第59話 青と白の談義
またもや久しぶりのデスペラード回です。
え?!そうなの!と作者も驚きの設定が出てきそうな気がします。
暗いトンネル内。
そこは、とある2人組によって占拠されていた。
そこにいたのは、あたかも怪しいですよと言わんばかりの白い装束姿の男たち。
片方のねちっこくにちゃにちゃした話し方の男は青い仮面をしており、片方のやけに神経質そうな男は白い仮面をしていた。
スィゲロとトァネミである。
結局彼らは、あのお方の了承を得てS-504へとやってきていた。
最初こそ注意されるかと思ったものの、いざ報告すればあのお方からは、
「そうか。まぁお前たちならばヘマをする事もあるまい。ダリアの二の舞にならぬよう注意せよ。...くれぐれもな。」
とのみ言われただけで、あとは一任されたようだった。
スィゲロはこの世界に来て、がっかりしていたことがあった。
それは、種の事である。
ここで一つ説明しよう。
そもそも、伝説の獣の核のカケラがみつかるまでのデスペラードの仕事とは何だったのか。
それはずばり、種を育てることであった。
カオスを生み出すとされる種は成長することで「螺旋の源」を生み出す。
このエキスは、伝説の獣の核のカケラを集めた後の工程において一番大切だと彼らデスペラードはあのお方に教わっていた。
勿論それ以外にも仕事はあるが、基本的な中心はこの種を成長させることだった。
そして種は、最終工程こそとある方法が必要なものの序盤はかなり簡単な方法で育てる事が出来るのであった。
簡単な方法というのが、今までデスペラード達が召喚していた異偶に関係する。
異偶を召喚する事で、どういう理由かは分からないが種のフェイズが一段階上がるのだ。
召喚しただけではそこまで上がらないが、召喚された異偶がその星の生命を殺害したり奪ったりすることで急速に成長する。
その為今まで異偶は呼ばれてきていた。
だが、ダリアは何故かその異偶を今の今まで、リーパーが動き出すまで呼ばなかったのだ。
誰もその理由は知らない。
理由を聞こうにもダリアは死んでしまったし、仮に生きていたとしても彼なら暴言を吐き、絶対に人に弱みを見せようとはしなかっただろう。
その為ダリアの異偶召喚の少なさの異常さは今思えば際立っていたのだ。
「や、やれやれ、どうせ死んじまうんなら理由位何処かに書き残しておいておくれよお。」
スィゲロは汗を拭きつつトンネル内でぼやいた。
彼がぼやくのも無理はない。
元々はダリアの目覚ましい活躍に対し少しの嫉妬を感じていた彼らが、ダリアのいなくなった世界を自分たちが管理することで今度はその恩恵を得ようと思っていたのであった。
ところが現実はそうもいかず、種は見つけたものの成長はしてないわ、あのお方から優遇して貰ったマシンをぶっ壊しているわで最悪だったのだ。
そりゃあのお方もヘマとか言うわなと理解した。
それと同時に、あのお方への深い感謝も抱く。
「で、でもやはりあのお方はお優しいねえ。最近は目立った活躍のない我らにさえ二の舞にならないようとか気を遣ってくださる...。あ、ありがたくて涙が出そうだよぉ。」
「辞めんか、スィゲロ殿は優秀ではあるがその気色の悪い喋り方だけは無理だ。受け入れたくもない。そもそもスィゲロ殿は顔も行動も気持ち悪いのだから少しは慎め。」
「ひ、酷いなぁ~。ぼ、僕が提案をキミにしていなかったら今頃ボクだけでこの世界を牛耳っていたんだよぉ?か、感謝してくれてもぉいいんだよぉ??」
「ふん。その提案をもし自分が断っていたらスィゲロ殿は今頃とっくにあの死神に葬られていただろうよ。自分が何度カバーしたことか。」
大げさに喚きにちゃっとした笑い方でトァネミを責めるスィゲロ。
しかしそれを一息でトァネミは否定した。
スィゲロとトァネミは昔からよくパーティを組んで他の世界へと向かっている。
その為、お互いのことはよくわかっているつもりだ。
スィゲロはよく考えられる奴ではあるが、変な所でいつもやらかしているためそれを毎回のようにトァネミがカバーしているのだ。
少なくともトァネミはスィゲロ一人でやり切れるとは到底思っていなかった。
しかし、スィゲロ本人も実は一人でやり切れるとは思っていなかったりする。
「しかし、色々と違和感があるな。」
トァネミが唐突に言った。
「い、違和感??な、何の話なんだい?」
