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適合者はこの俺!!!!  作者: こしあん大福
第2章 蒼炎に花束を
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第128話 異世界の状況

お待たせしました。

続きです。

ついに物語が大きく動き出します。

ご期待ください。

現在、A-101の人たちに背負われながら移動している。


とりあえず分かった事がある。


まず今の俺はただ自分が「動けない」と感じているだけという事だ。


何が言いたいかって、要は自分自体が重くなったとかそういう訳では無いって事。


俺を背負ってくれている人が居て、彼曰く普通の成人男性の重さだと言っていたから俺自体の重量は変わっていないらしい。


気の持ちようだとしたら精神に縛りかけてくるこのリーパーのシステムが何なのか気になりまくるが、異世界の物だと考えれば何でも納得できる気がする。


あと、自分が全く動けないのに誰かが代わりに背負って歩いてくれるのって気持ち悪いんだな。


なんというか違和感が凄くてとても嫌な気持ちになる。


ナメクジになった気分だ。


.........余計気持ち悪くなる表現だったかも...。


あとここは前言った通り建物が上にも下にもある世界で、俺は今何層か上の建物付近に居る。


先ほどから上に行ったり下がったりしているが、それを平然と何も言わず行われると怖い。


無言でジェットコースターを味わっている感じだ。


誰も何も言わずただ急降下したりするのマジで怖い。


そんな事を思いつつ少しずつ戻ってくる身体の軽さを確かめる。


...まだ顔と首と足首しか動かないな。


いつくらいに戻るのかななんて考えていたら、前から声が。


「なあ、アンちゃんが動けなくなったのってなんでなん?」


そう聞いてくるのは背負ってくれているおっさん。


「...多分、副作用なんだと思うんだよな。確証が有る訳じゃないが、恐らくそうだと思う。」


「は~ん、色々と大変なんやな。あんがとな守ってくれてよ!!お陰で死者が少なく済んだ。」


少なく、か。


犠牲者は出てはいるから俺的にはきつい言葉だ。


勿論彼に傷つける意志は無いだろうが。


そしてさっきからずっとその調子だ。


俺をIFRTとか言って崇めて以降、俺が動けないと知るや否やカーㇴと一緒に来いと話しかけてきた。


どうも助けて貰ったのでおもてなししたいという。


別にそんなのいいんだが、どうせならお言葉に甘える事にした。


どうせ今はこんな調子だしな。


で、背負われてからずっと周りの奴らに質問責めされている。


最初は俺たちの世界の話を聞かせろ、といった感じだったが段々リーパーとかそういうのの感想とか実際戦うときはどんな感じかとかそういう質問が多くなった。


しょうがないんだろうが、しかしちょっとしつこい。


聞かれて嫌な気持ちはしなかったが、かといってここまで聞かれると正直ウザいというのが本音だ。


とはいえ邪険にする訳にも行かず、仕方なく返していたその時。


「ここが我々の避難所です、IFRT(英雄)様。」


そう言う女性。


......避難所?


思わず聞き返すと、彼女は困ったように言った。


「...今は、もうかなり厳しい状況でして.........。先ほどの人だかりもとっととエネスギアを貰って避難所へ戻ろうとする人の集団だったんです。」


「厳しいって、どんな感じなんだ?この世界に来たばっかりだからイマイチ分かんないんだ。」


そう、俺らはさっき来たばっかの冒険者。


急に厳しいとか言われても分からん。


「そうですな、言ってしまえばギリギリです。この東地帯のエリアはまだマシですが、他の地帯は既に最後のゲートを守っている状態だと聞いています。ここもいつ破られるのやら...。」


さっきのおっさんとは別の男性が話しかけてくる。


「なるほどな。ここは他よりはまだ何とかなってるけど時間の問題ってことだな。で、そのゲートってのは何だ?」


「それはエリア周辺を守るバリアを出す道具のようなモノです。見た目は門のような形ですが、それから出るゲートで一定の範囲への攻撃からこの地を守ります。第一、第二、第三、最終とあり、ここだけが唯一第三まで残っています...。」


...つまり防御壁って事だな。


よくあるシステムだ。


大きさをどんどん萎めていって最終的には小さい範囲を絶対に守るという強い効果を持った門が出てくる。


これにより、中枢を守るという形なんだろう。


と、隣でカーㇴが何やら慌てたというか、かなりショックを受けた顔をしている。


「...どうした、カーㇴ?...!」


「......まさか、そんな酷いことになっているなんて。......私が出た頃にはまだ第一ゲートが突破されるかどうかくらいだったのです。他の地帯も守れていましたし、こんな事になっているとは知りませんでした。」


