第76話 納得のいかない戦い
すみません寝こけてました。
てことで76話ですどうぞ。
ふぃ~~、ひとまずぶっ倒せはしなかったがなんとかなったな。
まァ、俺様にかかればこんなモン楽勝よ。
雑魚どもは黙って俺にひれ伏す定めだぜ。
くく、んじゃ早速愛しの姫を迎えに行きまっかね~!
すっかり海岸は戦闘によって削れ、岩場も無くなりかけていた。
出た時はお天道様が上に居たのに、今やすっかり夕方だ。
時間が過ぎるのって早えな。
.........はぁ。
ど う し て こ う な っ た 。
確かに全て覚えている。
異偶に散々攻撃され、死にそうになった事。
後悔の片隅で新たな能力に目覚め、覚醒したこと。
紅き死神という力を使いリーパーがブラッディになった事。
あの力はまさに死神と言った感じで、なんともルーツ通りって感じだったな。
俺が手も足も出なかったジャッジをまるで赤子の手を捻るかのように戦っていた。
否、遊んでいた。
正直言って記憶こそあるがアレが俺だったのか怪しいところだ。
俺はあんな風になっていたのかと思うと痴態過ぎて涙が出そうだ。
幸いジャッジ以外にはあまり話しかけていないだろうし気づかれてはいないんじゃないか?
ただ、変身前に言っていた通りの展開になってしまった。
デスペラードみたいな厨二集団の味方みたいな事をやってしまったという。
最っ悪だ。
出来る限り考えたくないな。
俺の深層心理ってあんな感じなのか?
俺TUEEEEEEEEEEEEEEEEEってしたいタイプだったか?
喋り方と言い、一人称と言い、なんともナルシ的な話し方だった。
嫌すぎるな、俺の別人格。
やたら自分を天才とか最強だとか何とかいってたしな。
それにあの俺は俺であって俺じゃない、って感じがした。
リーパーとして戦っている時は、正直命のやり取りはしていると思ってはいた。
だが、少なくとも命を軽く見ようとは思っていなかった。
......紅き姿の俺は違った。
少なくとも目の前のジャッジの事を、ただのオモチャだと思っていた。
どんな死にざまを晒してくれるかなんて、あまりに惨い言葉だ。
確かに敵を倒しているが、それはあくまでも奴らがこちらに攻撃してくるからだ。
それに逃げようとしている敵を深追いしたのも悪手すぎる。
いくら自信があったとしてもそれで追いかけようとはならんだろう。
まだ相手が何か残している可能性も考えるべきだ。
なんというか、自分に酔ってる俺が出てきちまったな。
今回の副作用はこれか?
俺の性格がナルシの好戦的野郎になるって感じか?
好戦的も好戦的、多分すぐ喧嘩とか始めそうだな。
ただ、能力は申し分なかった。
装備とプログラム能力だけでなんとかここまで生き延びてきたリーパーにとってありがたすぎる強化だった。
巨大な鎌を作り出すこと。
フックで相手を捕えられること。
感覚機敏という能力で相手の場所や力、やろうとしている事を見抜けること。
そして、何といっても俺にとってチャンスになるだろう場所や戦い方を導けること。
あまりにも協力な強化過ぎてびっくりだな。
ありえない程強化されていて、思わず嬉し涙しそうだよ、オーイオイオイ......。
......え?つまんないって?
奴は俺を潰そうと攻撃を仕掛けてきた。
その為にこの国と手を組み、この環境を作った。
少なくとも俺を狙って攻撃をしてきたのは分かった。
これからアイツみたいなやつが山ほど来るんだろうか。
分からんな、だがどの道まずは逃げたアイツともう一回戦うのだろう。
アイツの能力は果たしてあれだけなのだろうか。
瞬間移動とデカバサミによる能力、主砲。
こんなモンだったよな?
