第61話 顔バレ
もうこの作品が始まって大分経つわけですが、未だにほぼ毎日10人以上の方が見て頂いてるみたいです。
本当にありがとうございます。
まだまだ続いていくので、宜しければこれからも応援お願いします。
.........動画が拡散され、早2日が経った。
正直、滅茶苦茶キツい。
俺はあっという間に週刊誌に取り上げられ、SNSでも暴露系によって拡散され面倒なことになっている。
和磨や玲子、更には連絡をくれた小沢くんまでもが調べてくれてはいるが、誰が流したかは特定出来ていない。
名乗り出れば英雄だろうにそれをしないって事は、まだ公の場には出られないってことか?
はたまた俺を邪魔したかっただけの可能性もある。
どちらにせよ厄介なことになった。
小沢くんのメッセージはかなり気を遣ってくれていて、今度また会いたいという事まで書いてあった。
正直ありがたかった。
彼も新しい事業で忙しいだろうに、それでも会社で先輩だっただけの俺に気を遣ってくれるのだ。
良い奴だよアイツは。
オタクくんだなんて呼ばせていたのは一体誰だよ。
......本人か。
色々と生活にも影響が出るようになった。
何といっても変装が欠かせない。
今までも軽い変装はしていたんだ。
最初に動画が投稿されてから、下手に注目を浴びたくなかったからな。
外に出るときはサングラスをかけたり、帽子を被ったり。
幸い、会社が無くなってからは規則も無いから髪も染めたりとかな。
ただ今回はばっちり顔を写されてしまっている。
これはどんなに変装をしても軽ければバレてしまうだろう。
しっかり目に変装をし、近くで見ても知ってる人以外にはバレないだろう姿にしてみる。
.........バレるだろうなあ。
俺声も出てるしな。
外出が出来ないのは最早不自由極まっている。
あんまこういう事言いたくないけど、俺一応国のヒーローポジにいるのよね???
どうしてこうなったのやら。
この付近に搭乗者が居るというのは前々から噂されていたが所詮来るのはお遊びでくる配信者かちょっと理解できない宗教団体みたいなのだけだった。
カーㇴがそこそこ話を聞かれるらしくその都度報告してくれていた。
だが、今回の動画でマスコミやら有名暴露配信者やらが集まってきてしまった。
余計出れなくなった。
弱ったな。
実は、腹が減ったのだ。
至極真っ当な理由で外に出たい。
家にあるのは水分のみ。
最近はカーㇴが何かを買って帰ってくるのを待つか、自分で何かを買って帰るかの2択だった。
よって冷蔵庫・棚・籠にもメシは無い。
が、カーㇴは現在外出中。
和磨も居ない。
コンビニに行くのにも一苦労なこの状態で、どうにかしていくしかないんだろうな。
車を使えば?なんて意見もあるだろう。
だが、もし車から降りた際顔でも気づかれたりしたら?