わなわなとショックと怒りと悲しみの入り混じった表情でカーㇴが力無く座り込む。


仕方ないことだろう、やっとの想いで帰ってきたら故郷が大変な事になっているのだから。


故郷自体はまだ何とかなり立っちゃいるが、ほぼ壊れかけだな。


「...とすると、どれだけの被害が......。」


「あー、まあここらはマシだって話だぜ。まだ戦闘隊も生き残りが居るらしいし、最終ゲートに移行しても居ない。ましてや住居や人間の数が他と比べて圧倒的だとよ。」


カーㇴの独り言に、容赦なく答えてくる男。


「...では、他の地帯はどうなのでしょうか?」


「他はヤバそうだな。特に西。崩壊寸前だって話は聞いた。それに北ではリーダーが殺されたらしいぜ。南もあまりいい噂は聞かねえな。」


「そう、ですか。...お話ありがとうございます...。」


完全にショックを受け、座ったままぼーっとあっちの方角を見つめてしまった。


「...ま、だからある意味いいときに来たって言えるんじゃないか?」


この空気に耐えられず、つい口を出してしまった。


カーㇴがこちらを見た。


他の人間もこちらを見る。


「良いときって別に何か皮肉ってる訳じゃないぞ。このやばい状況から立ち直らせるために俺たちが来たんじゃないかって事だよ。まだ完全に破壊されちゃいないんだ。むしろ反撃のチャンスがある。ちょうど今来てよかったなって思うよ俺は。間に合わなかった、が一番きついからな。」


あの時。


芽々香を救えなかったときみたく、間に合わないじゃ本当に意味無いからな。


「そ、それもそうだよな。...確かに今IFRT様が来てくれたのは天の思し召しって奴じゃねえか!」


「全くだ!このどうしようもなく、手を尽くしてこれな世界に戦いに来てくれたんだ。この世界の住人である俺らが諦めてどうすんだっての。」


「そういう事だ。間に合わなくなる寸前で来れたんだ。きっとまだ可能性はある。」


このタイミングで来れたのは天の思し召し。


俺もそう思う事にするよ。


まだ希望を捨てるには惜しい。


確かに厳しい状況には変わりないが、この世界で生き抜いてきた人たちの為にも諦めるのだけはダメだ。


「だからな、そんなしょぼくれた顔すんなカーㇴ。まだ間に合う。そう言い聞かせろ。じゃないと、本来成したかったことすら出来ずに終わるぞ。」


「!.........そうですね、申し訳ございません。...確かに楼汰様が居るのなら、可能性は0ではない可能性が高いです。」


0、か。


ていうか、俺だけか?


「おいおい、カーㇴも居ればより可能性は上がるだろ。俺だけが希望みたいに言うなよ。俺だけじゃ戦えないぜ。」


「...ありがとう、ございます。そうですね...。確かに楼汰様だけに負担を背負わせるわけにはいきませんし、今は私だけの問題でも無いのですから。」


そうそう、そういう事。


俺ら人間は誰しもが支え合ってんだよな。


まあ俺は支えて貰ってることが多いけど、それでも一人では生きていけないのが現状だから支え合いが大事ってのは分かるさ。


「良いこと言うじゃねえか、兄ちゃん。やっぱIFRT様は言う事が違ぇよな。」


扉の前でいつ開けようかうずうずしていたであろうおっさんの1人がそう言う。


......あのさ。


「ずっと気になっていたし、カーㇴもちょっと前までは割と言っていたからあれなんだけど、そのIFRT様ってのは何なんだ?IFRTってアレだろ?この世界にある異世界観測装置だったやつだろ?それが何で俺の呼び名になるんだよ。」


そう聞くと、みんな不思議そうな顔をした。


「あぁ、そっか知らねえのか。そりゃ無理もねえよな。」


...知らない?


「カーㇴちゃん、教えなかったのか?」


「確かに、言われてみると英雄様の情報は特に言っていませんでしたね。といっても、恐らく皆様が言っているIFRT様とは若干意味が違うのでなんとも...。」


あ?


IFRTと英雄様は違うの?


ど、どういう事だってんだよ。


「そ、そうですね。えっと、この世界にかつて異偶が攻めてきたことがありました。まだ異世界観測機が不十分だった時代です。その時、当時天才と言われた女性が異世界観測機を修理し、装置として組み直しました。結果、異偶達はそこから元の世界に戻されこの世界の脅威は去りました。...という、古いお話があるのです。大体10000年前と言われています。」


10000?!


