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適合者はこの俺!!!!  作者: こしあん大福
第1章 真紅の雨
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第109話 詰み

感覚機敏を最高潮にまで昂らせ回避する。


俺様に出来ない事なんてねえぜ。


葉は回転しながらこちらへと襲い来る。


その数、ざっと数万枚はあるだろう。


随分とまあ殺意の高いこって。


後ろにバク転しながら逃げてる訳だが、これだと攻めが出来ねえな。


だったら、無理やりにでもしてやるよ!


たったの数十メートルだが距離が空いたんで、鎌を取り出し振るう。


葉はそこまでの耐久度は無いのか切られ落ちていく。


だが、掠っただけくらいのモノは全て落ちずに飛んでくる。


こりゃあとんでもねえな。


だが、負けてはらんねえぜ!


鎌を振るいに振るい、どんどん葉を落としていく。


縦、横、斜めそれぞれに赤い閃光が走り、街を通り抜けていく。


それはまるで俺様を祝う花火のようだな。


俺様としては嬉しいぜ、こんな壮大な戦いを用意してくれてるなんてよ!!


あとはこのバケモンの変身者が嬢ちゃんじゃなきゃ喜んだんだがよ!


葉が途切れてきた、これで.........。


踏み込もうと脚を踏み出した一歩、そこに身の毛もよだつようなとてつもない胸騒ぎがし咄嗟に脚を戻す。


するとそこの地面から根が出現し、勢いよく地面へと上がった。


あっぶね~!


今の判断が遅れていれば恐らく俺様も貫かれ絶命していただろう。


ここでは耐えられたとしても、あんな痛みに副作用で耐えれる訳がねえ。


思ったよりもシビアな戦闘が求められてそうだな。


だが、俺様はそうカンタンに諦めねえ。


蔦は再び俺様目掛け遅い来る。


流石にその程度、今更喰らうこたねえが邪魔だな。


どいてろと言わんばかりに切除してやった。


しかし、数本の斬り損ねた蔦が後ろへと向かう。


俺様じゃなくていいのか、と後ろを向いた。


だが、その蔦は俺様ではなく他の方を狙っている。


その先には............。













カーㇴを抱え、走る稔が居た。


咄嗟に拾ったのだろうが、流石に無理があるようだ。


カーㇴは確かに小さいが、そうは言っても高校生の中の小さいってサイズだ。


まだ小学生の稔では頭を抱えて引っ張るしか方法が無いようで半ば引き摺るように歩いていた。


その表情はあまりにも精一杯で、せめてカーㇴだけでもなんとか救おうという気概が感じられた。


そんな彼らを蔦は狙う。


「ちっ!嬢ちゃんだって望んでねえだろうに、こんな仕打ちしてくんのかよこのバケモンのガワはっ!!」


叫びつつ咄嗟に後ろへとステップする。


間に合え!!


後ろに視点を合わせ、蔦を掴む。


が、残り2本の蔦の回収が間に合わない。


このままでは、確実に稔の所に蔦が到達し誰も望んでなどいない無惨な姿になってしまうだろう。


くっそ、荒すぎるがこれしかねえ!!


咄嗟に持っていた鎌をぶん投げる。


柄を大きく振るったお陰でブーメランのように回転しながら飛んでいく鎌。


そのままあと10数メートルも無く激突しそうだった蔦を切り裂き、向こうへと跳んでいく。


あの鎌は多分戻ってくるな。


そう考え、今は避ける事に専念する。


感覚機敏で蔦と蔓を避ける。


しかし、状況は芳しくねえな。


このままじゃジリ貧だぜ。


またこうやって邪魔されるたびに鎌を投げたり俺様が対応していりゃ、安全かもしれんが攻めの機会ってのは一生訪れんかもしれん。


かといって俺様があの蔦を無視すりゃ稔たちは上から降る蔦の重みでぺちゃんこだ。


ちっ、こんな事なら最初に稔たちを避難させりゃよかったか?


