083 ギルド職員の憂鬱 (別視点)
* 別視点 マギー side *
ここは、ワウラの街。商業ギルド。
商業ギルドサブミストレスのマギーは調査の名目で外出をする。
* * *
もう、いや。
アンナさんの登録以降、仕事が大量に増えた。
料理のレシピ、技術特許、朝から晩まで途切れることのない来客、大量の申請書、
ギルミスから突き返される計算ミスの書類、雲母の発見とその調査、
女神顕現、神罰、領主の失踪など。
ギルドに戻りたくない。
早く戻って来いって言われたけど、のんびりやりましょう。
最初はダノン食堂からね。
マギー「ギルドのマギーです。調査に来ました。」
ダノン「なんか用かい。」
マギー「最近増えた料理、ありますか。」
ダノン「二つある。」
あれだけアンナさんに言ったのに、また登録してない。もう。
マギー「お金は支払います。試食できますか。」
ダノン「ああ、こっち来な。」
ダノン「丁度できたところだ。ピラフって言うんだ。食ってみな。」
ぱくっ。
マギー「美味しい。これ米ですか。」
ダノン「そうだ。米がこんなにうまいとはオレも知らなかった。」
米はギルドで取り扱ってない。報告しないと。
マギー「もう一つの料理はなんですか。」
ダノン「ピザだ。食ってみるか。」
マギー「少しだけ。」
ダノン「わかった。小さいのを作ってやる。」
*
数分後。
ダノン「よしできた。熱いから気つけな。」
ぱくっ。
マギー「美味しい。生地がサクサクで、チーズがトロトロ。」
ダノン「アンナさんは、料理の天才だな。」
同感。ダノン食堂では、追加レシピが二つ。
* * *
次は猫耳亭ね。
うわー、並んでる。もうお昼よね。いい匂い。ここで並べば、時間稼ぎが出来るわ。
*
やっと順番が回って来た。
新メニューはカレーライス。知らない料理ね。注文しましょう。
早い。食堂内で盛り付けしてる。考えたわね。
ぱくっ。
美味しい。香辛料をふんだんに使ってる。贅沢な料理ね。人気が出るのも納得ね。
*
美味しかった。この宿も米の料理。
帰ってギルミスに報告しないと。
商業ギルドが最新の情報を持っていないといけないのに、完全に出遅れして・・・
お腹いっぱいになったら、眠くなって・・・zzz
* * *
ん? はっ! 誰もいない。私、寝ちゃった? 急いで帰らないと。
あれ、誰かいる。ノエルちゃん?
マギー「ノエルちゃん、迷惑かけて、ごめんね。」
ノエル「へいき。つかれているから、ねかせてあげなさいって。おかあさんがいってた。」
マギー「ありがとう。何して遊んでいるの?」
ノエル「うりあげのけいさんしてるの。」
マギー「ノエルちゃん計算できるの?」
ノエル「うん。これがあればできるよ。」
マギー「それなあに?」
ノエル「そろばんっていってた。アンナおねえちゃんが。」
また、アンナさん。
マギー「ちょっと計算やってみて。」
ノエル「うん。いいよ。」
パチ、パチ、パチ・・・
本当に計算できているのかな?
ノエル「これね。たしざんとひきざんとかけざんとわりざんができるんだよ。」
マギー「すごい。」
計算する道具。大至急報告しないと。
マギー「ノエルちゃん、またね。」
ノエル「バイバイ。」
しまった。カレー以外のメニューを聞いてない。別の日にしよう。
パン屋にも行かないと。
*
ルパンさんの店も並んでる。直接工房に行こう。
マギー「すみません。ギルドのマギーです。」
ルパン「なんか用か。」
マギー「最近、パンの種類増えましたか?」
ルパン「二つ増えた。一つはこれ、マリトッツォ。もう一つはこれだ、チーズケーキ。」
どちらも未登録ね。パン屋は二つ。
マギー「お金を払うので、二つとも試食させてください。」
ルパン「はいよ。」
ぱくっ。
マギー「美味しい。両方とも。」
ルパン「だろう。アンナさんは料理の天才だ。」
同感。これ、お土産に買って帰ろう。ギルミスの機嫌少しはよくなるかも。
私はきれいなハンカチーフにホールのチーズケーキを包んでもらった。
* * *
商業ギルドに帰ってきました。
ジーナ「一体いま何時だと思っているの。」
マギー「お土産にケーキ買って来ました。」
ジーナ「当たり前です。すぐに出しなさい。」
マギー「はい。」
*
ぱくっ。
ジーナ「美味しいー。」
少しは機嫌が良くなったみたいです。私は、レシピの報告をしました。
*
マギー「それから、猫耳亭に計算する道具がありました。」
ジーナ「計算する道具?」
* * * かくかくしかじか * * *
ジーナ「すごいわ。大至急、木工所で作らせて。最優先。」
マギー「はい。」
* * *
数日後、私はそろばんの試作品を持って猫耳亭に行きました。
ノエルちゃん、そろばん教えて。