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第1話 とりあえず自己紹介

 あのあと私たちはインテリに連れられて、別の部屋に通された。 インテリも何を言っているのかは分からなかったが、丁寧な態度と口調から私たちは少なからず歓迎されている事がわかる。


 通された部屋には丸テーブルと椅子、そこにお茶が用意されていた。丸テーブルには椅子が5脚あり、インテリがその内1脚に座る。その隣にチャラ男が座った。なんとなく言葉が通じる人の隣の方がよかったのでチャラ男の隣に私、その隣に女の子、そして女の子とインテリの間にもう1人の男の子が座った。


「☆△@□□@○、@○☆・※。」


 相変わらずインテリの言うことはまるでわからない。


「あの、俺たち、言葉、わからない、全然。」


 チャラ男がなぜかカタコトの日本語で話す。インテリはそれで言葉が通じないことがわかったようで、少し困ったような顔をしたあと、自分自身を指差して「クージン。クージン。」繰り返した。


「クージン…あんたの名前か?」


 チャラ男はインテリを指差して「クージン?」と聞いた。インテリは満足そうな表情で頷いたあと、チャラ男に指を刺して「レ?」と訊ねる。お前は?という意味だろうか。チャラ男もそう思ったのか自分を指差して、「コウ!」と宣言した。インテリ…クージンはチャラ男に「コウ!」と呼び掛け、チャラ男…コウは「クージン!」と呼ぶ。

 さすがチャラ男はコミュ力が高い。最低限のコミュニケーションをとってくれてありがたい。私にはちょっとハードルが高かったので率先してくれたチャラ男の印象がちょっと良くなる。


 名前か役職か知らないが、自称クージンは紙と羽ペンを取り出し、何やら絵を描く。4人の棒人間が椅子に座っており、その前に別の人間が立っている。


「□@※・□○、☆※△□・△。」


 そう言って紙をチャラ男に渡すと、クージンは微笑んで部屋を出て行った。


「なんて言ってたの?」


「わかるわけないだろ!?でもこの絵を見ると、誰かが言葉を教えてくれるって事じゃないのかな?」


 この絵でそれを読み取るとかチャラ男のコミュ力パネーな!まあいずれにしても言葉がわからないとどうしようもない。


「とりあえずここにいるのは全員日本人って事でいいんだよな?自己紹介しようぜ。」


 チャラ男がそう言って私達を見る。


「まず俺からで。俺の名前は龍門寺りゅうもんじこう、20歳。みんなテレビとかで見て知ってるかも知れないけど「Dragon‘s Gate」ってバンドのボーカル兼リーダーをやってる。」


 へー、有名人なんだ。知ってる?という感じに残りの2人を見るが2人ともすまなさそうに首を振った。


「マジ?知らないの?結構テレビとか雑誌とかにも出てるんだけど…。えー、かなり凹むわー…。」


 なんか可哀想だからチャラ男じゃなくてちゃんと航って呼んであげよう。


「じゃあ次、時計回りでおねーさんでいい?」


 チャラ男…航が私に振ってくる。


久世くぜ有里奈ありな、21歳。大学生よ。」


「有里奈ちゃんね。ヨロシク。」


 ファーストネームから読んでくるこの馴れ馴れしさってチャラ男特有よね。まあこの状況下でこの明るさは正直ありがたいので、私は軽く肩をすくめて返すに留める。


「じゃあ次はそっちの子…。さっきから震えてるけど大丈夫?寒い?」


「あ、大丈夫です。名前は廿日市はつかいちかのん、17歳の高校2年生です…。」


「かのんちゃん。辛かったらいつでも言ってね。まあこんな状況だと俺もできることないけど。」


 笑いながら気をつかう航。コイツいい奴じゃん。


「最後はそっちのお兄さん。」


長野ながのゆき、23歳。北海道でサラリーマンをやっている。ヨロシク。」


「幸、こっちこそヨロシクな!さて、自己紹介が終わったところで今の状況について整理しよう。まあ俺の個人的な推測の域を出ないんだけどな。端的に言うと、これは異世界召喚ってやつだと思う。みんな知ってる?」


 航がみんなに聞くと、かのんちゃんがおずおずと答える。


「あの…アニメとかである、お腹を刺されたりトラックに轢かれたりして気がついたら別の世界にいるになってたりするやつですか…?」


「そうそう、そう言うやつ!パターンとして2つあって、1つは今かのんちゃんが言ったみたいに現世で命を落として異世界で産まれ変わるやつ。異世界転生ってやつね。

 もう1つが生きたまま別の世界に飛ばされたり召喚されたりするやつ。今回はこっちのパターンだと思うんだよ。」


「…そんな漫画やアニメみたいなことが俺たちに起こったって事か?」


「確証はないけどな…だけどこの状況を説明するにはそう考えるのがしっくりくるって話だよ。そういえばここに来た時に足元に魔方陣みたいな模様もあっただろ。あれが召喚の魔方陣だったんじゃないかな。…ここの人たちの話す言葉がわからないから真偽は確かめようもないんだけど、今はその前提で話を進めてもいいかな?」