え、紀元前どこの話じゃ無くないか?


他の世界だともうそんな経ってるのか?


「.....A-101は出来てから何年経つんだ?」


「正確には分かりませんが、一応現在での研究結果では29532年となっていますね。」


うおいほぼ俺の世界の14倍じゃねえか。


なんてこった。


「その伝承の際、その天才女性は『私はもしもの世界からやってきたIFRT。だからあなたたちは私の事など夢の類と思って忘れなさい。』とだけ言ったそうです。女性が居なくなった後、恩威から装置はIFRTと名付けられ、世界を救った人を英雄様と呼ぶようになったのです。ただ、組織のニュアンスとしてはヒーローだったのに対し、庶民の間では全世界の人間とは全く違う別種の生物・【もしもの人間IFRT】というイメージが付いたため呼び名が若干変わるのだと思います。」


なるほどな。


じゃあ、その女が語源なのか。


ていうか大分その女も怪しいけどな。


発言は意味わからないしここに来た経緯も不明だ。


確かにこの世界の奴らからしたら救ってくれた救世主なんだろうが、釈然としない。


「まあとにかく、救ってくれる存在の事をそう呼ぶのです。...これでお分かりいただけましたか?」


「ま、なんとなくな。とりあえず謎は解けたけど新たな謎が出来た。まあこればっかりは本人に聞くしかないし、とりあえず保留だな。で、ここがみんなの避難場所なんだよな?入っていいのか?」


「ええ、むしろ入ってください。きっと皆喜びます。」


にっこにこで扉を開けてくれるおっさん。


ちょっとだけ怖いな。


背負われつつ入ると、辛気臭い表情をした人たちが一斉にこちらを向く。


「お、お帰りなさい。.........まさか、また新しい人ですか?!」


「いや、違う。お前たちも見ただろ?あの巨人。あの黒い戦士になって戦っていた人本人さ。みんなもきっと会いたいだろうと思って着いてきてもらったんだ。」


「そ、そうですか。......まあ配給さえ減らなければなんでもいいです。というか、別に戦っていた人とかどうでもいい...。早くこの地獄から抜け出したい......。」


ま、そういう反応にもなるだろうな。


ただでさえしんどい状態で更に人が増えたらその分一人当たりの食料にも限界が来るしな。


今のキッツい状況で今更リーパーがどうだとか言われても反応に困るのも分かる。


「気持ちはわかるが、客人...というかこの世界を救いに来て頂いたいわばIFRT様だぞ。文句を言うな!」


「いや、いいって。俺も多分同じ状況なら同じことを言うよ。みんな自分の事で手一杯なんだろ?しょうがないって。」


「そうです、皆様よく戦ってくれました。まだ時間はかかるかもしれませんが、私たちが来た以上必ず取り戻します。平和で穏やかだった日々を。」


カーㇴが賛同すると、被災者たちの中には泣き出す者も居た。


「あ、あああ、ああああああ、カー、カーㇴ様...。ようやく、帰ってきてくださったんですね。...という事は本物の...!」


打って変わって半分くらいが俺にも希望の目を向け始めたぞ。


やっぱカーㇴって著名人なんだな。


最初は誰やねんお前みたいな待遇だったのに急に半数以上がこちらに期待の目を向けてくる。


しょうがないのはさっきも言った通り分かっているつもりだが、想像以上に現金な奴らでちょっとだけ複雑だ。


正直気持ちはわかるだけに余計にほんのちょっと傷つく。


どうしても食べたい人気店のスイーツを予約していたのに、その予約が先延ばしにされまくり、もうどうせ買えないんだと諦めていたらそのスイーツを目の前に出される。


そんな状況だよな。


例え自分が食べたかったスイーツでも先延ばしにされまくった後だと「どうせ味とか変わったりそもそも今更出されたとてもういいよ、大体数年見てないんだからこれが本物かどうかも怪しい。もうこんなんじゃなくていいから早く退店させてくれよ。」ってなってたな。


ところがここでそのスイーツを作った人が直接「お待たせして申し訳ない。当店自慢の子のスイーツを味わってください」とか言ってきたらあー本物や!!ってなってじゃあこのスイーツもガチやん!!ってなって興奮が戻る、みたいなそういう状況なんだろうな。


