第21話 副作用
さて、少しずつ話は見えてきたかな?
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あまりにデカい声に自分でも驚いたが、とにかく会社だ。
3日もずる休みしてしまっている。
このままでは俺の普段の生活まで脅かされてしまう。
この世界、悲しいかな基本はお金が無ければ生きられないのだ。
別にお金が食えるわけでも着れる訳でもないが、少なくとも必需品だ。
あれで飯を買い服を着るのだから。
因みにカーㇴの世界にも資金というかそういう通貨みたいなのはあるらしいがそこまで重要ではないらしい。
基本的に集団で生活する上、特に欲も無い為誰も通貨を欲しがらないらしい。
しかも、仮に必要なものがあれば上が購入したり作ったりするらしい。
羨ましい話だ。
この世界の誰かさんに爪の垢を煎じて飲んで欲しいものだ。
とまあ話がズレたのでそれはさておき。
「ろ、楼汰様...落ち着いてください。今は安静に...」
「それどころじゃない!!病院に入院したわけだし連絡できていないだろ、俺は家族もいないし誰も相談できない!!!ヤバい!!!!!」
また叫び出しそうになる俺の首根っこを摘まんだカーㇴが、こういった。
「だから落ち着いてください...。その会社についての連絡ですが、私が行いました。なので安心して入院なさって大丈夫です。」
...
.........
...............
えええええええ????!!!!!
え?連絡してくれたの?!とまた叫びそうになる心を抑え、彼女に問う。
「え?...マジ??でも、俺、君に会社の電話番号も教えてないし何よりまずスマホの使い方すら教えていないわけだけど...?」
「ああ、それなら安心してください。一昨日、会社の方から連絡がありました。使い方は私の使う情報機器と同じかと思い、連絡しました。」
へえ、意外とカーㇴの世界の機器と俺らのスマホって似てるんだなぁ。
...ちょっと待てよ。
「あ、あぁそう...って、誰か連絡してくれてたの?!」
「ええ...。貴方のすまあとふぉんに着信があった為私が出たのですが、とてもビックリしていらっしゃいました。ですが、事情を話したら自分が話しておくと仰いました。なので、大丈夫かと。」
「それ、本当に俺の会社?変な所からの迷惑電話、、、とかじゃないよな???」
「ええ。確か、お名前が表示されていましたね。ええと......合田さん、でよろしいのでしょうか?:
ありがとおおおおおおおおお合田さあああああああああん!!!!!!!!!!
俺は涙がちょちょ切れそうだよ。
「そうか。...良かった。カーㇴもありがとな。分からない中返してくれて。」
「いえ、お気になさらず。これくらい、なんてことは無いですから。」
「いや、本当に助かったよ。合田さんにも感謝だな。」
合田さん、退院したらお礼しに行こう。菓子折りとか持って。
「そうですね。とても心配されていましたよ。」
「...まぁ、そうだよな。いきなり入院だし.........ってさ、俺の状態をどう説明したの?ロボットとして戦ったとはいえないし、かといって事件とかにするのは無理あるし。」
「理由ですか?説明いたしましたのは、ニュースでも取り上げられている怪物の事故に巻き込まれたとお伝えしました。」
うわ滅茶苦茶いい理由。
そうだよな、あんだけの怪獣災害がニュースにならない訳ないもんな。
「あとさ、そもそもカーㇴについて聞かれなかった?」
そもそもの話だ。
俺に連絡とってくれるような人なんかいないし、ましてや俺自身でも無いなら誰だよ?ってなるしな。
「ああ、どなたでしょう?と質問を頂いたので、現在同棲している家政婦と言っておきました。」
...は?
「いやいやいやいや、無理あるって。せめて生き別れの叔父の娘くらいにしといてよ......」
「...その方が、無理ありませんか?...」
「うん、まあ......。でもさ、少なくともカーㇴってまだ未成年に見えるわけよ。声も。」
「はあ...。」
はあって、理解できていないような顔だな。
てか、理解できていないのか。
俺、おかしいことは言ってないよな?
うん、状況は大分おかしいけどな!!!
