第15話 異偶との対決 その2
奴は嗤い、ジリジリと歩み寄ってくる。
すんで立ち上がりすぐにバックステップを踏んでその場を離れた。
すこし離れたが、奴はどうやらまだ飛べないらしい。
ゆっくりとこちらに向かってくる。
だが、少なくとも人はみんな逃げれたようで、目視では誰ももう確認できない。
しかし、ずんぐりむっくりな身体とは裏腹に凄いスピードとパワーだった。
あの巨体から放たれた衝撃はデカく、さっきいたビル街はほぼ壊滅状態だ。
とはいえあの身体、そして生まれたてが災いしたか持続力は無いらしく、歩いてこちらに来ている為まだ考える猶予はある。
まずあの遅さならば、ひとまずこちらから仕掛ける事は容易だろう。
そして一撃のパワーはデカいが、その分攻撃時は防御がなっちゃいない。
しかも、今はそのパワーを全部出しきれないらしい。
さっきので無くなったのかもな。
ならば、今がチャンスだ。徹底的にやって、倒すより他はない。
奴はこちらを捕捉するとこちらに歩いてくる。
もうエネルギーが回復している可能性もある。しっかりと見極めよう。
俺に対し何か叫ぶと突如嘴から何かを射出した。
それは先ほどの卵の殻だった。
その殻は先ほどまでは金と黒色をしていた筈だが、役目を終えたのか黒だけになっていた。
そのカケラを膨大な量飛ばしてくる。
太腿と脛のガトリングと肩の砲台から光線を発射し全て砕く。
しかし、その砕いた一瞬の間に奴はエネルギーを使ったようだ。
奴は居なくなっていた。
「......何処だ。何処に逃げた?」
奴はまだ飛べないが、周りにいない。
まさか地中に、と思うが掘った形跡すら無い。
と、上から落下音が聞こえる。
まさか...
ドゴオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
とんでもない音と共にさっきまで俺が居た所に奴が降ってくる。
ソイツは読まれた事に腹を立てているようだったが、顔自体は満足そうだ。
しかし、危なかった。
あと少し遅かったら下敷きだ。
まさか、俺が殻を砕いて見えなくなった瞬間にエネルギーを使い地面を飛んでくるとは。
砕いた時の音で地面を蹴った音を逃がし、更に上へと逃げた後にすぐ見つからないよう殻を破壊した時の陰で自分の姿を分かりにくくするとは。
コイツ、意外と策士だな。
生まれたてだってのにもう相手で遊ぶ手立てを立ててんのかよ。
ったく、こいつ等は揃いも揃って生まれた時から害悪なんだな。
と、いいつつひたすらガトリングを撃ち込むが効いている気がしない。
何なら、ガトリング弾を撃ち込まれて喜んでいる節さえある。
実際、さっきの鶏は血を吹き出していたがこいつはさっきから血どころか俺の攻撃で羽一つ飛んでいない。
これ以上の被害を防ぐためにも、一刻も早くトドメを刺さなければ。
俺は再びレーザーブレードを取り出し、駆けた。
なるべく低位置に身を下ろしながら。
近くに行くことであるのはデメリットの方が多い。
正直攻撃の通らない奴に剣で切りつけた所でダメージが入るかも分からない。
その上、奴は一定期間エネルギーを貯めれば必殺を撃てるのだ。
近くに行ってもメリットはほぼ無いと言っていいだろう。
だが、近くに行くことで弱点がわかるかもしれない。
今の俺が気づいていない弱点に気づけるかもしれない。
どうせ離れていても防戦に徹するしかないのなら、これくらいはやっておきたい。
ソイツの周りを旋回するように走り、少しずつ旋回の輪を小さくしていく。
ヒヨコ野郎は目が追いつかないようでゆっくりと横に身体を回そうともたついている。
今がチャンスだ。
「はあああああああああ!!!!!」
身体が横のまま斜めに飛び出し空に振り上げるように斬撃を切り込む。
しかし、想像通りヤツの身体はぶよぶよと脂肪のようなもので守られており、効いた気がしない。
切っ先からはピンクの火花のようなものが飛んでいるが、さっきから出ているのでヤツの羽の汚れとかなのだろう。
万事休す、か。
ひとまず近くにいてもいいことは無い。
離れようとしたが、そこでとある事に気づく。
身体全体に膜を張るようにエネルギーがチャージされていたが、さっき斬りつけた所だけはエネルギーの粒子らしきモノが見当たらない。
といっても、次から次へと粒子が形成されているのでだから何だといった感じだが、突破するならここというのは見えた。
かと言ってそのまま攻撃してもまた弾かれ、しかも一瞬無くなる粒子の所を見定めて攻めなければいけないというのはきつ過ぎる。
どうしたものか。このままではジリ貧だ。
ヤツの攻撃を一瞬でも回避する方法があれば...
