第71話 ジャッジ
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残念なことに、白黒野郎ことジャッジは居なかった。
そして、気が付いたら俺は"く"の字に曲がっていた。
「ぐおっ!?」
一瞬だった。
奴は一瞬で俺の主砲のエネルギーを避け、エネルギーが無くなってから俺の元へと戻ってきたのだ。
膝蹴りを喰らい成すすべもないまま飛んでいく俺に追撃が迫る。
奴は俺が飛んでいった直線状に居た。
確かにこれなら俺の射撃は当たらないし主砲は貯めている時間が無い。
剣を闇雲に降っても当たらないし何もできないって訳だ、此畜生。
空中で横に一回転、綺麗な回し蹴りが襲い来る。
何もできないままふたたび吹っ飛ばされる。
今度は>の状態で腰を前に突き出された状態で飛んでいく。
リーパーの特性上ダメージは無いが、これは解除後また気絶しそうだ。
と、呑気に考えている場合じゃないな。
とりあえず、少しでも衝撃を軽減しよう。
再びバリアを張り、次の攻撃を待つ。
しかし、攻撃が来ることは無かった。
それもその筈、さっきの攻撃で俺は陸の方へと飛ばされていたのだから。
ドガアアアアアアアアアン!!!!
デカい衝撃が背中の方に1回、2回、3回と言った所だろうか。
ようは、陸の方に飛ばされた事で思いっきり背中から建物へと突っ込んだわけだ。
しかも、ビルだ。
ビルを3つくらい貫通し、4つ目で止まった。
そのままズルズルと背中から地面へと落ちていく。
いくら痛みが無いとはいえ、衝撃はある。
なかなか立てるモンじゃない。
ふらふらとしながらもなんとか平衡感覚を保とうと立ち上がる俺を嘲笑うかのように、突然ビルの裏側から奴が現れた。
「なっ!?......この距離でも来れるのか?!」
白と黒の混ざり合った粒子の光を纏った拳が、俺の腹目掛けて叩き込まれる。
華麗なアッパーカットを喰らった俺は再び吹っ飛ぶが、今回は横では無く縦。
ならば剣が使えそうなものだが、相手は神出鬼没。
どう足掻いても不利なのはこちらだ。
温存した方がまだマシだろう。
どんどん地面との距離が離れていく。
そろそろ雲に手が届きそうな距離になって、あの戦闘を思い出した。
確か、恐竜の異偶と戦ったときもこんな感じだったよな。
あの時は自分の身体に弾を撃ち込むなんていう身体を張った作戦でなんとかなったが、今それをやったら例えここで戦闘を終わらせても解除後に俺が死にそうだ。
かといってここから戻る方法もなかなかない。
と、吹っ飛んでいった俺は急に降下しだした。
物凄いスピードで。
訳が分からず、落ちながら上を見上げると。
そこには、ジャッジがいた。
どうやら両手を握った状態で勢いよく下に振り下ろすダブルスレッジハンマーが決まってしまったようだ。
どうしようもないが、幸いバリアを張る余力はある。
さっきの建物は考えて無さ過ぎてバリアを張った方向と逆にぶつかってしまったが、今回は必ず下に落ちるだけだ。
ならば、落ちる所だけに張ればいい。
少しずつ近づく地面を見て、これは前面全てだなと理解し前面にバリアを張る。
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!!!!!!!
衝撃波で何件か家が吹き飛びビルのガラスが割れる。
何とか耐えたものの今度こそ本格的にやばそうだ。
何せ、リーパーのアナウンスで、
「ーーー警告ーーー警告ーーー、速やかに召喚を終了してください。これ以上の戦闘は危険です。」
とか言ってるしな。
ダリアの時の戦いでもこんなのは出なかったぞ。
多分身体的理由じゃないんだろう。
じゃなきゃダリア戦の時に出てるからな。
そう思い、立ち上がろうとしたが立てずそのまま倒れ伏す。
その際、ビルから落ちた看板に自分の姿が一瞬映った。
とんでもない事になっている。
黒い装甲は恐ろしく剥がれ落ち、左腕のパーツは折れ曲がり、肩のパーツにもヒビが入っている。
また、顔のパーツには目に傷が、メット部分も割れていた。
「マジかよ、なんてこった。......まさか、ここまでとはな。カーㇴを取り返しに来たつもりが、こんな事になるなんて。...あーあ、大人しく和磨のいう事でも聞いてりゃ良かったか?」
そうは言ったが、カーㇴが居てこそのリーパーだ。
そんなことしても何にもならない。
そういえば、カーㇴは大丈夫だろうか。
というか、カーㇴ達、か。
全ての元凶みたいになってるあの大統領にも、生きて貰わなければ困る。
今更死なれても迷惑だしな。
あの衝撃波の影響で吹っ飛んで消し飛んでないか心配だったが、レーダーに生存者の反応が5つほどあり、場所も一致している。
杞憂だったようだ。
...ただ、困ったには困った。
もはやどうする手も残っちゃいない。
しかも俺も警告が出るくらいにはボロボロでもはやエネルギーも残っちゃいない。
詰み、という奴が本格的に迫ってきている。
まだ俺が何発か与えていれば可能性はあったと思ってもいい。
だが、一発も当てれていないどころでは無い。
「ちっ、状況的にもきついのか。しかもダメージの蓄積もある。かなりマズいな、コレ。」
何とかするしかない状況だが、何とか出来るアイデアも無い。
フルパワ―も現在少しでもエネルギーを維持すべく使用解除した。
もし使えば一分とて持たないだろう。
と、俺が詰んだと感じたのを察したか、単純に俺がボロボロだから近寄っても最早大丈夫だと思われたか、ジャッジが近づいてくる。
「ふふ、ふははははははっ!!!!!無様だな。異世界の英雄よ!!!」
う、うぜえ。
なんだこいつ、急に煽りやがって。
「ははは、貴様にはもう少し慎重さが必要だったんじゃないか?だがもう遅い、貴様は再起不能だ。ましてやそのレベルの知能ではね。」
本当に何なんだこいつ、舐めてんのか。
クソ、俺がこんなんじゃなければ吹っ飛ばしてる。
だが、時間稼ぎなら俺だって得意だぜ?
