067 安奈です。
ここは、飛行島のダンジョンです。
わたしは、二人を送還した後、黒い箱を開けることに成功しました。
中に入っていたのは、少女でした。
アンナ「どちら様ですか?」
陽子 「わたくしは陽子でございます。お忘れですか。」
アンナ「初めてお会いすると思います。」
陽子 「転生は成功したようですが、記憶は継承されなかった訳ですね。」
アンナ「転生? 記憶? お話はコテージで伺います。」
アンナ「転移」
* * *
私たちはコテージの前に転移しました。
コテージに招いても大丈夫でしょう。悪い人ではないようです。そもそも人間ではないようですが。
アンナ「さあ、中にどうぞ。」
陽子 「安奈様の新しいお屋敷、記録しました。」
わたしは、陽子さんをコテージに案内しました。
アンナ「靴はここで脱いで、靴箱に入れてください。
家の中はこのルームシューズを使ってください。」
陽子 「はい。ルームシューズ、記録しました。」
私たちは、リビングで話を始めました。
アンナ「転生とか記憶の継承とか、どういうことでしょうか。」
わたしは陽子さんに質問をして、話を聞きました。
* * * 長い話 * * *
話の内容をまとめると・・・
陽子さんは遺跡で発掘された自動機械人形です。安奈という女性が発見、修理しました。
そのあと、安奈さんのメイドをしながら、この飛行島で暮らしていました。
安奈さんは、日本人転移者です。17年前に高齢で亡くなりました。
死期を悟った安奈さんは、メンテナンスできない陽子さんを、魔法で封印しました。
*
アンナ「その安奈さんの生まれ変わりが、わたしということですか。」
陽子 「はい。あの封印結界を解けるのは、安奈様だけでございます。」
安奈さんは、わたしの前世ということでしょうか。
もし前世の記憶が戻ったら、わたしの人格はどうなるのでしょうか。
そもそも、わたしはアンナを名乗っていますが、本名ではありません。
アンナという名前は、ネットのハンドルネームです。
考えるのが、面倒になってきました。
今日は色々なことがあり、疲れました。なにも考えずに寝たいです。
わたしは陽子さんをゲストルームに案内しました。
睡眠の必要はないそうですが、一日中起こしているのは、ブラックみたいで気が引けます。
わたしは、横になって目を瞑り翌朝起床するよう、陽子さんに言いました。
今日はもう寝ます。
* * * * *
翌朝、わたしは女神ローラに連絡しました。
そして、陽子さんと一緒に天界に召喚されました。マオも一緒です。
陽子 「お久しぶりでございます。ローラ様。」
ローラ「お久しぶりね。陽子ちゃん。」
アンナ「ローラは陽子さんのこと、知っていたんですか。」
ローラ「ええ。話は座ってからにしましょう。」
私たちは、庭園の東屋に通されました。
わたしは、マキネッタでコーヒーをいれて、カフェ・コン・レチェを作ることにしました。
それと、朝食がわりにチュロスを出します。朝は、糖分とカフェインの補給が必要です。
陽子 「マキネッタ、カフェ・コン・レチェ、チュロス、記録しました。」
ローラ「陽子ちゃんは、お利口ね。」
陽子 「ありがとうございます。」
アンナ「いただきます。」
ローラ「いただきます。」
陽子 「いただきます。」
陽子さんは、食事を摂取してエネルギー変換が出来るそうです。
ぱくっ。
ローラ「美味しい。」
陽子 「美味しい。記録しました。」
マオ 「ミュー、ミュー・・・」
ローラ「その子が、保護した猫のマオちゃんね。」
アンナ「はい。」
ローラ「かわいいわね。」
陽子 「猫、マオ、かわいい。記録しました。」
アンナ「いまミルクあげますからね。」
わたしは魔法で哺乳瓶を支えて、スリングにいるマオにミルクをあげています。
*
ローラ「要するに、自分が安奈の生まれ変わりなのか、知りたいってことかしら。」
アンナ「はい。そうです。」
ローラ「その通り、あなたは安奈の生まれ変わりよ。」
アンナ「記憶が戻ることは、ありますか。」
ローラ「ないわね。」
アンナ「そうですか。」
ローラ「人は全て誰かの生まれ変わりよ。アンナの場合は、前世が特定されただけよ。
なにも変わらないわ。」
アンナ「はい・・・そうですね。」
* * * * *
私たちは、飛行島のコテージに戻ってきました。
わたしは、安奈さんの生まれ変わりです。
実感がありませんが、考えても仕方がないことです。
ちなみに、安奈さんのお墓はないそうです。
亡骸は、安奈さんの遺言通り、ローラが海に散骨したそうです。
わたしは陽子さんと一緒に暮らすことにします。