第30話 間一髪
少し色々と名前が崩れてしまっていたので、ダルアをダリアに修正いたしました。
ご迷惑をお掛けしました。
カーㇴは、怯えた表情で...でも、しっかりとこの仮面男を見つめ立っていた。
震える手にはかつて俺がリーパーにならないと言った際取り出そうとしていた装置みたいなモンがあった。
でもアレ、俺に使おうとしていたってことは適合者にしか効かない装置なんじゃないのか?
まぁどちらにせよ、この状況は非常に良くないだろう。
彼女はどう考えても戦闘向きじゃない。
もしこの仮面男が本気を出せばすぐ殺されてしまうだろう。
だが責任感の強い彼女の事だ。
俺を見捨てるなど出来ない。
ましてや、ボロボロになった人間など。
ここは俺が何とかしなければ...と思うものの、未だ貧血気味な俺ではもう立つことすら出来ない。
いくらあの薬品を掛けて貰ったところで、そんなすぐに血が戻るわけでもないのだ。
だから、俺は言う他無かった。
「.........」
だが、その掠れた声ですら息遣いの荒い俺の状態ではすぐわかってしまうらしい。
仮面男はカーㇴを見て警戒していたが、俺まで来るとまた蹴り飛ばしてきた。
「黙っとけやクソボケがァっ!いいか、もうテメェらは終ェなんだよ。余計なことはせず、今すぐ情報を渡せ!!」
誰がお前なんかに、と素直に鼻で笑ってやる。
顔を真っ赤にしてキレた仮面男は更に俺を蹴り、踏み、叩く。
痛いが、傷が塞がっただけあってそこまでじゃない。
と、
「やめてくださいと言っているでしょう!?その方を解放しなさい!」
カーㇴがまた叫ぶ。
辞めるのはお前だよカーㇴ、このままじゃどっちも死ぬ。
俺が死んでも希望は残るかもしれないが、お前が死んだら多分何も残らないからな。
今すぐ逃げろと伝えたいが、声が届く前に掠れて搔き消される。
もはや、どうする事も出来ないのだろうか。
俺の嫌な予想は当たる羽目になった。
どうも、あの装置は適合者を守る効果もあるらしい。
だが、持ち主は守ってはくれないようだ。
俺に飛んだ銃弾はバリアに弾かれ、木に激突した。
だが.........。
奴の撃った銃弾二つ目は、彼女を狙った。
彼女は急所こそ外したものの、避けきれなかった。
彼女は腕を貫かれ、そのまま撃ち抜かれた。
彼女の腕からは血が垂れ、腕に血の筋が出来る。
腕を抑え、苦痛の表情を示すカーㇴ。
その顔はまさに、俺が助けるべき庇護者の顔だった。
そのままへなへなと蹲るが、仮面男を睨むことだけは辞めない。
もういい、もういいから帰るんだ。
俺の事はもういい。
しかし、そんな俺の想いを他所に仮面男は想定外の話を始めた。
「しっかし、まさか本当に出来損ねェの巫女がここにいるとはなァ。へへ、誰よりも使えないのに自分だけのうのうと生きてるのか??ギャハハ」
出来損ない?誰よりも使えない???
コイツ、カーㇴの何を見てそんな事が言えるんだ。
沸々と怒りが沸き立つが、今は我慢だ。
ここで俺までキレてもどうにもならない。
むしろ状況が悪化しかねない。
だが、本当に出来損ないって何だ?
今のところ、優秀なサポーターだが。
「あの時、ショッピングモールに居た人ですね。...あの時は私に気づかなかったようですが、流石に私の事は分かるようですね。」
「あ?当たり前だろ?テメェはいい意味でも悪い意味でも有名人だったからナー。まァ、まさかあの時尾行してきたのが本当に出来損ねェの巫女だったとは思わなかったし、もう一つ理由はあるんだけどナ。」
「貴方は......、一体何者なんですか?どうして彼を狙い、この世界を襲うのです?!」
「へへへ、んなもん決まってんだろ?あのお方の願いを成就させるためだ。俺が何者かって、この格好で気づかねえ訳ねえよなァ?」
「確かに、我々の世界の装備です。ですが、それだけで一体何を...?」
「おいおい!!よく見ろや!!!袖の口に、こんな立派なワッペンが付いてんだぜ?こんなダセえの。」
「?!...まさか、貴方。IFRT管理者チーム...?まさか、まさか貴方...IFRTを暴走させた...?!」
「んー?あぁ、それは俺じゃねェけど、ま同じようなモンだ。そうとも言えるかもナ。」
すると見る見るうちにカーㇴの顔が怒りに染まる。
嘘だろ、俺じゃなくてカーㇴの方が限界だったか!?
