第0話 はじまり
初投稿です。生暖かい目でご覧ください。
「はあ~、今日も仕事マジで疲れたわぁ~」
ビニール袋片手に呟く。
買ってきたのは安物のチューハイだ。
俺にとっては現実逃避の為のアイテムだから正直値段はどうでもいいが…
歩きながら自身の部屋を目指す。
階段を上るたびに何かが削られる音がする。
息を吐きつつ、上り終えると3つ隣の部屋の前まで行く。
305号室。それが、俺の部屋だ。
とりあえず、飯食って風呂入って寝よう。
そう思った。
風呂を済ませた俺は、TVの前に座るとチューハイの缶を開ける。
プシュッといい音が響き、中にはいい感じに黄緑な酒が入っていた。
迷わず缶に口をつけ、一気に飲む。
「っぷはぁぁああああ~、これだわ!!これ!」
思わず声が漏れる。
決してめちゃくちゃ美味い訳じゃないのに。
なのに、声が我慢できない。
この瞬間の為に、生きている。そう断言できる。
俺は決して酒が好きではない。
少なくとも、俺の中では食事の方が大事だ。
酒はあくまで嫌なこと、辛いことを忘れる為の道具に過ぎない。
今日は疲れたな。相変わらず無理難題を客はふっかけてくるし、
営業はこちらの都合を考えず話はつけるし。
あーあ、なんかいい感じに俺がめちゃくちゃ優遇とかされないかな。
いい感じってどれくらいかって?
いい感じはいい感じだよ。税金払わなくていいとか、美味い飯が食い放題とか。
……だめだ、しょうもないことを考えるのはやめよう。
空しくなるだけだ。
少なくとも、今俺は空しい。酒が余計まずくなりそうだ。
とりあえず、飯を食おう。
今日はコンビニのから揚げ弁当を買った。すげえ美味いんだなコレが。
最近のコンビニの進化は凄い。
ただ黙々と、飯を食らう。
そこでふと、なんとなしにTVをつける。
今は21時、もう充分遅い時間だ。
番組表を見るとわからん恋愛ドラマかつまらないバラエティ、
あるいは知識番組をやっている。
何の気なしにつけたが、別にみる意味もない。
少しニュースを見たら消そう。
そう思った。
ニュースに切り替えた。
番組では何やら交通事故の話をしていた。
「ヤダわ、目の前であんなこと起きんの。トラウマになっちまうよ全く」
俺はグロ耐性なんてもんはない。
目の前で事故なんて見たら、ただでさえ真っ暗なその日がより真っ暗になるだろう。
そう思いつつ。ニュースを消そうとした、その時。
唐突に耳鳴りがした。
いや、耳鳴りは唐突なもんなんだが、それがあまりにも五月蠅かった。
まるで、何か悪いことが起こるとでも言いたげな音だった。
1、2分経ってようやく収まった。
長かった。正直、疲れた。
あんまりな生活に、遂に体までぶっ壊れちまったのかもな。
なんて思いながらリモコンを再び手に取る。
その時、ニュースが突然切り替わった。
そこには…
「は?」
画面の先には、夜の都会の街に白い光の穴が開いているような幻想的な光景が広がっていた。
穴は、なんというか入ったら二度と出れなそうなくらい綺麗な光をしていた。
ニュースでは臨時速報と言い、一斉に正体不明の光がなどと叫んでいた。
しかし、俺はもう声が耳に届かなかった。
その穴から、それは姿を現した。
とんでもないでかさの、高層ビルなんか余裕で超えるデカさのロボットだ。
そしてその肩には、真っ白な服を着た女が座っていた。
まるで人間じゃないような女は、画面を真っ直ぐ見て呟いた。
「...見つけた。私たちの、英雄様。」
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