だが、俺様も咄嗟にこの姿になった訳で、という事はそんな隙なんて無かったって意味だぜ。


さぁてと、どうやって攻めようか。


俺様のそんな悩みも空しく、ただでさえ解決策を考えられていない状況で更に良くない事は続く。


迷いつつもとりあえず攻めるしかないと脚を踏み出す。


枝には葉が少しずつ成り始め、あと数分もすればまたさっきの葉っぱガトリングが出来るようになるだろう。


チャージが短いのが強みだな。


これに関しては俺様の手裏剣で対応は出来る。


蔦も正直、地面に潜る事とそもそも根が張っている場合さえ警戒すれば可能だろう。


本当にやばいのは隙だ。


対応できたとしても、稔たちを強制的に人質にすればこちらは是が非でも守ろうと戻らざるを得なくなる。


隙が作れねえから勝てる見込みが少ねぇ!!


いっそ必殺技でも使えればまだ可能性は全然あるが、それをかます時間が足りねえ!!


回避しながらチャージはしんどいだろうな、せめて俺様がチャージを分割して一気に全部チャージ出来たらいいんだが。


そんな夢みたいな事も、ねえな。


回避しつつ返せそうな攻撃を考えてみるが、考えれば考える程ドツボに嵌っている気がする。


くっそ~、俺様の活躍チャンスだってのに!


悩む俺様は気づいた。


葉が付き始め、少しずつ色が変化していく枝の先に.........。


実がある事に。


その実は赤色に輝きまるで完熟したと言わんばかりにこちらを誘う。


流石に大木のサイズもあって下手な車よりでかい実だが、その赤さは毒など入っていなそうと言える健康的な色合いだった。


...ただ、さっきまでこの大木に出来た物は全て俺様に対し攻撃的だった。


当然、これもそれの筈だ。


何かしらの攻撃要素があるのだろう。


気は抜けない。


警戒しつつ見つめるが、まるでその時間が無駄かのように実に何かが起きる訳では無い。


何も起きないまま、ただ果実が熟れていく。


その実からは赤い液体が滴れている。


その色合いはだんだん不気味にはなっていったものの、先ほどの葉と違いメタリックになった訳ではない。


そして攻撃の意志が有る訳でも無い。


これは何なのだろうか。


考えても分からないモノなど分からないだけだった。


だが一つだけ言えるのは、この後何かしらであの果実が俺様の邪魔をする可能性が有るって事だ。


だったら、そのまま刈り取ってしまえばいいだろう。


丁度戻ってきた鎌を掴み、そのまま構えをとる。


上空へと飛びあがり、そのまま斬撃を放つ。


果実そのものに当てると、赤い液体が弾けそのまま実自体は搾りかすとなって落ちた。


落ちると多少の砂埃が舞い、その中に搾りかすの果実はあった。


完全に水分が抜け、ミイラのようになった搾りかす。


その隣に落ちた赤い果汁が水たまりとなっていた。


血みたいで不愉快だが、俺様の紅みたいで悪くねえな。


と、その赤い液体が蠢き出した。


紅く輝く果汁は瞬く間に空へと浮かび上がり、何かを形作る。


最初は何だか分からなかったが、徐々に鮮明になっていった。


羽がつき、人が聞けば不快に思うような音色を奏でる。


その口は全てを吸い尽くしそうなほど深く、こっちもいやらしいな。


そして何よりその量だ。


たった一個の果実で何十体という蚊が作られていく。


蚊の異偶、それがこの紅い液体の形作った脅威のようだった。


思わず構えをとる、すると大木が揺らめいた。


その次の瞬間、枝には無数もの果実が実る。


大木からは蔦が生え、そして枝を叩いた。


果実は抵抗もなく落ちていき、そして命を生み出す。


俺様は呆然と何もできず、眺めているほかなかった。


数百、いや千に達したであろう量はたった一日で全人類を根絶やしにすると言っても過言ではないインパクトだった。


そんな蚊が俺様に向かって飛んでくる。


一斉に、だ。


こちらも無我夢中で鎌を振るう他なかった。


脛部分のカバーを外し、すぐに手裏剣を発射する。


何十もの手裏剣が飛ぶと、流石に防御力は高くないのか蚊は潰れていくが如何せん数が多い。


手裏剣がいくらブーメランのように周回したとしても削れる数は多くは無い。


その間に迫ってくる蚊を鎌で一気に狩る。


だが、それでも精々数十体が限度だ。


こちらが狩っている間にも数を増やす異偶にはどうしようも出来ない。


稔たちの事も考えなきゃな。


ちっ、面倒だな。


こうなったら一か八か魅羽を引き離してみてもいいんじゃねえのか?


