005 異世界ツアー初日です。3
ここは街の外壁から出た、小さな丘の上です。
わたしは、天幕・テーブル・椅子をアイテムボックスに片付けました。
アンナ「これから魔法で移動します。よろしいですか・・・いきますよ。」
わたしは千里眼で転移先を確認して・・・
アンナ「転移」
* * *
周りに人家がない、広い荒野に転移しました。
わたしは魔法を使いながら、腕輪型魔道具の説明をしました。
使用できる魔法は、翻訳魔法、鑑定魔法、収納魔法
いわゆる異世界三大特典です。
それ以外に、攻撃魔法、防御魔法、生活魔法が使えます。
*攻撃魔法(ファイヤーボール、アイスジャベリン)
*防御魔法(常時発動)
*生活魔法(クリーン、ライト、ウォーター他)
*鑑定魔法(人や物を鑑定できる)
アンナ「皆さんのアイテムボックスの中に、食器とロールペーパーが入っています。
試しにコップを出してみてください。」
令奈 「コップが出た。」
秋恵 「すごい。」
アンナ「次に、そのコップに生活魔法ウォーターで水を注ぎ、飲み終わったら、クリーン。
最後にコップを収納。やってみてください。」
皆さん魔法を試しています。目がキラキラしています。
秋恵 「本当に魔法が使える。すごい。」
菜々子「魔法が使えただけでも、異世界ツアーに参加した甲斐があったよね。」
美波 「私、バッグを収納しよう。」
それぞれ皆さん、生活魔法とアイテムボックスを堪能しています。
派手な魔法ではありませんが、最初は感動するものです。
その間にわたしは、天幕・テーブル・椅子を出して、休憩スペースを用意します。
仮設トイレは少し離れた風下に設置します。そのあと攻撃魔法を練習するための準備もしました。
アンナ「あちらに4つの的を用意しました。攻撃魔法の説明をします。こちらに来てください。」
皆さん集まったので、わたしは的に手を向けます。
アンナ「手の前に火の球が生成して、飛んで行くイメージです・・・ファイヤーボール。」
火の球が直撃しました。的が派手に壊れます。
4人 「すごーい。」
的は土魔法で作った素焼きのようなものです。派手に壊れますが、そのあと何度も再生する魔道具です。
続いて・・・
アンナ「手の先に氷の槍先が生成、それを投擲するイメージです・・・アイスジャベリン。」
直撃です。的が壊れますが、再生します。
4人 「かっこいい」
アンナ「皆さん、やってみてください。
ちなみに魔法名は言葉で言わなくても、頭の中で念じれば魔法は発動します。」
皆さん、的に向かって魔法を撃ち込みます。いい顔しています。
アンナ「皆さん、よければスマホで写真を撮りますよ。」
4人 「撮ってー。」
わたしは、スマホで写真を撮り続けました。
皆さん、かっこいいです。これは中二病ではなく、本物の魔法です。
令奈 「ちょっとー・・・それ、あたしの的。」
菜々子「ごめん、ごめん。」
令奈 「絶対わざとやったでしょう?お返しー。」
菜々子「あ〜。」
秋恵 「楽しい・・・テンションやばい。」
美波 「みんな子供みたいだよ。私もだけど。」
* * *
10分後。
アンナ「そろそろ終わりにします。」
令奈 「えっ、もう終わり?」
アンナ「明日も魔法を使う時間はあります。
次に用意する的を皆さんで破壊できたら、終わりにしましょう。」
わたしは、的を作る魔道具を回収して、代わりに大きな的をひとつ用意します。高さ5メートルあります。
特撮怪獣の形です。先ほどの的と同様、素焼きのようなものです。中は空洞になってます。
アンナ「先ほどの的より厚く作ってあります。
魔法が当たっても、ひびが入るか、穴が開く程度です。皆さん頑張ってください。」
魔法攻撃が開始されます・・・そして、2分後。
ピシッ・・・ピシッ、ピシッ・・・傾く怪獣
ガッシャーン。
4人 「やった!」
菜々子「なにこの達成感。」
令奈 「ものすごい爽快感。」
秋恵 「異世界、サイコー!」
美波 「楽しかった。」
アンナ「皆さん、喉乾いていませんか。あちらの天幕に冷たいお茶を用意しました。
休憩にしましょう。」
お茶を飲みながら、おしゃべりが続きます。
* * *
アンナ「そろそろ街に向かいますが、その前にお小遣いを差し上げます。」
秋恵 「本当に?」
わたしは、皆さんに小さな巾着袋を配ります。
アンナ「中に銀貨10枚、大銅貨10枚が入っています。
あくまで目安ですが、銀貨は1000円、大銅貨は100円位です。」
菜々子「ということは、11000円」
アンナ「基本的に街での支払いは皆さんにして頂くことになります。
お金を使うことも異世界での体験です。」
令奈 「それもそうね。」
アンナ「お金はあまり残らないと思います。もしお金が足りない人は申し出てください。
先ほどのレートで両替します。」
4人 「はい。」
わたしは、天幕などをアイテムボックスに片付け始めます。あ、トイレ・・・
アンナ「皆さん、街に行く前にトイレに行っておいてください。街にはトイレがありません。」
4人 「えっ。」
秋恵 「どういうこと?」
アンナ「中世のヨーロッパと同じで、常設のトイレはありません。
このトイレはわたしが作りました。」
菜々子「街の人はどうしてるの?」
アンナ「空き地でするか、屋内にある壷のようなオマルにして、外に捨てています。」
美波 「信じられない。」
アンナ「皆さん現実を受け入れてください。
順番にどうぞ。手は生活魔法できれいにしてください。」
* * * トイレタイム * * *
ちなみに、このトイレは日本の山小屋にあるバイオトイレと同じものです。
皆さん、トイレが終わりました。
アンナ「それでは、転移魔法で街に向かいます。よろしいですか・・・いきますよ。」
わたしは千里眼で転移先を確認して・・・
アンナ「転移」
* * *
街の外壁が見える街道に転移しました。
4人 「おー。」
令奈 「異世界の街。」
街の中に入ります。