第18話 定例会議・中編
長い回が続きます。
【ダリア視点】
あの黒仮面こそ我らが主だ。
あの方はいつも麗しく、そして常に品がある。
闇に映るその姿はまるで骨董品の様な趣まで感じさせる。
「まずは悲しいお知らせだ。諸君、とりあえず座りたまえ」
あのお方のお言葉で全員が椅子に着く。
「とりあえず、今回も司会進行を頼むよ。ショーキ」
「畏まりました。貴方様の為ならば何でもこのショーキのお任せあれ。」
アイツのあの仰々しい感じも久々で腹立つな。
しかし、悲しい報せって何だ?
まさか、やっぱ俺のカンが当たってたなんてオチはやめてくれよな。
「それではまずは我が主よりご連絡がございます。皆様、静粛にお願いいたします」
「おいおい、やめてくれ。私はそういう堅苦しい雰囲気は嫌だと言っただろう?」
あのお方は光が苦手だが、光と同じくらい荘厳な雰囲気も苦手なのさ。
あのお方が嫌がる雰囲気をわざわざ出すあたりがずっと食えない感じで俺ァ嫌いだぜ。
ショーキは性格は悪いが、アレはアレであのお方を気遣ってはいる筈だ。
ただ、普段は基本的に主だろうとあんな風に接するのが困りモンだがな。
「おっと、失礼しました。では我が主、お願いいたします」
「おいショーキ。貴様、我が主を愚弄しているのか?!リーダーの誇りはどうした?!そんな事なら、我がその席を頂くぞ!!」
今突っかかった奴が茶仮面のツヴォサク、俺と同格レベルにあのお方に対して忠義に重んじる漢だが、小うるさいのと汗臭いのとで残念ながらあのお方には不評な可哀想な奴だ。
「ふふ、そのリーダーに選ばれなかったカスが一丁前に意見をするとは嘆かわしい。私は普段からこの調子だし、主にもそれを認めて貰っている。君にとやかく言われる筋合いは無いね。」
「何だと?!」
おいおい、おっぱじめる気かよ!
んったく、あのお方の前で何してんだと止めようとすると...
「いい加減にしないか、二人とも」
橙仮面から仲裁が入る。
ツィヒックは唯一俺を煽らない公平な奴で、数少ない俺の理解者であり、このカスどもを密かに統率している影のリーダーだったりする。
「ショーキ。お前もお前だ。いくらあのお方の赦しがあったとしても限度があるぞ。」
「ふん、下部如きが調子に乗るな」
「ツヴォサク、お前はお前であれだけ尊敬しているあのお方の前で無礼を働くんじゃない。あと臭い。風呂入れ」
「...確かに失礼した。申し訳ありません、主よ。............臭いは余計じゃないか?」
ツヴォサクの最後の小声は無視された。そらそうだ。
しかし流石は影の苦労人。まとめるのも一丁前だ。
「申し訳ない、彼らがこの調子で」
「いやいや、元気があって何よりだ。すまないね、ツィヒック。それでは改めて会議を始めようか。ショーキ」
「はい、我が主。それでは、今より会議を始めます。
今回の連絡事項は3つ。
次に、重大発表に関する本題が1つ。
終了予想時間は大体2時間程と思われます。」
奴は一気に言い切ると息を吐いた。
何となく議題は分かるが、2時間か。
その間にあの世界にもう一体ぐらいなら召喚できそうな微妙な時間だ。
正直、あのお方以外の話などどうでもいいんだがな。
「まず、1つ目。
これは主より説明して頂きます。」
「ああ。まず一つ目だが悲しいお報せだ。
ルビーに続きアメジスまで破壊され、後はダイヤとエメラルとマリンとトパズだけとなった。
ショーキに貰ったモノだったが二度も同じものを作り出すのは厳しいだろう。
彼と彼女の死を悼み、同胞を慈しもうじゃないか。
では、黙祷。」
あのお方の一言で全員が黙祷しだす。
勿論、俺もだ。