下手を打てば死ぬかもしれないが、現状で出来る事こそそう多くはねえかんな。


なんとかなればいいがそれも望み薄だ。


どうすりゃいいんだ。


やっぱ、稔には悪ぃが賭けに出させて欲しいモンだな。


とりあえず稔を見る。


投げた鎌に助けられた稔はその場に呆然と尻もちをついていたようだが、立ち直ったか立っていた。


だが、そのまま動かない。


いや動けないんだ。


妹が変化してしまった悲しみ。


妹をこんな目に合わせたトァネミやユウへの怒り。


そして、何より目の前に迫っている死の恐怖。


その全てが、まだ人生をほぼ生きていない少年にとっては重すぎる感情だ。


彼からしたら、どうしてこんな事になったと言いたいだろう。


そりゃ急に答えなんか出ないだろうなァ。


俺様だってそうだしな。


ましてや多感なガキならな。


ごちゃ混ぜになった感情のまま考えても脳がフリーズして、あんな感じになっているんだろう。


気持ちは痛ぇ程分かるが、ここは戦場。


突っ立って死なれても後味悪ぃからな!


「おい、稔!!!今すぐそこから離れろ!!死にてぇか?!」


叫ぶと、ぼーっと考えていた顔が現実に戻されはっとする。


彼はまたすぐカーㇴを抱えると走り出した。


だが彼もまた限界だった。


脚が上がらず、石に毛躓いて転ぶ。


そのままカーㇴも手放し、そして動けないまま倒れる。


その先に蚊の異偶が迫ってきていた。


俺様は前の蚊の異偶で精いっぱいだってのに、ったく世話が焼ける!


前の蚊たちを鎌で一掃し、そのまま稔たちの前へ飛ぶ。


飛んでいる最中も出来る限り殺していく。


そして着地!


と同時に回し蹴りで周りの蚊を弾き飛ばす。


回りから来る蚊の異偶をどんどん鎌を振り回して斬っていく。


稔は、なんとか顔を持ち上げ四つん這いの状態になった。


その状態でいいから、なるべく近い所に来てくれ。


こうなったらむしろ離れる方が危険だからな。


幸い意図を察して気絶したカーㇴの身体共々来てくれたので助かった。


だが、このままじゃ防戦一方だ。


蚊たちをすり抜け、蔦や蔓を破壊し葉から稔たちを守る。


それが出来りゃ行ってもいいだろうが、そんな事をしながら討伐など出来る訳が無い。


かといってじゃあ稔たちを犠牲になんて出来ねえしな。


さぁてと、これじゃあいよいよ詰みかもな?


こうして俺様が悩んでいる間にも魅羽の大木は蔦を増やし、そのまま地面をたたき波打たせる。


また、家屋を破壊し電信柱を倒し車を串刺しにしていく。


その光景は、あのスィゲロの惨状から街を復興しようと尽力したこの世界の人々の希望を打ち砕くようだった。


このままじゃ本当に終わっちまう。


だが、ここを動けねえ!


どうしたらいいんだ、あーくそ!!


思わずイライラとする俺様の下で、稔は汗を流し、そして息も絶え絶えの中叫んだ。


「魅羽ううぅぅううっ!!!!!こ、こんな、こんな事はお前だってしたくない筈だ!!!もう、もう辞めてくれ!!!!!」


その言葉は確かに魅羽の方を向けてとんだ。


しかし大木は動きを一切留めず、果実を落とし蔦で街を破壊していく。


これで分かったな、やっぱあの大木は魅羽が制御している訳では無いって事が。


魅羽ならあそこで辞めるからな。


しかし、言葉ではやっぱ止まらねえか。


だが稔はこんな所で諦めるような子供じゃない。


俺様は彼のサポートをするだけだ!