......この例えで大丈夫かな。


まあとにかく希望を持てるんだったらそれに越した事は無い。


「この世界に来るまで恐らく大変だったでしょう。長旅お疲れ様でした。もしよろしければここをお使い下さい。」


とソファで寝ていたやつがおずおずと差し出してくる。


ぶっちゃけ敵の襲来とか無かったからリーパー内で仮眠取れたしそんなにべらぼうに疲れては居ない。


それにわざわざ避難所で苦しんでいる人たちのスペースを奪うってのも気が引けるしな。


「いや、大丈夫。とりあえず俺が動けるようになるまでここで座らせてもらうだけでいいよ。...カーㇴは久しぶりの故郷なんだし話してきていいぞ。」


そう言うとカーㇴは「では。」と言い他の人たちの輪に入っていった。


しばらく空気になっていた稔が俺の隣に座る。


「僕も避難所で暮らしていたから分かるよ。とても辛いって事が。頭では整理されている話でも身体が受け付けなくて眠れなかったり、誰かとすぐ諍いになったり、あとは亡くなった家族や友達の事を思って泣いたり。...分かるからこそ、僕も役に立ちたい。あんなゴミみたいな奴らに、これ以上苦しめられる人たちを作ってたまるか。あの時みたいな事にはもうさせない。」


なるほどな、当事者だったからこそわかる話があるって事か。


苦しかったからその苦しみをせめて分かち合い、そして軽減するために戦うのか。


復讐という魂胆があるから素直に応援できなそうだと思っていたが、稔は稔で信念は一応あるみたいだな。


これならまあよっぽどのことが無い限りはいう事を守ってくれそうだな。


まあ元々その復讐心だって自分で最初から本当に想ってたかどうかは分からないからな。


ただ避難所で苦しんでいた事を思い出して自分の事のようにふるまっているだけで、そこに復讐を絡めてはいないのかもしれない。


まあ、とりあえず現状は分かった。


ここからどうするかって感じだな。


とりあえずカーㇴが言っていたチームの所にでも行ってみれば分かるか。


幸いここでしっかりと休ませてもらった事で大分動けるようになってきたからな。


とはいってもやっぱ重い副作用だ、何せ完全回復はまだしていないのにもう30分は経っている。


本当に諸刃の剣かもな。


強い力だしそんなバンバン使わないようにしないとな。


ま、暫くはまた話し合いとかだろうしとりあえず安静にしとこう。






















【???視点】


今日は良い日だ。


いや、正確には良い日になる、が正しいかな。


報告はまだ来ていないが、恐らくそろそろ来るだろう。


私に覚悟はできた。


あと少しだけ、時間が欲しい。


彼と話が出来る時間が。


と、ドアが叩かれる。


「失礼します、報告に上がりました!」


声は.........前助けた彼女か。


予想していたことの雰囲気と大分違うな。


この感じだと、また異偶が出たとかそういう報告かな?


しかし、彼女の報告は私が期待したもののようだった。


「遂に、遂にマシンの適合者がやってきたようです!!」


っ!


......この日を、どれだけ待ち望んでいたか。


間違いない、私の望み通りだ。


「......ありがとう。助かったよ。」


「いえ、滅相もありません。命を助けられたご恩、一生かけて返す所存であります!」


彼女は熱い...。


少々扱いに困るが、別に悪人ではない。


むしろ善人だろう、ならば別にいても問題ない。


「...程ほどにするんだよ。.........とはいえ今私が会いに行くのは良くないかな。あっちも困惑するだろうし。」


「......確かに、その姿では信じて貰えないかもしれません。私が代わりにお連れしましょうか?」


私の姿はあの頃とはかなり違う。


というか、根本が異なるからね。


目の前の彼女も、最初は困惑していたっけ。


そんな彼女は今私の目の前でまるで飼い主に尻尾を振る犬のようにこちらを見ている。


「そうだね、その方がいいな。そうすれば彼の隣に居る子も納得するでしょ?」


「そうですね、彼女は私たちのリーダーでしたので。」


リーダーか。


なら、話は付けられそうだね。


よし、それじゃあ。


「君に任せるよ。なるべく穏便にね。それじゃあ、頼んだよ。」


「承知いたしました!この、エメリア・アルリスにお任せください!」


そう言うや否や、この私の部屋を出ていくエメリア。


イイ拾い物をしたかもね、と私は思った。


さーてと、それじゃあ私は引き続きアレの研究を進めようかな。


彼が来たら一気に進められるようにね。

前章おまけで出てきた東部門隊長エメリア・アルリス。

彼女はおまけで死にかけましたね。

一体誰に助けられたのか...?

次回もお楽しみに。

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