第69話 陰謀
カーㇴ視点です。
【カーㇴ視点】
大統領ことベーツは、私を捕らえた後逃げられないよう拘束しました。
私は、兎に角楼汰様が来られてはいけないと思い、なんとか話題を逸らそうとしましたが、彼は一切妥協せず作戦を立て始めました。
そんなときでした。
私は見てしまったのです。
それはお手洗いに向かう際の事でした。
女性の監視役の方に見張られながら歩き、流石に個室にこそ入っては来なかったものの扉の前にいるという事は分かりました。
どうしようか迷いましたが、少しでも時間と何か情報が欲しかった私はそこで彼女にこう言いました。
「あぁ、どうしましょう。紙がありません。拭けないです。このままでは不衛生で私は死んでしまうでしょう。ああ、どうしたら...」
彼らは私を人質に取っている。
ならば、私の要求に大概従ってくれると思ったのです。
まさか、じゃあ拭くななんて言わないでしょう。
事実、監視役の女性はため息を吐きながらも、
「じゃあそこでじっとしていなさい。すぐ持ってくるから。」
と言い去っていく音が聞こえました。
明らかに去っていったのを音で確認した後、私はすぐにお手洗いから出て隠れつつ歩きました。
とお手洗いを出た廊下のすぐ隣の部屋に明かりがついていました。
近寄ってみると、何とうっすら扉が開いていたんです。
恐る恐る覗きます。
観葉植物が見え、何やら偉い方のデスクのようなものが見えます。
そこに座っている人がおり、その人はギリギリ見えない位置にいる人と話しているようでした。
また、何やらスーツ姿の男が何人か見えます。
SPと言うものでしょうか?
そこにいたのは......。
白い装束を見に纏い、白い仮面を着けた男でした。
ダリアにそっくりな格好で、唯一の違いがマスク。
どう見たってあれはデスペラードの一員でしょう。
私はあれが誰と話しているのか気になりました。
扉に近づき、更に目を光らせると、相手も必然と分かってきました。
そこには、大統領であり私を捕らえるよう部下を使った男・ベーツがいました。
彼は疑わしそうな、しかし期待のこもった目で白い仮面の男を見つめていました。
「おい、トァネミとやら。本当にこれでいいんだろうな?」
「ああ、何も問題はない。これで準備は整う。」
「ふふ、そうか。......これで、ようやく我が野望は果たされる!あのマシンを手にし、そして羽虫どもを黙らせ、他の国やかつてのさばっていた国に鉄槌を下し、我々が王となるのだ!!」
ベーツはそれはそれは嬉しそうでした。
白い仮面の男はトァネミと言うそうです。
「では次の段階へ移そう。まず、そのマシンの搭乗者がいる国へと何か伝達するのだ。もしそやつを寄こさないなら誘拐した巫女を殺すとでも言ってな。」
...私ですか?!
というか、私の事は既に知っているような口ぶりですね。
......じっと見つめましたが、果たして私は彼を知っているのでしょうか?
何も分かりません。
それに仮面で誰だか分からないので、確認のしようがありません。
「何故そのような事をする必要がある?...あの少女も手に入れた、あとはあの国を責めるだけではないか!!」
「それでは我々の計画は達成できん。前々から話していただろう?」
我々の計画......?
