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適合者はこの俺!!!!  作者: こしあん大福
第1章 真紅の雨
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【side episode】千嵜 稔の二度と忘れない1日と1日 前編

今回はいきなり知らん子からストーリーが始まります。

久しぶりにグロ注意です。

僕はその日、妹以外の全てを失った。


なにもかもが消えていくのに必死に手を伸ばして、抗ったが無駄だった。














僕らはマンションに住む4人家族だ。


僕と妹、父と母でいつも通りの生活を送っていた。


父はサラリーマンで、いつもきびきびと仕事をして帰ってくると母さんがよそうご飯を美味そうに食べる、そんな父だった。


母は専業主婦で、毎日僕らの世話や家事に明け暮れていた。


父と母にとって僕らはかけがえのない存在だと、記念日なんかに毎回言われていた。


耳タコだったし、正直気恥ずかしい話だったからほぼ無視していたけど、その日を一生後悔する羽目になるとは思っていなかった。


僕は小学5年生、妹は3年生だ。


妹は正直邪魔に感じる事もあるし、うざいなと感じる事もある。


けれど大事な家族で、今の僕にとっては守らなければいけない唯一の家族となった。


その日も、僕らは学校から帰ってきて遊んでいた。


しっかり者でうるさい妹は、僕がゲームをやっているとこう言って話しかけてきた。


「お兄ちゃんいい加減にした方がいいよ。そんなだからバカなんじゃないの?」


そんな憎まれ口も慣れっこだった。


「うるさいな、お前に指図されたくなんてないね。大体お前に関係ないだろ。」


「お兄ちゃんが勉強しないとお母さんが不機嫌になって面倒くさいもん。いいからしてよ。」


「ホントにうるさい、後でやるっての。真面目チャンぶってないでお前も遊べばいいのに。今しかできないんだぞ?w」


なーんて、口を開けば言葉の応酬。


まるでガキだったと、今なら思えるね。


お母さんが帰ってきて、案の定妹の言う通り俺に怒ってきた。


「稔、いい加減にしなさいよ!!宿題をやってからゲームって言ってるでしょ?!魅羽は出来てるじゃない!?」


いつもの日常だったが、今日は妹のきつい言い方もあってちょっとイライラしていた僕は、言ってはいけない事を口にしてしまった。


「いつもいつも魅羽魅羽って!!俺が兄ならなんでも言っていいと思ってるの!?俺の事を理解してくれないなら母さんなんて嫌いだ!!!」


...うかつだった。


はっと気が付くと、空気が静まり返っていて。


慌てて顔を上げれば、母さんが涙ぐんでいた。


「ご、ごめ...」


という間も無く、母さんは、


「...もういいわ。勝手になさい。」


とだけ言うと、そのままキッチンに行ってしまった。


焦ったように妹が謝るよう急かしてくるが、思春期だった僕はここで謝ったら負けだとそう思ってしまったんだ。















ご飯を食べる時も、父さんが帰ってきた時も、ずっと母さんは他人行儀だった。


今までこんな母さんは見たことが無くて、今謝んなかったらきっと心に深い溝が出来るとわかっていたんだ。


でも、一歩を踏み出せなかった。


そのせいで僕は更にキツイ地獄を見る羽目になるのに。


父さんがその後、母さんから話を聞いたのか話しかけてきた。


男と男の話とか言って、和室で話した。


父さんは頑固ではなく、柔軟な人だが今回ばかりは怒られると思った。


だが、違った。


父さんは困った顔で、こう言ったんだ。


「...俺は、稔の気持ちも多少はわかるんだ。俺も、優秀な弟を持つ兄だったからさ。


 勉強が出来る弟と比べられて、ずっときつかった。


 勉強も勿論嫌いになったし何より、それをずっとさせてくる両親の事が嫌になったよ。


 でもな、親になると嫌でもわかる。


 というか大人になるとわかるんだよ。


 勉強が如何に大事かってことが。


 ま、教科とかは使わないけどな。


 たまに、あ~ここもうちょっと学んでおけば!!!......みたいな瞬間があったりするんだよ。


 だから勉強は大事なんだ。」


父さんは、困った笑い顔でこちらを見ていた。


それは母さんの瞳の涙と似た、こちらを見つめたものだった。


その時、理解したんだ。


僕は母さんになんてことを言ってしまったんだと。


「...気持ちはわかる。


 今は分からないことかもしれない。


 けれどね、いつか必ず役に立つんだよ。


 母さんはああやって口うるさくお前に言うけれど、あれも全てお前の為なんだ。


 お前は理解されてないって言ったんだろ?


 ...理解されてないんだったら、今頃きっと母さんは飯も作ってはくれないし洗濯もしてはくれないぞ。


 お前が好きで、お前を理解したいからこそ、最低限教養は身に着けて欲しいと祈っているんだ。


 だから、もう少しお前も大人になってみないか?


