239 秋です 5
ここはサンローラの街です。
わたしは、ローラ、陽子さんと一緒に街のお店を回っています。
いま食堂の前にいます。
お昼の忙しい時間帯は過ぎましたが、それでもお客さんがいます。
隣の建物はパスタとピザの専門店として繁盛しています。
私たちは勝手口に回りました。
アンナ「ダノンさん、こんにちは」
ダノン「アンナさん、いらっしゃい」
アンナ「パスタとピザの専門店は順調みたいですね」
ダノン「ああ、隣人と再交渉したら、妥当な価格で譲ってくれた。
経営も順調だ」
ローラが何かをした気がします。
アンナ「それはよかったです。
今日は変わったピザを作って持ってきました」
ダノン「変わったピザ?」
わたしはそのピザを出しました。
アンナ「ダノンさん、食べてください」
ダノン「うまそうだな」
ぱくっ。
ダノン「甘い」
アンナ「クリームチーズ、カスタード、カラメルソースを使った
スイートピザです」
ローラ「私も食べたいわ」
アンナ「どうぞ」
ぱくっ。
ローラ「美味しいわ」
ダノン「甘いピザか・・・考えたことなかったな。
女性客に人気が出そうだ」
アンナ「材料は、果物やチョコレート、ハチミツなど
色々と工夫してください」
ダノン「わかった。いい勉強になった。ありがとう」
私たちは食堂を後にしました。
*
次の私たちが向かったのは、氷屋さんです。
店頭では、ダークエルフのイケメン、スミスさんが従業員と商品の販売をしています。
やはり夏に比べてお客さんの数が減っているようです。
あれは・・・前にはなかったスイーツです。
コーンカップにカットした果物を入れて、上にホイップクリームがのっています。
考えましたね。
アンナ「スミスさん、こんにちは」
スミス「アンナさん、いらっしゃい」
アンナ「ライラさんは工房ですか?」
スミス「うん、工房で作業をしているよ」
アンナ「行ってみます」
私たちは工房に向かいました。
アンナ「ライラさん、こんにちは」
ライラ「ああ、アンナさん、いらっしゃい」
アンナ「浮かない顔ですね」
ライラ「売り上げが下がっているの。
兄さんと二人だけなら、なんとかやっていけるけど。
従業員は解雇しないとだめかなって」
アンナ「その件も含めて、ライラさんに見せたいものがあります。
表に出しますので来てください。
私たちは工房から出ました。
そしてアイテムボックスから荷車を出します。
ライラ「荷車? ん? 甘い匂い」
ローラ「いい匂いね」
アンナ「石焼き芋と甘栗です」
石焼き芋屋さんのリヤカーを真似て作りました。専用釜付きの荷車です。
車輪はゴム製タイヤです。見た目が昭和っぽいです。
わたしは皿を出しました。そしてスコップで芋をすくい取り、半分に割りました。
アンナ「ライラさん、食べてください」
ローラ「私も」
またですか。今日は一日中食べてばかりですね。
ぱくっ。
ライラ「甘い・・・ねっとりしているわね。
どうやって砂糖を染み込ませたの?」
アンナ「砂糖は使っていません。焼いただけです」
ライラ「焼いただけでこんなに甘くなるの?」
アンナ「はい」
ローラ「こんなに甘いお芋を食べたのは初めてね」
アンナ「甘栗もありますよ」
わたしは甘栗を皿にのせて差し出しました。
アンナ「手で殻を剥いてください。熱いですよ」
陽子 「ローラ様、私が殻を剥いて差し上げます」
ローラ「お願いするわ」
ぱくっ。
ライラ「甘い・・・ホクホク」
ローラ「美味しい栗ね」
この栗は和栗と違い、渋皮が剥がれる品種です。
アンナ「焼き芋と甘栗を売ってみませんか?」
ライラ「この荷車はいくらするの?」
アンナ「先行投資です。荷車の代金は、いりません。
その代わりサツマイモと栗は買ってください」
スミス「なになに、気になって見に来たんだけど」
ライラ「兄さん、これ食べてみて」
ぱくっ。
スミス「あまーい」
わたしはライラさんとスミスさんに色々と説明をしました。
アンナ「焼き芋を甘くするには低温でじっくり焼いてください。
それから、お芋の大きさに違いがあります。
料金は工夫してください」
アンナ「甘栗は焼く前に切れ目を入れてください。
そうしないと栗が破裂します」
アンナ「焼き加減は練習あるのみです。
今のところライバルはこの街にいませんよ」
ライラ「兄さん・・・」
スミス「やります。焼き方は練習すればなんとかなるさ」
ライラ「そうね」
スミス「ところでなんで荷車?」
アンナ「店の前で焼けば甘い匂いに誘われてお客さんが来ると思います。
それに、人が多い場所に移動したり、売り歩くことが出来ます」
スミス「なるほど、柔軟に対応できるわね」
ライラ「これなら従業員を雇ったまま続けられそうね」
スミス「うん、何とかなる」
アンナ「ちなみに熱々の焼き芋と冷たいアイスクリームを
一緒に食べると美味しいですよ」
スミス「あとでやってみよう」
ライラ「美味しそうね」
話がまとまりました。
サツマイモはアンナミラの村でも栽培しています。あと少しで収穫できます。
追熟すれば糖度が上がり甘くなります。
石焼き芋と甘栗、人気が出るといいですね。
私たちは氷屋さんを後にしました。
次は、猫耳亭に向かいます。