正直、あのカスのショーキが造った鉄クズなどどうでもいいし、むしろ死んで清々するが、あのお方が悲痛な面持ちでいるのだけは防がなければ。
俺たちがあの方の感情を肩代わりする事で、少しでもあのお方を余計な感情から守りたい。
そう願っている。
「諸君、ありがとう。
きっと、彼らも喜んでいるだろう。
我々は前を向かねばならない。
さあ、次の話題へ移ろう」
あのお方はすぐ元の表情に戻ると、話を戻した。
「畏まりました。続いてはロェシーでございます。」
桃仮面の女狐ことロェシーが微笑みつつ挨拶した。
「ロェシーです。あのお方が今せっかく鎮魂を捧げられた上で申します。
灰仮面だったナァシルが死にました。
原因は不明ですが、彼の調査中の世界は異偶が大量に出現する世界だったとか。
ボクとしてもわからない事の方が多いけど、とりあえずナァシルが死んじゃったよンっていう報告。」
「何で貴方がナァシルの死を知っているのです?さっき合流した時に会議で教えると言っていましたが。」
確かにそれは気になるな。アイツは元々別の仕事だった筈。
少なくとも、ナァシルとは別の班だった筈だ。
ツィヒックが気になるのも無理はないか。
「ああ、それね。ボク自身はもう仕事終わってたからさ。何処かの誰かさんと違って。」
コイツ、息をするごとに俺を煽ってくるな。ぶっ殺されてえのか?
「だから、仕事がまだ全然片付いていないらしいナァシルの所へ行ったの。最近チャットでも見かけなかったしね。」
「それは、そうだな。」
「うん。それでナァシルの所を尋ねたら死んでた。四肢がもげて滅茶苦茶になった状態でね。」
最後の一言で戦慄が走る。
「なッ!?...どういう事だ、野生の動物ならば殺せる筈。異偶は基本的に人を喰らう筈だから胴体だけとはいえ綺麗に残るのはおかしいだろう。」
「そう。だからボクも困っちゃってさ。みんなの知識を借りたいの。」
「そんなの、我々に言われたところでわかるわけないだろう。」
「それはそうなんだけどさ、でも気になっちゃって。」
俺もツィヒックに同意見だ。あの女、気になっちゃってとか言ってるが本音はただ保身がしたいだけだろ。
今ン所俺の中じゃてめえが殺した、って筋書きになりつつあるからな。
コイツはマジでヤバい女だ。
女狐と言っても過言ではない。
殺す理由なんて、いくらでも想像できる。
「まあまあいいじゃないか、理由なんて。今は死者を悼むことだけしよう」
あのお方の鶴の一声で再び沈黙が訪れる。
ナァシルも自意識過剰なゴミだったが、それでも同胞と言った点では一緒だ。
それにショーキや奴の造る鉄クズよりは遥かにマシなレベルだしな。
ナァシルか、そこそこ仕事も一緒にしていたがまさかあんな終わりを迎えるとはな。
俺らはいつでも死ぬ可能性があるが、だからと言って原因不明の猟奇殺人事件の被害者になっちまうとは思わなかったぜ。
俺はまだ死ねない。少なくとも、あのリーパーを消し去るまでは。
しかし、ホント―にロェシーが殺したのか。或いは、別の実行犯がいるのか。
新種の異偶ならありがてえが、扱いに注意しなければいけないような奴はご勘弁だ。
「最後の連絡事項はお前だ、ダリア。とっとと話せ、時間の無駄だ」
「ほんっとお前らって俺の事嫌いだよな。俺もそうだけど」
最後話すのは勿論機械兵のことだ。
俺はS-504で見た機械兵、そして悉く異偶を送り込むも何度も退けられてしまったことを話した。
奴らの前で言うのは屈辱的だったが、言わずに地獄を見るよりはマシだ。
「...という訳だ。俺は相変わらずあの世界の監視を続ける。」
「何がという訳だ、だよ。てんで何の役にも立ってないじゃないか」
