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適合者はこの俺!!!!  作者: こしあん大福
第0章 漆黒の守護者
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第32話 避難

気が付いたら、投稿し始めて一か月が過ぎてました。

早いものですね。

今回も長めです。よろしくお願いします。

合田さんは、困惑したような、安堵したような表情でこちらを見ていた。


「合田さん!!無事だったんだな!」


「それはこっちの台詞だ。というか、お前血まみれじゃないか!!!???また襲われたのかよ!!!」


あの回復薬は掛けて貰いはしたが、よく考えたら服はそのままなので血で汚れに汚れたこの状態じゃ瀕死と思われても仕方ないな。


「ほら、とりあえずこっち来い。手当してやっから。そこの子もな。てか、そこの子腕どうした?!凄い痛そうな傷あるけど!?」


そしてもう一つ。


先ほど彼女の話を聞いていてすっかり忘れていたし彼女も、


「あ」


と言っているあたり本人すら忘れていたわけだが、彼女は腕をほぼ貫通されていたのだった。


思い出したら痛くなったのか、腕を抑える彼女を慌てて心配していると、合田さんに苦笑いされてしまった。


「なんというか、ご愁傷様というか...。お前も大変だったんだろうし、その子を引っ張ってきたのは凄いことだが、傷もしっかり確認してやれよ。」


「はい......。返す言葉も無いです...」


項垂れた俺を他所に、とりあえず合田さんの言うみんなの避難場所を目指す。


その際、彼はこうカーㇴに聞いた。


「...そんで、君があの時の”家政婦”ちゃん?随分若いね。...って、これもひょっとしてセクハラか?」


「はい!私が家政婦のカーㇴです。以後、お見知りおきください。」


「はぁ~、若ぇのにしっかりしてんなぁ。俺の馬鹿妹にも見習わせたいような雰囲気だぜ。」


相方を褒められて悪い気はしないし、彼女も照れ照れとしている。


よかった。やっぱ、さっきの話はしといてよかったようだ。


お陰で、素直に人の賛辞を受け取れている。


と、合田さんが突然こっちを向く。


「お前、そんなのほほんとしている場合か?ヤバいじゃねえか!?」


「え?何がです?」


「何がですってお前、どう見ても未成年じゃねえか!!色んな愛の形は認めるが、これはダメだろ!!しかもこんなコスプレまでさせて...。」


いやいやいや、待ってくれ。


...え?


だって、前、合田さんいいって言ってくれてたような?


あと、コスプレじゃなくて彼女の正装なんです...。


と言っても、信じてはくれないだろうな。


問題の彼女からは少し離れて小さい声でひそひそと話し合っているため、不思議そうな顔でこちらを見ているだけであるが、これ聞かれたらまたすねるんじゃないか?


「いや、あれは姿が見えてなかったからてっきり滅茶苦茶幼い声の子と付き合ったのかと思ってたんだよ!したらまだガキじゃねえか!!!捕まるぞお前!!!!」


「だから!彼女とは何もないんだって!!!怪しい関係でもなければ邪な感情が有る訳でもないって!!!!」


「......じゃ、彼女とはどんな関係なんだ言ってみろ。」


「え?......。えーと、相棒、だけど?」


「誤魔化してんじゃねえよ!!!」


「誤魔化してない!!!マジマジマジマジ!!!!!」


何回言おうと彼はそれ以上取り繕ってはくれず、


「いや、俺はお前らを尊重するぜ?でも、いつか後悔しても知らんぞ???」


「だーかーらー、違うんだってば!!!!!」


と、ずっと俺と彼女の関係を疑われながら行く羽目になるのだった。


なお、その間ずっと彼女は、


「あの、さっきから何の話してるんです?」


と聞いていたが、聞かせたらまた


『私、やっぱり子供に見えるんですか。そうですか。そうですよね...どうせ私なんて』


とさっきの状態に逆戻りじゃい!!!!