紅い姿になるとまたナルシ野郎になってしまうんだろうが、アイツにはアレが特効薬だろうしな。
もし次戦うのなら最初からアレになっておけば苦戦しないかもしれない。
......だが、それではまた好戦的に余計な事をしかねない。
だから俺が、あの副作用をどうにか抑え込めないか調べてみるしかないな。
カーㇴは何か知ってるだろうか。
ひとまず戦闘終了の意味も込めてカーㇴに会いに行くか。
無事なのかも気になるしな。
【トァネミ視点】
まさか、まさかあんな力が出てくるなんて。
自分があっさりと敗北するなんてことを考えたくはなかった。
そもそも事の発端はダリア亡き後、引き継いだこの世界をどうするか考えた事に繋がっている。
我々がやるべきは二つ、種の回収とカケラ探しだ。
しかし最近もう一つ追加された。
それがあのリーパーとかいうA-101の秘密兵器だ。
アイツが悉く作戦を邪魔してくれていた。
今更奴を奪ってカケラに触れるよりも、まずは邪魔者である奴を殺してしまおうとなったのが今回の発端だ。
スィゲロにはリーパーの出没する国にあると言われている伝説の獣のカケラを探す工程を任せた。
今頃、あの国は地獄絵図となっているだろう。
大量の異偶たちに襲われ、英雄の居なくなった街でカケラを探す為だけの大殺戮が行われる。
死神の奴をこの国に誘ったのはそれも理由だ。
だが、もっと大事な理由がある。
それは直接自分が手を下す為だった。
スィゲロのあの方から賜ったマシンの能力は癖が強い為そんなにうまくは戦えないだろう。
この世界にはあともう一人【無に帰す者】の人間が来ているらしいが隠れてコソコソ何かやっているらしい。
そんな奴にも期待は出来ない。
そうなるとあのリーパーを殺せるのは自分だけとそう思っていたのだ。
実際、あの能力は絶対に倒されるものではないと思っていたからな。
仮にハサミの能力を無効化されたとしても瞬間移動はどうにでもならんと思っていた。
だが、それは違ったのだ。
...確かにこの能力には弱点がある。
それは、自分が移動するときに限り一回消えてもう一回場所を指定して出るとその場所に出るまでは能力が使えないのだ。
着いてすぐ仮にバレたとしても避ける事が出来ないという能力だ。
だが、これは攻撃に転じる場合でしかも、こちらが攻めである以上もはや相手はどうする事も出来なくなっている筈なのだ。
あんな事は少なくとも起きないと思っていた。
だが、現実としてそれは起きた。
奴は自分によって召喚された異偶たちと戦闘し、どんどん壊れていった。
恐らくあの時の痛みは想像を絶するほどだろう。
自分でやっておいて何だがあれは喰らいたくない。
そんな中、奴は最後の望みをかけてエネルギーを放出し、8体の異偶と自分を残し倒れた。
恐らくエネルギ―切れによる停止だったのだろう。
自分はてっきりあれで逝ったのかと思っていた。
それがたまらない高揚感で笑っていた。
しかし、その直後奴はあの...血に塗れたあの姿へと覚醒したのだ。
ありえないとどんなに思ったか。
だが事実として、奴はあの傷もダメージも一切なかったかのように立ち上がりそして自分を倒しに来た。
あれだけ苦戦していた異偶達を5体同時にあっさりと引き裂いた。
...だが、ここまではまだ想像の範囲内だった。
何か秘策があるかもしれぬとは思っていた故、驚きこそあったがそこまで唖然とはしなかった。
まさか瞬間移動を見極められるとは。
奴の動きは明らかにこちらの弱点を意識した動きだった。
明らかに奴は自分の存在に気づいていた。
奴の攻撃を避け、奴が気づかない所から飛び出していた自分に攻撃を仕掛けてきたのだ。
唖然もするさ。
今まで一回とて破られたことは無かった力だった。
それがよりによってこんなチャンスに破られたのだ。
まぐれと判断しその後も何度か仕掛けてはみたが全て躱され、カウンターで強烈な反撃を喰らった。
信じたくなかった。
こんなところで、自分の弱点を見せつけられているような気がして。
それと同時に許せなかったのだ。
