第16話 異偶との対決 その3
少しずつ進んできております。
黒き機体の光沢ある表面には、鏡の如く反射した異偶の姿が映っている。
奴はこちらを窺っていたが、こちらが考案中と見るや否や嘲笑うかのように進撃してきた。
進路をまるで考えていないようで、通り道にあった家や車がどんどん破壊されていく。
俺は慎重に、タイミングを窺った。
少しでも間違えればその分の耐久力を減らしてしまう。
と...
「gdjljふぉじょえうごあfjjふぁfじょがうごうgぉぉxlxlx!!!!!!!!」
と叫んだ奴は遂にエネルギーをぶっ放し、腕にその粒子を完全に纏わせる。
そして飛ぶことが出来るとは思えぬ巨体でこちらに一瞬で跳躍すると殴り掛かる。
今だ。
「シールドバリア起動!!!!」
俺の目の前にネイビーカラーの紋章が作り出されそれが奴の腕と接触する。
恐らく、さっきまでのプログラムならばここで砕け散り俺はひとたまりもないだろう。
だが、今は違った。
バリアは壊れず、ヒビすら入らずダメージを一切通さない。
それどころか、だんだんデカくなってきていた。
奴はそれを目の当たりにし、思わず「は?」とでも言いたげな目でバリアを睨みつける。
しかし、それすら気にせずバリアは遂に粒子を纏った腕自体を飲み込み始めた。
そもそもの話、俺はリーパーの装備がどんななのかは乗ってから理解したが、本来であればカーㇴが知っていてもおかしくはないのだ。
そして、当然のように装備や武器にはそれぞれ名前や特徴があり、特殊能力持ちの装備だってあるだろう。
そりゃ、最初からエネルギーを吸収するような力があったって何ら不思議じゃない。
むしろ最初から説明書など一切見ずに戦った俺が無茶をしているだけなのだ。
しかし、メソッドとして書き込んでくれているとは思わなかった。
実際、この世界において吸収とかそんなものが出てくることはまあ無い。
だからさっき組み立ててみて、正直どうやってコーディングしようか悩んだのだがリーパー側が俺がプログラムを書いたことを理解して元々あった能力をメソッドの形で出力してくれたのだ。
超高性能AIでも入っているのだろうか。俺が少し打ち込んだぐらいですぐに分かりやすく元々の構造を出してくれる機械、優秀過ぎる。
ま、兎に角そのお陰で俺はその機能を参考に出来、結果バリアに組み込んで粒子を吸収するなんて方法を編み出せた訳だが。
実際、奴の身体の周りの粒子は急速に減っていた。
奴は焦っているようだった。
慌てて引いた腕には既に粒子はカケラも残っておらず、逆に俺のバリアはとんでもないデカさになっていた。
「どうしたどうした?そのエネルギーが無きゃ慌てちまうのか?ほら、さっきみたいにやってみろよ。」
ちょっと煽ってみる。
少しの煽りだったが効果は抜群。先ほどまで舐めていた相手に煽られるなどプライドが許さないだろう。
日本語がわかるのかどうかは兎も角、奴は明らかに動揺しこちらを睨みつけていた。
まだエネルギーが相殺した、とかならマシだったのかもしれないがそれを敵に取られてしまうのだ。
ヒヨコ野郎からしたらたまったもんじゃないだろう。
ざまあみやがれってんだ。
さあ、ここから反撃だぜ。
ヒヨコ野郎は残り少ないエネルギーをフルで使用し再び地面を蹴る。
それは確かに厄介だ。
先ほどより高度は無いもののそれでも俺よりは高い所まで浮き、そして一気に落下してくる。
スピードが乗り、更に火力も高いと思われる。
俺は腕を振り上げバリアを上に向ける。
確かにその攻撃は痛いのだろう。本来ならば。
だが、今更だ。どうせやるなら、さっきやっておくべきだった。
奴の脚がバリア目掛けて落ちる。
しかし、バリアは砕けなかった。
皮肉なことに、アイツはチャージしないとロクに使えないエネルギーだったのに俺はチャージせずともほぼ使えるらしい。
チャージ時に粒子が体表を巡る形で常にエネルギー粒子自体は近くにあったが、一つにまとめる能力が無さ過ぎた。
俺のバリアに書いたプログラムは元はカーㇴの居た世界の研究員たちが命を削って作ったモノ。
粒子を纏めるどころか効率まで良く、これほどの落下攻撃でもびくともしないくらいのエネルギーをしまえる容量まで持っているようだった。
至れり尽くせりなリーパーに感謝しつつ、そろそろトドメを考える。
とりあえずバリアごと奴を投げる。
バリアは空中で粒子に戻り俺の中へ、そして奴は投げられて地上に落ちる。
コンクリートの地面が割れ、木々は揺れビルが崩壊する。
そのまま動けずじたばたしている奴の腹を蹴り飛ばし更に遠くへとやる。
あんなデカいのを地上で爆発させたら更にビルや家が壊れてしまうだろう。
そう思い、蹴り飛ばした先で蹲っていた奴を下から蹴り上げ更に膝蹴りをかまし空まで吹っ飛ばす。
俺にまだこんなエネルギーが残っていたとは思わず目を見開くがもう遅い。
そのまま地上に降りた俺は双肩に移しておいたエネルギー粒子を集め、それをチャージする。
アイツはまだ飛べない。
