第35話 急襲
戦闘が始まります。
カメラに映った映像は大体20分前のもの。
つまり、アイツは今頃何処かしらに動いているという事だ。
これが逆方向ならばまだ猶予はある。
だが、こちら側に来ているならもう時間が無い。
先ほど、試せないかとリーパーに乗らない方法を探してみた。
カーㇴが乗ってこられたことを考えると行けそうだなと思っていたが、どうも乗るにはまず出す必要があるらしい。
流石に俺とて今出すのがマズいのくらいは分かる。
みんなの前で俺が搭乗者だと大公開だ。
またみんなを集め、これからどうするかを話した。
みんな熱心に頷き、積極的に意見も出してくれた。
リーパーは強いがここの人たちを守れるほど余裕のある戦いが出来るかと言われると厳しい。
だから正直、ここでみんなが助け合って逃げるというような話になってくれてよかった。
意見もまとまり、ひとまず休憩が必要だとみんな寝るなり何か食べるなりで休憩しだした。
俺も、カーㇴの所へ行き一先ず休憩しようと思う。
「お疲れ様でした、楼汰様。」
「いや、こちらこそだよ。色々とありがとな。とりあえず、この後はもう天が知るのみだ。」
「.........勝てるでしょうか。私たちにはもう、後がありません。」
そういう彼女の顔は暗い。
きっと、俺以上に焦っているのかもしれない。
「大丈夫だ。俺らなら、きっと。それに俺だって、伊達に乗ってないぜ。あのマシンの弱点は分からないが、多分搭乗者の仮面男の性格からある程度戦う事は出来るだろう。」
「本当ですか?!......というか、戦わないのに偉そうなことを言ってしまいました。申し訳ありません。」
「気にすんなって。もう性格だと思ってはいるけど、お前ももう少し軽く考えた方がいいぞ。誰かが傷つくって思うんなら、言う前に少し確認するくらいが丁度いいだろ。」
「...そうですね。言う前に一回推敲してみて、大丈夫そうだったら言うようにします。度々、ありがとうございました。」
「ああ。...あの仮面男は恐らく、今凄く焦っているだろう。余裕は俺らと同じようにない筈なんだ。そういった意味では落ち着いた方が勝ちといってもいい。ここで俺がリラックスして戦闘に臨めば、きっと勝てる。」
そう。
俺たちはもう背水の陣と言った感じで、ギリギリなのを逆に利用して士気を上げているのだ。
それはエネルギー的な意味もあり、そして心持的な部分もある。
だが、それは向こうも同じだ。
死ぬはずだったターゲットを殺せず、それで俺から情報が洩れる事を恐れている。
もし俺が組織と関わった際にそれを話したりしたら自分の身が危ないからな。
だから、きっと死ぬ覚悟で向かってくるだろう。
それを突けば、きっと強大な差があっても勝てる。
フルパワ―のリーパーならばきっと。
そう信じたい。
「......いつ始まるのか分かりませんし、早いうちに寝てしまいましょう。...あ、その前にお夜食でも食べましょうか?」
カーㇴは素早くしんどそうな顔を切り替え、俺に笑顔を向ける。
「そうだよな、最悪これが最後の晩餐かもしれないしな。」
と言ったら、滅茶苦茶暗い顔に戻ってしまった。
そりゃそうか。
「い、いやでも、これを最後の晩餐にしない為にも食っておこうかな!!!な?!悪かったって!!ついうっかり言っちまったんだよ!!!!悪気は無い!!すまんて!」
と必死に謝ったら、くすくす笑いながら許してくれた。
え?
さっきまでの暗い顔は?
