第55話 憎しみ
気づけば2か月たちましたね。
僕は元気です。
あー疲れた。
結局、俺自身も強くなってんのか、あるいは単に傷が多いだけで浅かったからか分からないがなんとか治った。
俺が運ばれた病院も政府の息のかかった病院で、色々と俺が何でこんな傷を負ってるのかとか聞かれないようになってるらしい。
ありがたいね。
一々、話すのも面倒だし。
結局異偶は倒せたが、その後再度出現なんてことは無かっただろうか。
......被害も多かっただろうし、終わってよかった等とは言えそうにないな。
とりあえず、家に帰るか。
帰宅前、当然だが医者から数日は療養するようにとお達しを受けてしまった。
彼曰く、俺は何故今動いてられるか分からないほど出血が酷かったらしい。
そんな数日で動けるようになる怪我じゃないなんて騒がれたが、今更だ。
現に数日で動けちゃってるしな。
恐らく、貧血になってはいるのだろうがいつぞやのように腹が抉れているとかそういう状況じゃなかったしな。
そんなこんなで今はのんきにてくてくと家路を急いでいる。
今のところその後は平和そのものなんてニュースも出てたし、大丈夫そうだからな。
...
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「...ところでさ、さっきから、何で着いてくるんだ?」
実を言うと少し前から気づいていた。
病院を出てすぐ、誰かは分からないが恐らく複数人から着けられていると。
なんだか分からん。
前からちょくちょく増えてきている隠れ俺のファン()か?
たまたま推し()を見つけて居ても立っても居られず出てきちまったんか?
しかーし、俺はもう日本政府に雇われてるから着けられても嬉しいわけじゃない。
俺の質問には答えなかったが、明らかに歩みを止めた音が電信柱の後ろからした。
...。
ま、その内出てくるか。
また歩き出すと、やはり着けてくる感覚がある。
今度は振り返ってもう一回質問してみた。
しかし、当然のように解答は無かった。
ただ今回はさっきとは違い明らかに隠れた感覚がした。
だから、敢えてそれではない違う電信柱を見てみる。
当然、そこには居ない。
俺が気づいていないとでも思っているのか、そいつらは後ろからじりじりと寄ってきていた。
瞬間。
何か殺気のようなものを感じ、素早く振り返る。
そこには、ナイフを片手に震えながらこちらを見る少年と少女が居た。
彼らの瞳には、迸る憎悪が見える。
それと、服のボロさや黒い炭の汚れのようなものも見えた。
何だ何だ急に。
俺はこの子たちの事なんて知らないし、そもそもナイフ片手に人を追い回すって相当な覚悟だ。
何か切羽詰まった状況なのかもしれないが、如何せん状況が分からん。
俺に何か恨みでもあるのか?
......駄目だ、何かした覚えはない。
全くと言っていいほど出てこない。
ならば、脅迫か?
たまたま道端歩いてたら居た俺に、金を出せとでも脅すつもりか?
兎に角、話を聞いてみよう。
「なあ、君たち。何でそんな俺を睨んでんだよ?俺、何かしたか?」
すると、少年の方が更に怒りを伴った表情で噛みついてきた。
「...hざけんなよ...。ふざけんなよ!......アンタのせいで、俺の家族は!!」
家族?
参ったな、俺、誰かと勘違いされてないか?
金の貸し借りも何か恨まれるようなこともどちらもしてないぞ。
「すまん、何の話か分からない。俺のせいってのは、何が俺のせいなんだ?」
すると、今度は少女が俺に話してくる。
「しらばっくれないで!!!貴方が、私たちの家族を殺した癖に!!」
???
俺が、彼女らの家族を殺した?
一体、何の冗談だ?
とはいえ、このガチっぽさ、彼女らに何かあったのは明白だな。
何があったのかくらいは大人として聞いてやらねば。
...しかし、しらばっくれると来たもんか。
俺は何をしらばっくれていると思われたんだろうか?
