第24話 危機
昼休みが終わり、打ち合わせの時間がやってくる。
仕事において、色々と事情や情報を示し合わせておく事は超重要だからな。
とりあえず、会議室に入る。
後輩のオタク君(本名:小沢くん)はすっかり見違えた。
今までは俺がやる事いう事をぼーっと聞いてそれで何かあればその都度言う、くらいの感じだったが今じゃすっかり頼れる一人前だ。
「悪い遅くなった。...とりあえず久しぶりだからまず仕事以外の話も聞いていいか?」
「大丈夫です。自分も、まだ準備してたんで。先輩も病み上がりなんですし無理せず。」
気を遣わせちゃったみたいだな。ありがたいし、少し申し訳ない。
その後色々と俺が居なかったときの話を聞いたが、そんな事もあったのかと面白かった。
「ははは、しかし本当に変わったな小沢君は。マジでしっかりした。この短期間でそこまでなれるとはなぁ...」
「ええ、お陰様で何とかやってます。最初、色んな意味で先輩が支えてくれてたんだなって気づいたので、ようやく自分の仕事に意味を持たせられた感じがします。」
そうか。それならよかった。
怪我をした甲斐があるってもんだぜ。
いや、わざと怪我した訳じゃないけどな。
そうこうしていると、あっという間に時間は過ぎていく。
会議が進み、途中休憩となった。
「俺外で飲み物買ってくるけど、何か欲しい奴いる?ついでに買ってくるぜ。」
「マジすか?じゃコーラおねしゃーす!」
「いいんですか?お茶買ってきてもらっても大丈夫です?どうしても手が離せなくて。」
会議中とはいえ、急に客から連絡が有ったりするとどうしても動けない奴はいる。
言葉が軽いのはうちの社風だ。アットホームな職場ってやつだな。
俺は頷くと部屋を出ようとした。
その時、一瞬ガクっとこけかけた。
足を踏み出し耐えたが、妙な違和感があった。
と.........
耳鳴りがした。
かなりマズいと警鐘を鳴らすような耳鳴りだった。
慌てて戻りみんなに連絡しようとするが、その時...。
ドガシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!!
とんでもない音と共に、会社の窓に煙が映る。
揺れに耐え、慌てて外を見ると近くの工場にマックスサイズの恐竜らしき異偶が立っていた。
ソイツは、目を閉じ、ゆっくりと顎を引く。
何かマズい気がする。
俺はやはり戻ろうと足を踏み出したが、その時。
「グゥゥゥゥ.........ゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!」
とんでもない雄叫びを上げ、恐竜型の異偶は天に吼えた。
そしてギラリとした目を開け、まるでこれから全てを貪るかのように舌なめずりをした。
ソイツが歩き出すと同時に、絶叫が聞こえだした。
そこから先は、まるで地獄だった。
工場内の人々がどんどん食い殺されていく。
サイレンが鳴り響く中、どんどん工場から人が逃げる。
ヘルメットをかぶりしっかりと逃げている奴。
泣き叫び、負傷しながらも必死に逃げる若き作業員たち。
最初崩壊したのは工場だったので判断は間違えてはいないはずだった。
だが、むしろ工場で死んだ方がマシだったかもしれない。
あまりに一瞬のこと過ぎて、俺もどうなったのか分からなかった。
必死に逃げるも追いつかれ、踏みつぶされていく者たち。
腕で掴まれ、無残にもそのまま口に入れられ咀嚼されてしまう者たち。
尻尾で払われ、破壊された建物や車の破片が突き刺さって死に行く者たち。
咆哮の波動で天高く吹き飛ばされ、地面に落下し潰れる者たち。
様々な死因が重なり、あっという間に人々の死体の山が出来ていった。
地面は血で汚れ、異偶の涎と混ざって汚い色合いとなっていった。
その血の液体は洪水となってあふれ出し、その付近から徐々に侵食していく。
それを窓から確認できた距離にある我が社も他人事ではない。
みんな慌てて逃げだす。
俺の居る方向はむしろ向かっていく方向の為、逆側の扉へと駆けていく社員たち。
俺には盾がある。逃げるのは一番後でいい。
慌てふためいている社員質の中には当然合田さんや小沢くんも居て、それぞれ話しながら逃げている。
何を話しているかは分からないが、俺はとにかく別のルートから逃げ遅れを探した。
恐竜野郎はこちらにまだ気づいていないようで、惨殺し喰らい尽くした工場跡で牙の間に挟まった肉を爪でかき出している。
呑気なものだ。俺たち人間を餌、いや精々玩具程度にしか考えていないのが良くわかる。
とりあえず、社内に残っている者はいなかった為、俺も外に出る。
みんなとは逆方向の恐竜側だが、意外と近いお陰で影になっていて気づかれないかもしれない。
それに引き換えみんなの方も見えるが、あれじゃまるで囮だ。
どう見ても、引き連れに行っている。
と、近くの他の会社や店、家の人々と合流したようだが、何やら様子がおかしい。
1人のマンションから出てきていた人が別のエプロンを着けた人に対し詰め寄っている。
エプロンの人側も詰め寄り何か口論しているようだ。
他の人も止めようと奮闘しているが、そのせいでちょっとした騒動になっている。
結構人だかりになってきてしまっている。
アレは不味いぞ......。
そう思った矢先、突如............
「ギャァァァァァァァァアアアアアアアアアアゥゥゥゥゥゥウウルルルルルルrrr!!!!!!!!!!!!!!」
と言う声と同時に再び爆風が巻き起こり、わが社を含む近くの家や建物が吹き飛んでいった。
おいおいおいおい!!!!!嘘だろぉ!!!!!!!!!
マジかよ!!!!!
まーじか。
いや...。
終わった。
俺の今まで職務を受け持ってきていた就職先が、あっという間に更地に変えられてしまった。
今まで何年も勤めてきた会社が一瞬で消滅し霧散した。
なんだか、とても空しい気持ちになった。
こんなにあっさり壊れ去るものだったか?現実って。
よく働き始めの頃は、うちの会社だけ休みになんねえかな~等とくだらないことを考えていたものだが現実になってしまった。
既にリーパーになっておくべきだったと後悔するが、もう遅い。
そしてどうやら異偶も騒動に気が付いたようで、ゆっくりではあるが人だかりに向かっている。
あのままじゃやられる。
騒動の中逃げることすら出来ずその場に留まってしまった者たちと巨大なバケモンでは機動力が違い過ぎる。
どう考えたって、このまま行けば確実にご臨終だ。
会社は後悔で済んだが、知り合いの命は後悔では済まない。
ましてや、俺が怪我していた期間ずっと頑張ってくれたいわば戦友だ。
そんな人たちをすごすごと失ってたまるか。
思わず意識より先に口が動いた。
【漆黒の死神よ。夜を穿て! REALIZE REAPER!】
こうして、最強と恐れられた太古の肉食竜モドキと、黒き守護神の戦闘が始まった。