「いやな、結構こう何か嫌な感覚を覚えるのだ。例えばだがダリアが1人でいた訳だ。」
「訳って、ア、アイツは人嫌いだったし、あ、当たり前なんじゃないの??」
そう返すスィゲロだったが、少し思い当たる節があった。
「...そう言えば、いつかの定例会議の際、S-504に行くのはロェシーとツィヒックも一緒じゃなかったか?」
スィゲロが思いつくのとトァネミが話したのが同タイミング。
スィゲロは思わずトァネミを見る。
「そ、そう言えばそうだねぇ。...確かに違和感と言えば違和感かもしれないけれど、そ、それが何か関係しているとはお、思えないけど。」
「自分も関係しているとまでは思っていない。...ただ、少々不気味なだけだ。あのお方に対しては誠意を見せていたダリアがそうカンタンに一人で行こうとする訳がない。だとすれば、奴が1人で行かなければならなかった理由が存在するんじゃないか?」
「...一人で?そ、それに何の意味があるって言うんだい??」
スィゲロは、自分で言っても何を言っているのか分からなかった。
ただ、胸に確かにしこりが残りそうな闇が広がった。
「...さあな。ただ、どちらにせよこの世界には注意した方がいいのかもしれん。何か、自分たちの知らない何かが蠢いている可能性がある。」
「こ、怖いこと言うなお~~」
微妙に噛んだスィゲロを無視してトァネミは再び考える。
違和感はまだあった。
例えば何故、そこまで異偶を召喚出来なかったかとか。
異偶は確かに場所の指定こそあり、また召喚者にエネルギーが無ければ召喚が不可能という点はあったが、所詮それだけであった。
ダリアはそれなりに体力はある方であった。
更に言うと、この世界に来てから特に何かある訳でもなく異偶を召喚出来、ペナルティが有る訳でもない。
つまりダリアが召喚していなかったのは意図的なものだった可能性が有るという事だ。
だが、主を敬愛するダリアが余計な事をするとは思えない。
となると世界の欠陥か、はたまた.........。
更に、ダリアがこの世界で銃を使った痕跡も発見したが、あれで殺害出来ていないとなるとそれも中々に不思議だった。
あの銃はあのお方特製のシロモノで、少なくともこの世界の端末で垣間見た映像では一回マシンで死神を倒していたらしい。
つまりボロボロだった搭乗者を殺す可能性は99%レベルだったという事だ。
例え巫女の介入があったとしてもどうにか出来はしないだろう。
まるでどうなっているかわからない。
とにかくこの世界には何か自分たちにとって良くないモノが動いていると感じたトァネミはこう語った。
「...あまり悠長にしていられる訳には行かないらしいな。早めに伝説の獣の核のカケラを手に入れ、ずらかるぞ。」
「そ、そうだねえ。この世界にもあるらしいし、早めに見つければそれだけあのお方からも評価してもらえだろうしねぇ。」
「それもあるが、色々と不都合が多すぎる。いくらダリアが余裕をこいていたとしても流石に召喚くらいはしっかりとやるだろう。元々は種がメインだったのだからな。」
その筈だ。
だが、ダリアはあれで読めないところがある。
何か隠していた可能性は否定できない。
ただどちらにせよ、あまり良くない方向に舵を切っていそうだ。
「スィゲロ、お前は引き続きカケラを捜索しろ。場合によっては切り札を使用しても構わん。」
「わ、わかったよぉ。ト、トァネミ、き、君は何をするつもりなんだい?」
「自分か?自分はひとまず種を最終段階までにして見せる。幸いお前のお陰で異偶はあれからかなりの量召喚出来ているからな。」
「へへ、そ、それほどでもないさ。......あと少しでカオスが始まるなあ。なあなあ、そ、そうしたらあのお方、よ、喜んでくれるかなぁ?」
「ふん、どうだろうな。今はあのお方も忙しいようだし...。ま、どちらにせよやるしかないだろう。」
そう言うが早いか、それぞれ出口に向かい歩き出した。
トンネル内には不気味なほどの静寂が残されていた。
2人が出ていくのを見ていた影が嗤う。
「おいおい、やっぱここに居たのかよコイツら。っはは、やっぱ皆考える事は同じだよなぁ。」
彼の顔には赤き仮面が着いていた。
「でも俺の邪魔はしないで欲しいかな。場合によっては、だがな。」
とだけ言うと去っていった。
朝日が昇り、もうすぐ一日が幕を開ける。
激戦の予感がする雲が流れた。
次回はあの少年たち視点でお送りします。