 航の話に頷く私たち。


「俺は異世界モノのアニメや漫画、ラノベなんかが好きで色んなパターンを見てきたからそれについて話をするぞ。」


「バンドやってるのにアニメとか好きなのね。」


「…まあ、最近は有名バンドがアニメ主題歌を歌ったりしているからな。好きなアニメの主題歌を歌わせてもらうのが夢ではある。」


「す、すごいですねっ…。」


「それでだ、異世界に召喚されるって言うのは大抵魔王だの邪神だのを倒してくれって言われるのが1つのテンプレなんだ。さっき魔方陣の部屋で偉そうなオッサンとネーチャンがいただろ?あれがこの国の王だったり貴族だったりして、この国はどこかと戦っていてその対抗戦力として俺たちが召喚されたって事なんじゃないかな。」


「ちょっといいか?対抗戦力だなんて言われても俺はしがないリーマンだし、この子達も普通の学生だろう?航にしたって特別な訓練を受けているようには見えないんだが。」


「そこでチートスキルなんだよ。異世界モノのテンプレだと俺たちは召喚された時にチートスキルを授かっているんだ。七つの大罪にちなんだ「強欲」だの「暴食」みたいな能力だったり、時を止めたり物を直したりするスキルだったりとそこは作品によって色々だな。」


「なんで異世界でキリスト教の概念が出てくるんだ?」


「そこは創作だからとしか言いようがないんだな。メタ的に言えばカッコイイからだろう。」


「ああそうか、今はフィクションの話だったか。腰を折ってすまない。続きを頼む。」


「フィクションの話ではあるが、俺たちが置かれた状況としてはそれに近い可能性が高いって事だな。それで、俺たちにはチートスキルが備わっていて、それを当てにされて召喚された。つまり次にされることはこの国の偉い方々から如何に困った状況かと言う話をされた上で協力を求められるんじゃないかと思う。思うんだが…。」


「何を言っているかさっぱりわからなかったわね。」


「そう!普通は何故か日本語が通じたり、そうでなくても異世界言語理解的な便利スキルがあるはずなんだよ!」


「…ちなみにチートスキルはどうやって確認すればいいんだ?」


「良くあるパターンだと「ステータスオープン!」って言ったり、こうやって目の前のタブレットを操作するような仕草をするとステータス画面が出てくるんだが。」


 そう言って航は指を目の前で上から下に降る。


「残念ながら何も起こらない。つまり俺の持っている知識は何も役に立たなかったと言うことだ。」


「散々引っ張って何も分からない、と言うことか。」


「いや、違うな。「良くある異世界モノのテンプレからは外れている」と言うことが分かったと言う話だ。」


「ハハ、大差は無い。」


 幸が突っ込むと思わず笑ってしまった。初めて4人の中で笑いが起こる。


「まあこのヘタクソな絵から読み取れる通り、言葉を教えてくれるならそのうち彼らの目的もわかるだろ。俺の想像通りだとしたら、しばらくはお客様扱いされるはずだから着の身着の儘放り出されるって事はないはずだ。」


「それを期待するしかないな。…と言うことはこのお茶は飲んでも大丈夫か?」


「まあ、目が覚めたら全部夢でしたって可能性もあるし今日のところは何も口にしない方が無難だろうな。明日もこの場所にいたら覚悟を決めるしか無いだろう。さて、この部屋の確認だな。」


 航は立ち上がると部屋の様子を探り始める。クージンが出て行った扉はカギがかかっていた。


「こっちの扉は…寝室だな。ベッドが4つある。とはいえ女の子と同じ部屋で寝るわけにはいかないからな。幸と俺はこっちのソファで寝るで構わないな?」


「ああ。有里奈さんとかのんさんは遠慮せずにベッドを使ってくれ。」


 私たちベッドを使わせてもらうのは心苦しかったが、とは言えさっき会ったばかりの男性と同じ部屋で寝るのは抵抗があったので、ありがたく提案を受ける事にした。

 

「ありがとう。」


「なに、訳のわからない状況に放り込まれたモノ同士だ。助け合っていこう。」


 その後は特に目新しい発見もできなかったので眠ることにした。願わくば目が覚めたら自分の部屋にいることを祈って。…隣のベッドからは、鼻を啜る音が明け方まで聞こえていた。


 いつの間に寝入ってしまったのだろう。目が覚めたのは太陽…この世界にも昼には太陽が上るらしい…が高く登ってからであった。残念ながら慣れ親しんだ自分の部屋ではなかった。

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