鎌を振り、兎に角蚊の異偶を消し飛ばしていく。


稔は、続ける。


「なぁ!!魅羽!!!!まだ、まだいるんだろ!?その中に!!!返事をしてくれよぉっ!!!!僕が、僕が助けるから!!!」


「魅羽は優しい子だ!!!母さんと父さんが死んで、少しおかしくなっていただけなんだ!!!!だから、戻ってきてくれよ!!!」


「魅羽にとってこの世界はそうカンタンに壊していいモノじゃ無かった筈だ!!!!お前の大事な人たちが住んでいる世界なんだぞ!!!目を覚ませ!!!」


何度も叫び続ける稔だが、残念な事に魅羽は一切の返事を返さない。


それどころか攻撃は激しくなる。


いくら感覚機敏が働いていたとしても、圧倒的な数の暴力には勝てない。


蚊、葉、蔦を同時に躱す事など容易くはなく蚊を斬れば葉に切られる。


葉を避ければ蔦に叩かれ、蔦を裂けば蚊にエネルギーを吸われてしまう。


エネルギーだけは死活問題だと、蚊は真っ先に殺している。


だが廃棄よりも生産の方が多い。


このままでは対処できねえぜ。


と、がたっと音がした。


見れば稔が地面に手を着き、頭を下げていた。


疲れただろう、下がれと。


そう言う予定だった。


だが稔はもう限界だった。


文字通り、絶望してしまったのだ。


「.........なんで、なんで魅羽がっ.........。こんな目に......。いくらひどい事をしたからって、ここまでになる意味は無かったじゃないか!!!酷い、酷いよ。神様が居るなら、何とかしてよ!!!!」


その叫びは悲痛で、思わずこちらも目を背けてしまいそうだ。


「なんで、なんで僕らばっかり。......父さんも、母さんも、妹も、何もかも全て......。友達だって、仲間だって、助けてくれた人たちだって!!!......あんまりだよ。魅羽を、魅羽を返してくれよ!!!!......返せよ...。」


「どうして、こんなに奪われなきゃいけないんだ!!!僕らは何も奪ってない!!むしろ奪われているのに!!!これ以上僕らから取り立てるのは辞めてくれよっ!!!!元はと言えば、僕らを追い詰めた異偶とやらが悪いんだろ!!!!どうして、妹がこんな目に遭わなきゃいけないんだ!!!......僕らが、何をしたって言うんだよ.........。」


その叫びは誰も居ないこの街に響き渡ったが、誰も返事はしなかった。


それが答えだった。


気づけば、稔は夜の街に吼えていた。


「あぁぁぁあああああっ!!!!!!あぁぁあぁぁああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!うわあぁぁぁあああああああああああっっ!!!!!!!!!」


何度も何度も地面をたたき、手と土を赤く染めながら。


必死で地面をたたいていた。


「うぅぐぁあああああああああっ!!!!!!!!!うわあああああああああっ!!!!!!あぁああぁああああぁああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!!」


まるで全てを恨むかのように絶叫する稔。


俺様相手にひたすら撃たれてきた蔓が、その叫びに反応した。


俺様は最初魅羽の意識が戻ったのかと思ったさ。


だが、そんな事は無く、ただ叫ぶ稔を鬱陶しいと感じただけだったようだ。


あるいはただ偶々か。


とにかく、蔦は稔を狙い迫っていた。


邪魔な蚊の異偶を撃破した俺は後ろを向き鎌を振るう。


いつもならすぱっと切れてそのまま消滅する予定だった。


だが、今回の蔦は中々切れない。


かなり力を入れているが、これでダメなのか!


何より鎌のエネルギーの刃から火花が散っている。


仕方なく1割程度コレクトしそのまま蔦を切り裂く。


すると突然、大木が絶叫した。


「アァァァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!イタイィィイイイイイイイィイィイイィイィイィイイイイィィィィィイイイイッ!!!!!!!!!!」


その声は掠れていたが、まぎれもない魅羽の声だった。


そして蔦からは血のような液体があふれ出る。


どういう事だ!?