「よくも、よくもみんなに危機が迫るような真似を!!!よくもッ!!!!!」
呻くような叫び。
そして、その直後彼女は自分の胸に手をクロスさせ、祈り始めた。
何をする気だ?
「おいおいおいおい!!!!役立たずの出来損ねェの撃てる技じゃねえって事は理解してんだろ?!要領に見合わぬ事してんじゃねえよ!!」
そう言う仮面男は、期待半分と煽り半分の表情でカーㇴを嘲る。
「...確かに、私は、期待外れで使えない巫女だったかもしれません。けれど、お仕えする人を守るくらいなら、きっと出来る!!!」
カーㇴの胸辺りが光り、そして周りを灯す。
カーㇴ自体が輝いていき、その光がクロスした腕の中心に集まり始める。
覚悟を決めたような、そんな表情のカーㇴとは一変仮面男は呆気にとられたような顔をしていた。
「んな馬鹿な!?あ、ありゃ本当に出来る技じゃねえんだぞ!?どうなってんだよ!!クッソ!!!」
悪態を吐きつつ隠れようとする。
そうはさせるか。
奴の脚を掴み、こけさせる。
「!.........テメッ、こらッざけてんじゃねえ!!!」
慌てて立ち上がろうとするが流石に遅すぎた。
〈聖なる巫女の聖輪よ。全てを救済し、全てを天に還せ!銀色ノ粛清〉
そんな呪文と共に、彼女は両の掌を仮面男に向け、発射した。
俺をもう動けないモンとして見ておくから痛い目に遭うんだ。
しかし、カーㇴのやつ、こんな技持ってたのかよ。
......リーパーと同じくらい強えんじゃねえの?これ。
尚更、役立たず扱いされてんのがわからん。
彼女の掌から放たれた直径10センチくらいの光輪はあっという間に仮面男へと追いつくと、その身体の周りで爆発する。
キラキラとした光が舞い、中々綺麗だ。
カーㇴは力を使った反動か、激しく呼吸しながらぽてんとその場に座った。
かなりきつそうだが、これで暫く相手も動けないだろう。
なんて思っていたが、散々攻撃を喰らった奴は怒り心頭と言った感じで立ち上がった。
「テメェら、散々人をコケにしやがって!!もう許さねえぞ!!ぶっ殺してやるッ!!!」
と銃口を迷わず俺に向ける。
ま、そうだよな。
そんな簡単に死ぬほど軟じゃないな。
「じゃあな。クソガキ共が!!!」
カーㇴは、悔しそうな顔をし、立ち上がろうと踏ん張ってはいるが呼吸もままならず動けない。
本当にこれまでだ。
ありがとな、カーㇴ。
笑顔を向け、目を瞑る。
も、何故かそのまま発砲音が聞こえる事は無かった。
恐る恐る目を開けると、何故か銃口をこちらに向けたまま奴は固まっていた。
文字通り、先ほどの怒りの表情のままかちんこちんだった。
氷漬けにでもなったかのような状態で、一切動かなかった。
そう、本当にそのまま言葉通り、奴は特に見た目に違和感がないまま動けなくなっていた。
何が起きたかは分からないが、もしこのまま逃げ切れるのならチャンスだ。
出来ればコイツに意識が無いことを祈ろう。
カーㇴもまた大困惑と言った表情で暫く呆けていたが、慌てて立ち上がるとこちらまで来る。
「大丈夫でしたか?!楼汰様!!」
「あぁ、助かった。悪いんだけど、今貧血で動けないから肩を貸してくれないか?」
「そんな事で宜しいのなら、是非お使いください。」
そう言って肩に寄りかからせてくれた。
彼女だって死ぬほど疲れているだろうに、全くカワイイ相棒だ。
「すまん。お前だって疲れてるだろうし、俺は男なのに...」
すると彼女は少し笑っていった。
「...男も女も関係ないですよ。困ったらお互い様です。それと、こういう時は謝罪じゃなくて感謝ですよ?」
