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適合者はこの俺!!!!  作者: こしあん大福
第1章 真紅の雨
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第63話 失望と希望、そして...

前回の話のカーㇴ視点です。

カーㇴ視点から攫われるまでを書きました。

【カーㇴ視点】


楼汰様はいつだって、誰かのために戦ってきました。


少なくとも私が来てからはずっと何かに追われるように必死で戦っています。


彼は、私にとって英雄そのもので世界を救うヒーローでした。


ですから、私は彼をサポートする事で別の段階で一緒に戦う事が出来ると勝手に思っていました。


しかし、それは違いました。


彼はリーパーの副作用で傷つき、悪意で傷つき、ボロボロでなんとか踏ん張っていただけに過ぎなかったのです。


私は自分の烏滸がましさを恥じるしかありませんでした。


一緒に戦っているなんて甘えで、本当はそのラインにすら立てていないのだと理解し、死ぬ気で支えようと思いました。


あの人がもし倒れたら、誰が支えるのでしょうか。


あの日の、故郷での彼がいなくなってしまったみたいにまた、私は何もできないのでしょうか。


否、出来ないじゃない、やるしかありません。


そう思ったその日から、私は本当のラインに立てたと思っています。















彼の正体がバレてしまった。


ほんの少しのスキでした。


この世界にはエスエヌエスという、世界中の人たちと簡単に繋がれるシステムがあるらしいのです。


私たちの世界にも似たようなシステムがあった為、勝手にそれだと思っていました。


世界を観測するIFRTでの作業をまとめ、A-101の人たちに公開するものです。


あれのお陰で私たちはいつでも他の世界でどんなことがあってどんな風にこれから観測を続ければいいのかを知ることが出来、活用していました。


だから勝手に、あんな感じだと思っていたのです。


ですが違いました。


この世界の繋がる力は、自分の欲をひけらかすだけのアイテムだったようです。


私たちのような情報伝達の為という意思は薄れ、その反面自分の凄さを誇示するような投稿がされていました。


そしてそれが、「いいね」という数値として可視化され、他人より如何に自分が優れた投稿を出来るかで競い合う人たちが互いにいがみ合う混沌となり果てていました。


彼らからすれば、楼汰様のリーパーなんてものは良き素材だったのだろうとしか、今は思えません。


気づけば、隣にいた男性は携帯端末を向けていて。


撮影されたデータはあっという間に世界に配信されてしまいました。


そうして、あの人は自由まで奪われてしまいました。


......私には後悔があります。


私は確かに別世界の人間です。


ですが、だからと言って油断していいようなものでもなかったと思います。


私は彼や和磨さんやこの世界の書物から色々なデータを手に入れています。


そんな私なら気づくことが出来た筈です。


そうできなかったのは、偏に私の怠惰が原因だと思いました。


.........彼もまた、その頃から忙しくなり始め、少しずつ関わる日も無くなっていきました。


彼はいつの間にか政府公認の職業となり、監視をしている和磨さんから信頼を手に入れていました。


私はどんどん、自分が嫌になっていきました。


私はまだ全然お役に立てていません。


彼は私の英雄として必死に身を削っているのに、私は精々ご飯を運ぶ程度。


彼は、


「いいじゃん。それだって立派なお仕事。それより、いつも悪いな。小間使いみたいに遣っちゃって。たまには断ってもいいんだぞ?」


と言ってくれてはいましたが、それは私の魂が許せませんでした。


和磨さんはこの世界の様々な情報を知っているからか、彼のサポートをかなり行えているようです。


それに対し私は特に成果も得られないまま毎日のように情報を集めるだけでした。


焦っていたとは思います。

















彼が憔悴しだしたのはその後でしょうか。


どうも、彼が救えなかった兄妹が彼の事を逆恨みしているとの話でした。


彼はひどく困っていて、自分の責任だと抱え込んで潰れそうになっていました。


だから私はあえて突き放してみてはと提案しました。


私も、彼らは気の毒だと感じます。


急に襲い掛かった災害によってご両親を失い、子供二人だけでの生活。


きっと心苦しい瞬間が何度もあった筈です。


確かに和磨様の仰っていた正論は正しいです。


ですが、その正論で余計に傷つけてはお終いです。


......とはいえ、その子たちに阻まれて本来救う事のできる筈だった命を失っては元も子もありません。


彼らには敢えて厳しめに話して、現実を知ってもらうのもいいかもしれません。


