニヤつきながら嗤う中年に、反論すら出来ず黙り込む金髪男。


彼の沈黙が、そこでの意見の総括となってしまっていた。


マシンが逃げたというのは、誰もが信じたくないニュースだった。


だが、紛れもない真実として動画に映ってしまっていた。


そしてそれの理由として、裏切り者だとか、最初から知っていたなどという意見が出るのは当然であった。


もはや人々の鬱憤は、こうなった原因を直接作った異偶ではなく、その異偶を滅する存在であった楼汰に向いていた。


人間というのは恐ろしいもので、その問題自体を叩く人間は少なく、むしろ善意で今までやっていたものを急に止めた人間に対し叩くものが多かったのであった。


今までは守ってくれていたのに、今回に限って何故、と。


その怒りは、想像以上に膨れ上がって現在の日本を覆い尽くしていた。


そしてその怒りの一つである中年男が居るここの避難所でも、楼汰へのヘイトは溜まっていた。


遂には奴に直接ぶつけてやると息巻く男も居た。


女性もイライラし、あちこちで喧嘩が始まった。


犯罪も起こり、まさにディストピアと言わんばかりの状況が生まれた。


そんな渦中にいた稔は、頭を抱えた。


お兄ちゃんが出て行ったのは自分たちのせいだと、本気で思っていたからだ。






















【稔視点】


どうしよう、どうしよう。


俺たちのせいで、お兄ちゃんの居場所が無くなってしまう。


あの人はただひたすらに優しい人だった。


一度だけ否定された事もあったけれど、普通はあの反応になる。


むしろ、優しくされただけありがたいことだった。


なのに、俺たちは。


それをいい事に、俺たちはあの人を脅した。


死んでくれと言った。


フェイク動画をさも事実のようにし、しかも拡散した。


彼の顔も話し方も全て流出した。


そして彼が居なくなってからは実際に歩いて被害報告をした。


これじゃ、彼が居なくなったって文句は言えない。


まるで自分たちが追い出したみたいだ。


そりゃ、お兄ちゃんだって人間だし、こんな奴ら救う意味なんて無いと思われても仕方がない。


これは文句なんて言えないし、言える立場じゃない。


俺にとってあの人は凄い人だった。


なのに俺は、魅羽の事とか、自分の事で頭が一杯で、傷つけてしまった。


あの人がこの国を出て行ってしまったのは、どう考えても俺たちの行動のせいだ。


むしろあんな対応をされて、よく平然としていたと思う。


俺ならあの力を使って、こんなクソガキ一人や二人殺してしまうとすら思う。


それくらいずっと辛い戦いに身を投じているのに、誰も理解すらしてくれないんだ。


出て行ったのは当然であって、むしろ俺たちがダメなんだ。


俺らが彼に真摯な態度で、謝らなければ。


じゃなきゃ、きっと彼は戻ってくれないんだろう。


いや、もう謝っても無駄だろう。


それでも謝らないとだめだろう。


俺たちはそれくらい彼にとって取り返しのつかない行動をしている。


今更だとしても、それくらいはやっておきたい。


じゃなきゃ僕が俺たちを許せない。


......きっと許してはくれないだろう。


出ていくくらい怒っているんだ。


それでも、やる事に意味がある。


このままではあまりにお兄ちゃんが救われない。


追い詰めた俺たちに残された手は............。




























岩動 楼汰は無実だと、フェイク動画を投稿した俺たち自身が話す事だ。

地震が怖すぎる......。

もし投稿が本格的にストップしたら察してください。

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