みたいな状況になりかねない為、とりあえず話さない方向で居た。


彼も、勘違いしたままではあるが一応彼女の前では話さないでいてくれた。















避難所に着くと、來瀬さんや小沢くん、他の社員や先ほど合流していた人たちなどが居た。


社員さん達は全員無事だったが、他の会社や家の人たちまでは見切れていない。


みんな多分あの戦いを見てマズいと思ったのか、争いをしている人は何処にも居なかった。


俺の恰好を見てみんな驚き、慌てて救急キットなどを使ってくれた。


医者も居た事によりカーㇴには特に応急で手当てがなされ、とりあえず事が済んだら早く病院へ行けと促された。


とりあえず、避難場所は学校だったわけだが幸い水は止まっていなかった為、冷たい水で震えながらシャワーで身体や傷跡を洗い流した。


服もあるモノを貸してもらいひとまず安静にする。


カーㇴととりあえず、「運命の巫女」の話やこれからの戦略の話でもしようと区分けされたゾーンに行くと、彼女は寝てしまっていた。


そらそうよな。


あんだけ緊張して、疲れて、泣いて、傷ついたらそりゃ睡眠が必要だ。


起こすのも可哀想だった為、近くの女性にお願いして一緒にいてもらうよう頼み俺は外に出た。


学校付近の住宅街や町は破壊され、完全に廃墟と化した家も沢山あった。


そこに声がかなり聞こえる。


避難活動や救助活動がさかんに行われ、必死で叫んだり、膝から崩れ落ちて泣き叫ぶ人たちの姿が目に映る。


思わず拳を握りこんだ。


何故あの、何もしていない人たちが苦しまなければいけないんだ。


俺はアイツが死んだ時点でもうこの世界の人間には興味が無いモンだと思っていた。


だが俺は、やはり人間であることを捨てたくはないらしい。


気づいたら自然と声が出ていた。


「どうしてそんな事が出来る?例え世界は違っても、同じ人同士だろ?何でこんな惨いことが出来るんだ...!」


しかし、不意に思った。


この世界にも戦争は残っておりその全ては理不尽に命を奪っているという事を。


そして、その奪われた命を巡り新たな血が流れているという事を。


アイツらの世界だけではなく、この世界もハナから暴力が全てを示してきた世界だったのかもしれないな。


それでも、戦争と今回のものは違う。


戦争は、ある意味、お互いの正義を掛けた終わりのない戦いだ。


だからとても惨いし、安易に終わることも始める事も許されない。


だが少なくとも、意味はきっと当人たちにはあるのだろう。


しかし、今回は奴らにしか意味は無い。


これはただの蹂躙で、一方的な破壊(オモチャ箱)でしか無かった。


子供の泣きわめく声が何もなくなったこの世界を木霊する。


「何で、こんな...」













「そうだな、何でだろうなぁ。」


気が付くと、來瀬さんが後ろに立っていた。


彼は俺に缶コーヒーを渡すと、こういった。


「俺には、この街を破壊したロボットの気持ちも、怪物の気持ちもわからん。


 もう何も残されていないかもしれないこの街で、どうすればいいのかもわからん。


 ...けどな、少なくとも一つだけ、分かる事があるんだ。


 岩動、お前も分かるだろう?」


黙って聞いていた。


気持ちなんて、分かってたまるかと言う話だ。


あんな奴らにの気持ちなど分かりたくもない。


だからこそ、來瀬さんが何を言いたいのか分かったと思った。


「当然です。あの怪物たちをどうにかして止めなければいけない。


 この一つだけです。


 アイツらを何とかしないと、この街だけではない国を単位とするような絶望が起こる。


 今泣いている人たちを、笑顔にしないといけない。


 こういう事、ですよね?」


カーㇴの涙も、今ここにいる人たちの悲痛な嘆きも、全て二度と来ないモノにしなければいけないのだ。


それが、今俺が出来る事。


あの時仮面の男に銃を向けられ、死にたいとかつて思えていた筈の俺の脚が何故震えたのか。


それはまだ俺が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。


その心は、きっと本来人間が持ち合わせている気持ちの筈なんだ。


というか、生物ならば持ち合わせている筈なんだ。


一回その覚悟を持った人間でさえ、生きる気力を得た今では死ぬのが嫌で、怖いんだ。


なら俺と違い普段の生活を必死で生き抜いている人たちはどうなる?


毎日辛い労働をこなし、やっとの思いで休みを取るような社会人たちは。


部活や勉強を必死でこなし、友達と話して帰って生活を送る学生たちは。


今までの人生にご褒美を与えるように、ゆったりとした老後を送っているかもしれない老人たちは。


みんながみんな、きっと「まだ死にたくない」と心の奥底では思っているだろう。


それを、アイツらは想いごと無残にも奪ったんだ。


誰かを遺してあえて旅立たせるような惨い真似を、反省する事も無く次から次へと行ったんだ。


到底許せないし、許してはいけない。


俺は怒りを抑えきれず、思わず歯噛みした。


そんな俺を見た來瀬さんは、少し驚いたようだった。


そして笑った。


「ははは!中々面白いこと言うんだな。


 まるであのロボットの仲間みたいじゃな!


