第101話 緊急会議
仕事が忙しい。
キレそう。
リーパーから降りた。
流石に長かったのか、もうカーㇴも稔も混乱からは立ち直っていて、逆に俺が居なくなったのを訝しんでいるようだった。
事情が事情なのでここで話すのも中々難しい。
本来の適合者の意味とそれについての説明は、また後でした方がいいだろう。
そう判断した俺はひとまずその場から二人と撤収した。
先ほどリーパーのシステムから聞き出した話を聞き、カーㇴは唸った。
「...まさか、そんな重大な部分に操作をされていただなんて。セキュリティは万全だったはずです。......納得は出来ませんが、理解するしかないでしょうね。」
「そうだな。現実に起きちまったからな。」
「でも、まさかあのマシンにこの世界の全ての人が乗れるだなんて思いませんでしたね。」
稔がお茶を飲みつつ話す。
現在俺の部屋にいて、4人で話し合っている。
さっきの現場に居なかった魅羽を入れて4人、だな。
カーㇴは困った顔で煎餅を齧り、お茶を啜っている。
「まぁでも確かに、主の世界の人間であれば誰でも乗れるっていうコードが勝手に追加されていて、それのせいでみんな使えなかったら適合者しか使えないなんて勘違いすんのも無理ないよな。......だから、肩を落とすなよカーㇴ。しょうがなかったんだって。」
「そうは言われましても......。完全にこちらの落ち度過ぎて、もはや疲れました。この世界に来てからというモノ、やたらと不甲斐なさを見せつけてばかりな気がします。」
カーㇴは落ち込んじゃってるな。
無理もないが、ここで落ち込まれても困るな。
「ま、でもカーㇴ達のお陰で結局この世界は救われてるんだ。もし、カーㇴ達が来てくれていなかったら遅かれ早かれみんな異偶に殺されていただろうしな。」
伝説の獣のカケラとかいうものを集めにくるデスペラードの計略によってな。
アイツら、ホント迷惑だな。
「これではっきりしたのは、意図が何にせよカーㇴ達の世界にも勝手にコードを追加するような奴が居るって事だ。その世界に今後行くのなら、気を付けなければいけないな。」
「.........あのマシンに乗れるのがこの世界の人間なら、僕にも使えるのかな?」
唐突だったが、稔が少し困ったような嬉しそうな雰囲気を持ちつつ語りかけてくる。
最近は仲良くなり、完全に敬称が取れてくんづけしなくなった。
彼もそれで嬉しそうなのでそのままだ。
「...まさか、リーパーに搭乗したいとか言わないよな?」
「そのまさかだよ。...僕だって、あのバケモノ達にはやりたい事、言いたいことが山ほどあるんだ。せめて一泡吹かせなければ割に合わないよ。」
確かに、稔は家族を二人も失っている。
魅羽も同じような気持ちだろう。
だがそうはさせられない。
「さっきも話した通り、俺以外の所謂"適合者"じゃない者が使うと、エネルギーを過剰に奪われて最悪死んじまう。そんな事になる可能性があるのに乗せられるか。」
「でも、それならそんなにエネルギーを使わなければいいじゃないですか!それなら、僕が乗ったって、怪我くらいで済む。」
「あのな、怪我くらいって言うけど多分稔が言うよりももっとつらい痛みが待ってるぞ。それにエネルギーを使用せず戦うのって案外きついぞ。俺でも出来るか分からんしな。」
経験者に言われては流石に何も言えないか、稔が不満げに押し黙った。
気まずい空気の中、魅羽がそんな兄を見かねてかこう言った。
「確かに、私たちはあのバケモノにやり返す理由はある。でもさ、折角お母さんとお父さんが守ってくれた命を、ここで捨ててもいいのかな。」
......魅羽のいう事はごもっともだな。
復讐は悪、だなんてそんな優しい事は俺も言わない。
復讐したい奴は俺にも居る。
それこそ、俺にとって最も大事な「約束」を交わしたアイツにあんな事をしたアイツらだけは、殺しても殺したりない。
だが、それが自分の死と引き換えでは意味が無いんだ。