徒歩なら最悪走って逃げて隠れてやり過ごすなんてことも出来る。
でも車だと最悪駐車場から出るのを防がれる。
しかもナンバーを特定されたりでもしたら終わりだ。
だから、なるべく徒歩で行きたい。
誰か知ってる人に頼もうにも近くに知人が居ないのだ。
.....................。
はぁ~~~~~~~っ。
俺が、出るしかないみたいだな。
...マスコミと配信者とあの兄妹に出くわさない事を祈って、俺は外に出た。
心臓の音がうるさい。
まるで恋愛漫画かとでも言うように鼓動が速まっている。
鼓動に合わせて脚を動かし、なんとか歩く。
幸い、人はあまり出ていなかった。
多少歩いている人はいるものの、ながらスマホしてる奴や二人で話しながら歩いている人らしかおらず、今のところ怪しい影は見えなかった。
助かったと、正直思う。
そのまま細い道を出て、大通りから向かう。
こっちの道の方がかなりショートカットになるんだ。
少しでも省略して人と会わないようすぐ帰らなければ。
しかし、この平穏も長くは続かなかった。
このままなら着けると油断したのがよくなかったんだろう。
しばらく歩いていると、誰かに尾けられている気がした。
いや、間違いなく尾けられている。
気じゃない、確実だ。
しかも数はかなり多い。
これは、まさか。
振り返りたくなるが、ここで振り返ったら間違いなく声を掛けられる。
黙って歩き続けよう。
...と。
「すみません、少しお時間宜しいでしょうか?」
と話しかけてきた影があった。
その影はペンとノートを片手にこちらに語り掛けてきていた。
これはマズい。
話を返すと他の影も来るだろうが、無視したら人が増える。
...仕方ない。
「う゛ぅ゛ん゛」
声を少し変えよう。
これで諦めて欲しいもんだ。
「どうかしましたか?」
よしよし、想像より低く出ている。
「ここらで巷で話題のロボットの操縦者が見かけられたという事で近隣の方にお話を伺っている状況です。単刀直入に申し上げます。この男性を見かけられた事はありますか?」
そこで記者らしき若い男が見せてきたのはあの動画に映るニヒル顔の俺だった。
おい、せめてもう少しマシなとこ使ってくれよ。
しかし黙っているとかなり怪しい。
ここの選択は間違えてはいけない。
「...そうですね、私は存じ上げないです。お役に立てず申し訳ない。」
よしよし。
協力しているアピールをしつつ、ガチで知らない人って体を出す。
こうすれば怪しくもないし、且つマジで関係ない人感も出す事が出来る。
よし、このまま何処かへ行ってくれ。
と、記者が不意に立ち止まる。
「ああ、そうですか。大丈夫です。十分役に立って頂きました。」
ほら、騙せた。
...しかし、こんなんで役に立ったとか言うのか。
意外と近頃の記者はマスゴミって言われるほどじゃないのかもしれないな。
「...ええ、かなりありがたい情報です。ねぇ、岩動 楼汰さん。」
...。
.........。
何を、言った?
「...大丈夫ですか?岩動さん。...まさか、本当に本人ですか?」
...まさか、あの解答と俺の見た目だけで気づいた???
いや、いくら記者が敏腕でもこれだけじゃ気づけないだろう。
......いやまさか、まさか最初から気づいていて裏撮りの為にここまで?
...どちらにせよマズい、何とか否定しなければ。
「...何の話ですか?私は、そのイスルギ?って人とは何一つ関係ありませんよ。」
こう返すと、彼は嬉しそうに笑ってそう言った。
「そうですか。それは残念です、じゃあ最後に一つだけお願いを聞いていただいても大丈夫ですか?」
「...何でしょうか?」
お願い?
何を言ってくる気だ?
「今日はそこそこ暖かいのにそんな厚着なのには驚きです。もし岩動さんじゃないのでしたら宜しければ顔をお見せいただいても大丈夫ですか?」
...完全にこれ、気づかれてるな。
気づかれてるどころか俺の予想が大当たりなんじゃないか?これ。
裏取りで来ているからかなり余裕があって且つもう既に気づいている、みたいな。
ここはどうするべきだ?
顔を出せば終わってしまう。
かと言って理由も言わず出さなければいつまでも尾いてきそうだ。
こうなったら、出来るだけ応戦するほかない。
「...何故、そのイスルギさんでは無い私の顔を見たがるのですか?正直、嫌な気分です。人に顔面をじろじろ見られることの不快さ、貴方も分かるでしょう?」
一番いい手はこれじゃないか?
素直に嫌だと、関係ないんだと伝える。
すると、彼はこう返してきた。
「それは申し訳ない。ですが、少しだけ見せてくれればいいんです。別に貴方の顔を嗤おうとしている訳ではない。ただ、岩動さんじゃないのかどうかを確かめるだけです。もし、違ったらすぐに謝罪いたします。それに、謝礼をお支払いしてもいいですよ。...岩動さんじゃなければね。」
コイツ、完全に態度が砕けたな。
クッソ完全に気づいている。
こうなったら多少粗いが感情に任せて逃げ切る他ない。
「その態度が気に入らないんですよ。私だって別に見せるのは構わないが、そうやって常に自分がこうしてやるという態度が大変不快なのです。だから私は」
言い終わらなかった。
彼は俺の耳付近に顔を寄せ、囁いた。
「もう既に気づいていますから、無駄ですよ。早く顔を見せて、そして僕に特ダネをくださいよ。もういい加減茶番には飽きました。」
なっ、コイツ!
