085 コーヒーです。2
ここは、グンマー帝国、リューキの街です。
教会の執務室内の応接間にいます。
部屋の中にいるのは、わたしの他に司祭のソフィさん、助祭のクララさん、テルマ教皇、計4人です。
わたしはドリップコーヒーをいれる用意をしています。
忘れるところでした。
わたしは手作りのチョコレートケーキを出しました。日本では、ガトーショコラと呼ばれているものです。
アンナ「チョコレートのケーキを作ってきました。
お皿を4枚・・・いえ5枚お願いします。」
クララ「はい。」
アンナ「テルマさん、外の女性を入れてあげてください。」
テルマ「・・・・・はい。仰せのままに。」
アンナ「クララさん、カップをもうひとつ出してください。」
クララ「はい。」
わたしは、ガトーショコラを切り分けます。
*
このケーキの名前、実は和製仏語です。異世界で和製仏語を広めるのは、気が引けます。
名前は伏せることにしました。
*
女性騎士が部屋に入って来ました。めちゃめちゃ緊張しています。
ベラ 「ベラと申します。猊下の護衛をしております。」
アンナ「ベラさん、座ってください。」
ベラ 「はい。ありがとうございます。」
*
わたしは、クララさんが持って来たお皿にケーキのせました。
確かこの国もフォークがなかったはずです。
わたしはデザートフォークを出して、お皿にのせ皆さんに配りました。
アンナ「食べてください。」
四人 「・・・・・・」
わたしはフォークを使い、一口食べました。
四人 『これはケーキを食べる道具。』(心の声)
アンナ「今頃、女神様もこのケーキを召し上がっていると思います。」
四人 『え・・・使徒様が作り、女神様が召し上がるケーキ。
食べるのが、もったいない。』心の声)
ぱくっ。
四人 「美味しい。」
皆さん、涙目になっています。泣くほどですか。
アンナ「あとでレシピを差し上げます。」
四人 「ありがとうございます。」
コーヒーが出来たので、カップに半分だけ注ぎ、三人に配りました。
アンナ「これがコーヒーです。まずは何も入れずに飲んでください。
苦いので驚かないでください。」
ごくっ。
四人 『にがい。』(心の声)
アンナ「次は砂糖を入れて、飲んでください。」
ごくっ。
ソフィ「美味しいです。」
テルマ「このケーキに合いますね。」
わたしはホットミルクが入ったピッチャーを出して
4つのカップに入れました。
アンナ「これはカフェオレという飲み物です。どうぞ。」
ごくっ。
四人 「美味しい。」
アンナ「冷やして飲むこともできます。」
わたしは皆さんのカップを魔法で冷やします。
アンナ「クール」
ごくっ。
四人 「美味しい。」
*
アンナ「このコーヒーに必要な発酵、乾燥、焙煎はカカオとほぼ同じです。
コーヒーを栽培してみませんか。」
テルマ「はい。喜んで栽培いたします。」
ソフィ「私も賛同します。ただ行政は管轄外なので
着任予定の代官と商業ギルドと一緒に話し合いをしたいと思います。」
代官?
アンナ「この街の領主はどうしていますか。」
ソフィ「はい。ツクサ伯爵は、アンナ様と女神様に対する不敬罪で、貴族の身分を剥奪、
街からの追放処分になりました。」
街から追放ですか。惑星の裏側よりましですね。
ソフィ「このリューキの街は今後、皇室直轄領になる予定です。」
ベラさんは、大丈夫でしょうか。
アンナ「ベラさんの件は、わたしが謝罪を受け入れましたので、処罰は不要です。
テルマさん、お願いします。」
テルマ「はい。仰せのままに。」
ベラ 「ありがとうございます。アンナ様。」
* * *
わたしは、この街で起きた1週間の出来事を聞きました。
そのあと、麻袋に入ったコーヒー豆を20kgとチョコレートケーキのレシピを提供して、
飛行島のコテージに戻りました。
* * *
テルマ「アンナ様、素敵な方でした。無礼をあっさりとお許しくださいました。
それに見た事の無いお召し物、長い黒髪。
天使の輪を思わせる白いツバの小さなお帽子。チョコレートケーキは絶品でした。」
ソフィ「猊下、さっき食べたチョコレートケーキ、名前がありません。どうしますか。」
テルマ「名前は決まっています。」
アンナケーキです。
テルマ 38歳 教皇
ベラ 25歳 護衛騎士
ソフィ 25歳 司祭
クララ 20歳 助祭