アイツの代わりに生きなければ。
「...確かに、魅羽が言うなら......。」
まだ不服そうではあったが、一応気にかけている妹の言葉だからか引き下がった。
確かまだ家族が居た頃は妹の言葉にもあまり耳を貸さなかったみたいだし、成長したようだな。
「...設定は他にどんなのがあったんですか?」
静かになった部屋で気まずさをごまかす為か魅羽が必要以上に声を上げて話しかけてくる。
「色々あったぞ。...うーん、分かりやすいのならコックピットの温度とか、アクセスのロックとかな。」
本当に色々あったんだ。
中には、それは本当に必要なのか?...みたいな機能もあった。
『決め台詞で後ろに爆発が起きる演出をON/OFF』とか、誰が使うんだよ。
それ二次災害を巻き起こすだけだろ。
特撮映像じゃないんだから、余計なオプションは無しだ。
「しかし、適合者じゃなければ代償は最悪死に至るとは。...想定では全く想定していなかった仕様でずっと驚いています。」
カーㇴもまた唐突に喋った。
まぁ、さっきまで自分の世界に入って煎餅もぐもぐしながら何かを考えていたみたいだし、話の脈絡の無さは仕方ない。
「ダメージを受けた際に副作用があるというのは楼汰様が戦い初めてから割とすぐ分かった事ではありますが、まだまだ分からない事が多いですね。」
そうだな。
逆に言うと、まだ俺たちが思いついたり気づいていない仕様が眠っている可能性も無くはないのだ。
俺のブラッディだって唐突に称号がどうとか言って目覚めたしな。
まだ新しい姿への分岐がある可能性もある。
そして新武装。
なんというか、ここら辺は日本男児として年甲斐もなくワクワクしちまうな。
いつまでも少年の心だ。
「代行者なんてのも初めて知りました。適合者の代わりもこの世界からしか選べないとは。」
「俺もカーㇴ達でいいじゃんとか思ったけどな。まさかそれが主の世界の人間しか使えないに関係してくるとはな。」
亡くなったら今度は代行者、それも居なくなったら全く別の人、ってのもシステム上はこの世界でもありがちだが中々こんな兵器ではない仕様だろうな。
「...俺からしたら流石異世界の機械って感じだぜ。」
と、そこで稔が声を上げた。
「.........この前から気にはなっていたんですけど、異世界とか何とかって、結局何なんですか?」
...そういえば、結局説明していなかったな。
説明した方が良いか。
彼もこれからは俺が何かしたいときなんかに手伝ってもらう可能性もあるんだ。
あまり子供を巻きこむのは良くないが、彼ら側から巻き込まれに来ているしどうせなら手伝ってもらいたい。
と、何か大事な事を忘れている気がするな。
こんなのんびりしていてよかったっけ?
いや、病院には戻らなきゃ何だけど......。
.....................。
異世界が気になる、事情が聞きたい、か?
異世界とは何なのかを聞きたい?
............。
あーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!
忘れていた。
政府への説明だ。
すっかり今までの適合者の話で忘れていたが、政府に話をつけに行かなければならないのだ。
休息をとってからという話ではあったが、こういうのは早い方が良い。
稔たちにも来てもらい、必要な事を話そう。
もう隠し立てはしない。
これからは、本格的に国にも戦ってもらわなきゃならないからな。
カーㇴ達に説明すると、それぞれ支度を始めた。
俺も玲子たちに連絡を取ると、玲子も一応来るらしい。
あの怪我なら安静にと思うが、これ以上除け者にされると怒り出しそうだ。
さてと、みんな準備でき次第向かうか。
玲子にアポを取ってもらうと、幸い俺たちの事ならと時間を空けてくれたらしい。
忙しいだろうに手をかけさせて悪いと思うが、そちらもなるべく情報が欲しいと言った所か。