 俺は、普段は仕事があるから彼女に教育の方針を投げてしまっている。


 偉そうなことは言えないな。


 けど少なくとも父さんも母さんも、お前を分かりたくない訳でも見捨てたい訳でもないって事は、分かってくれるな?」


そう言う父さんは、心配そうな顔をしていた。


気づいていたんだ。


最初から、帰宅した時から、ずっと。


その上で、どちらの話も聞いて、まとめてくれたんだ。


僕は改めて後悔した。


「......僕、母さんに酷いことを言ってしまった。


 ...許して、くれるかな?」


そう言うボクの頭に手を置いて、父さんは言った。


「誠意を出せば、しっかりと伝わるさ。


 現にそうやってしつつも、お前にもご飯はあっただろ?


 絶対母さんは例えお前に何回嫌われようと、愛そうとするぞ。


 それが、親だからな。


 ......父さんも一緒に謝るから、一緒に行くぞ。」


そう言ってくれた。


母さん、ごめんと。


そう言おうと歩き出した直後。












突如、部屋が揺れた。


最初、地震かと思った僕はすぐに部屋を飛び出した。


母さんも妹も戸惑っていて動けない。


父さんはすぐに判断した。


「みんな、すぐ机の下に隠れろ!!!」


母さんはあれだけ怒っていた筈なのに、僕と妹を真っ先に掴んで机の下に入れた。


そして自分たちが最後に入り、状況を確認しだしていた。


僕は謝るタイミングを逃した。















揺れがおさまり、しばらくすると窓からでも確認できるくらい煙が立っていた。 


僕らの階は幸いにも2階、降りようと思えば降りられるところだった。


そして、窓には2体の巨大な何かが映っていた。


片方は最近話題になった黒いマシンだ。


なんでも、このマシンに乗っている人が分かったとかなんだとか。


一方、もう一体は貝殻のようなものを上に乗せた異形の化け物だった。


地球上の生き物に例えるなら、ヤドカリが似てるのかもしれない。


とにかく、まるで非日常な世界に、僕は震える事しかできなかった。


そこで、父さんは僕を、母さんは妹を担ぎ、最低限の荷物だけ持って飛び出した。


その後外まで出た所で母さんと父さんはそれぞれを降ろし、周りの人と話し合った。


話をしていると、黒いマシンがヤドカリのような奴に思いっきり切り裂かれて宙に舞った。


そのマシンが吹っ飛んでそのまま少し遠い工場に突っ込む。


地面が揺れ、思わず僕と妹は転んだ。


しばらく動けないでいると、母さんと父さんが口々に何かを言った。


と同時に僕らは拾われ、また動き出した。


また走って逃げる。


とにかく、脚がとれると思っても走り続けろと誰かの怒号が聞こえる。


周りは炎に包まれ、瓦礫が散乱する異常事態だった。


僕は心に巣食う恐怖に呑まれないよう、必死で走っていた。


そんな時。


妹がこけた。


本当に数秒の差だった。


妹がこけ、僕の視界から消えた。


慌てて振り返ると、わずか数メートルの距離で妹がこけて涙を我慢しながら立とうとしていた。


と、ヤドカリが壊した瓦礫がこちらに向けて飛んでくる。


その瓦礫は、妹付近にまっしぐらだった。


走り出そうとする僕をとんでもない速さで振り抜いた影があった。


それが父だった。


父は、妹を担ぐと、普段の非力さからは見えないようなフォームで母さんに妹を放り投げた。


母さんはそれを受け取る。









.........グシャッ。










父さんは...............。









父さんは、父さんが立っていた所には、大きな石が落ちていた。


そしてその石の足元からは、赤く濁った液体がにじみ出していたんだ。


瞬間。













「父さああああああああああああああああああああああああああああん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」










叫ぶほかなかった。


涙が止まらない。


さっきまで僕を優しく叱っていた父さんが。


あんな、あんな......。


慌てて走り出そうとする僕の襟元を誰かが掴む。


その腕にはガラスが刺さっていた。


ぎょっとして見上げると、そこには顔を涙でぐしゃぐしゃにした母さんだった。


母さんは、泣きながらその場から立ち去っていた。


僕は何も言えなかった。


あんだけ喧嘩したってのもそうだけど、何より、すぐにそんないいコメントなんて出るわけなかった。


妹は、あまりに凄惨な光景に気絶してしまっていた。


















しばらく走って、逃げて。


気が付いたら、避難所だった。


妹は、助かったと喜んでいたが。


僕は上手く笑えなかった。


妹も、喜びながら泣いていた気がする。








僕はこうして、父を失った。

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