「だとするとどちらの意味でもヤバいな。かなりヤバい!!!」
「...ひょっとして、私また粗相を...?...本当に何と謝ればいいか...」
おろおろと再び右往左往するカーㇴを止め、話す。
「いや、カーㇴは悪くない。うん、むしろ咄嗟にしては良い反応だったと思うよ。」
「そ、そうですか?」
「うん、ただな、この世界、未成年の女の子と近縁ですらない成人男性が居ると色々とマズいんだよ。」
「...なるほど。」
「しかもさ、同棲しているって言っちゃったわけじゃん。俺とカーㇴが。」
この説明で理解してくれたか。
そう、先述の通り彼女は悪くは無いのだ。
悪いのは...社会?いや、それに蔓延るクソ野郎どもか。
「家政婦ってのをまともに信じたら未成年を雇うやべー奴扱いされちまうし、かといって嘘だとバレたら犯罪者扱いだ......」
「...そ、そんなにですか??」
彼女はとても驚いており、目を見開いていた。
「ああ............。俺、クビかな?逮捕かな?」
「そんな、あんまりです。」
「でも、これが現実だよ。とはいえ、カーㇴはマジで悪くない。よくやってくれたよ。」
そう、何度も言うがカーㇴは悪くは無いのだ。
全てはタイミング、たまたまタイミングが頗る悪かっただけだ。
「あ、でも、合田さん?でしたっけ、何か嬉しそうでしたよ。私の話を聞くときも上機嫌でしたし、ええと。確か、アイツにも何とかが...ってすごく嬉しそうでした。」
?!
何で、俺とカーㇴのその一見邪な関係にも見えそうなそれを上機嫌で...?
...?!...まっ、まさか...まさか!!
「ひっ...!!!ひょ、ひょっとしなくても脅される奴かコレ?!」
「いえ、悪意のある笑いではなかったと思いますよ?」
悪意は無さそうか。
ま、合田さん結構寛容な人だしそんな悪いことするような人じゃないか。
「なら、何でそんな...。まあ、いいか。一先ず直さないと意味ないしな。」
「ですね。」
とりあえず、目の前の問題が片付いて安心したのか急に腹が鳴る。
カーㇴは笑うと持ってきてくれていたリンゴをたどたどしい手つきで剝き始めた。
あまりにひやひやする切り方だった為、そのまま受け取った。
幸い、動けない訳じゃないしな。
「しかし、何でこんな怪我を負ったんだろうな?俺、戦闘中特に怪我とかしてなかったけどな。」
「...?......そうなのですか?」
彼女の声色には疑問が含まれていた。
そして顔の上には、摩訶不思議とでも言わんばかりに疑問符が出ていた。
リンゴを齧りながら彼女に問う。
「ああ、別に傷とかも...って、なんか不思議そうだな?」
「いえ、戦闘中には出なかったのですね。」
え?戦闘中には...?
てことは、戦闘中に何かあったのか??
俺の知らない秘密が...
「えっ、なに、その含みのある言い方。何かあるの???」
「えっ、ああいや、その...」
少し言い方が堅苦しいかもしれないな。
事実、俺に対する彼女の顔は強張っていた。
「ああごめん、いいよ気にしないから。何かあるなら言ってみてよ。」
すると彼女は意を決したように言った。
「すみません、我々がテストプレイをしないばかりに。」
それは、あまりに唐突な話だった。
「え?どういう事?」
「楼汰様がリーパ―として戦われているとき、あの鶏の様なバケモノの羽の射撃を喰らったりヒヨコから突き飛ばされて背中を打ったりしましたよね。」
「...ん?ああ、そうだn............まさか...そういう事?」
いや、確かにその可能性は最初からあったのだ。
俺は最初の戦いでは一つも傷は付いていない。
しかし、今回ではところどころで少し傷を受けている。
これはもう、その線がほぼ確定だ。
「それ以外、考えられません。本当に申し訳ございません。私たちに見落としは無かった筈ですが、全てはリーパ―を造った我々の責任です。」
彼女は腰を折って謝ろうとしてくる。
流石にそれはテストしても分からなかったかもしれないし、俺には別の意味でも謝る必要は無いと思う。
「ああ、いやいや別に責めないよ?」
「いや、それは流石に...私たちを甘やかしすぎでは?」
「確かにさ、テストしてないなら倒せないかもって思ってたけど。普通に異偶たちを倒せるし、傷は別にテストしてなくてもねぇ。戦う以上どこかしら傷つくこともあるって覚悟はしてたしな。」
そう、倒せないなら問題はある。俺も流石に突っ込んだよ。
けど、攻撃が入るなら話は別だ。
なら、普通に戦うのと何ら変わりはない。
ダメージを受ければ傷が出来、血が出るのは世の道理。
