第103話 赤と緑の邂逅
少し短めです。
次回以降また本編再開します。
定例会議の入り口は毎回変わるのをご存知だろうか。
光を嫌う「あのお方」は闇に隠れる、というのもある。
だが、この場所を【無に帰す者】以外に知られるのを防ぐという役割もあるのだ。
定例会議が開かれる筈だった今日、本来であれば皆席についてそれぞれ意見交換など交わすはずだった。
しかし、そうはならなかった。
理由は単純である。
皆それぞれが現在忙しいからだ。
トァネミはあの世界から帰還後、すぐに「あのお方」に状況を報告した。
スィゲロだけが死んだこと。
種は完成間近だが、カケラは見つかっていない事。
更に、デーヴィの邪魔についてである。
流石の「あのお方」も苦笑いしこう言った。
「デーヴィ、全く奴はな。......仕方あるまい。奴の腕を買っただけ。奴に違う事をやらせるのは面倒だからな。力仕事だけをこれからも任せるつもりだからな、私は彼を特別叱る事はしない。」
この発言には流石のトァネミも驚愕。
「な、何ですと!?裏切りともとれる行為ですぞ!!それを無視するとでもいうのですか!?」
「.........お前は私の意見が気に入らないとでも言いたいのかな?」
「!?............いえ、何でもございません。」
トァネミも言いたいことはあっただろうが、流石にやらかした事もあり強くは追及できなかった。
愛する主ならば尚更である。
トァネミは不満たらたらではあったが、渋々その提案を受け入れざるを得なかった。
今回意見が食い違った際、思うより否定できなかったのは自分のせいだったからである。
数々の失態に比べればデーヴィの邪魔など「あのお方」にとっては些細な事らしい。
それを知ったトァネミは重く見ていた事態を更に重く見る羽目になり、少ししょんぼりとしながらS-504へと再び出向いていった。
一方、ダリア死亡後何やら秘密裏に話していたらしいツィヒック・ロェシー・ツヴォサク。
この3人はとある事を誓い合い、そして計画を進めていた。
ショーキは、一切の連絡を絶っていた。
あのお方曰く、「極秘の任務、リーダーにしか任せられない」らしい。
それを聞いた一部の者達からは不満が飛び出すかと思ったが、不満を放ちそうなダリア・スィゲロ・ナァシルはもう故人となってしまったため誰も文句は言わないのだった。
なお、ショーキは自分の代わりにと沢山の機械人形を置いていった。
からくりで造られた機械人形はショーキの得意分野であり、現在はおよそ50体がこの会議を行う場所に居ると思われる。
その一体一体がデスペラードの面々に匹敵する力を持っており、全員がショーキと「あのお方」の命令で動作する。
ただし口が悪く、すぐに煽るような発言をする為他のメンバーたちからは嫌われている。
そして、全ての会議においてずっと寝ているか呆けているだけの奴がいる。
それはミダである。
彼は緑仮面。
年齢は不明だが、少なくとも日本であれば学生以外の何物でも無いだろうと言われるくらいには幼い顔立ちをしている。
ぼさぼさの髪に一人だけズレた仮面を着けており、見るからに怠惰そうな見た目をしている。
他のメンバーともほぼ会話する事は無く、そもそも出歩いている所を目撃されていない。
戦闘力がまぁまぁ高い事と、それなりに話自体は通じる所。
更に人をおちょくらない性格である為あまり関わらないものの全てのメンバーから評価は高い。
ただ、ずっとほぼ寝ており会議中だろうとあのお方が話しておろうと勝手に起きて勝手にまた寝る為皆「なんでコイツはここに居られるんだ?」と疑問を抱いている。
そんな彼が、会議に使われている部屋で目を覚ました。
その目には緑の炎が灯っていた。
部屋を出た彼はてくてくと、呑気な音でも立てているかのように歩く。
特段急ぐわけもなく、ただとある目的地に向かって歩く。
怠そうだった筈の目は快活そうに開いており、先ほどとは別人のようなオーラを感じさせる。
そんな彼は無表情ではあったが、同じ無表情でも怠そうな感じの無い凛とした雰囲気の無表情であった。
一方、デーヴィはトァネミからの苦情を一応受け付けた「あのお方」によってこの場所へと呼び出されていた。
彼にとっては赤と戦闘以外はそこまで興味のある事でもないが、一応は世界も欲しいのだ。
態度だけでも真面目ぶっておかないと、いつ切られるかは分からない。
そう思い呼び出しにすぐ応じた形となった。
注意されるのには慣れているが、実際叱られたところでほぼダメージが無い事もあって今は涼し気に歩いている。
そんな彼は曲がり角を曲がった際、普段見かけない人を目にし驚きつつ話しかける。
【デーヴィ視点】
可笑しなこともあるもんだな。
「あのお方」に呼び出されたこの俺・デーヴィだったのだが、そこは正直どうでもいい。
「あのお方」も形式上仕方なく呼び出しているだけで俺自体にそこまで叱りたい気持ちが有る訳じゃないからな。
ただ実際、やらかしまくっている俺にとってせめて態度だけは捨てちゃいけない部分だと思っている。
だからこうして早めに馳せ参じた訳だが、どうも珍しい事があった。
早起きは三文の得って奴か?
普段会議だろうが何だろうが兎に角寝ては寝まくるミダが起きている。
しかも歩いている。
俺と向かっている方角は同じだな。
何処へ行くのか気になるから着いていきたいが、アイツの素性が分からなすぎるんで尾行は怖いな。
ま、別に尾行する必要はねえんだ。
俺ら仲間だしな。
「おい、奇遇だなこんなとこで!!お前も呼び出しか?」
声を掛けると、彼は一瞬止まった後くるっと振り向いた。
「........................ぅん。」
んんんんん????