「......あぁ。本当に、助かったよ。ありがとな」
「ええ!」
俺たちは何とか、その場から逃げ出した。
ーーーーー一方その頃、楼汰の会社の人間たちは。
「おーい!!!岩動先輩!!!!!!」
「ダメだ、何処にもいない。」
「合田さん、いらっしゃいましたか?」
「ダメだ。楼汰の野郎何処行きやがった。折角あのバケモンの災害から生還したってのに、こんな所で死んじまうなんてナシだぜっ...」
「そんな事言わないでください!!!彼はまだ...」
「いや、恐らく岩動はほぼ確実に生きてはいないじゃろう。仮に生きてたとしてだな、もう瀕死だろうな。」
「來瀬さん...。」
いつもは五月蠅い來瀬ですら、湖のように静かだった。
「会社があの感じなんじゃ。ほぼ確実に、岩動はもう...」
「そ、そんな...。岩動さんが......。うぅ...」
楼汰はあまり気づいていないが、すぐサポートに入り、後輩の面倒をウザくならない程度に見て、色々と手伝ってくれる楼汰を慕う社員は多い。
合田や小沢、來瀬もそうだった。
「岩動...。つまらなさそうだった時は、あれだけ死にそうな雰囲気があっても生きていたのに...。楽しそうになったら殺されるなんて...。不憫すぎるだろ...」
合田はそう漏らした。
結局、楼汰は見つからず、怪物災害で犠牲になってしまったとの意見でまとめられてしまった。
ーーーーー同時刻、SNSでは。
とある人気配信者がライブ配信を行っていた。
話題は勿論、現在話題になっているマシンについてである。
「なぁ、さっきの奴見たかよお前ら。」
”見た見た!!”
”ヤバくない?!今までずっと勝ってきてたあの黒いやつ、負けちゃったよ?!”
”Tsubassarでもトレンド入りしてるよ!!本当の滅亡とか、黒ロボ敗北、とか、正体とか。”
「あの黒いロボット、今まで散々危険がどうのとか正体がどうとか言われてただろ?でもよ、今ならわかるんじゃねえか?」
”どういう事?”
”正体探って何したいん?いいやん守ってくれてるわけだし”
”いや気になるだろ。正義のヒーロー気取りの陰キャ野郎とかだろどうせ”
”自分が人生の敗者だからって妬み乙ですw”
「おいそこ喧嘩すんな。でもやっぱ気になるくないか?人類未到達の技術を使ったマシンを操る人の存在。滅茶苦茶ロマンだろ?」
”確かに夢あるよなあ”
”夢もお金も未来もありそう。ここと違って”
”でも、あんだけ力ある奴やっぱ怖くない?今のうちに正体くらい知っておいてもいい気がするけどなぁ”
”でもおまいらその正体が分かったらソイツのとこ行って荒らしたりメントスコーラさせに行くんやろ?”
「少なくとも俺は知りてえって思うよ。てことで協力してくれ。その操縦者が誰か、特定しようや。」
”おっけー。最推しのるぅ君の為ならねえ”
”主が一番性格悪くて草”
”おおおおお楽しそう結果待ってまーす!”
”#黒機械戦士特定希望”
”でもじゃあ最初黒い機械兵が現れた時の女の子の声のやつ、心霊現象じゃなくてガチだったのかもね。”
「あーそういやあったな少女の声。アレだろ?何とかの世界がどうとか、この世界でとある男を探しているとか。まあ誰も反応しなかったからすぐ聞こえなくなったけどさ。」
それは間違いなく、楼汰が寝て聞き逃した説明であった。
「ま、兎に角連絡くれや。どんな些細な事でも特定待ってます!!じゃ、るぅちゃんでした!!!バイバイ!!!」
楼汰達の知らない所で、勝手に世界は進んでいく。