さっきまで切っていた蔦や蔓からはこんなモンは出なかったぞ!


混乱する俺様を他所に、痛みを忘れるようにあちらこちらで蔦がねじれ、地面をびたびたとのたうち回る。


痛そうな動きをする蔦を見た稔は俺に叫ぶのだった。


「!.........お兄ちゃん、お願いだっ!!!!!殺さないで!!!魅羽を、殺さないでぇっ!!!!!!!」


稔のその叫びはあまりにも悲痛で思わず従いたくなった。


だが、少なくともあれをなんとかしない事には今の状況にも俺様的にも日本的にも良くはない。


そりゃ大切な家族の叫びだ、なんとかしようと思うだろう。


しかしそりゃどうしようも無い。


バケモンになっちまった以上はもうどうしようも無いんだ。


そう告げたかった。


だが、俺様に残る善性がそれを言う事を否定していた。


と、蔦が稔に迫る。


改めて鎌を振るおうとするも、


「辞めて!!!!!!魅羽を、傷つけないで!!!」


と言われ、一瞬止まっちまった。


「傷つけないでって言うがな、このままじゃどの道どうしようもねえぞ!!」


「でも、あんなに痛そうな声は初めて聞いたんだ。ダメだ、そうなったら僕は止める事しか出来ない。お兄ちゃんが正しいって事は分かってる。.....だけど、諦められないよ。......もう、もう、僕から何も奪わないで......」


...!


そう言われちまうと、何も出来ねえな。


確かに今の状況ならば絶対に、魅羽を殺してでも止めるのが先決だろう。


稔のそれは明らかに自分勝手だ。


でも、もし俺様も同じ状況になったら?


そうしたら、きっと同じ喚き方をするだろう。


みっともなく、何もできずただ泣き続けて。


...そうなる可能性が有る今、彼を笑う事も無視する事も出来ない。


ましてや、俺様は正義の味方じゃねえって前に突っ込んだばかりだ。


俺様は、正義じゃなく仲間の味方だ。


稔が仲間で無くて、なんだと言うんだろう。


俺様は仲間を裏切れねえ。


つまり、魅羽を殺せねえ。


確かに思う所もあるし、可哀想だと思うからな。


何より残される稔の気持ちを思うと、そんな事は出来ねえ。


これは、ホントにどうしようも無いのだろうか。


そう思い、諦めつつも鎌を振るう。


とりあえず蚊は狩っておいて問題無いだろう。


全滅するまで振り続けてやる。


しかし、本体に攻撃できないとなるとどうしようも無いんだろうな。


何か方法はあるのかもしれねえが、とても探している余裕はない。


稔はまだ子供、我儘を言ってもいい年齢だ。


そんな少年の、命のかかった我儘を投げ出せる程俺様は人間が出来ちゃいねえんだ。


このまま世界が滅ぶサマを見てるしかない気がする。


思わず後ろを見ると、稔はもう何も言えないのか頭を地に付け、そして泣いていた。


奪わないで、か。


ずっと奪われてきた彼にこれ以上の咎を押し付けたくなんてない。


だが、どうすれば...。


このままじゃ、本当に世界が終わるぜ。


結局、魅羽を仮に助けられたとしてもこのまま世界が終わればお終いだ。


万事休す。


まさにこの言葉が似あうな。


せめてカーㇴが起きていれば、何か案が得られたのだろうが。


俺様は、一体どうすりゃ......。


悩む俺様のレーダーに、謎の通信が現れる。


それは二人の人だった。


「...!?まだ、逃げ遅れが居たってのか?!...しかも結構近ぇし、こちらに来てる!?」


慌ててその方を見ると、2人の人影が見える。


暗くて顔が見えない。


どんな人だ!?


そう思い目を凝らす。


と、片方が片方に捕まっているようだ。


その片方が、おもむろに口を開く。


その言葉は、やけに懐かしい響きで。




















「.........稔クン、もう、終わりにしてやらないっすか?」

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