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適合者はこの俺!!!!  作者: こしあん大福
第1章 真紅の雨
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第83話 拡散

という事で稔たちには何が起きたのか、スタートです。

楼汰が飛び立ち、和磨が屋上で反省していた頃。


稔と魅羽、ユウは3人で何やら談義していた。


その内容は至って単純で、どうしたら楼汰を更に苦しめられるかという如何にも腐った話であった。


魅羽は当然と言わんばかりに少しずつじわじわを希望していた。


自分の家族を失った痛みを少しずつ味わわせてやると恐ろしい発想をしていた。


普通の大人であれば、その考えを修正してやる必要があったかもしれない。


だが、少女の隣の男はもはやスマホとバズりに憑りつかれていた。


ただ今回ばかりは話が合わなかったようで、


「はあ?違ぇよ...。これだからガキはな。いいか?バズり、まあ言い換えれば奴をより苦しめる為には拡散すればいいんだよ。拡散するためにはみんなの目を引くような演出が必要だ。どどーんと一発、スゲエのを見せつけようぜ!」


とまるで大人とは思えないほど頭が死んでいる会話をしていた。


その中で、唯一その話には参加せず考え事をしている少年が居た。


少年こと稔は、あまり乗り気ではなかった。


魅羽が主人公に憎悪を飛ばし過ぎて自分すら利用した時から、やり過ぎじゃないかと感じてしまっていたのだ。


元より本来ならば楼汰はむしろ賞賛されてしかるべきなのだ。


たまたま、稔たちの親が救われなかっただけで、あの時ああしてなければきっとより被害は出ていた筈なのだ。


ひょっとしたら自分も死んでいたと思う。


そう気づいて以来、彼はその話には乗っていない。


ユウは怪訝そうな顔をしつつもまあ邪魔しなければいいかと特に気にしなかった。


だが、魅羽は違った。


元々、魅羽がこうなってしまったのには稔が大きく関係している。


その為、稔は魅羽に負い目があり下手に喋れなかった。


稔は美羽を救いたいと感じていたが、自分の手に負えない程の怒りを抱えている事も知っていた。


最初こそ楼汰で発散させることを選び、修羅の道に手を出そうとしたが、楼汰をもし仮に報復し終えたら次は自分に標的が向きそうだと思ってしまった。


勿論稔とてもう既に本来であれば死んだと思っている身。


小学校5年生にして既に稔は死を受け入れようとしていた。


唯一の心残りが魅羽というだけで、もし魅羽に殺されるならそれも仕方のないことだと受け入れようとした。


父は兎も角、母を殺したのは間接的に自分なのだから。


そしてその母が死んだ事で妹はおかしくなったのだから。


自分が死ぬのは当然で、他に何も思いつかなかった。


そんな考えだが、前にも説明した通り魅羽は本来兄のせいである母親の死を、あまりのショックで自分の中で偽装し書き換えている。


その為楼汰と異偶(バケモノ)を心の底から恨んでおり、許せない相手と認識している。


当然稔は止められない。


だが、この時は稔も流石に考える他ない事になっていた。



















【稔視点】