終わりだ。
「はああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!」
トリガーを引く。
ピンク色のエネルギー光線が雲を引き裂き、そのまま空へと一直線。
ヒヨコと周辺の雲を巻き込み、そのまま上空で爆発した。
.........勝った。
長い戦いだった。
流石の奴もダメだったか、あの後黄色い羽だけが世界へと降り注いだ。
そしてこの街は平和を取り戻した。
ショッピングモールに居た人らや近くで住んでいた人たちは勝利に喜び、ひとまずな安寧ムードが流れていた。
少し離れたあちこちで歓声が聞こえる。
良かった。勝つことが出来た。
しかし、ああいう異偶もいるという事か。
時間のある時に整理し、更なるプログラム力を鍛えないと大変なことになりそうだ。
ひとまず、次の休みにでも練習するか。
カーㇴに異偶についても聞きたいことあるしな。
まあしかし、今回の2体との戦いは俺の中にも成長を促してくれた。
そこだけは感謝できる。
なんとか勝利出来た。本当に良かった。
かなり疲れたのでとっとと帰って仮眠しよう。今日は買ったキットで楽々料理だ。
そう思いリーパーを解除し人状態に戻ったその時。
背中に激痛が走った。
背中だけではない。身体のあちこちに何か鋭利なもので何度も引っ掻かれたような傷が大量についていた。
更に、腕と頭にも激痛が走る。
背中と腕からは何か、温かいドロリとしたモノが垂れた。
ぼやける視界の中、赤い液体なのが分かった。血か。
理由が分からない。
何故、今こんな傷を負っているのか。
少なくとも戦闘時にはこんな傷はなかったはずだ。
まさか、新しい異偶...?!
しかし、そう思ったとしても俺は動けなかった。
薄れ行く視界に、彼女が慌てて走ってくる。
こっちへ来るな。まだ、何かが居るようだ。
そう声に出したかったが、そのまま突っ伏し気を失った。
ちっ、あの機械兵の野郎。
異世界人のゴミの癖によくもまあ俺たちの邪魔をしてくれたな。
それもこれもあの出来損ねえの巫女が邪魔しやがったからだ、ただじゃ置かねえ。
あの方のご用意した種を芽生えさせるのが俺らの仕事。
それなのに、邪魔しやがって。
あの方は気まぐれだが優しい人なんだ。そのあの方にせっかく譲っていただいた召喚陣を...よくも...っ。
許さんぞ異世界人、覚悟しておけ。
とその時、着信が流れる。
「...何のヨォだ」
『ーーーーっはは、やっぱ機嫌悪いねぇ。いつも通り失敗したんだ、はは』
声の主は、やはりいつものアイツだ。
「...てめぇ、煽ってんのか。俺より成績悪りぃ癖して舐めてんじゃねえぞ」
『いやいや、だって事実じゃん。それにぃ、ボクは君と違って種を植えるのは出来たし♪』
奴のキンキン声が耳に五月蠅い。
そして、言っていることが事実なだけに余計にむかっ腹が立つ。
クソ、どいつもこいつも俺を舐めやがって。
「んで、じゃあ俺をわざわざ煽る為に連絡してきたのか?w、あのお方の信頼を得られない女狐...ぷっ、は辛いな」
『ーーーーあ?今なんつった?』
「そのまんまだろ。信頼が無く暇だからって無能の俺様にレクチャーしてくださるそのお心、感謝致します...ぷっ」
コイツのアホな所は此処だ。自分の立ち位置が悪くなるとすぐキレる。
ある意味わかりやすいが、その分かりやすさのせいであのお方には信頼されていないのを理解出来ていないのだ。
『お前ぶっ殺す。絶対だこの野郎。覚悟しとけよカス』
「おうおう覚悟させてみろボケが。かかってこいやオタンコナス」
そこまで言い切ると、奴はため息を吐きながらこう言った。
『ーーーはぁ、イケナイイケナイ。君みたいな頭が悪い奴と話すとつい同じところまで下がりそうになるね。』
「はっ、元々俺より下位レベルが何ほざいてやがる。」
『はぁ、この世において一番の時間の無駄だったね。まあいいや、明日は会議だってさ。』
「あ?んでそんな大事な事最初に言わねンだよ?」
『君が僕をコケにしたからでしょ。』
「最初に馬鹿にしたのはてめえだろうが。」
まだやる気かこの野郎。明日の会議中覚悟しやがれ。
『これ以上話しても本当に無駄だから最低限話したら切るね。いい?明日は定例報告だから。しっかりと、報告できるような作業をやっておくんだよ?...ぷふっ、ま、今からじゃ遅いか』
「てっめ、最後の最後に!!」
『それじゃ、また明日。ぶふっ、ダリアは最後の晩餐でもしなよ笑』
「ぜってえ許さねえ!!!!ぶち殺す!!!!!!!」
あの野郎マジでいい加減にしろよ。
俺だって色々掴んでんだ。リーパーの分析や装備、それに協力者の情報なんかをな。
あまり舐めてんじゃねーぞんったく。
...しかし、定例会議か。てことはまさか、アレが見つかったのか?!
.........へへへ、遂に俺らの時間が始まるかもなぁ。
【ダリア視点】
2024/05/21 名前が一部異なる人物がおりましたので修正いたしました。