今、なんつったんだ?
聞き取れねえ。
「悪ぃ、今何つったんだ?小さくて分かんねえわ。」
「........................うんって、言ったよ。」
「......そうかい。......お前が出歩くの珍しすぎてつい声かけちまったよ。なんか面白いモンでもあったのか?」
「.....................まぁね。僕は、えっと、その、色々と分かったんだ。だから、それを報告にね。」
色々ぉ?
お前、基本的にあの場所から動かず何処へも行かず眠っているだけだろ?
「...何が分かったんだよ。お前寝てんじゃん。普段寝てんのに何が分かんだよ。」
「...............色々、かな。兎に角、色々。」
ダメだ、話になんねえ。
ずっと寝てたからか頭まで退化してんのか?
てか、寝てりゃ育つんじゃねえのかよ。
全然頭パッパラパーだぞ、おい。
「デーヴィは、何でここに来たの?」
「俺?俺はまぁ、いつも通りだよ。あのお方からの呼び出し。まぁたどうせ形だけの説教をうけんじゃねえの?」
「...............やっぱり。」
あ?
何がやっぱりなんだこの野郎。
おかしくないかコイツ。
何でそんな知ったかみたいな真似が出来んだよ。
ちょっと外へ知らない間に出ていたとしても予言が過ぎるだろ。
俺以外にまだ知りえない情報だぞ。
ミダに言わせれば俺なんて簡単ってか?
「............でも多分、それも無くなるんじゃないかな?」
「は?...どういう事だよ。」
「今に、分かるよ。」
さっきからふわふわしていて何というか掴めない奴。
相変わらず苦手だぜ。
しかし、コイツがこんな喋ってくんの自体が中々で結構嬉しいぜ。
俺は警戒されてねえって事なのか?
「...なぁ、お前なんであんなに寝てんだよ。てか何であんなに寝てあのお方の話すらすっ飛ばしてんのになんで怒られねえんだ?」
「..................眠いから。」
あ?
「...眠いから、仕方ないって。...あのお方も、分かってくれたよ。」
そんな馬鹿な。
「あのお方に限ってそんなはずは......。でもここでこんな嘘をつくメリットってねえよな?何でお前そんな気に入られてんだよ!」
「...さぁね。僕も、分からないよ。.........と話している間に着いたね。......楽しかった、ありがとう。また話そうね。」
「?......そりゃよかったな。」
さっきから本当に何というか警戒心も無くひたすらに純粋というか、何というか。
もはや一周回ってコイツが最強だろ。
何もしねえ奴じゃなくて何もしてないのが正解の奴、なのかもしれねえな。
まぁ何もしない事に意味があるのかは知らんが。
と、ミダはいつの間にやら「あのお方」の部屋の前まで行っており扉を叩いていた。
「おいおい、お忙しいのにそんなあっさりと...」
そう言いかける俺の目と鼻の先にあった扉があっさりと開いた。
「......誰かね。...と、ミダか。よく来たね。......デーヴィも居たのか。ひょっとして、一応聞きに来た感じかな?」
一応、か。
バレてんのかもなぁ、俺がしっかり受ける気が無い事。
しょうがねえだろ、主の事は好きだけど説教は暇になっちまうんだから。
「...悪い、私の都合で申し訳ないがデーヴィ、今回は君のミスは無かったことにしよう。少しミダと話す時間が欲しい。」
え?
「という事で、帰ってくれて構わないよ。」
は?
え、いやいや。
何といえばいいか反応に困っていると、扉が閉まった。
ご丁寧に鍵までかけちまった。
そんなに重要な話を持ってんのか?
引き込まり年中睡眠野郎が?
何というか納得のいかなさを少し感じながらも俺は黙ってそこを去る他なかった。
......てか、今更だけどアイツの予言当たったな。
アイツ外出て他の世界の人間のフリして占い師でもやれば溶け込めるだろ。
扉の先ではミダが、とある事を報告していた。
「......という事になります。」
その先には高めの椅子に座る黒い仮面の男が。
「...なるほどねぇ、理解したよ。毎度助かるよ。」
「いえ、僕の力で、お役に立てているなら、嬉しいです。」
孫と祖父くらいの年齢差は無いものの、そこそこ差がついてはいるのか影だけなら親子に見えるくらいの二人。
その影が揺れる。
「ふふ、そんなに畏まらなくてもいい。私は君がデスペラードで一番大事だよ。」
「.........onyxと比べると?」
畏まらなくてもという主の発言を受け、少年もまた言葉遣いを元に戻す。
「...ふ、そこまで知っていたのか。どうかな、みんな大事だよ。」
「......嘘つきだね。...僕は、全て知ってる。」
少し頬を膨らませる髪こそぼさぼさだが可愛げのある少年に毒気を抜かれながらも、「あのお方」は笑う。
「ふふふ、それは怖いねぇ。」
「.........次は、どうするの?......今のを知った上で。」
その回答は、「あのお方」にとって決まったものだったらしい。
「決まっているさ、まずは種を回収させよう。」
赤と緑の邂逅、そして黒き主との密談。
一人の少年がようやく動き出した事で、事態が更に動き出す。
何やら能力持ちっぽいミダくん。
今回だとどう見てもショタっぽいですが、大体の年齢は読者の皆様の想像にお任せします。