妹は、すっかり見違えてしまった。


悪い意味で。


あの男と絡みだしてから、ずっとあの調子だ。


口うるさいけれど妹として、可愛かった魅羽はもはやいなかった。


そこに居るのは憎悪に寄生された何かだった。


それ以外のことなど考えられず、それが全てだと信じ疑わず、そして意のままにそれだけを遂行する。


あまりにも狂っていた。


そしてそこに追い込んでしまったのは俺だと、気づいていながらも距離を取る他なかったんだ。


もはやどうしようもなかった。


勿論、母との約束も忘れちゃいない。


だがもうどうすればいいのか分からなかった。


このまま俺が見て行っても、きっと彼女は何処かで道を間違えてしまう。


説得も不可能だろう。


どうすれば、と考える稔の頬を冷たい感覚が刺す。


「うぉっ!!」


思わず声を出した稔に対し、心配そうに魅羽が見る。


「大丈夫?さっきから、何か辛そうだよ。これ飲んで。」


差し出された水を受け取り、一気に飲み込む。


考えすぎか喉がカラカラで、思わず息が漏れる。


水がここまで美味いと、感じた日はいつ以来だったか。


ここ最近は緊張ばかりで、味なんか感じなかったからね。


実際、ありがたいと思う。


だが、当然感情の整理はつかない。


......魅羽の件はこれも困るのだ。


あくまでも魅羽の怒りや恨みは母と父の事件にのみ集約していて、稔への怒りを忘れている事を除けば至って普通通りなのだ。


その事件以外の所では狂っている節を見せない。


なので、稔はとてもやりにくかった。


ずっとそのままその事件から逃げさせたいと思う。


だが、いつその異偶(バケモノ)が現れるかも分からない状況で事件から逃げた所で必ずフラッシュバックしてしまうだろう。


そうなれば意味はない。


稔は頭を捻って考える。


どうすれば魅羽を救えるのか。


......そして、お兄ちゃんにも思う。


申し訳ない、と。


彼には悪い事を散々してしまった。


もし妹が救えて、自分がその時生きていられたら、きっと謝ろうと思っている。


許してもらえなくても、恨まれていたとしても、逃げたくなかった。


でも少しだけ、お兄ちゃんなら許してくれるだろうという安心感があった。


と、突然ユウが叫ぶ。


「そうじゃん!!!いっそのことここらの奴らにさぁ、俺らがあの動画撮った本人だぜってバラせばいいんじゃねえか!?そうすりゃ有名配信者なんか取材に来るし、メディアが来るかもしれねえ!!大バズりの匂いがするな!」


それはあまりに突発的で、そして一切の遠慮のない提案だった。


当然俺は反対する。


「それはあまりにもリスクが大きすぎませんか?仮に嘘がバレた場合痛い目を見るのはこっちです。それに、妹をそういう動画に利用しないで欲しい!」


怒りつつ反論するも、にやにやと笑うユウはこう答える。


「ほーん、そか。...魅羽ちゃ~ん、こう言ってるけどどう?」


すると魅羽がそれに回答する。


「勿論出るに決まってるじゃん。お兄ちゃん、私たちの目的を忘れたの?!アイツが全て悪いんだよ!!それに、私たちは親を失った被害者で、正義なんだよ!!!私が出たってなにも無いよ!!利用とか言うのは辞めて!ユウさんは考えてくれてるんだよ!」


