081 猫耳亭2 (別視点)
* 別視点 パティ side *
ここは、ワウラの街。猫耳亭の従業員用ダイニング。
パティは、うわさになっているワウラ料理を見てくるように、夫から言われた。
そして娘のミラと共に、兄が経営する宿にやって来た。
* * *
アンナさん、何者かしら。私より若いわよね。
エプロンの下に着ている服。あれ、平民の服じゃないわ。
それに頭にのせているもの、あれ何かしら、帽子にしては小さいわよね。
パティ「エマさん、アンナさんって何者ですか?」(小声)
エマ 「冒険者よ。」
??? 意味がわからない。冒険者?
パティ「アンナさんって、貴族ですか?」(小声)
エマ 「違うと思うわ。貴族が冒険したり、宿で働かないでしょ。」
パティ「そうですけど。」
エマ 「パティさん、泊まっていくわよね。シングルしか空いてないの。いいかしら。」
パティ「はい。ミラと一緒に寝るので大丈夫です。」
エマ 「私、仕事があるから、ゆっくりしてね。」
パティ「はい。」
ノエルちゃんもついて行ったけど、手伝いをしているのかしら。
それにしても、猫耳亭だけで、ものすごい情報量。この宿以外にも、何かあるのかしら。
さっき街の人が話していた、女神様とか、神罰とか、気になるわね。聞けばよかった。
ノエル「ミラちゃん、いっしょにおえかきしてあそぼ。」
パティ「かわいいテーブルと椅子ね。」
ノエル「アンナおねえちゃんがつくってくれたの。」
それ、紙よね。それと絵の具?
パティ「ノエルちゃん、それなあに?」
ノエル「クレヨンっていってた。アンナおねえちゃんにもらったの。」
クレヨン? 絵の具みたいなものかしら。きれいな箱。知らない文字が書かれてる。たぶん外国製ね。
きれいで大きな紙。何枚もあるわね。これ高級品だと思うけど、子供にあげてもいいのかしら。
アンナさん、絶対お金持ちよね。
*
厨房から、いい匂いがするわ。忙しそうね。
パティ「兄さん、私も手伝うわ。」
ザック「たのむ。パンを切ってくれ。
切ったあとは、切り口が乾燥しないように重ねてくれ。」
パティ「はい。」
アンナ「お菓子、もうすぐ焼き上がります。」
お菓子?
パティ「宿の夕食に、お菓子も出すの?」
ザック「そうだ。」
アンナ「あとは鳥肉の仕込みだけですね。」
* * *
夕食の仕込みが終ったみたいね。まだ何か作るのかしら。
なにあの食材? 白い小さな粒々? 小麦? バターで炒めるの?
*
こめって言ったわね。小麦じゃないのね。今度は、具材とこめを炒めたわ。
いい香り。香辛料をそんなに入れるの? 香辛料は高いのよ、大丈夫?
*
今度は、こめの中に具材を入れて・・・焼くのね。面白い料理ね。
本当に、この子が兄さんに教えているわ。
* * *
ザック「食堂を開ける前に夕食にしよう。」
エマ 「ザック、その前に紹介。」
ザック「そういえば、まだしてなかった・・・オレの妹、パティ。」
パティ「パティです。隣街から来ました。この子が娘のミラです。」
ザック「こちらが、いつもお世話になっているアンナさん。冒険者だ。」
アンナ「アンナです。冒険者以外にも色々とやっています。」
そうみたいね。
*
それにしても、この料理、まかない? いつもこんなに豪華なもの食べてるの?
ザック「食堂で出すセットメニューとカレーライス、
残り物で作ったドライカレーと焼きおにぎりだ。食べよう。いただきます。」
全員 「いただきます。」
なになに? い、いただきます。
ぱくぱく・・・
パティ「美味しい。」
ザック「どうだパティ、うまいだろう。全部アンナさんが考案した料理だ。
すごい。どれも美味しい。それに、この道具。便利で食べやすい。
ザック「それ、アンナスプーンって言うんだ。」
このスプーンもアンナさんが関わってるのね。ミラが使っている小さいスプーンもあるわ。
それにこの椅子。
ザック「子供用の椅子もアンナさんが作った。子供連れに評判がいい。」
わかる。小さな子にも、ここまで配慮するのね。
アンナさん、何者かしら。
コーヒー、チョコレート、透明窓、便利なスプーン見た事のない服。外国の高級な画材。
おそらく大金持ち。そして、お菓子まで付く豪華な料理。
わかったわ。
アンナさんは・・・・・・王族ね。
違います。