楼汰様を恨むのも、きっと違うと理解した上でそれでも感情の整理がつけられずに自暴自棄なままなのかもしれませんからね。


彼ら少年少女をいい方向に導くのも、巫女のするべき役目です。


勿論苦肉の策であることは理解しています。


ですが、これ以上余計な対立を深めても意味が無いのです。


だったらせめてこの子たちみたいな子供を少しでも増やさないよう戦うしかないのです。


......本心から、そう思っていました。


ですが...............。



















結局、失敗しました。


楼汰様は、何も悪くありません。


兄妹も、悪くない。


あの作戦を立案した私が愚かだったのです。


またも、エスエヌエスを利用した作戦に引っかかってしまいました。


今の時代は子供でもそういったものに慣れているという前提があったにも関わらず私はまたも嵌められてしまいました。


楼汰様があえて言った言葉は全て悪いように切り抜かれ、編集され、あたかも悪人のように改変されていました。


当然彼はそんなことをしませんが、映像の中では彼はお兄さんの方を殴っているかのような描写もありました。


正直、これも気づけたと思います。


なのに私は判断を見誤った。


私は、何度も彼を裏切ってしまっています。


.........結局、彼はより悪意のこもった目で見られることになってしまいました。


私にとって避けるべき事態が、どんどん出てきてしまっている。


その事実に身震いしました。


私は、なんてことをしているのかと。




















私はその日、そのご兄弟がどこで何をしているのか気になり、探していました。


楼汰様から聞いた特徴通りの子たちが居たので追いかけると、途中の建物のところで見失ってしまいました。


建物の中は既に廃れていて、誰かが入るには丁度いい場所になっていました。


私は必死でそこを探しました。


もしかしたら、今回の動画を流した人がそこに居るかもと。


しかし、見つからず時間が経ち私は諦めて外へ出ました。


とぼとぼと歩いていたら、楼汰様を探していると思われし声がしました。


慌てて顔を出すと、楼汰様が安心したかのような顔でコンビニを見ていました。


何故彼が今こんな所に!?と、困惑こそしましたが何かあったのだろうと思い歩いてくる彼の袖を掴み引きずり込みました。


ですが、後ろにゴミ箱があったのを忘れておりそれに躓いて転んでしまいました。


彼はそのまま私の肩と胸の間くらいに顔を埋め、困ったような顔で謝ってきました。


謝るのはこっちです。


私が後ろを確認しないからこうなってしまったのにこの対応、流石楼汰様と言わざるを得ませんでした。


彼に話を聞くと、何と彼は外に出てきてしまったらしい。


彼曰く、お腹が空いたのだと。


そして出てきて、バレてしまったのだと。


私はてっきり何か特別なことが起きたのだと思っていました。


だから拍子抜けしました。


そして、そうすると同時に深い絶望に襲われそうになりました。


私は、直接外出することを選ばれるほど無能だと思われてしまったのかと。


今まで行ってきた行いですら嘘と思われてしまったのだと。


彼はいつも私を信じてくれました。


そんな彼が、楼汰様が、私の事を見限ったのだと。


そう感じてしまったのです。


私が実際何も出来ていないのは棚に上げて、私は何故か怒りが沸いてきました。


そこまでするならいっそズバっと言ってくれたら良かったのにと。


彼は最初こそ謝ってきましたが、それが本心じゃないと私は思いました。


でも、こういう時くらいは怒ってもいいなんて言われて、私の気も知らずにと怒りは膨れ上がりました。


あまりにも怒り過ぎて言葉がゆっくりになるくらい私は怒っていました。


彼に悪い所は本来ある訳がなく、むしろ私が八つ当たりしているような状態です。


私は怒るに怒れないまま、彼に聞きました。


何故端末に連絡をくれなかったのかと。


すると彼は凄く悲しそうな顔をしつつ、毎回頼んでいるから時間が丁度空いた今回は自分で行ってもいいかと思ったと答えました。


私は、涙が零れそうでした。


やはり、私の想像は当たっていたのだと。


毎回頼んでいたけどもう私に頼って裏切られるのは嫌だと。


そう言っているように聞こえてしまいました。


必死にこらえながら言います。


気にしないでと。


雑用なんか任せてと。


嬉しいから大丈夫と。


......私のかつて言った、貴方の"希望"になるという言葉すら、もう信じて貰っていないのかと、そう思えるくらいの時間でした。


怒りは急速に萎み、その代わり悲しみがどっと押し寄せました。


私は、何のお役にも立てない。


それどころか、これからもっと厳しい戦いに巻き込まなければならない。