すっかり洗脳されてしまっているのか、俺ではなくユウの意見を推薦する。


「み、魅羽......。」


思わず言葉に詰まった俺を他所にユウと魅羽は話し合いを続ける。


リスクなど魅羽にとってはどうでもよかったんだろう。


復讐に憑りつかれた魅羽にとって、その後の人生など二の次で、今はなるべく早く奴らを苦しませる。


それが魅羽の目的であり希望なんだろうと推測できた。


そしてそんな道に引っ張ってきてしまったと本気で俺は後悔した。


元はと言えばこの復讐の道に引っ張ってきたのは俺だからだ。


最初、受け入れられなかった俺の憎悪はお兄ちゃんへと向いた。


しかしその後、少しずつ彼のやさしさを理解し受け入れられそうになった。


そんな腑抜けた俺の憎悪がきっと、魅羽に入っちゃったんだろう。


こればかりは、俺のせいでしかなかった。


思わず項垂れる。


計画は着々と会議され、実行までに移される運びとなった。



















外に出て、練り歩く。


ユウと妹が声を張り上げながら、宣伝する。


「あの黒いマシンの男に暴力を振るわれた少年の親戚で―――ス!!!!!あの動画は私が上げました!!!!」


「私が振るわれた少年の妹でぇぇぇぇぇーーーーーす!!!あの人に殴られて、とても兄は傷つきました!!!」


思わぬ大声と内容に脚を止める人も多く、そのまま集まってくる。


最初こそ人は集まらなかったが、徐々に増え始めた。


稔はその後ろにくっついていたが、何も言わず喧噪を眺めていた。


人々はそれぞれ反応を示した。


「いかにもコラっぽかったよな?w.........お前ら嘘つくならもっといい嘘つけよ。」


「ネタだよな?」


「てかそもそもお前、よく見たら炎上野郎やん!!!今度は被害者商法ってか?」


などと、楼汰を擁護するような意見もちらほら出ていた。


だが、多かったのは否定的な意見であった。


「よく見たら本当に動画の子たちじゃないか?!君ら、そんなことされたのか!」


「子供たちを傷つけられて、とても悲しいでしょう。許せないですね!」


「君らよう今まで頑張ったのう。国を守っているとは言ったが、あんな正確じゃあこっちから願い下げじゃい!!」


「というかさ、あのマシンの奴最初から根暗っぽかったよな。俺の方がよっぱどあのマシンにふさわしいぜ。」


「最低。信じられない、こんな子たちに。これだから男は。」


「あの怪物だって何か理由があるんだろう。それをあんな風に殺すなんて、あまりに野蛮だと思っていたんだ。全く、思った通りだな。」


「あんな奴に国の防衛なんか任せてたまるかってんだ。大体、普通の一般人の癖に。」


「調子乗ってるよな。しかも話によるとロリコンらしいぜ。」


「あの力で、次滅ぼすのは我々なんじゃないか?!」


「親戚の方もお辛いでしょう?」


事情をあまり知らない俺でも、流石に酷いと言わざるを得ない内容に顔をしかめた。


いくら扇動されていても、ここまで動くかな普通。


何か、おかしい気がする。


「ええ、本当に......。ぐすっ、うっ、コイツらは何も悪くは無いんです!!!アイツが、アイツが!!!」


喜々として話すユウは、迫真の演技で涙を流す。


隣で魅羽はこっそりと用意した催涙スプレーをしみこませたハンカチで目を叩き、泣き出す。


あまりに真剣過ぎる演技だが、そのお陰で思わず息を呑む人すら現れる。


出来過ぎてるって疑えるよな、コレ。


なんで誰も突っ込まないんだ。


「お、落ち着いて。お辛いでしょうが、お子さんたちの為にも落ち着いてください。」


「すっ、すっ、すみませんぐすっ。ありがとうございます、聞いてくれて。」


顔を伏せるユウだが、その顔は嘲笑で埋まっていた。


魅羽も隣でほくそ笑む。


すると観ていた大衆の中の1人が、そっと前へ出てくる。


「君が殴られた子だよね?......辛いかもしれないけれど、どう思ってる?」


なんと、この状況で俺に聞いてきた。


とはいえ何も特に話す事は用意してきていないし、話す事も無い。


今更こういう事して何になるかは分からないが、話さなければ少しは違和感が出るんじゃないか?


大衆がおかしいと気づいて、まずはあのユウさんをどうにかしてほしい。


正直、俺の次に妹がこうなってしまった原因はユウだと思う。


だから、俺は悪いけれど彼には同情できない。


少しでも違和感を持たせればこの人を居なくさせる事だって出来るだろう。


そう思い沈黙を貫く。


期待した顔で見てきていて申し訳ないが、話すことは無い。


しかし、俺のそんな思いは覆された。


「...そうだよね、話す事は辛いよね。...変な事聞いてごめんな。」


なんと質問者から謝られてしまった。


俺の解答は返ってみんなの結束を生んでしまったようで。


「こんな小さい子たちにトラウマ級の恐怖を与えて、そして喋る事も出来なくさせるような鬼畜野郎があの守護者なんて、最悪だな。」


「「「そうだそうだ!!!」」」


人の声は大きくなり、少しずつ膨張していく。


その声に思わず稔は身を縮こませる。


ここに居るのは、憶測と自分の欲望の為だけに、人が死んでも構わないと思っている化け物たちの集いだと。


そして勿論、自分も自分の勝手で妹を巻きこみ、酷い事をしてしまった化け物だと、自分を認識していた。


思わず身を屈ませ、陰に隠れる。


その時だった。




















光と共に、空から異偶が現れたのは。

今週はいつも通りと言えばいつも通りなのですが、更新頻度が多少遅くなります。

いつもは行けると思ってるので言いませんが、今週はもう最初に言っておきます。



今回の稔編は大体3~4話を目安にはしますが、多少のずれがあるかもしれません。

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