「勿論変な気は起こさない方がいい。他の記者たちも居ますからねぇ。もし逃げようとでもしたら、その瞬間叫んでやりますよ。」
...マジか。
ここまで悪意があるとは、やっぱマスゴミっているんだな。
しっかしどうしたもんか。
そこまでバレているなら逃げても無駄かもしれない。
だがここで騒動になるのもそれはそれでマズい。
...待てよ、日本政府に匿われているから余計な事喋るなとでも言っておくか?
......駄目だ、そんなこと言ったら国ごとスクープにされる。
もうこうなったら逃げる他ない。
そう決め、とりあえずお茶を濁す。
「...ははは、気づかれちまった?」
「ふふ、ええ、そりゃもう。そんなバレバレの変装してればねえ。」
そうか、これバレバレなのか。
よく覚えておくよ。
...と同時に走り出した。
こうなったらもう止まらない。
兎に角走って逃げる。
後ろからあれがマシンの操縦者だのなんだのという怒号が聞こえるが、気にしたら負けだ。
しばらく走ったが、恐ろしい事にあちこちに協力者がいるらしくソイツらが何度でも追いかけてくる。
正直もう体力が限界だ。
脚はふらついてるし、何よりメシ食いたくて出てきたわけだからもうフラフラだ。
腹減った。
どうすれば.........?
と、瞬間。
腕を掴まれた。
そして路地裏に引っ張られた。
終わった、と錯覚したがそれはただの錯覚だった。
「無事だったんすか!?良かったっす!!」
「和磨!?...お前、どうして?」
「自分、色々と作業が溜まってまして。それを片付けたらその後やけに周りがうるさくて。それで調べた所マシンの操縦者の正体が分かって、しかも逃走中なんて聞いて。もう慌てて来たっすヨ。」
...心配してくれたんだな。
「すまない、助かった。ありがとな。」
「いえ、大丈夫っす!!...あの映像の件は、今必死に調べてるっす。まだ結果は出ていないっすけど、必ず捕まえますから。」
「ああ、期待してる。無理しないようにな。」
「いえ、国の英雄の為ならこれくらい!!!気にしないで欲しいっす!!!」
マジでいい奴だな。
最初の頃から大分イメージが変わった。
と、あっちの方から叫び声が聞こえたような気がした。
すると和磨が言う。
「あっちに抜け道があって、そこを抜けるとコンビニがあるっす。そこまで行ければ安心かと思うっすよ。」
何から何まで助かる。
しかし、和磨はどうするつもりなんだ?
そう思い聞いてみると、
「自分はここに残って彼らの足止めをするっすよ。これでも公安っすから、秘密には慣れてるっす。」
との事。
「ありがとな、和磨。何かあったらすぐ離脱しろよ。」
「大丈夫っすよ。心配性っすね、でも嬉しいっす。岩動さんもお気をつけて!!」
とだけ会話し、そのままそれぞれの行く方へと駆け出した。
しばらく走ると本当に抜け道があった。
その間、誰にも会わなかったな。
本当に抜け道だ、アイツマジで凄いな。
ありがたく通らせてもらう。
そのまま抜けると目の前にはコンビニがあった。
助かった。
さてと、そのまま飯をちゃちゃっと買ってとっとと逃げよう。
思いつつ道を歩く。
...と、またもや先ほどのように俺を誰かが掴み今度は隣の建物の陰へと連れられる。
今度こそ終わったかと恐る恐る振り返ると。
そこにはマジで焦った表情のカーㇴが居たのだった。
バレちゃいましたねぇ...............。