何もおかしいことじゃない。
それに、普通戦いってのはどちらともそれなりに傷つくものだ。
前回がおかしかっただけだ。
「ですが...」
「あのさ、こういう事言うのも何なんだけど俺、自暴自棄になって人生辞めようとした事のある男だぜ。これくらいの傷ならなんてことないし、ぶっちゃけ副作用が無い方がおかしいと思ったもんな。」
「それは...何とも...」
俺のあまりに嫌な言葉に目を伏せ、滅茶苦茶気まずそうな顔するカーㇴ。
そりゃそうだよな、人の自殺とか本人しか茶化せないしな。
俺的には彼女に責任負って欲しくなくて言ったんだけど逆効果だったかな。
「って、答えにくい回答して悪い。やっぱ俺性格悪いわ。ごめんな、責めようと思ったわけじゃないんだ。」
「いえいえ、大丈夫です!そう言って頂けるだけでも御の字です。」
彼女はこちらを見てゆっくりと微笑む。
「ま、こういう適合者がある作品にはありがちだからな副作用。なんか、それを改めて宣告されたみたいで気持ちいいぜ?」
「...ふふふ、ありがとうございます。気遣って頂いて。」
「...おう」
「あ、そうでした。」
何か急に思いついたかのように彼女が突然俺に言う。
その顔はいつになく険しく、優しかった。
「え、どうしたの?なんか伝え忘れ??」
「貴方はきっと不安だったでしょうし、多分先ほどの言葉とは裏腹に恐怖や焦りもあったでしょう。
ですが、その全てを振り切って目の前にいる人々を守るために動いてくれた。
私はそれを、誇りに思います。
嬉しいんです。
貴方を、貴方の事を再確認出来て。
偶然なった適合者ではあったかも知れませんが、"適合"するべき人材だったと。
そう思わせてくれた貴方が、とても嬉しいです。
ひょっとしたらもうリーパーを見る事は無いかもしれないと不安でした。
それを貴方は払拭してくれた。
貴方は、紛れもない世界の英雄様で、私にとっての希望です。
偉そうにして申し訳ありません。
ですが、これだけは伝えたかった。
本当に、ありがとうございます。」
すんっと、啜るような音が聞こえた。
彼女は涙を流していた。
彼女も不安だったのだろう。
リーダーとは言え、彼女はまだ若い。
その中で一任された任務を、たった一人で遂行しなくてはいけない恐怖。
そして、俺が戦って心を痛め、逃げ出そうとしたときは内心怯えが止まらなかっただろう。
俺が、ひょっとしたらリーパーであることを投げ出す可能性も孕んでいたのだから。
もしそこで誰も世界を救えなくなったら、何の為に私は行ったのだと苦悩するだろう。
ましてや真面目な彼女の事だ。
俺すらも追い詰めたと余計自分を責めるだろう。
そのプレッシャーの中で、俺はやらないと言ってしまった。
彼女はあの時、やはり絶望したはずだ。
それでも、自分の世界と、俺自身を救うために自らが希望になることを選択した。
俺は彼女をそれだけでも尊敬できるし、守りたいと思った。
だから、俺は。
彼女の手を握り、こう返した。
「ごめんな。色々と思い詰める事があったんだろ?
俺にも余裕がなかったのと、いきなりの状況だから混乱してな。
けど、あの時も言ったように俺はもう迷わない。きっと。
俺はあの時、目の前で消える命を守りたいと思い行動した。
結果はどうであれ、俺はそこにもう憂いも無かった。
俺も、今ならやっと、俺が適合者だと胸を張って言える気がするよ。
そうなれたのも、お前が俺の希望になってくれたからだ。
だから、今は安心して俺と共に戦ってくれ。
俺とお前らの世界を守るために。」
こう言うと、彼女は泣き笑いしながらニコリと笑い頷いた。
「...ほら、これ。全く、まるで俺が死んだみたいじゃないかぁ。」
近くにあったティッシュを手に取り渡すと、彼女は受け取り拭き出した。
「...ずびっ。あびばぼうぼばいばず...ぐすっ」
「泣くなって。もう大丈夫。」
これはしばらく続くやつだな。
そりゃそうだが、俺がこの世界でたった一人なように、彼女もこの世界ではたった一人なのだ。
辛かっただろうし、俺にそれを気づかせないようにしていたのが何よりの証拠だ。
俺のここでの選択はきっと未来を変えるだろうと信じる。
そう思いつつ布団に顔を埋めてひっそりと泣く彼女の頭を撫でながら、病院での一日が過ぎていった。
ちなみに零れ話だが、デカい声を出した後、急いで来た看護師に死ぬほど怒られた。
まあそりゃそうだ。
廊下を歩いていた患者から面会中の見舞い人まで全員に聞こえる程響き渡ったのだからな。
怒られて当然だし、迷惑極まりないな。
誰だ、そんな叫んだ奴は。全く。




