第27話 全力
俺は、確かに今俺を呼ぶ声を聴いた。
それを聞いた瞬間是が非でも、生存率を100%にしなければと体が動いた。
俺は気が付くとプログラムを書いていた。
弾を跳弾させるプログラムだ。
ガトリング砲を奴ではなく地面に向かって撃つ。
何度も何度も。
きっと痛いのは痛いが、死ぬより痛くは無いだろう。
地面に撃ち付けた弾は地面を見事に跳弾し、俺の方へと向かう。
それを自ら喰らう。
とんでもない衝撃が襲ったが、今は気にしている場合ではない。
今更だ。
そんな事より、今は恐竜野郎をどう倒すかだ。
後の事は後で考える。
装甲やあちこちから煙を出し、少しボロくなったと察せるリーパーを見るソイツは、さぞ愉快そうにこちらを眺めている。
そんな事していていいのか?今から俺に倒されるというのに。
だが、今はその油断がありがたい。
こちらを舐めてくれれば舐めるだけ、俺にチャンスが生まれる。
とはいえ、剣では完全に切断は出来ず砲弾でも破壊出来ない尻尾は厄介だし主砲をぶっ放してもアイツの咆哮にかき消されむしろこちらが飛ばされてしまう。
プログラムはあくまでも補助で、完全な何かを作ることは出来ないようでこの前武器が造れないか試してみたが駄目だった。
新武器もなく、特にこれと言った能力を考えられる事も無い中やれる事はただの一つしか残されていない。
先ほど記述したフルパワ―出力、アレをやる他ない。
俺への負荷もかかり、何よりそれでも倒せなかったら絶望以外の何物でもないが今はそれしかない。
「もし」だとか「まさか」だとかを考えるのはよそう。
今は、アイツを倒すことに集中する。それだけだ。
「Full Power!!」
宣言したが、何かが変わった気はしない。
すると、突如として音声がかかる。
『Start うsi青fsdjファイf output. Please wait a moment until it reaches full power.』
更に、画面が表示され透明な枠にバッテリーのマークと数値が表示される。
これじゃ充電だ。
何々、今は60%なのか。出しているエネルギーは。
そして途中、何を言ったのかはわからなかったが、とりあえず英語だという事は伝わった。
えーと......。
「ち、チェンジランゲージ。わ、わーるどいず、にっぽ...ジャパン!」
俺は悲しいかな、プログラマーだが英語が得意なわけではない。
プログラム言語は英語とは違うとはいえ、所々英語な部分があるのは事実だ。
だが、本物の英語と違い言い方に差異がある物は少ないので比較的わかりやすい。
根本的に英語とは違うのだ。
しかも、こちとら学校を卒業してから結構経っている。
今更日常で使わない英語など覚えてはいないのだ。
しかし、音声は認識したのか返す。
『それでは、日本語に変更いたします。蛇sjfじゃおcf序d を出力し、最大パワーにするべく実行中です。少々お待ちください。」
凄い、異世界の兵器の筈なのにこちらの言語まで理解してんのかよ。
一部翻訳出来ない言葉があるらしいが、これだけでも十分理解できる。
流石とんでもロボットだな。
...時間かかるのか。当たり前の話とは言え、こちら基準ですぐ開始できんのかと思っていた。
幸い異偶は何をするのか興味があるのか、はたまた獲物が面白いことを始めたと嗤っているのか、こちらに手を出す気はないらしい。
だが、その時は突如訪れた。
俺が宣言をしてから40秒近くが経過した。
変わったことは、だんだん部屋に蒸気が立ってきたと言う所と何か暖かくなってきた所だろうか。
流石に異世界の兵器とはいえ、熱はやはりこもっちまうんだな。
そこら辺は何か、親近感を感じるぜ。
と、突如先ほどまで静観を決め込んでいた異偶がこちらに走り出した。
「グゥゥゥゥォォォオオオオオオオオオオオオァァァアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
とんでもない叫びをあげ、目には焦りと怒りが見える。
先ほどから、何やら落ち着きが無いなとは思っていた。
最初の方こそ、見ながら体を搔き、あくびをしていた異偶が徐々にこちらを真剣に見るようになりだんだん表情も険しくなっていた。
ひょっとして、もうフルパワーになったのか?
『現在のエネルギー出力は82%となっております。最大出力まで、もう少々お待ちください。』
全然待つけど、もう82%とは中々早いな。
マークの方もそこそこ上がってきたのがわかるようになっていた。
とはいえ、82%で何でこんな必死に走ってくるんだ?