居たのは前回の半分ほどの人数。
総理やその他省ごとの大臣、政治家がかなり居て相変わらず雰囲気はあまり良くない。
だが、とりあえず話すしかないな。
リーパーの事。
異偶の事。
この世界に起きている事実。
異世界の事。
デスペラード、そしてその狙いの事。
カーㇴの事。
そしてあの時の会議で振られた質問についても改めて解答する事にした。
そうした方がより正確に情報を渡せると思ったんだ。
まずリーパーからだ。
リーパーは異世界から持ち出された武器で、異偶やデスペラード達と戦うための装備であること。
ダメージを受ければ俺に傷が入る事。
その次に異偶だ。
奴らは基本的には動物を形どった上でそれを少し怪物と言われる見た目に編集したかのような見た目をしている。
見た目は完全にバケモノのそれだ。
異偶は敵だ。
人間を自分たちの玩具か何かとしか思っていない。
そして未だ謎も解明されていない。
カーㇴの住んでいた世界も、デスペラード達でさえ解析が完全ではないらしいからな。
兎に角、強大な力を持ったバケモノという事だけは言える。
異偶はデスペラード達によって召喚され、この世界にやってくる。
奴らを倒せば輝光導石とかいうエネルギー源が手に入る。
デスペラードや異世界、そしてこの世界に起きている事も話す。
デスペラードは仮面を着けた異常者の集団だ。
全員が全員突拍子も無いような性格をしていて、前の赤い仮面を除けば邪悪な意志を持っている。
そしてソイツらはみんな揃ってマシンを所持している。
「あのお方」と呼ぶリーダーが居て、ソイツがここを襲う事を指示しているらしい。
その目的はほぼ謎に包まれているが、分かっている事もある。
カーㇴ達が住んでいた世界で異世界の観測が出来るシステム・IFRTを破壊した奴ら。
異偶を召喚し世界を混乱に陥れる奴ら。
そんな奴らがデスペラードだ。
因みによくは知らないが、「あのお方」の目的は大昔の伝説級のバケモノ?らしい伝説の獣と呼ばれる怪物のカケラを手に入れる事。
そして、赤い仮面も言っていたが「種」と呼ばれるものをどうにかこうにかする事。
正直、まだ分からない事だらけだ。
ダリアが話してくれたのも、そのカケラとやらが普通に触れると危ないって話だけだったしな。
で、そのカケラと種とやらを狙って異偶やデスペラードが現れ、この世界を襲っている。
ここでさっきから言っている異世界というのだが、それはこの世界だけじゃなく他の世界も観測できる世界の中心らしい。
数千億もある世界を管理し、一つ一つ観測する世界A-101。
そこがカーㇴの居た世界だ。
全てはそこで始まり、そしてこの世界へと繋がれた。
世界A-101のお陰で、今やこの世界は何とか難を逃れている。
そしてその世界が今は危機的状況らしく、使い手の居なかったリーパーを持ってカーㇴが来たって訳だ。
つまり、カーㇴは異世界人なんだ。
そしてそれをデスペラードのうちの1人、トァネミは知っていたらしく姑息な作戦でカーㇴを攫った。
彼女が居なくなればA-101に帰る手段を持つものが居なくなる。
そうなればA-101、そしてIFRTの奪還は絶望的。
世界は闇に堕ちるという訳だ。
だからカーㇴが誘拐された時は焦ったし国が嫌いになりそうだった。
まぁそもそも命の危機でもあると当時は思っていたからそんな大層な目的が最初からあった訳じゃないんだけどな。
ここまで聞くと勘の悪いらしい政治家のおっさんたちでも理解できたらしい。
カーㇴが攫われて焦る気持ち、俺とは少し違うだろうけど理由は理解出来ただろ?
カーㇴは俺にとっての恩人みたいなものだから簡単に命を奪わせるわけにはいかない。
それに加えてそんな重要なものまで抱えているんだ。
理解してくれなきゃ困る。
更に話すべきは今回の一連の騒動についてだな。
スィゲロが来た時、何故彼らは日本を荒らしたのかだが、それは勿論先程言った通りカケラを探す為だ。
え?そんな事の為に人々をって?
