031 異世界ツアー3日目です。10
ここは洞窟の奥。クリスタルホールです。
アンナ「ここで拾った魔水晶を持ち帰るのはかまいません。
ただし、1個だけにしてください。
たくさんあるように見えても、魔水晶の数は有限です。
わたしは洞窟のことを、ツアー客だけに教える予定です。
この世界の人に教えてしまえば、このホールはただの空洞になると思います。
ですから、持ち帰るのは1個だけにしてください。強制はしません。
あくまでお願いです。」
4人 「・・・・・・」
令奈 「みんな、1個だけにしよう。」
他3人「うん。」
美波 「写真たくさん撮るから、大丈夫。」
アンナ「皆さん、ありがとうございます。」
アンナ「すみませんが、時間に余裕がありません。自由時間を20分にします。
その間に魔水晶の欠片を探したり、撮影をしてください。」
4人 「はい。」
美波さんは撮影しながら、魔水晶の欠片を探しています。
他の人は、魔水晶探しを優先しています。複数探して、その中から1つを選ぶようです。
* * *
アンナ「15分経ちました。残り5分です。」
美波さん以外も撮影を始めます。
* * *
そして残り5分が経過しました。
アンナ「自由時間、終了です。」
皆さん集まって来ました。戦利品を見せ合っています。
美波 「迷ったんだけど、わたしは赤にした。色付きは数が少ないから。」
秋恵 「うちは迷ったけど青にする。きれいでしょ。」
菜々子「わたしは透明。雪の結晶みたいだからね。」
令奈 「あたしも透明。部屋に飾るから、大きいのにした。」
アンナ「皆さんどうでしたか。」
秋恵 「いいのが拾えたよ。」
美波 「うん。写真もいっぱい撮れた。」
令奈 「大満足。」
菜々子「私も。楽しかった。」
アンナ「よかったです。」
アンナ「それでは日暮れ前、最後の場所に移動します。」
私たちは転移魔法で移動しました。
* * *
ここは小さな山の上です。
近くにテーブルマウンテンがあります。
そこはとても神聖な場所です。
令奈 「もう夕方になってる。」
4人 「 ww 」
菜々子「 ww 時間が経つのを忘れるよね。」
4人 「 ww 」
夕日の方から、何かが近づいて来ます。
わたしは、夕日の方に指をさしました。
アンナ「あちらを見てください。驚いて大きな声を出さないでくださいね。」
4人 「・・・?」
アンナ「ドラゴンです。」
4人 「えー。」(小声)
アンナ「この世界のドラゴンは、神聖な生き物です。
アニメのような、勇者の討伐対象ではありません。」
レッドドラゴンはゆっくり飛行しながら、近づいて来ます。
そしてテーブルマウンテンに舞い降りました。
アンナ「さあ、行きますよ。」
わたしは、呆然とする皆さんと共にテーブルマウンテンに転移します。
*
アンナ「こんばんは。お土産を持って来ました。」
わたしはドラゴンの前に大きな葉を敷いて、イノシシの丸焼きを出しました。
特製だれを何度も塗り、火魔法で調理したものです。
アンナ「食べてください。」
ドラゴンはガブリと噛み付き、骨ごとバリバリ食べています。
次にわたしは、アイテムボックスから日本の樽酒を出します。
日本からお取り寄せ(召喚)したものです。
アンナ「お酒、好きでしたよね。」
わたしは樽酒の蓋を木槌で割りました。
お酒の匂いが漂い、ドラゴンの目の色が変わります。
アンナ「異世界のお酒、清酒です。どうぞ。」
ドラゴンは魔法を使って器用に飲んでます。喜んでいるようです。
*
アンナ「私たちは、これで失礼します。」
するとドラゴンは、落ちている何かを爪の先でつかみ、わたしに差し出しました。
アンナ「ありがとうございます。いただきます。」
それはドラゴンの鱗でした。きれいです。
アンナ「また来ます。」
わたしは頭を下げて、唖然とする皆さんと共に転移しました。