「ふふふ、冗談です。冗談の例えであることくらいは理解してますよ。...でも、少し本気にしそうな言葉でもあったので、仕返しです。」
はぁ~。
「そっか良かった。とはならんだろお前やっぱ子供だな。俺が言えた事じゃないけどやり返しするなんてやっぱ子供だよ。」
「あぁ~~~~~!!!!!今一番言っちゃダメな事言いましたね!!!罰としてこのおにぎりは上げません!!!!全部私のにします!!!!!」
「おいそりゃあ無えだろ!!!悪かったって!俺、今割と本気で腹減ってるんだから食わせてくれよ!」
「嫌です!!いくら楼汰様の頼みでも、罰だから駄目です!!」
「じゃあこの水とお茶は俺のだぞ!!!!というかカーㇴお前この前、俺が入院してるときにめっちゃ家のお菓子食ってただろ!!!太るぞ!!!!」
「あ゛ぁ゛~~~~~~~~っ!!!!!!!!!!!!それ、女の子に対して言う言葉ですか?!禁句です禁句!!!!!!やっぱりおにぎり上げません!!!!!!」
「五月蠅いなお前ら!!!!!!!!!!」
こうして賑やかに、避難所での夜が過ぎていく。
何処からか、ヒューーーーンというような落下音が聞こえてくる。
それは、だんだん大きくなる。
そして音が消えた後、刹那の間。
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
とんでもない爆音と共に避難所が揺れ、赤ん坊の悲鳴が聞こえだす。
鳴き声と音が相まって、不穏な空気が一瞬で場を支配する。
と共に、恐らく見張りをしていた若い男の声がする。
「ロボット現れました!!皆さん、慌てないで逃げてください!!!!」
その声で半覚醒だった俺の眼は覚醒した。
慌てて飛び起きると、近くの人達もパニックで逃げ惑っている。
俺は、見張りをしてくれると言った人たちに伝えていたことがある。
何か違和感があったり、あるいは急に影が出来たり何かが急に見えたりしたら即伝えろという話だった。
何もなかったため、俺はカーㇴや近くの人と飯を食った後、寝ていたわけだが。
その間起こしに来なかったという事は、急に現れたという事か。
そうとしか言えないだろうが、兎に角今はみんなを逃がす事が優先だ。
とりあえず起きるとカーㇴも既に起きており、近くで未だ寝こけている奴やさっきの揺れで身動きが取れなくなった人たちを起こしている所だった。
と、
ドオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!
再び爆音が鳴り響き、窓から確認できる範囲だと向こう側の校舎が半分近く壊されている。
此処もヤバい。
幸いみんなすぐ動いてくれたため、逃げ遅れた人が居ないか見回り外に出た。
外ではみんなすぐに集まっていたが、アイツに気づかれる可能性が有る為声は小さめ、動きも控えめで行動する。
カップルの片方の彼氏の方はこんな状況なのにスマホで映像を撮っていた。
みんな不安そうな中アレをやるなんて、メンタル凄いな。
小声で少しずつ、ゆっくりと校庭から逃げる。
1人、2人と門を超え、少しずつ校庭から人が減っていく。
しかし、そう簡単にはいかないようだった。
既に40人は門を出た。
あと少しで非難が完了する。
子供を2人、そして赤ん坊を抱えた母親らしき人が子供から先に門へと送る。
既に出ていた人たちもサポートし、なんとか子供2人は外へ出た。
母親は次に赤ん坊を送るが、これがマズかった。
親から手渡され、知らない男に渡された赤ん坊は、ひぐっ、とまるで何かの始まりのように告げた。
と、
「びえええええええええええええええええええええええん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
と赤ん坊が泣きだした。
そりゃそうだ。
さっきの揺れで泣いたのを何とか泣き止ましたってんだから、また少しでも衝撃があれば泣くさ。
赤ん坊だしな。
慌てて母親が手に戻すももう遅い。