奴らはそんな事は気にしない。
邪魔だてするなら容赦しないような奴らだ。
スィゲロはカケラを探してあの街付近一帯を壊滅させ、異偶も使いそこらの人々を虐殺した。
許されることじゃないが、奴らは気にしない。
目的の為ならこれからも続けるだろう。
なお、一人だけ目的が違ったデーヴィについては分からん。
俺に信頼してもらった所を裏切ろうとしている可能性もあるにはあるが、アイツだけは反応もやる事も違った。
脅しは流石に異世界人ならではって感じだったが、蓋を開けてみればそこまで悪い奴でもなさそうだった。
何より、あそこで俺を殺すべきところをお楽しみにととっておいた。
戦闘狂ではあると思うが、イマイチ今は脅威にしづらいな。
邪魔してきたら考える事にしよう。
そして今回の政治家搭乗騒動。
あれは流石にここに居る政治家たちは知らなかったが、同じ派閥のモノなどは話を聞いて青い顔をしていた。
そりゃそうだよな。
アイツはこちらに許可を取らず勝手に作業を進めようとしていたんだから。
総理なんかも苦い顔だ。
恐らく許可を取らなかったのはあのスーツ男の独断なんだろうな。
カーㇴ達の話を聞く感じ人の話を聞かなそうな面倒な男って感じだし。
そしてここからはあの時の質問に答える番だ。
まずリーパーが俺にしか使えないかだが、結論から言えば使える。
あの時とは状況が変わったんでな。
その言葉に喜んだり、最初から知っていたんだろ!?と怒号を上がったのですかさず補足。
ただし適合者、つまり俺以外が乗ると超高確率で死ぬと。
すると一気に静かになった。
中にはそれは詐欺じゃないかと言う奴も居た。
そう言われてもね。
俺にだってどうする事も出来ん。
代行者は信頼できる奴にしたいしな。
まぁとにかく質問自体の解答は俺にしか使えない訳じゃないだ。
ただし、代償がほぼ自分の命だがという話。
そして当時の俺は困惑していたが、今なら言える。
俺はみんなを守れるとは限らないだろうな。
守れるのは近くにいる奴だけだ。
今回ので痛感した。
誰も彼もを助けるなんて正義のヒーローみたいな事、普通の人間には無理だぜ。
異偶が現れる理由や組織の奴、目的については先ほど説明したので割愛。
強いて言うなら、奴らの目的は未だイマイチ掴めてないってことくらいだ。
あのマシンで何を企み、そのカケラを集めて何をしようとしているかなんて事までは、流石に分からない。
ただ警戒は大事だと言うだけだ。
あと、エネルギーは大分溜まってきた。
あと少しでA-101まで行く分くらいは溜まるだろう。
次だが、戦闘中に怪我をしたら副作用で俺に戦闘後怪我が同じ場所に出る事は皆不思議がっていた。
そりゃどうなってるか分からんよな。
俺も分からん。
あと平和になってから戦争が起きると言った点は正直ベーツの件もあって否定できない。
異偶やデスペラードを倒し終えたら今度はリーパーを巡って戦争が始まりそうだ。
......そこも考えなきゃな。
そして、あの時はただイライラしただけだったが、今思えばこれだけの情報を持つ俺は組織に繋がっていると思われても仕方ないな。
あとお陰様で国を守る職として選ばれてからの給与が入って滅茶苦茶稼いでいるので街を壊された額くらいは多分余裕で払えると思う。
ただ、それをさせられたら怒るかもしれないが。
「じゃ、ここまでで他に質問のある人ー!!」
一応聞いてみるが挙がる手は少ない。
そらそうだよな。
いきなり途方もない話を聞いたため、基本的に皆頭を抱えているか困った顔で考え込んでいる。
質問も終わりで良いか。
考え込むくらいの時間は必要だな。
場合によっては今後逆に政府側からなんか呼び出しとかあるかもしれんしな。
それの為にも今はしっかり考え込んで、決めて貰おう。
と、何人からか質問が挙がった。
質問に答えていく。
俺が出したリーパーの映像を見せながら黒い奴と赤い奴、どっちもお前か?と聞かれた。
ま、黒から赤になるところを見てなければ別固体と思うだろうな。
違うけどな。
どっちも俺だ。
そしてそもそもで俺は人間なのか聞かれた。
マシンのダメージがまんま体に出る事や、妙に落ち着いている感じ。
更にベーツの国に対しても、国を優先したのが妙だったようだ。
あの時はそれでよかったんだよな、面倒だったし。
今やベーツの国は何かあるたびに矛先に上げられ何かと叩かれている。
国民というか兵士たちが良い奴らだっただけにちょっとばかし不憫だ。
ベーツは許さんだろうが、国はもう許している。
カーㇴが許しているから俺も許そうと思う。
......こうやって感情が死んだみたいにすぐ考えず行動するから人間かどうかすら疑われるんだろうな。
失礼な。
とはいえ確かにここまでの説明とただ単にリーパーをそもそも使えている時点で俺は怪しまれても仕方ないよな。
残念なことにバリバリ人間だが。
次はと思っていると、突如議員の内の1人が聞いてきた。
顔は普通だったが、何処か言葉に棘がある。
「君のお陰で僕の家族は亡くなったよ。あの国に飛んだせいで僕の妻も、娘も亡くなった。そこの少女たった一人を救うために数百人も数千人も犠牲にした。」
顔が段々怒りへと変貌していく。
「僕は最近眠れていないよ。妻が、娘が嘆くんだ。痛いって。ずっと一晩中。それなのに君は君がこの場を去った元凶である国を赦した。許してしまった。」
...事情は察せるが、だからといってじゃあカーㇴを見殺しになんて出来るか!
