007 異世界ツアー初日です。5
ここは街の中です。
私たちは昼食予定の食堂に向かって歩いています。
目の前に行列が見えてきました。何の行列でしょうか? いやな予感がします。
その行列は昼食予定の食堂でした。
アンナ「皆さん、列には並ばず、ここで待っていてください。」
わたしは食堂の裏口から厨房に向かいます。そして食堂の店主ダノンさんに声をかけました。
アンナ「ダノンさん、アンナです。先日の予約、大丈夫ですか。」
ダノン「ああ、大丈夫だ。ただ正面から入ると割り込みしたって、文句をいわれる。
悪いが裏口から入ってくれ。」
アンナ「わかりました。」
わたしは皆さんのところに戻り、裏口を案内します。
店内に入ると、テーブル横には衝立があり、他の席から見えなくなっています。
個室のような感じです。
私たちは席に着きました。
皆さん、アイテムボックスからコップを出しました。そして生活魔法ウォーターで水を出します。
ダノン「皆さん、いらっしゃい。」
アンナ「ダノンさん、行列の原因はあの料理ですか?」
ダノン「そうだ。悪いが今は忙しくて、アレしか出せねえ。」
アンナ「はい。それでは5人分お願いします。それとは別に1食分持ち帰ります。」
わたしはダノンさんに陶器の器を渡しました。これは女神ローラの分です。
ダノン「わかった。すぐに用意する。」
ダノンさんは厨房に戻りました。
アンナ「料金は銀貨1枚です。用意してください。」
わたしは皆さんからお金を集めました。少し待つと料理が運ばれてきました。
わたしはお金を先に支払います。持ち帰りの分はアイテムボックスに収納しました。
ダノン「忙しいから、オレは戻る。ゆっくりしていってくれ。」
アンナ「はい。」
ダノンさんは急いで厨房に戻っていきます。
昼食はモロッコ料理、ケフタとクスクスです。それらがひとつの器に入っています。
ケフタは肉団子と野菜をトマトソースで煮込んだものです。クスクスは粒状のパスタです。
アンナ「皆さん、食べましょう・・・いただきます。」
4人 「いただきます。」
ぱくっ。
4人 「美味しい。」
令奈 「異世界の料理が美味しくてよかった。」
美波 「これ・・・クスクス?」
アンナ「・・・はい。ご存知でしたか。」
美波 「うん。前に一度食べたことがある。」
アンナ「実はこの料理、異世界のものではなく、モロッコ料理を参考にして作ったものです。
すみません。」
* * *
わたしは、この街に美味しい料理がないこと、地球の料理を参考にしたことなどを正直に話しました。
菜々子「美味しいから、問題ないよ。」
美波 「異世界の食材で作ったら、異世界の料理だよ。」
令奈 「そう、そう。」
秋恵 「毎日、固いパンと塩スープはキツイよ。」
4人 「 ww 」
アンナ「ありがとうございます。」
日本人が知らない料理を出し続けるのは無理ですね。
でも、なるべく日本人が知らないような料理を出すつもりです。ありふれた料理よりは、喜んでもらえるでしょう。
* * *
食事が終わりました。
5人 「ごちそうさまでした。」
わたしは食べ終わった食器類をきれいにします。
アンナ「クリーン」
皆さんはアイテムボックスにコップを片付けました。
わたしは、食器類をまとめて厨房に戻しにいきます。
アンナ「ダノンさん、ごちそうさまでした。」
ダノン「ああ。またきてくれ。」
アンナ「はい。」
私たちは裏口から食堂を出ました。
次は、街の中を見て回りたいと思います。
ダノン 28歳 食堂の主人