泣き出した子供はもはや止まらず、深夜の静けさに赤ん坊の声がループする。
と、突如殺気を感じた。
思わず、母子を突き飛ばしながら俺も避ける。
するとそこには、人間2倍くらいの大きさの瓦礫が降ってきていた。
飛んできた方向には、あの蜂色のマシンが居た。
ソイツはまるで、「見つけた」とでも言いたげにじっとこちらを見ていた。
周りの人から表情が消え、みんな一目散に逃げだすももう遅い。
ソイツは地面からさっきの瓦礫よりもデカい瓦礫を取り上げるとこちらに向かって投げてきた。
俺は、迷った。
迷ってしまった。
ここで召喚すれば、きっとバレてしまうと。
だが、隣で横たわる母親を、門に上がったはずの子供たち2人が庇おうとしていた。
カーㇴが何かを叫んでいる。
「楼汰様ァァア!!!」
【漆黒の死神よ、夜を穿て! リィアライズゥゥゥ、リィイイパァアアアアアア!!!!!!!」
瓦礫が子供2人を殺す事も、カーㇴがそれを見て叫ぶことも無かった。
何故なら、夜に準じる黒き巨体がその瓦礫を受け止めていたからだった。
それを見た彼らは、慌てて近くを見る。
そこには、先ほどまでいた筈の変人の姿は無い。
そして、彼の同僚や同社の人たちは大変驚いた。
彼が、岩動こそが最近巷を騒がせている黒き機械戦士だったのかと。
そして避難所にいた人たちは理解した。
何故、この男がああも詳しかったのかを。
カップルの男はスマホを向けてニヤニヤしていた。
おっさんは目を剥き、兄ちゃんは驚き、学生はやっぱりと言わんばかりの顔で頷いた。
そこにいた筈の人間が居なくなり、そして黒き戦士が現れた。
岩動 楼汰こと、機械兵が。
【ダリア視点】
デッドリーは順調にデカい建物を壊し歩いていた。
あの学校が違ったからナ、仕方ないとはいえムカつく誤算だ。
あの後ある程度近くにあるエネルギーに変わりそうなものを全て取り込みながら探したが効果は0だった。
ならばと反対側を探すと、面白いほど分かりやすい位置にいることが生体反応で分かった。
しかし、そのまま行けば恐らく奴が出てきてしまうため戦闘になってしまうと分かっていた。
ましてや、見張りなどがいるかもしれんしナ。
となると、出来る事は一つ。
急襲することだ。
そうすればいくら奴らでもどうする事も出来んだろう。
俺の生体反応は遠くからだと役に立つが、近くだと大体の位置しか掴めない為何の役にも立たなくなっちまう。
ひとまず当てずっぽうで潰してみっか。
そのまま勢いよくジャンプしそのまま空中をお散歩する。
やる事と目的さえ定まればもう後は気楽なもんさ。
あのリーパーがそもそも回復しているかどうかさえ怪しいんだ。
アイツらにはエネルギーの回復は出来ない筈だしな。
ならば簡単な話だ。
と、生体反応のあった場所が見えてくる。
恐らくさっきの形と似ているからアレも学校なんだろう。
こんな近くに別の避難場所がいくつもあるとはナ。
そう思いつつ落下し全重力を脚にかけ校舎へと当たる。
とんでもない音と共に校舎は粉々になった。
さて、後3か所もある。
何処からやろうかと思っていると、生体反応が動いた。
すかさず拳を振るうが人間はいない。
虫か何かだったようだ。
念のため隠れている可能性もある。
半壊した校舎をより細かく壊していたその時。
運命の女神もといあのお方の強運は俺に味方した。
赤ん坊の叫び声が聞こえたのだ。
すぐに後ろに瓦礫を蹴り飛ばす。
そして確認すると、数十人のグループが確認できる。
暗いのと遠いのとで誰が居るかは分からんが、ひとまず殺しておくのがいいだろう。
しかしピーピーうるせえなクソガキ。まずはあの赤ん坊から始末してやる。
そう思い一際デカい瓦礫を投げつける。
と、急に光があそこから発生し、収まった瞬間その場に奴は現れた。
漆黒の闇で世界に覆い被さり光から安寧を奪う戦士、機械兵が。
ぶっ殺してやるぜ。
もう手加減も遊びもしねえ。
さあ、終わりだ。
戦闘が始まりそうです。