そう言い付けたい気持ちをぐっとこらえる。
「おい、お前!!彼はたった一人でみんなを守るために戦ったんだ。確かにお前のいう事にも一理あるかもしれんが彼にだってどうしようも無かっただろう。そこを恨むのは筋違いだ!」
と何人かが庇ってはくれているが、正直彼のいう事も分かる。
俺はカーㇴを救えた。
でも彼は、救えなかった。救われなかった。
ずっとそこに囚われたまま動けないんだ。
かつての俺の様だ。
いや、今もか。
......でも動くしかないんだよ。
救えなかった事や、救われなかった事は確かに理不尽だよ。
でも、そうなるしかない時がある。
俺にだけは言われたくないだろうから直接は言わないけど、どうしようもない事もあるんだ。
それで諦められない事もな。
「......そうだよね。仮にもこの国を守ったんだ。僕がおかしいのは理解しているよ。彼はこの国や生き残った人にとっての英雄だ。でも、だからこそ納得いかないんだ。どうして、僕の家族は死ななければいけなかったのかって。」
心が苦しいだろう。
俺にも分かる。
それを乗り越えろなんて言えない。
だが、何度も言うようにどうしようもないときってのは人生必ずあるもんなんだ。
それが例え、どんなに辛い別れでもある事だ。
だが、そんな事を言えるはずも無く俺は何を言ったらいいのか分からず、黙るしかなかった。
「.........僕は何を言っているんだろ。傷つけたのならごめんね。...でも最後に聞きたいんだ。君は自分勝手な理由でこの国を滅茶苦茶にした、その自覚ある?責任があると思う?」
......なるほど、覚悟を問いたかったのか。
だから塞ぎたい傷をわざわざ晒して俺に話しかけてきたのか。
それへの答えは勿論YESだ。
「...ああ。カーㇴは世界の希望だ。でも、事情を知らない人間から見たら十分私的な理由に見えるだろう。俺はカーㇴという一人を救いたいが為に数千人を救えなかった。俺には戦う責任と同時に、超えた力で人を守る責任がある。それを守れなかったのは、俺のミスだ。何が有ろうと、自分の理由だけで動いちゃいけないのは分かってる。」
それに対し彼は少し微笑むと言った。
「......そうか、あるんだねちゃんと。...ならいいや。もう、大丈夫。ただ、君が半端な覚悟で命を背負うんじゃないかって思ったからさ。思ったよりちゃんと考えていたんだね。......なら、大丈夫か。」
分かってくれたみたいだ。
「...僕の方こそすまないね。つい、カッとなってしまって。.........君が彼女を守るのは利己的な理由だけじゃないのは分かっていたのにね。彼女を守る事が、この先の人々を守る事になるのだろう?」
聞かれ、頷くと。
「ならば、間違っていたのは僕だ。...悪かった。」
と謝られてしまい、慌てて止める。
彼はずっと苦しかったんだろう。
その苦しみを誰かに理解して欲しくて、こんな事をしたんだろうな。
ま、俺の覚悟への問いもあったんだろうが。
そんなこんなしている内に、会議の約束の時間はもう1時間をオーバーしていた。
これ以上は迷惑だろうし、俺も喋り終えたから帰ろうとすると、その前を総理が立つ。
「...えーと、いかがいたしましたか?」
そう聞くと彼はこう言った。
「...あの時と同じ質問をしよう。最後にそれだけ、聞かせてくれ。」
あの時。
そうか、あれか。
「君は一人の国民で、特別な力を得たとはいえ普通の人間だ。それなのに、こうやって守る責任を周りから責められるような事になっている。......それでいいのかな?本当の本当に、率直に聞かせて欲しい。責任を、今度こそ取れるかい?君は今一人で戦っているね、大丈夫なのかい?その責任を負う事に、一人で苦しんでいないかい?」
真っ直ぐな目で、そう告げられた。
対する俺の答えは.........。
キレそう。
仕事が忙しい。