なのに、その相手に不信感を抱かせてしまっている。


私に、今更何が出来るのだろうと。


「希望」になるという事が、どれだけ遠い事かを思い知りました。


私じゃお役には立てなさそうです。


力不足、というよりは言葉不足、ですかね。


戦闘では足を引っ張るどころか完全に不参加ですのでせめてと思っていました。


そう伝え、顔を隠そうとすると彼は困った顔を一瞬した後こう仰いました。



「その言い方はズルいだろ。力不足な訳ないだろ。助かるし嬉しいさ。...カーㇴがいいなら、これからも頼んでいいか?...俺も、希望として戦って見せるからさ。」



顔を思わず上げました。


彼は、希望の話を忘れてなんかいなかった。


それどころか、今この時間にも彼は私にとっての"希望"であるように心がけてくれていました。


それは私にとって、ここ最近で一番うれしい言葉でした。


彼はまだ私の事を、いえずっと私の事を信じてくれていました。


バカなのは、怒られるべきは私の方でした。


彼が、私や周りの人の事を疑う訳が無かったんです。


...いつしか彼に言われた言葉を思い出します。


あの時も私は、自分を責めて彼に泣きながら思いを吐露しました。


その時、彼は自分を救ってくれた私を相棒がお前でよかったと、お前が希望でよかったと仰ってくださいました。


彼はあの時、自分を認めることが難しいことと、それでもそれを乗り越え許す事が大事だと教えてくれました。


...未来を拓く「運命の巫女」だと、泣きじゃくる私を認めて、一人の人間として見てくれました。


また、私は救われました。


今度こそ、彼のお役に立たないと、面目が立ちません。


彼に本当に力不足ではないと胸を張って言えるように、努力したいです。


私は涙が引っ込み、いつの間にか笑顔になっていました。


そのまま答えます。


「ええ、お任せくださいませ!」


と。














楼汰様は素直にコンビニで買い物をすることを任せてくださいました。


今思えば、私が買ってきたものや作ったものを美味しいと褒めてくださる方が、疑う筈は無かったんです。


今更ながら、先ほどの自分が恥ずかしいです。


シチューを食べた時のあの笑顔、あれは疑えないと、そう信じています。


.........ただ、今何か失礼な事思いましたね?


片言になったって許しませんよ!!!
















コンビニに入り、すぐに飲み物のコーナーまで行くとペットボトルのお茶を手に取り退散しました。


その後すぐ弁当コーナーへ。


弁当コーナーには様々なご飯が並んでいました。


彼はもし気になるものが有ったら買っておいでと余分に資金をくれましたが、切羽の詰まったこの状況で食欲に現を抜かすほど私だってバカじゃありません。


とりあえずボリュームのあるモノというリクエスト通りに、唐揚げ大盛弁当を持ちレジに並びました。


と、その時。









ゴツン、と。








首に衝撃が走りました。


その時、レジに並んでいたのは私と後ろの人だけ。


後ろの人は、この国の人ではありませんでした。


その方と、更にその後ろの方が交互に何かを伝えていました。


私の身体から一瞬で気が抜けていき、意識だけが若干残っていました。


倒れそうになる私の身体を抑えた二人は、片方がビックリしている店員さんと対応されている客にお金を投げると何かを叫びました。


店員さんはコクコクと頷き、お客さんは真っ青になってお金を見つめていました。


ふと、楼汰様の事を思います。


申し訳ありません、楼汰様。


あれだけ周囲に警戒するよう言っておいて、出来ていないのは私の方でした。


私はどうやら捕まってしまうようです。


ですが、お気になさらないでください。


どうか、私の様にはならぬよう、細心の注意を払ってください。


彼には絶対聞こえない距離の中心で願いながら、私は完全に気を失いました。






最後に心の中で思ったのは、冷たさでした。


彼を引っ張って転んだ際、触れた彼の体温を思い出しました。


何故今、それを思い出したのかは分かりません。


ですが、この土壇場で今寒いと、そう感じながら私は意識を手放しました。























気が付くと、知らない天井、知らない部屋、知らない家具に知らない人。


何もかも知らない場所で、私は知らないベッドに寝かされていました。


知らない人は起きた私には気づいていないご様子。


というか、寝てました。


こっそり起床し、カーテンを開けました。


そこには。















楼汰様の居た国とは、全く違う景色が広がっていました。

さあさあ、一体どうなってしまうんでしょうか。

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