一体、何のことでしょう。
「計画ねえ......。正直に言おう。もう貴様らは必要ないんだ。私は奴らからマシンを奪う算段を手に入れた。もはや貴様の情報などいらないんだ!!!」
「ほう、そうか。ならば、ここで消えて貰おうか。」
ベーツは調子に乗ったような顔で嘲笑うと部下に命じてトァネミを追い出そうとします。
スーツ姿の男の人たちが一斉にトァネミを囲い、銃を向けます。
すると、彼はすぐ動き一瞬で部下を封じ込め、そのままダリアも使っていた銃を抜きあっさりとベーツに向けます。
「ひっ、ひえ~~~っ。わ、分かった、悪かった!...私の部下が一瞬で...。そんな、馬鹿な。」
「バカでもなんでもない。この程度雑作も無いのだからな。それよりも、貴様よくも抜け抜けとそんな真似が言えたな。もし自分の言った話が無ければ今頃お前たちは何もできず夢をかなえるどころではなかったのだぞ?」
「そ、そうだな。悪かった。よし、その作戦に乗ろう。...これで、満足だろう?」
「ああ、それさえ守ってくれれば何も言わん。なーに、きっと貴様の想像以上に嬉しい事が起きるさ。それに、自分たちの計画さえ終わればその後は好き勝手にして構わん。」
...何の話か正直分かりかねますが、少なくともあの大統領はかなりの情報提供をトァネミから受けていて、それを貰った上で裏切ろうとしたんですね。
それを防がれあえなく作戦に乗らざるを得なくなった。
何というか、この世界の人にも大概悪い人も居るんですね。
悪とはいえ、仲間であれば協力したらいいのに。
「それならいいが。じゃあ連絡を送った後は?奴は来ると思うか?」
「間違いなく来るであろう。この世界で得た情報的に、あのマシンを手に入れた男は仲間を傷つけられることに敏そうだ。伝達に、もし断ればあの少女を殺すとでも書いておけ。無論、湾曲表現でな。」
楼汰様の事ですね。
...確かに彼の事なので、和磨様たちと話しつつ私の誘拐に関して必死で一目散に探していらっしゃるでしょう。
もしさっきのような情報が流れでもしたら、きっとすぐこの国に来てもおかしくはありません。
自惚れかもしれませんが、きっと彼は来てしまうと思います。
何とかしてきてはいけないと伝えなくてはいけません。
と。
「そうかそうか。ならば、そこで我々が叩けばいいんだな。」
「ああ、そういう事だ。もしここで奴が倒れてくれればありがたいし、最低限時間稼ぎが出来れば終了してもいい。」
「だがもし本気で攻められれば我々はきっと負けてしまうぞ。」
「ああ、そうなる前に自分の切り札も出そう。そうすれば負けは無い。」
「...ふふふ、そうか。そうか!!これで、本当に詰みと言う奴か。」
なんてことでしょう。
彼らはただ楼汰様を利用しようとしていただけではありませんでした。
あわよくばで戦闘不能を狙うトァネミ。
これは、きっと、先ほどの会話から察するに日本で何かをやる気なのは間違いありません。
尚更マズいじゃありませんか!!
楼汰様はこちらに来て兵器とトァネミの切り札で殺される危険性が増え、日本では謎の行動を起こすデスペラードが居るという事ですからね。
彼にどうにかして伝えなければ.........。
「...ところで.........。」
「さっきから貴様は何を見ているのだ?」
彼の、トァネミの目が私を見つめていました。
私の、ほぼ端しか映っていない体を見つめた彼は私にそう言いました。
瞬間鳥肌が立ち、ここを離れなければと思いました。
急いで去り、自分の部屋へと戻り震えました。
まさか、伝える前に殺されるのではないかと。
監視役の女性が怒りながら近づいてくるまで、私は部屋で震え続けました。
「まさか嘘つかれるとは思いませんでしたよ。お見事、やられましたね。お陰で私はベーツ様に叱られましたし。」
女性が滅茶苦茶怒った顔で見つめてきていて怖いです。
ですが、先ほどのような恐怖はありませんでした。
そこに安堵を抱いていたのですが.........。
「ここに居たのか。」
なんと、見つかってしまいました。
「これはトァネミ様。どうしましたか?」
「ああいや、そこの小娘に伝言をとね。...時は満ちた。もはや貴様でもどうにもなるまい。終わりだ。運命の巫女よ。」
「!?」
...彼は間違いなく私を知っていて、そして彼の伝言は紛れもない私への言葉でしょう。
「...えーと、どういった意味で?」
「君には関係のない事だ。それより、次こそ逃げ出さないよう見張っておくんだぞ。」
「はい、承知しました!!」
これは、最終日までどうする事も出来ないかもしれません。