 だが流石に俺たちじゃあのデカさのバケモンを倒すのなんて無理だな!!


 どうにかしようったって、何も出来んだろう。


 仮に何とかできるような方法が見つかったところで、時間が足りないだろう。


 あの黒いロボットでさえ負けたんだ。


 人類じゃ、アレに勝つことは恐らく無理じゃろうな。」


まさかの解答だった。


俺は、この時、独りよがり過ぎたとも思ったし、自分がリーパーである事前提で話をしてしまっていたみたいだった。


だが、それでも間違ったことを言ったつもりは無かった。


しかし來瀬さん曰く無理、不可能な話らしい。


あまりにも放ったような発言にイラっとしてしまった俺は、自分でもびっくりするような声の低さで問いかけた。


ほぼ八つ当たりだろうが、もう怒りが収まらなかった。


「じゃあ、人間は二度と立ち上がる事すら許されないというんですか!?


 バケモンに勝つことは不可能だと、そう仰るんですか!?」


「ああ、今のままではな。


 確かに、お前の言う通り怪物を倒す事が出来ればそれが一番安泰じゃ。


 だが、一人一人の力ではどうする事も出来ないだろう?


 みんながみんなバラバラに戦ったところで、それぞれが全力だとしても意味が無いんじゃ。


 だから、儂がさっき言ったことにつながるんじゃよ。」


まさか、そういう事なんだろうかと思った。


そんな綺麗ごとでまとめるつもりかと、その答えを待った。


答えが出される。


「一つだけ分かった事。


 それは、みんなで信じあい、助け合う事じゃ。


 一人一人では弱く、例え全力を出しても強大な何かには勝てない。


 だが、人間、その中でも日本人は様々な戦いに集団で気持ちを高め勝ってきた。


 全員が一つの事に取り組めば、きっと無敵じゃ。


 それがあれば、きっと、この状況も乗り越えられると信じておる。」


想像した通りの、綺麗ごとであった。


あまりに甘すぎる、現実を見据えられない言葉だった。


思わず否定しそうになった。


だが、出来なかった。


()()()()()()()()と願ってしまった。


みんなが助け合えば、ひょっとしたらアイツに勝てるのかもしれないと少しだけ思った。


それは、少ししか信じられないような夢物語だが、実現すればきっと、いや必ず勝てる筋書きだと思った。


俺一人、とかカーㇴ一人、とか、あるいは仮面男一人、とかそういう話じゃないんだよな。


世界を掛けた争いなんだから、全ての人が願うべき想いなんだよな。


「甘い綺麗ごとじゃと思ったじゃろ?


 でも、儂にはこれが現実になって欲しいのじゃ。


 先ほど、君が居なかったとき、我々は一刻を争う事態でトラブルがあった。


 あの時もし誰かが止めていたらと、みんな後悔した。


 あの時動かなかったせいで亡くなった命があった。


 だから、余計そう思うのかもしれんな。


 皆の心が一つならば、きっと余計な争いも喧嘩も生まれず、一つの問題点に向かっていける筈じゃ。


 それを作り出すのが、我々大人の問題という訳じゃ。


 それらすべてをひっくるめて、儂が分かったのは、人々が助け合い信じ合う世界がやはり大切という事じゃな。」


そういう來瀬さんの、甘すぎる綺麗ごとに賭けたくなった。


甘い筈なのに、全て、信じたいと思うくらい魅力的だった。


ありふれた言葉を、特別に感じる何かがあった。


きっと、これが本当に來瀬さんの凄い所なのだ。


「...すみませんでした。八つ当たりしてしまって。」


俺が謝ると、彼は元通りで。


「ガハハ!!!!気にするんじゃあない!!!!!ハッハッハッハ!!!!!!!」


と言って去っていった。


あの人、本当に良い人だな。






.........平和は取り返す。俺は、必ず勝って見せる。


だから、見ててくれよな。











いつの間にか夕日が、地平線の彼方に落ちていく。


世界が影に包まれていき、暗くなっていく。


まるで、いよいよ()()だと表しているかのようだった。

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