あんなに完璧な状況をご都合的に崩した奴を。
あまりにも出来過ぎた状況、あれで疑わない奴は居ない。
奴は急に手に入れた力で自分を邪魔する悪だと、我が心が叫んでいた。
しかしそれはあまりにも出来過ぎただけの、現実であった。
どう足掻いたところで勝てんと気づいたのだ。
だから自分は逃げ出した。
能力ももはやバレた。
他の能力でも奴の機敏さには勝てないだろう。
ならば一旦態勢を整えた方がマシだ。
逃げて作戦を練る、それが一番の筈だった。
スィゲロに聞いてもいいとすら思ったのだ。
一旦奴の視界から外れ、奴が追いつけなかったところで瞬間移動で逃げる。
下手にここで使うとまた感知され、最悪先回りされる可能性もあった。
それにジャッジは幸いそこまで機動力も悪くない。
逃げるなら今のうちと判断し、逃げた。
そもそもが、その前に自分は瞬間移動を使用してしまっている。
自分にとって地面に叩き落された後すぐ瞬間移動を使うには時間が足りな過ぎた。
結果自分は逃げる以外に何もできなくなっていたのだ。
悔しかった。
だがそれ以前に焦りと恐怖が勝った。
謎の力はあまりにも自分にとって未知で恐ろしいモノだった。
だが奴が許してくれるはずも無く、奴の左腕から射出されたフックによって自分は捕らえられた。
自分は一切気づかず、そのまま派手にこけ、更に引き摺られた。
更に鎌に切り裂かれ、挙句吹っ飛ばされた。
もはやここまでだと思わせられる戦いだった。
ならばせめて少しでも削ってやろうと思ったのだ。
自分の出すハサミをワープさせる攻撃、あれならば気づかれたとしても更に別でハサミを出現させられる。
あれを使って攻撃しては見たが、必ず回避されそれどころか近づかれた。
ハサミ2つに自分の攻撃、どうやったって避けられるはずはない。
だが奴は事実として攻撃を回避し自分を追い詰めた。
奴はなんだかまるで自分がどうすれば一番いい状況を作れるのかというのを分かっているような感じだった。
ならばもはや今まで出していなかった武器も出して攻撃するほかなかった。
ハサミの様な一撃性は無いが安定して攻撃できる光線を放った。
それもワープさせた。
だが奴は気づき鎌を回転させて弾いた。
危うく自分で撃った光線に当たるところだった自分は冷や汗をかいた。
打つ手は無い。
次奴がどう動くか、奴が動いてからなんとかしようと立ち止まる。
だが待てど暮らせど奴は動かない。
これはまさか、そっちも決定打が無いのかもしれない。
いや、きっとないという推測にかけエネルギーをチャージする。
急に攻撃されることさえ無ければ、やれる。
奴もまた紅きエネルギーを放出しこちらに向いて構えをとる。
...あと6、5、4.........。
溜まった。
奴はてっきり攻撃を仕掛けてくるとでも思っているのだろう。
自分は逃げる事を諦めてはいないのだ!
沢山の斬撃が降り注ぐが、ここはどうやら自分の作戦勝ちのようだな。
残念だったな死神、お前はまだ甘かったようだ。
自分が一枚上手だったな。
さらばだ、次は覚悟しておけ。
そう思ったすぐ後に、自分の視界は変わり気が付けば自分とスィゲロが拠点としていた一室の中に居た。
薄暗く電気一つついていない部屋。
しかし本来涼し気なこの部屋の中も少しばかり暑くなっていた。
...危ない所だったが、何とか戻ってこれたな。
ここは死神の奴がいる国。
そして、スィゲロが今作戦を実行している国だ。
その証拠に、あちこちから火が上がっている。
自分は失敗したが、奴は順調にやれているらしい。
久しぶりに奴を頼もしく思うぞ。
それでは、死神が帰ってくるまで安静にしていよう。
傷が癒えそうにないからな。
トァネミの視界の先、窓から見える景色の奥では橙の炎が轟轟と燃え盛り、黒き煙が上がっていた。
人々が必死に逃げており、どうする事も出来ず立ち止まる者、涙を流し誰かを呼ぶもの、建物に挟まれ助けを叫ぶ者。
地獄絵図となった日本で絶望が産声を上げていた。
そしてその渦中の炎の中に、青色のマシンが蠢いていた。