情報は多少得ましたが、これでは結局意味がありません。
伝えられなければ私の負けでしょう。
いえ、きっと楼汰様も流石に厳しいかもしれません。
何より、もし出てきてしまえば日本は終わってしまいますし。
その後も私は、ベーツが日本へと出そうとした動画に無理やり移り音声を遺そうとしましたが、普通にカットされてしまいました。
万事休す、まさにその言葉が当てはまる状況になってきた最中。
なんと、未確認の巨大な何かがこの国へと迫っているとの情報が日本に居る情報提供者から届きました。
明らかにリーパーでしょう。
ついに、やってきてしまったと後悔します。
「ふふ、ふはははははは!!!!!!やったぞ!!!!!誘き出しに成功したっ!!!!あとはもう目と鼻の先だ!」
ベーツは大喜び、すぐに準備に取り掛かりました。
準備の最中、私は彼に言われました。
お前は人質だから奴に見せて怯えさせる道具にすると。
ついてこさせると。
流石に拘束こそ取れないでしょうが、外に出られるならばまだチャンスはあります。
私はきっと撃たれるでしょうが、彼に事実を伝えられます。
一瞬でも隙があれば、きっと伝えられるはずです。
それを聞いてもらって、楼汰様には戻っていただきましょう。
私の遺言であればきっと守ってくれるはずです。
私はもうどうなってもいい。
一先ず、この世界とあちらの世界を守れるならばと、そう考えました。
楼汰様が来た時、嬉しさと悲しみが入り混じってしまいました。
勿論、来てくれたのは嬉しいですし私自身......心細かったです。
ですが、理性が喜ぶな、今すぐ彼を逃がせと叫んでいました。
彼らは完全にリーパーを制圧する為か、様々な乗り物を使って待ち構えていました。
と、突然リーパーからとんでもない爆音で楼汰様の声がしました。
あそこまで広範囲に音声を響かせる装備は無かった筈なので、あれも楼汰様の「プログラム」のお力なのでしょう。
その後音声の調整されたリーパーは、私を返せと叫びました。
あれは誘拐だからとか、この国を許すとか。
何故だか、少し楼汰様がいつもとは違く見えました。
こう...異質というか...。
とにかく、彼は焦っていましたがいつもの焦りとは違うような雰囲気でした。
と、先ほどまで隣に居たベーツが消え、気が付けば兵士たちの後ろからマイクを使い話そうとしていました。
彼は楼汰様がリーパーから降りなければ私を殺すと脅しました。
私は勿論楼汰様の事は信頼しておりますし、大事な方だと思ってはおります。
ただ、今回のあの方には違和感を感じていました。
いつものあの方では無いと。
......あまりこういう事を自分から言うのは何ですが、彼はひょっとすると私を取り返す事1点にのみ関心を向けているのかもしれません。
だとすると、彼はこちらを攻撃し、私を取り返した後も戦ってしまう可能性があります。
それは、私の望むところではありませんしそれに彼にとっても後々後悔する物事となるでしょう。
私は知りませんが、何か彼は脳内にこびりつく程の過去があると聞いています。
アイツ...と楼汰様が語る方を私は存じ上げませんが、彼はその後悔をずっと引き摺っています。
楼汰様はアイツと呼ばれた方を私と重ねて、苦しんでいるのでしょう。
ならば、希望になると約束した私ならば。
彼をなんとかして取り戻さなくてはならない。
そう、思いました。
彼にこれ以上の怒りと、悲しみを与えてはいけないのだと。
ベーツは相変わらず勝ち誇った表情で何やら語っています。
あまりに心地よかったのか、口を滑らせてあの方と言いました。
これに楼汰様は気づいてくださるでしょうか。
この一件にはこの国ではなく、デスペラードが関わっていると。
そうなれば、彼は冷静になれるでしょうか。
そうならなかったとしても、私にはもう出来る事は多くありません。
出来る事を必ずやり遂げて、楼汰様の普段の心、想いを取り戻します。
ついにはベーツは、その後の話をし始めました。
彼をこちらに来るよう話し、選択を仄めかし、お金だとか女性だとか、報酬の話をしています。
............。
今学生と仰いましたが私はれっきとしたレディで..................。
...何でもありません。
と、リーパーの雰囲気が急に変わりました。
何やら動き出そうとしていますが、彼の動き方とは何か違いました。
更に、彼はさも当然のように砲台を展開します。
私たちの後ろ辺りに居た兵士たちが大慌てで「正気か!?」と言っているのが聞こえます。
私も、同意せざるを得ません。
いくら怒っていたとしても、ここまで楼汰様がするでしょうか?