早速突っかかってきやがったのはデーヴィだ。
「てめえこそ何か連絡したいことがあったんだろ?まさか嘘だったのか?そんな訳ないよなぁ?」
「はっ、今はお前の話をしているんだ。お前、あのお方の役に立ちたいとか言いながらあの世界を独り占めした癖に、今更何弱音吐いてんだよコラ」
やっぱこうなるか。
しかしコイツ、あの時俺を煽りたいがために嘘ついてくるとは、やっぱしょうもねえしクソキモいな。
「あの時とは状況が変わった。俺だって何もやっていない訳じゃねえ」
「けど、事実として特に進展があった訳じゃないんだろ?じゃ何もやっていないのと同義さ。」
クソ、こいつ等ホントムカつくな。
「いいか?お前らがあの世界に誰も興味を示さねえから俺が仕方なく行ってやったんだぞ?何だその態度は、舐めてんのか?」
「はっ、何のカケラも無いゴミの世界に何かあるかもしれないとか抜かして入っていったカスの言う言葉は聞けねえな。」
そのカケラも無いゴミの世界より何も見つからなかった世界を探索していた奴には言われたくない台詞だ。
「けっ、楽な方選んだお前らに言われたくねえよ。あの世界は主がカケラが眠ると決めた世界だ。その決定を否定すんのかよ」
「そうは言ってねえさ。でもあの時、お前だって100%無いとか言ってなかったか?」
「ああ言ったさ。だからこそ、そうじゃないという証拠を見つける為に時間を懸けたんだ。結果カケラが見つかった。これはどうしようもない功績だろ」
「だがその証拠だけで何年も懸けるのは頂けないな。その結果として俺ら側にも遅れが出てるんだからよ。」
「さっきから聞いているがデーヴィの言う通りだろう。状況が変わったってお前、そんだけ時間かければ変わるだろ、そりゃ(笑)」
ショーキまで入ってきやがった。
コイツら、ホント誰かをハメる時だけイキイキしだすよなァ。
クソ、次から次へと。
「見つかった時にでも俺らに助け求めてくれば助舟出してやったのにそれを断ったからな。お前が悪いだろ」
「お前らみたいなハイエナ共に渡すくらいなら俺が1人でやる方が良いと思っただけだ。それに、お前らとはハナから馬も合わねえしな」
「けっ、調子乗りやがって。」
「ふん、結局今はそういう状況って話だ。この会議終了後も俺一人でやる。ここは俺の独断場だ。それでいいんだ。一部機械兵のせいで遅れてはいるが、全体的に見れば大分遅れを取り戻しているからな。」
「ああそうかよ勝手にしとけ」
赤仮面と紫仮面が寄ってたかって言葉で殴ってくるのを抑え、何とか話から抜ける。
「お前、そんな大変な状況になってたのかよ。言えよなそれくらい。俺で良けりゃ話くらい聞いたぜ?」
ツィヒックが話しかけてくる。
「気持ちがありがてえが、お前だって仕事が大量にあんだろ?俺のを無理してやるくらいならお前はお前の分野で持ち味を活かせよ。俺には構わなくていい」
「ふぅ、そうか。わかった。じゃ、引き続き頑張ろうな」
やはり、ツィヒックだけは煽りや舐めが一切ない。
非常にやりやすい。
もう、【無に帰す者】はアイツと俺だけでいいんじゃなかろうかとか思える程にはアイツは良い奴だ。
と...
「それでは、連絡は以上のようです。続いては、重大発表に移ります」
重大発表ねェ、誰からかによって信憑性も変わるな。
「それでは我が主、お願いいたします。」
あのお方から直接の重大発表。まさか、やはりアレが見つかったのか!?
期待を胸に主を見る。
「ああ、分かった。それでは発表させてもらおう。
私は遂にとある物を見つけた。
それは...」
2024/05/21 名前が一部異なる人物がおりましたので修正いたしました。