そして、何故だか少年くんは少し複雑そうな顔をしている。
何なんだよ一体。
兎に角、俺は更に聞いてみる事にした。
「なあ。殺したとか、俺のせいとか、本当に心当たりがない。俺が何をしたのか教えてくれないか?」
本当に俺が何かしていたなら謝る。
それ相応の対応もするつもりだ。
彼女らの反応的にないとは思うが、大人をからかっているだけの可能性も無いことは無い。
と、2人揃ってこう言った。
「アンタがあのマシンを出したってのは分かってるんだ!!!アンタが、アンタが早く、あのバケモノを倒してくれてさえいればっ!!......くれてさえいれば、僕らの母さんは助かったかもしれないのにッ!!」
.........。
...言葉を失うとは、こういう事なのだろうか。
そりゃ、あれだけの戦闘があって、あんだけ遺体が倒れていたら、こういう事だってあると予想はしていた。
...予想はしていたが、だが実際にこうして出来事に会ってみると、思わず尻込みしてしまうような圧迫感だ。
彼らは、俺が守り切れなかった人たちの中の被害者だ。
この若さで親を失い、兄妹というたった一人の肉親と信じ合いながら生きているのだろう。
彼らが言っていることは、無茶苦茶ではあると思う。
実際、本当に怒るべきは異偶で、俺じゃない。
でもこうでもしないと他に感情を落ち着けられる場所が無いのだろう。
...俺がもっと早く倒さなかったせいで救助が届かなかったってのも、事実だしな。
そして俺には、その無茶苦茶を受け入れなければいけない責任がある。
俺が昔見ていた作品に、大いなる力には大いなる責任が伴うとある。
俺の力も、責任があるんだ。
彼らには文句をいう権利がある。
......ただ、少しだけ反論もしたい。
確かに、守れなかった命もある。
それは至らず反省するべき箇所だ。
だが、俺だって人間でもある。
痛みを背負って戦っていて、当然見れない部分もあるんだ。
だからどうした、言えた立場か?って言われるとどうしようもないが、俺にも俺特有の苦しみがあるんだ。
...とはいえ、今の彼ら、ましてや子供にそれを言うのは酷だろう。
俺は大人だ。
今回の事は、謝って、しっかりと償おう。
謝ってどうにかなる問題じゃないが、それでもやらないよりはマシだ。
「すまなかった。俺がアイツを倒せなかったから、こんな事に。」
すると、まるで我慢していた咎が外れたかのように、口々に怒り、憎しみを含みこちらを罵倒してくる。
「そうだ、お前が倒せなかったからだ!!!お前が全部悪い!!!」
「よくも、お母さんとお父さんを返してよ!!」
「なんでお母さんとお父さんが死んで、アンタなんかが!!!」
...酷い言い草ではある。
でも、どうしようもない事実で、それに怒る被害者を止める事なんて出来ないだろう。
それでも、償うしかないんだ。
「...俺は君たちに償う責任がある。...ここから先、色々支援する。それ以外に、何か希望はあるか?」
すると、ナイフを持っていた少年が、俺を見て一言言う。
「じゃあ......。
これで自分を殺してよ。」
滅茶苦茶綺麗なナイフだった。
きっとまだ使ってない新品同様のやつだ。
彼らの子供らしさが映ったような綺麗さだ。
これもでも、俺が何処かを切れば赤く染まる。
この子たちの運命を、今度こそ今より確実に悪い方向に向かわせるように。
...ここで俺が死んだら、きっと色々成り立たない。
だから悪いが死ぬわけにはいかない。
だが、ここで誠意を見せなければそれは責任を持っているとは言わない。
...そのまま自分の腕に手を掛ける。
腕一本で、赦しを乞おうと思った。
しかし、腕にナイフを伝わした所でそれは中断された。
「何やってるんすか!?」
そこに、和磨が通りすがったからだった。