そう思ったとき、不意にいつぞやの吹き出しが表示された。
プログラムを書いたものだ。
今、それがあってもな...と思ったが不意に考えが思いつく。
まさか.........そういう事か?
俺は今思う限りのプログラムを打ち込む。
一先ず、凌げれば問題はないんだ。
ループ文を使った簡単なプログラムだ。
ループの条件はエネルギーが尽きるまでで、ループの中身は俺の前にバリアを出す事だ。
一発でも耐えられれば、そこからは技術のターンだ。
先ほど消えた粒子がもし、俺が斬りつけた事で消えていたならその表面だけ掠ればヤツの体表に一瞬粒子が無くなり、攻撃が通るかもしれない。
分からないが、試してみる価値はある。
とりあえず剣を構え、攻撃を開始する。
と、剣に何か付いている。
というか、レーザーはネイビーカラーなのだが一部ピンクの粒子のようなものが付着し、それが消えていない。
そしてレーザーは俺の気のせいか多少増大しているような気がした。
........................
そういう事か!
理解した俺は、すぐに構えいつでもバリアが張れるようにする。
更に、先ほどのプログラムに条件式を追加し、エネルギーを吸収するメソッドを親とし更なる機能を組み込む。
これで、準備は整った。
いつでも撃ち込んでくるといい。
【???】
へへへ、流石に少し厄介だっただけあって強えな。
最初呼び寄せた時は鶏かとがっかりしちまったが、エサは自分で摂るし威嚇や攻撃も出来て何より本家が出来ねえ飛翔が出来る。
これは中々だなと思っていたが、しかしヤツの本質は繁殖にある。
卵を奴らは産み、そこから雛が孵るが、雛の方が戦闘力も体のデカさも上だ。
何故かは知らんが、圧倒的な防御性能とエネルギーを充填して放つ技を持ちとんでもねえ強さなんだと。
俺は胡散臭ぇと思ったがあの方のお言葉をそのまま運んでいるらしい奴からの助言もあり、一応信じてみるかって事で見守ってたんだがな。
まさかここまで強えとは思ってなかったぜ。
鶏の時は急に諦めたかのような挙動しやがったから焦ったが、この雛状態がまあ強い。
まあ考えてみれば当然ではある。
雛の頃に他の奴に捕食される危険性を減らす為に強くし、逆に成長しきったら耐久力だけ底上げして後の戦いは産む卵から生まれる自身より強い雛に任せればいいのだから。
成長後は正直、卵を産めさえすればもう他の役目は要らないしな。
デカ虫を一発で撃退し攻撃しなかったとはいえあの鶏でさえほぼ無傷で倒した機械兵をぶっ飛ばしその後も攻撃を一切寄せ付けてねえ。
この調子ならば今回で達成できるかも知れねえな。
誰だか知らねえがあの方の邪魔をするような真似をしねえで欲しいぜ。
所詮俺たちの事情すら分からぬ異世界人、ここらでご退場いただくのが一番綺麗に終わりを迎えるシナリオなんじゃねえの?
って事で、早くくたばってくれ。
全てはあの方の為に。