一体、何がそこまで彼を追い詰めているのでしょうか?
果たしてその砲台を撃ち抜いてしまうのでしょうか。
きっとそれを撃ったら、彼はまた更に傷つき、二度と"アイツ"との思い出に帰る事が出来なくなってしまうでしょう。
彼が道を踏み外すことだけは避けなければ。
と、兵士の1人が私の腕に付けられたロープを引っ張り、そして後ろの兵士が銃を向ける音がしました。
きっと彼は後ろを巻きこませて兵士ごと吹き飛ばすでしょう。
そんな事はさせません。
私が...............。
私が彼を守るんです!
そう思ったとき、かつてダリアとの戦闘でボロボロになった楼汰様にトドメを刺そうとしたダリアへ向け撃ったあの光が集まってきました。
私に、力を貸すとでも言ってくれているようでした。
何だか分かりませんが、きっと神の思し召し。
あの時のように、手をクロスし祈ります。
祈れば祈るほど、胸に光が集まり粒子が煌めきます。
〈聖なる巫女の聖輪よ。全てを救済し、全てを天に還せ!銀色の粛清〉
私から放たれた銀色の輪が呆気にとられトリガーを引けていなかった兵士たちに当たり、更に其のはずみで私を捕らえていた兵士とベーツまでも飛ばしました。
今です。
急いでマイクを回収し、彼に呼びかけます。
「楼汰様ぁーーーーーーーーーっ!!!!!!!これは罠です!!!!!!!!今すぐ、今すぐ日本へと戻ってください!!!!!!!早くぅうーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」
と、楼汰様の動きがストップします。
ひょっとして、私の叫びが通じたかと。
そう、喜びかけたその時。
白と黒のマシンがリーパーの後ろに見えました。
叫ぶ間もなく光線が発射され、かろうじて避けたリーパーの直線状に居た兵士たちや飛行機が吹き飛んでいきます。
海に勢いよく落ちた光線のせいで水の滝が出来、それが勢いよくこちらに向けて落ちてきます。
あまりの恐怖で動けない私は目を瞑り、そのまま来るであろう衝撃を待ちました。
いつまでも来ない衝撃に目を開けると、そこはリーパーの掌の上で。
彼は私を持って庇ってくれていました。
周りは全て流され、楼汰様の陰に居た兵士数名とベーツが残っていました。
そして、そこには白と黒の色合いをした少し綺麗なカラーリングのマシンが居たのでした。
楼汰様は私を優しく大地まで降ろすと、立ち上がり白黒マシンへと向かいます。
彼は剣を出すとそのまま飛びあがり勢いよく斬りつけました。
あれは避けられるはずがありません。
力があるタイプならば受け止められるかもしれませんが、少なくとも動きは見れる筈です。
...そう、見れる筈だったのです。
普通ならば。
しかし、現実として、その白黒のマシンは.........。
何故かリーパーの真後ろに居たのでした。
さあ、ここからどう戦う、リーパー。