お喋りなら任せろよ。
「...おい、お前いいのかよ?」
「何がだ?貴様、今更命が惜しくなったとでも言うのか?」
「勿論死ぬことは嫌だがそんな話じゃない。...ダリアが俺を襲ってきた時、アイツは俺を殺さなかった。勿論再戦した時は殺そうとしてきたが、最初は俺のリーパーを奪いそれで伝説の獣のカケラに触れて大丈夫か確認しようとしていたんだ。お前、俺を殺して大丈夫なのかよ?」
「この期に及んで敵の心配とは。だが安心せよ、既にダリアの策は間違いだったとあのお方は語っている。それに、貴様のような我々とは違う力が居ると迷惑なのだ。だからここで殺す。それだけだ。」
なんてこった。
少しでも時間を引き延ばそうとしたが、ダメだったようだ。
ダリアの作戦、確かあんな感じだったと思っていた。
だが、もはやあの作戦ではダメと思われているようだ。
「大体、その作戦で良い訳が無い。まずはその先のどうやって触るかより、あるかどうかだ。それを邪魔しようとする貴様らはもはや破壊するべき敵だ。」
やっぱそうだよな、ダリアがまあまあチョロかっただけだ。
...とりあえずやる事はやった。
後は天命を待つだけっと。
まあ果報は寝て待てって言うし?
この俺の絶望的な状況もきっと何とかなる筈だと思いたいね。
と、突然ジャッジが上へと上がっていく。
そして、指を打ち鳴らした。
絶句する光景だ。
今まで見た事も無い量の、異偶が街を埋め尽くした。
空に浮かんだ紋章のようなモノから異偶がどんどん出てくる。
出てくる異偶の種類は様々だが、小さいものが多い。
そして、今までは地球上に存在する動物を模したような異偶が多かったが今回はなんというか、嫌な感じがする。
形が異常なのだ。
生物とは思えないような見た目をした奴が多い。
小さめだからか、なんというか不気味だ。
まあ小さめと言っても人間の3倍くらいはあるが。
さっきのビル追突で逃げ出したこの国の人たちが必死で逃げているが、それをどんどん啄んでいく。
このままじゃ、アイツらのせいで関係ない国民も殺される。
それに、カーㇴだって今は大丈夫だがこのままキツいだろう。
異偶がまるで滝のように降ってくる。
これに対する処理が分からない。
兎に角とんでもない量の異偶が現れたのだった。
俺は、なけなしの体力を使って立ち上がった。
「ほう、ここで立ち上がるとは、見上げた根性だ。だが、立ったところで最早無力!!貴様は指を咥えてこの国が滅び良く様を見るがいい!!」
トァネミはハナから俺どころかこの国にも協力する気は無かったようだ。
異偶をまき散らした上、こうやって煽りを入れてくるわけだしな。
だが、俺だって負けられない。
確かに俺はもう無力に近い。
多分このまま行けば死ぬだろう。
だからこそこのまま戦う。
少しでも、カーㇴのこの後につなげられるように。
「はあああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
俺は覚悟を決めた。
たった一人で、40を超える異偶の群れに向かっていく。
楼汰は気づいていなかった。
プログラムを表示するリーパー内の文字盤に、赤く文字が書かれていたことを。
そしてその文字は、淡くではあるが輝き始めていたことを。
「称号:真紅 取得条件:敵を50体討伐する」