ひょっとして、あんだけイキってはいたがそこまで差はなかったのか?
それで、俺が少しずつアイツを抜き出してこのままじゃやられると焦ってきたのか?
何にせよ、俺を脅威と認定したらしい。
とはいえ俺にそんな決定打はない。
今攻撃されたらかなりマズいな。
無駄な抵抗かもしれないが、レーザーブレードで防ぐしかないか。
走ってきた異偶から距離を取るも、焦っているアイツは尻尾を地面に差すと、ゆっくり後ろに下がりそして勢いよく飛び出した。
バネの要領で飛び出したソイツはあっという間に俺の前へと着いた。
今はチャージしているため俺のジェット噴射等は使えない。
最低限の武装で守り切れるだろうか!?
と、奴は大きな腕を振りかぶり、勢いよく俺に振りかかった。
爪が見える。
そこに、剣を引っ掛け耐える他ない。
「はぁああああああああああああ!!!!」
剣を奴の爪に当てようとこちらも腕を振るう。
剣と爪が交差し、今、当たった。
パチン。
折れる音がした。
恐竜の爪のような巨大な影が、姿となって地面に落ちる。
俺は、剣を振り抜けていた。
「「!?」」
俺も異偶もびっくりした。
異偶は、まさかそんな事はと言わんばかりの顔で慌てて手を見る。
一方、俺は振り抜いた腕を構え直す。
まさかフルパワ―にしたらこんなに変わるなんて驚きだ。
剣の切れ味どころか、性能が変わってしまうとは。
だが希望は見えた。
今ならきっと、あの尻尾を切り裂けるし突風にも負けない。
形勢逆転と言う奴だ。
後ろへと脚を下げ、そして思い切って大地を蹴る。
未だ腕を確認する奴に向けて剣を振るう。
だがその剣先は何も裂かず、ヒュッと空気を切る音だけが聞こえた。
殺気に気づいたか、はたまた自然の本能か、異偶は咄嗟に前方へと飛び込んだ。
だが、それは一時的な凌ぎでしかない。
再び脚で地面を蹴り、今度はターンし振り向き様に剣を振るう。
避けきれず尻尾で抵抗を試みたようだが、もう遅い。
剣は尻尾ごと背中を斬りつけた。
尻尾が輪切りになり、そのまま鮮血ごと宙を舞う。
だが俺は止まらない。
軸を大事にしながら切った衝動のままに回転する。
何度も何度も回転し、奴の背中に切り込みを入れていく。
そこからは赤い血が流れるが、気にすることは無い。
ソイツが流させた血を、大地に還元するだけだ。
「これでトドメだ!!!」
最後の一振りと斬りかかった腕に生々しい肉体を切り裂く反動は来ず、再び空気を切ることとなった。
ソイツは俺が剣を全て振り終わる前に、出血多量と背中の圧倒的な重症で倒れたのだった。
その身体は霧散し、輝光導石へと変わりつつあった。
それを確認して初めて、勝ったという実感がわいた。
「っ...。......っっしゃああああああああ!!!!!!!!」
思わず声が出る。
今回は危なかった。危うく死ぬところだった。
飛ばされたとき、本格的に死を覚悟してしまった。
今も、汗が止まっていない。
まあ、エネルギー出力による熱でこのコックピット?の中も滅茶苦茶熱いんだけどな!
そして、エネルギーのマークは94%と書いてあった。
......まだ、完全にフルパワーではなかったのか。
それで勝利するなんて、まだまだ余力はありそうで安心だ。
最初の頃は装備に関してもそんだけか?なんて思ってたけど、これなら十分強い戦闘マシンだな。
今はフルパワ―を停止して、少しずつ元の状態に戻りつつある。
...そういえば戦闘中、相棒の声が聞こえた気がした。
また、助けられてしまったのかもしれないな。
さてと、それじゃ輝光導石を回収して戻りますかね。
そう思い、声を出そうとした瞬間。
キュィィィ.........
謎の音がし、途端にとんでもない殺気が襲う。
何だか分からないが、凄く嫌な予感がした。
慌てて音のする方を振り向くと、そこには.........
緑のエネルギーがこちらを吹き飛ばさん勢いで迫っていた。
そしてその光線の出発地点には、黄色と黒の、トラロープのようなカラーリングの機械兵が立っていた。




