233 修学旅行3日目です 13
ここは宇宙です。
結界魔法で作った宇宙ステーションの中にいます。
アンナ「時間になりました。記念撮影をします。集合してください」
女生徒が集まってきました。
アンナ「手すりに捕まって、体を固定してください」
アンナ「陽子さん、撮影をお願いします。わたしは男子の撮影をします」
陽子 「わかりました」
わたしは男子のモジュールに向かいます。
すでに撮影の準備は出来ています。生徒たちの背後には惑星と宇宙空間が見えます。
アンナ「撮ります」
カシャ。
アンナ「それではMTVに戻ります。
そのあとは飛行島のコテージに戻って夕食にします」
男子 「面白かったな」
男子 「最高だった」
男子 「宇宙やばい」
男子 「 wwww 」
B組も記念撮影が終わり、MTVに搭乗しているところです。
わたしはキャリーバッグを持ってMTVに乗ります。
通路では先生方が集まって話をしています。
志村 「男子は問題ありませんでした。女子はどうでしたか?」
高木 「問題ありません」
加藤 「楽しかったです」
志村 「それはよかった」
先生が乗り込み、全員搭乗しました。
わたしは、ドッキングハッチを結界で閉じました。
離脱します。宇宙ステーションはアイテムボックスに収納しました。
アンナ「これから飛行島に戻りますが、
皆さんには大気圏突入を体験していただきます」
男子 「おおお・・・」
志村 「アンナさん、大丈夫ですよね?」
アンナ「はい、何度も訓練しました。心配いりません」
アンナ「それでは皆さん、シートベルトを使ってください」
ローラ「面白そうね」
男子 「大気圏突入かあ」
女子 「なんか緊張するね」
男子 「おら、ワクワクしてきたぞ」
生徒 「 ww 」
大気圏突入・・・男子が好きそうなフレーズです。
アンナ「飛行島に帰還します・・・発進」
MTVは少しずつ地表に近づきます。
アンナ「現在の速度はマッハ25です。大気圏に突入します」
男子 「おおお・・・」
アンナ「機体の外側は数千度になっていますが、問題ありません。
高温になっている理由は、大気の摩擦熱ではなく、
空気が高圧縮されているからです。これを断熱圧縮と言います。
空気は圧縮すると高温に、逆に膨張させると低温になります」
男子 「そうなんだ。摩擦熱は関係ないのか」
男子 「勘違いしてた」
男子 「俺も」
アニメやマンガで「大気の摩擦熱で燃えてしまう」は誤りです。
アンナ「周囲が赤く光っているのは、空気が高圧縮されプラズマが
発生しているからです」
志村 「プラズマ発光ですか?」
アンナ「はい、そうです。機体の表面が燃えているわけではありません」
志村 「音がないですね」
アンナ「機体の外側ではソニックブームが発生していますが、
機体が音速を超えているため、衝撃音は届きません」
志村 「なるほど」
女子 「物理の授業みたい」
女子 「 ww でも勉強になるね」
*
わたしはMTVを少しずつ減速させます。そして機内照明を点灯させました。
アンナ「間もなく飛行島に到着します」
女子 「夜になってる」
男子 「腹減った」
飛行島の上空です。広場には着陸灯が設置してあります。
MTVはゆっくりと着地しました。
アンナ「お疲れ様でした。このあと夕食にします。
MTVを降りたらコテージに入ってください」
わたしはタラップを降ろしました。先生と生徒がMTVを降ります。
ローラ「宇宙での体験、楽しかったわ」
アンナ「わたしもです」
わたしはキャリーバッグを持って、ローラと一緒にMTVを降りました。
MTVは収納します。
そしてコテージに入りました。
ダイニングに向かい、窓際にペットサークルを出してマオを入れます。
アンナ「マオは今日もいい子にしていましたね。お疲れさま」
わたしはマオにフードとお水をあげました。
さて、夕食の準備をしましょう。
*
今日の夕食はベルギー料理です。
ムール・オ・ヴァン・ブラン
ムール貝のワイン蒸し、ベルギーの名物料理です。
鍋に、ムール貝、白ワイン、エシャロット、セロリ、バター、塩、胡椒、タイムを入れて蒸します。
貝が開けば完成です。
ワインのアルコールは飛ばしてあります。
フリッツ
フライドポテトです。今では世界中で食べられていますが、ベルギー発祥の料理です。
二度揚げして、中はホクホク、外はカリカリです。
トマトペーストとマヨネーズにそれぞれ調味料と香辛料を入れて、2種類のディップソースを作りました。
カルボナード・フラマンド
牛バラ肉をエールで煮込んだ料理です。
まず最初に、バターで小麦粉と玉ネギを炒めて、飴色玉ネギを作ります。
次は、鍋にオリーブ油を入れて、一口大に切った牛肉を軽く炒めて焼き目をつけます。
そこへエール、飴色玉ネギ、ニンニク、マスタード、黒糖、塩、ビネガー、胡椒、ローリエなどを加えて、肉が柔らかくなるまで長時間煮込みます。
エールのアルコールは飛ばしてあります。
付け合わせはストゥンプと呼ばれる野菜入りのポテトサラダです。
ワーテルゾーイ
ベルギーのクリームシチューです。
鍋にブイヨンを入れて、玉ネギ、ニンジン、ジャガイモ、リーキを加熱します。
具材に火が通ったら、鳥肉、バター、塩、胡椒を加えます。
鳥肉に火が通ったら火を止めて、生クリームと卵黄を混ぜたものを加えて完成です。
ピストレ
ベルギーのパンです。中央に切れ目がある、手のひらサイズの丸いパンです。
焼きたては外がパリッ、中はふんわりしています。
本来は日曜日の朝に食べるそうですが、ここは異世界なので気にしません。
ピストレとは拳銃のことですが、名前の由来は不明です。
メルヴェイユ
メレンゲとホイップクリームで作るお菓子です。
まず、卵白とグラニュー糖でメレンゲを作り、オーブンで焼きます。
次に、焼いたメレンゲでホイップクリームを挟み、周囲にもクリームを塗ります。
最後に、刻んだダークチョコをまぶして完成です。
焼いたメレンゲはマカロンとは違い、不思議な口溶けです。
*
今回は作りたてを食べてほしいので、オードブル、メイン、デザートの順に出します。
皆さん着席しました。
まずは、オードブルのムール&フリッツからです。
アンナ「いただきます」
全員 「いただきます」
断熱圧縮について
以前に見た動画の話をします。
まず、透明なシリンダーの中に小さな綿を入れます。
そしてゴムパッキンがついた棒を手で押し込むと中の綿が発火しました。
手で押し込むだけの空気がこれほど高温になるとは思いませんでした。
この原理を応用したのが、ディーゼルエンジンです。
ディーゼルエンジンは断熱圧縮で自己着火するため、点火プラグが必要ありません。
逆に、気体を膨張させて温度を下げる電化製品は、冷蔵庫やエアコンです。